商社マンの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「商社マン」とは

商社マンの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

総合商社や専門商社に勤める人。営業の仕事を中心に、世界中と「もの」の商取引を行う。

商社マンとは、一般的に商社で営業などの仕事をする人のことをいいます。

商社には、分野や業種問わず幅広いものやサービスを扱う「総合商社」と、特定の分野や業種においての取引を専門的に行う「専門商社」があります。

商社マンになるには基本的に大卒以上の学歴が必要です。

とくに大手総合商社は就職先として非常に人気が高く、語学力だけでなく、高いコミュニケーション力や判断力、リーダーシップなども求められます。

商社マンは残業続きになることや、海外赴任や転勤などもあるため多忙な生活になりがちですが、給料や待遇は恵まれています。

また、多くの人の利権を調整し、自らの手で億単位の規模のお金を動かすなど、ダイナミックにビジネスを進めることができます。

「商社マン」の仕事紹介

商社マンの仕事内容

売り手と買い手をつなげるパイプ役を担う

商社は、食料品、石油・石炭などの資源、自動車、あるいは通信衛星など、ありとあらゆる「もの」を世界中と取引する会社です。

商社に勤める社員のうち、営業をはじめとする「総合職」として働く人のことを、一般的に商社マンと呼んでいます。

おもな仕事内容としては、それぞれが取り扱う商材を、国内外を問わずさまざまな仕入先から調達すること、そしてそれらを必要とする販売先へ卸すことです。

メーカーや小売企業にとって、必要な原材料や商品をできるだけ安く、かつできるだけ良い品質で調達することは、重要な経営課題の一つです。

そういったニーズに応えることが商社マンの役割で、専門知識やノウハウを駆使してメーカーなどに代わって適切な商材を仕入れ、事業の発展に貢献します。

商社の業務は多様化している

商社マンには、商取引だけでなく、人と人とを繋ぎ合わせて、新しいビジネスチャンスを生み出す役割も期待されています。

たとえば、近年の総合商社では、海外での資源開発や新エネルギー開発といった投資事業にもきわめて積極的です。

また、大手商社はコンビニ業界への出資も手掛けており、こうした投資による相乗効果で、さらに収益を上げる仕組みを構築しています。

このように商社の業務は多様化・複雑化しており、そこで働く商社マンにも、広い視野やビジネスに対する鋭い嗅覚などが求められています。

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商社マンになるには

入社を希望する企業の採用試験を受ける

商社マンになるには、それぞれの商社が実施する社員試験を受けて、採用される必要があります。

商社は学生の就職先としての人気が高いため、採用倍率は非常に高くなりがちです。

また、ダイナミックで幅広いビジネスに関わることから、商社側もできるだけ優秀な学生を欲する傾向にあります。

大手商社を志望する場合は、できるだけ難易度の高い大学に進学しておくほうが好ましいです。

そのうえで商社の内定を得るには、普段から時事問題に興味を持って自身の意見を語れるようにしたり、英語などの語学力を高めたりと、学生時代からの継続的な努力が必要になるでしょう。

学生時代の過ごし方が重要

商社での仕事は心身ともにタフなものになるため、企業によっては元気で体力のある体育会出身者が好まれる傾向にあるようです。

とはいえ、文系・理系さまざまな学生が内定を得ていますし、語学に堪能な人もいれば、スポーツよりも文化系の部活動に打ち込んだ人もおり、さまざまな個性をもつ人材が活躍しています。

商社マンは、相手の心情を読み取る力やプレゼン力、交渉術など、数々のビジネススキルを磨き上げることが求められます。

学生時代から積極的に見聞を広げる努力をし、多様な経験を積んでおくとよいでしょう。

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商社マンの学校・学費

大手総合商社には難関大出身者が殺到する

商社の総合職試験では、「大卒以上」の学歴が条件となるケースがほとんどです。

とくに古い歴史と高い知名度のある大手総合商社には、一流国立大学や有名私立大学の学生が多数集まります。

就職に対する意欲も高い人たちが多く志望するため、内定を得るには、非常に厳しい競争となることを覚悟しておく必要があります。

学部・学科に関してはとくに問われませんが、働きだした後には経営や金融・ビジネスに関する知識が必要になるため、経済学部、商学部、経営学部などで学んでおくと役に立つでしょう。

