病棟看護師とは? 仕事内容や役割をくわしく解説

病棟看護師の仕事とは

医療機関の病棟は、24時間体制で患者さんの看護を行う臨床の場です。

外来や手術室では、1日に複数の患者さんと限られた時間だけ接しますが、病棟では朝起きてから寝ている間まで、ずっと患者さんのケアを行います。

患者さんの身近な立場で接するため、患者さんに対するより深い理解が必要になってきます。

ここでいう「より深い理解」とは、病状はもちろん、患者さんの性格、家族背景、家族の意向、そして医師の治療方針です。

実際の仕事内容としては、注射や点滴、ガーゼ交換などの医療処置のほか、ベッドサイドを整えたり、身体を拭いたりといった身の回りの清潔を保つことも、大切な仕事です。

これは、現代看護の心構えやあり方が込められた『ナイチンゲール誓詞』でも書かれている「看護に最も必要なもののひとつ」で、医療技術が発達した今も、看護師はその基本を忘れてはいけません。

病棟看護師の業務の内容

病棟看護師の業務は多岐に渡りますが、最も大切なのは入院患者さんの状態を把握し、適切なケアや介助を行うことです。

ここでは、おもな業務内容について紹介します。

検査の介助

日中の病棟では、看護師は患者さんの身の回りのお世話や、検査のサポートをします。

検査のなかでも、血液検査(採血)や尿検査は看護師が行います。

その他の検査を行う場合には、看護師は事前に検査内容・検査時間を把握しておき、必要がある場合は食事を止めたり、剃毛・浣腸・投薬等を実施。

さらに検査室まで患者さんを安全に移動させます。

検査室と連携し、医師の指示通りの検査をスムーズに行うことが大切ですが、同時に、検査を控えて不安を抱えている患者さんの精神的支援も大切です。

検温・投薬・点滴など

治療・保清・検温・検査で病棟の1日はあっという間に過ぎていきます。

夕方になると病棟内は少し静けさを取り戻しますが、看護の仕事がなくなるわけではありません。

ほとんどの病棟が、1日3回の検温を行っているため、夜間にも検温をし、それ以外にも夕食の介助・投薬・注射・点滴などを行います。

患者さんの就寝後も、病室の見回り、24時間点滴の管理、呼吸機や心電図モニターのチェック、明日の検査の準備など常に病棟中に気を配っています。

緊急時の対応

上記で挙げたような通常業務のほかに、患者さんの容態によって緊急入院・緊急手術が入ることもあります。

病棟勤務は24時間休む間がないといっても過言ではなく、そこで最も必要なことはチームワークです。

チームワークのよい職場は、スタッフが働きやすいだけでなく、患者さんにとっても快適な看護を受けるために不可欠です。

病棟では複数の看護師が交替しながら勤務するため、お互いに除法共有や連携をしっかりと行い、一人ひとりの患者さんに最適な看護を提供する姿勢が求められます。

病棟看護師の役割

患者さんの入院生活を支える

医療機関の「病棟」では、病気や怪我で入院が必要な患者さんを受け入れています。

つまり、病棟は継続的な治療を行う場であると同時に、患者さんにとっての入院中の生活の場でもあります。

病棟勤務の看護師は、患者さんにとって最も身近な医療スタッフの一員として、患者さんの抱える不安や困りごとを理解しなくてはなりません。

日常的な検温や点滴などの処置から、検査準備・食事の配膳・着替えや排泄などの介助など幅広い業務に携わり、患者さんが安心して治療を受けられる体制を用意します。

病棟にもさまざまな種類がある

大きな病院では、患者さんの病状や治療内容に合わせた、いくつかの種類の病棟を置いています。
たとえば「一般(急性期)病棟」のほか、リハビリを中心的に行う「回復期リハビリテーション病棟」、透析患者さんなどが多く入院する「療養病棟」、がんの痛みを和らげることに焦点を当てた「緩和ケア病棟」などがあります。

病棟看護師でも、配属先によって求められる役割や仕事の流れは少しずつ変わってきます。

しかし、共通しているのは「患者さんが何を求めているのか」を理解する心をもち、患者さんの身体的・精神的なケアを行っていくことです。

病棟看護師の仕事の流れ

病棟看護師の仕事は、交代制で24時間休むことなく引き継がれていきます。

勤務体系は、病院によって「2交代」「3交代」「当直制」などさまざまですが、ここでは3交代勤務の場合について説明します。

日勤(朝~夕方までの勤務)

朝、出勤すると、夜勤の看護師からの申し送りによって入院患者さんの状態を把握します。

申し送り後は入院患者さんの部屋を回り、清拭(体を拭くこと)、注射や点滴、ガーゼの交換など、必要な保清・治療・処置を実施。

昼休憩をとり、午後からは病棟カンファレアンスが開かれ、患者さんの治療や看護に関する意見交換を行います。

その後、一人ひとりの患者さんのバイタルサイン(体温や血圧などの状態)をチェックし、検温を行います。

検温で異常があった患者さんがいれば、すぐに医師へ報告し、指示を仰ぎます。

検温の後は、リハビリや検査、入浴の介助など患者さんの身の回りのお世話をすると同時に、検温や検査の結果をカルテに記入します。

カルテの記入は、患者さんの状態を記録し、交替する看護師へ引き継ぐために大切な業務です。

準夜勤(夕方~深夜までの勤務)

準夜勤の業務も、日中の患者さんの様子の申し送りからスタートです。

通常、計画されている治療・検査は昼間のうちに行われますが、緊急性があるものは医師の指示により夕方に実施されます。

申し送りを聞き、日勤者が帰るころ、準夜勤者は病棟内を見回って患者さんの様子をひと通り把握します。

夕食の後は夜の検温です。

日中に発熱や状態が悪化していた患者さんは、昼間の変化や投薬の効果を判断し、深夜の急変に備えておくことが大切です。

消灯時間が近づくと、就寝前に投薬やガーゼ交換などの処置が必要な患者さんをケアします。

自分で身の回りのことができない患者さんには、着替えや排泄の介助を行います。

病室という閉鎖的な空間で1日を過ごした患者さんが、快適で良質な眠りが得られるような環境づくりをすると、治療効果や治癒力を高めることにもつながります。

患者さんが寝た後は、準夜勤帯で行った治療や、患者さんの様子をカルテに記入します。

深夜勤(深夜~翌朝までの勤務)

深夜勤の仕事も、まずは申し送りを聞くことからはじまります。

病棟内の患者さんのほとんどは就寝中ですが、なかには24時間点滴を行っている人、発熱が続く人、呼吸機をつけている人がおり、深夜も継続して観察・看護を実施します。

万が一、急変や異常があった時は、担当医または当直医に連絡し指示を仰ぎます。

朝になり、朝食前には患者さんの血液検査・尿検査、その後、起床時の検温を行って朝食を配膳、投薬します。

朝は短時間にしなくはならないことが多く多忙を極めますが、その合間を見てカルテ記入を行います。

それを日勤の看護師に引き継いで業務終了です。

このように、病棟内の業務の流れは、勤務時間によって変わってきます。

複数の看護師が交替で働くからこそ、どの時間帯の勤務も検温をし、患者さんの変化を見逃さないことと、カルテにきちんと記録を残していくことが、情報を提供・共有するための大事なポイントです。