NICU病棟で感じた母と子の絆(体験談)

生まれてから一度もママに抱っこをされないまま過ごす赤ちゃんたち

私がNICU病棟で働いているときのことです。

赤ちゃんは約40週間、ママのお腹の中で育ち生まれてきます。

しかしさまざまな理由で30週もたたずに生まれた赤ちゃんがいます。そのような赤ちゃんはNICUで大きくなるまで過ごします。

早く生まれた赤ちゃんは未熟なため、少し触れただけで脳の血管が出血してしまったり、呼吸が自分では十分できなかったりします。

そのためになるべく触れないようにしたり、呼吸器につないでサポートしたりするので、生まれてから一度もママに抱っこされることなく1ヶ月以上過ごす赤ちゃんもいます。

ママが手のひらで、500mlのペットボトルほどの大きさの赤ちゃんを包み込んであげる。

それがママと赤ちゃんの触れ合いです。

ママの赤ちゃんへの気持ち

その間のママは、保育器の中でのオムツ交換の仕方を覚えたり、搾乳をしたり、赤ちゃんの使うリネンを手作りしたり、とにかくママとしてできることを一生懸命探します。

「この子はがんばっているから、ママとしてできることはなんでもやりたいけれど、できることが少なくて…。」

そう言葉をこぼすたくさんのママを見てきました。涙を流すママも少なくありません。

私達看護師ができること

私たち看護師は、赤ちゃんが安全に、しっかりと大きくなるようにサポートします。

泣くこと、苦しそうな呼吸をすることなどの「不快」は赤ちゃんに余計な体力を使わせ、その分体重を増やすためのエネルギーが減ってしまいます。

できるだけ赤ちゃんにとっての不快を取り除けるよう、赤ちゃんの姿勢を整えてあげたり、保育器の温度と湿度を調整したりします。

とうとう訪れる初めての抱っこの時間

赤ちゃんが大きくなると脳血管の出血の可能性も少なくなり、呼吸も自分の力だけで十分行うことができるようになります。

とうとう、ママに抱っこしてもらえる日を迎えるのです。

初めてママに抱っこされた赤ちゃんは、初めての感覚に目をまん丸にし、周りをキョロキョロ見回します。

そのうちにママの温かさに包まれて、眠ってしまいます。

初めて赤ちゃんを抱っこしたママは涙を流したり、溢れんばかり笑顔を見せたり、皆キラキラした表情になります。

そのうちに優しい眼差しで赤ちゃんを見つめ、ゆっくりと時間が流れていきます。

この瞬間に触れたとき、母と子の決してきれない絆を感じ、なんとも言えない気持ちになります。