また、留学経験があると商社の採用面接時に高評価を得やすいため、留学制度が充実している大学へ進み、在学中に海外経験を積んでおくのも有用です。

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商社マンの資格・試験の難易度

学生のうちから語学力は磨いておくべき

商社マンの就職試験を受ける時点で、資格が採用条件として掲げられることはあまり多くありません。

しかし、商社では業務上多くのシーンで英語をはじめとした語学力が必要となるため、学生のうちからTOEICや英検を受験して、語学力をアピールできるように準備している人が多いです。

TOEICでいえば700点以上あればプラス評価を受けやすいとされますが、英語以外の言語に強みがある人も、積極的にアピールしたいところです。

語学系資格以外では、簿記の資格を持っているとアピール材料となります。

できれば2級以上の取得を目指しましょう。

このほか、貿易実務検定や通関士などの資格も評価対象になりやすいです。

また、実務に就いてからは証券アナリストや中小企業診断士、MBAなどの資格取得を目指す商社マンが多くいます。

商社マンの給料・年収

高給を得られる反面、仕事は厳しい

商社マンの給料・年収は、民間会社員の平均年収よりもだいぶ高めです。

大手総合商社勤務の場合は、平均年収が1000万円を超えてきますし、商社全体でも平均年収は700万円~900万円ほどと考えられます。

活躍次第では30代前半で年収1000万円以上に達するケースも珍しくなく、他業界の会社員と比べると、待遇面は恵まれているといえます。

ただし、その裏には、長時間残業が慢性化していたり、転勤や海外赴任が多かったりと、厳しい労働事情が隠れています。

また、日常業務でもシビアに成果を求められるなど、ハードワークになる覚悟も必要です。

配属や会社の業績によって収入が変動することも

商社マンは、総合商社を中心に、海外勤務を命じられるケースが少なくありません。

海外駐在中は、海外勤務に関する特別な手当が付くことから、通常、収入は国内での勤務時よりも増えます。

とくに発展途上国への赴任時には、現地の治安の不安定さや危険度を考慮して、月給が倍近くになることもあるようです。

また、商社マンの給料は、会社の業績次第で大きく変動する可能性があることも頭に入れておいたほうがよいでしょう。

業績好調であれば、ボーナスが一気に跳ね上がることもある反面、赤字になると驚くほどボーナスが減らされるケースもあります。

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商社マンの現状と将来性・今後の見通し

積極的な事業拡大によって順調な経営をしている商社も多い

近年の商社は、モノの取引だけでなく、さまざまな事業を複合的に展開する企業が増えています。

資源開発事業やIT事業、新エネルギー開発のための投資などが代表的ですが、企業によっては製品開発から製造・販売まで一貫して手がけるSPA(製造小売)事業を展開しているところもあります。

そうした新たな取り組みが奏功し、大手7社と呼ばれる業界トップの総合商社はいずれも世界的評価を高めています。

ただ、資源ビジネスは価格が乱高下しやすいというデメリットもあり、失敗すれば一気に多額の損失を計上する可能性も否定できません。

とはいえ、商社のビジネスは多様化しているため、そこで働く商社マンが活躍できるフィールドは多彩です。

将来性も豊かで、本人の意欲と努力次第で大きな活躍のチャンスを掴むことができるでしょう。

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商社マンの就職先・活躍の場

総合商社と専門商社の2種に分けられる

商社は、幅広い商材を取り扱う「総合商社」と、一部の分野に特化した「専門商社」に大別することができます。

総合商社のうち、三井物産、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、豊田通商、双日は「大手7社」といわれています。

これらの企業は日本経済をけん引する大企業で、取引も大規模なものが多くなります。

一方、専門商社は、大小さまざまに約60社ほどの企業があり、鉄鋼系や医薬品系、エネルギー系、食品系など、それぞれが得意とする分野において独自性を生かした事業を行っています。

このほか、商社マンとして就職した人は、商社本体から、その子会社や出資先の企業に出向して働く人もいます。

商社マンの1日

外回りに1日の大半を費やす

商社マンは、ビジネスの仲介役として、仕入先と販売先の双方に足繁く通い、ニーズを聞き出したり、新しい企画を提案したりと、外訪に1日の大半を費やすケースが一般的です。

また、取引先が海外であるケースも珍しくありません。

海外出張したり、時差の都合で早朝や深夜に会議を行ったりと、スケジュールは多忙かつ不規則になりがちです。

ここでは、大手総合商社の営業部門で働く商社マンの1日を紹介します。

8:00 出勤・メール対応
9:00 部内ミーティング・情報共有
9:30 取引先訪問
12:00 昼食休憩
13:00 展示会準備
17:00 帰社、報告書・プレゼン資料作成
19:00 退社

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商社マンのやりがい、楽しさ

世界を股にかけたビジネスに関われる

商社マンの仕事の特徴として、世界中で広く活躍できる点が挙げられます。

若手のうちからビジネスの最前線で難易度の高い仕事を任せてもらえる傾向が強く、早ければ入社1~2年目から海外出張も経験できます。

アメリカやヨーロッパなどの主要国に限らず、観光目的で訪れることはまずないような発展途上国でビジネスをするケースもあるため、人間としても成長できる機会に恵まれています。

グローバル志向の強い人には、非常に楽しい仕事環境といえるでしょう。

また、近年の総合商社は幅広い事業を手掛けており、新たなビジネスを作り出すことに積極的です。

「チャレンジ精神」を歓迎する企業風土があるため、若いうちから主体的に事業に関わっていきたいと考える人は、とくにやりがいを感じやすいはずです。

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商社マンのつらいこと、大変なこと

ハードワークに向き合う覚悟が必要

ハードワークに向き合う覚悟が必要

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商社マンに向いている人・適性

主体性をもって積極的に物事に挑戦できる人

商社マンの仕事は、あらかじめ決まった仕事を所定の順番でこなすというよりも、試行錯誤しながら自分で新しいビジネスを創出していくという側面が大きくなります。

したがって、誰かに指示されるのを待っているのではなく、主体的に考え、物事に取り組めるタイプの人が、商社マンに向いているでしょう。

失敗を恐れずに、新しいことに前向きに挑戦できるタイプの人は、商社では活躍しやすいです。

また、商社マンは資格取得や語学力向上などに熱心な人が多く、厳しい出世競争を勝ち抜いていくためにも、日々の自己研鑽は重要です。

好奇心旺盛で、自らスキルアップや視野を広げることに積極的な人は商社マンの適性があります。

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商社マン志望動機・目指すきっかけ

面接官を納得させられるだけの志望動機を

商社には、知名度の高い大手総合商社を中心に、毎年多くの優秀な学生が就職を希望します。

商社への入社を目指すきっかけとしては、以下のようなものがあります。

・世界を相手にダイナミックな仕事がしたい
・若いうちから稼ぎたい
・海外で働くチャンスを得たい
・海外経験や語学力を生かしたい
・知名度やブランドイメージに惹かれて
など

商社の面接においては、自己PRなどと合わせて必ず志望動機を問われます。

商社志望の場合、誰にでもあてはまるようなありきたりなものや、抽象的なもの、単なる憧れだけでは内定を得ることは不可能です。

自己分析や過去の経験などを踏まえて、「だから商社でなくてはならない」と断言できる理由を述べられるよう、しっかりと考えておく必要があります。

たとえば「海外で働きたい、グローバルな仕事がしたい」という考えなら、「なんのために海外で働きたいのか」「海外製品を扱うメーカーではなぜダメなのか」といったような、面接官からの厳しいつっこみをあらゆる角度から想定して、それに理屈できちんと答えるための準備をしておきましょう。

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商社マンの雇用形態・働き方

国内外へ転勤する頻度が高め

商社マンとして営業などの仕事に第一線で携わる人は、ほぼ確実に「正社員」として雇用されています。

勤務先の企業や配属部署にもよりますが、そのような商社マンは、数年単位での隔地転勤を繰り返すことが一般的です。

大手総合商社ともなれば世界各地に支店や営業所を設けているため、国内各地に限らず、海外へ転勤となるケースも多々あります。

グローバルな規模でビジネスを仕掛けている企業で働く以上、これは避けられないことです。

もし結婚して配偶者や子どもがいれば、単身赴任するにせよ家族で移住するにせよ、自分だけでなく家族に対しても、決して少なくない負担を強いることになります。

商社マンを目指すなら、業務上そうしたリスクをはらんでいることも頭に置いておきましょう。

商社マンの勤務時間・休日・生活

海外との取引事情に合わせて不規則な勤務スタイルになることも

商社マンの勤務時間は、他業界のオフィスワーカーと同様、おおむね8:30~18:00前後に定められています。

しかし、大手商社では多くの業務を抱え、夜遅くまで仕事をしている社員が少なくありません。

海外との取引を担当する場合には、現地時間に合わせて不規則な勤務時間となることもあります。

また、業務後も取引先との接待や飲み会などは比較的多く、帰宅する頃には日付が変わっていることもよくあります。

商社マンとして第一線で活躍していると、どうしても「仕事優先」になる傾向が見られます。

私生活を多少犠牲にしてでもビジネスの最前線でバリバリ働きたいという人でないと、商社マンは務まらないかもしれません。

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商社マンの求人・就職状況・需要

新卒採用の場合、手掛ける分野は選べない

大手総合商社をはじめとして、ほとんどの商社では毎年「総合職」の新卒採用を実施しています。

企業によっては、一度に数十名単位の求人を出しているケースも珍しくありません。

新卒採用によって社員採用された場合、総合商社では入社後に配属先が決定されます。

ただ、商社の仕事は取り扱う商材ごとに必要な知識やノウハウが異なるため、基本的に分野をまたぐ異動はありません。

配属先の決定には本人の意向も考慮されますが、人によっては強く希望していない分野の仕事を退職するまで続けなければならない可能性もあるため、あらかじめ留意しておきましょう。

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商社マンの転職状況・未経験採用

分野に応じた職務経験が必要

商社は、中途採用を実施している企業も多数あり、とくに大手総合商社各社は「キャリア採用」と呼ばれる社会人経験者の採用に積極的です。

キャリア採用の場合は、新卒時とは異なり、分野ごとに募集がかかるケースが大半です。

商社勤めの経験はなくても構いませんが、前職でその分野に関係ある仕事をしていた人が優先的に採用されます。

転職市場においても待遇のよさや、大きなビジネスに関われるなどの理由から商社の人気は非常に高く、多数の転職希望者が集まるため、採用されるためには自身のスキルや前職での実績をアピールする必要があるでしょう。

未経験から商社へ転職を目指す場合

商社では、年齢を重ねるほど、過去の成果やスキルも強く問う傾向にあるため、30代以上の未経験者が商社へ転職するのは厳しくなってきます。

ただ「第二新卒」といわれる20代半ばくらいの転職であれば、未経験から商社マンになるチャンスもまだまだあります。

とはいえ、商社では新卒・既卒関係なく、ビジネスに関する熱意やアグレッシブな姿勢、積極性などが問われるため、その点を自身の経験をもとにどうアピールするかは、十分に考えて準備しておくことが大切です。

関連記事商社への転職・未経験から転職するためのポイントを解説

商社不要論とは

現代の商社のあり方は変化している

商社の根本的な役割は、売りたい人と買いたい人をつなげる「仲介役」となることです。

かつての商社は、さまざまな商品や資材などを安く仕入れて、そこに中間マージンを乗せて販売する「卸売業」の色合いが強いものでした。

商社の誕生は古く1865年にまでさかのぼりますが、そこから現代にいたるまで「商社不要論」という言葉は幾度も口にされてきました。

その背景には、経済発展によるメーカーの販売網の拡大や、インターネット技術の普及・発展による生産者と製造者の直接取引の実現などにより、商取引の間を取り持つ「商社」の存在価値が薄れたことが挙げられます。

しかし、現代の商社がもつ機能は高次化・多様化が進み、単なる「橋渡し役」を超えたビジネスを多数手がけています。

近年では、成長産業に対して資金や人材を注入し、積極的に事業拡大を図る「投資事業」が総合商社の大きな収益源となり、かつての卸売業の色は薄くなっています。

商品を左から右へ横流しするだけの商社は、もはや現代社会では生き残れなくなっているため、「商社不要論」という言葉は今後あまり聞かれなくなるかもしれません。

関連記事商社の役割・商社不要論とは?

商社マンに必要な英語力は?

高ければ高いほど有利だがTOEIC700点以上が目安に

商社マンには、さまざまなビジネススキルが求められます。

とくに海外との取引を日常的に行うことも多いため、「英語力」に関しては高ければ高いほうが有利と考えておいたほうがよいでしょう。

TOEICでいえば、入社時点で700点を取得していると、それなりに評価されることが多いとされています。

入社後については、商社によっては社員に対して730点以上の取得を必須としているところもあります。

ただ、注意しておきたいのは、単に受験英語の点数が高かったり、読み書きのレベルが高かったりするだけでは、ビジネスで役立たない可能性もあることです。

商社マンは、海外のビジネスパーソンとコミュニケーションをとることも多いため、いくら読み書きができても、まったく英語を離せないようだと実務では生かせません。

そういった意味では、海外留学など一定期間でも海外で過ごした経験があり、外国人とのコミュニケーションに慣れている人のほうが、プラスに評価されることもあります。