フライトナースになるには? 仕事内容・資格・給料・選考基準・難易度を解説

フライトナースになるには、看護師経験5年、救急看護3年以上が必要です。

まずは看護師の資格取得後、現場で医療と看護を学び、さらに救急やヘリに関する知識を身に着けて、ようやくなれる仕事です。

ここでは、フライトナースの仕事内容やなるための道のりをご紹介します。

フライトナースの仕事内容

ドクターヘリで救急看護を行う

フライトナースは、フライトドクターに同行し、医療用のヘリコプターであるドクターヘリに搭乗し、緊急治療を必要とする患者の医療行為を提供する仕事です。

フライトナースは、ドクターヘリで患者のもとへ到着した後、フライトドクターの見立てによって必要とされる医療処置を行います。

また、救急医療が必要な事態になって不安になったり混乱・興奮したりしている患者や家族のケアもフライトナースの仕事です。

しかし、毎日出勤すれば必ずドクターヘリに搭乗するわけではありません。

ドクターヘリは救命救急センターに所属しており、ドクターヘリを必要とするような患者がいなければ、1週間~数週間にわたってドクターヘリでの出動がない日もあります。

一方、救急患者が相次げば、1日に3回ほど搭乗することもあります。

フライトナースの就職先、活躍の場

ドクターヘリのある病院の救急センターに勤務

フライトナースとして働くためにはドクターヘリの配備されている救命救急センターに就職する必要があります。

認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワークによると、ドクターヘリは2021年5月の時点で全国に45都道府県に54機配備されています。

東京都、香川県にはドクターヘリがまだ1機も配備されていません。

参考:認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク

フライトナースは地域の救急患者の命を救うため、地域医療でも活躍しますが、近年では大地震や津波、台風、洪水などの災害の被災地へ医療を提供するという点でも活躍しています。

救急車には消防隊員が乗車しており、病院に到着するまでは決定的な医療行為を行うことができませんが、ドクターヘリにはフライトドクター・ナースが搭乗しているため、その場で適切な医療行為を提供して多くの命を救っています。

フライトナースの1日

フライト有無によって仕事内容が異なる

フライトがない日は、救急看護師として、救急車で搬送されてくる患者や、時間外診療で訪れる患者への医療行為を行っています。

フライトは基本的にシフト制になっている病院が多く、複数人のフライトナースがシフトを調整し、1人にフライトが集中しないように配慮されています。

あるフライトナースの1日

フライトのない日は、1日中救急看護師としての業務を行います。

ここでは、フライトのある日のフライトナースの1日の動きについて紹介します。

8:00 出勤
ヘリ内部の点検、物品・医療機器の動作確認をします。

連携するフライトドクター等とのカンファレンスを行い、天候の確認、1日の予定をチェックします。

8:30 1度目の出動
フライトクルー専用のPHSに出動要請が入ったら、患者の様態を想像しながら、救急医療の手続きや必要な機器を確認して離陸します。

点滴、軌道の確保など、必要な処置はヘリに搭乗してから行い、そのまま病院へ搬送します。

病院の救急外来に搬送し、引継を行います。

13:00 2度目の出動
多い時は一連の出動にともなう業務を退勤時間まで3~4度繰り返します。
19:00 退勤
翌日担当のフライトナースに今日の引継を行って業務終了です。

フライトナースになるには

看護師経験5年、救急看護3年以上が必要

フライトナースへの道のりは長く、難易度が高い資格の取得が義務付けられており、かなりハードであることは間違いありません。

まずは看護師の必須条件である国家試験に合格する必要があります。

さらに、厚生労働省が指定している条件「看護師経験が5年以上かつ救急看護の経験が3年以上、または同等の能力があること」をクリアしなくてはなりません。

さらに救命救急医療に関する資格であるACLSプロバイダーおよびJPTECプロバイダーを取得するか、同等の知識やスキルを有していることが必要です。

その上、日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講することが求められています。

看護師の資格取得後、救急看護師として経験を積み、医療とヘリに関する資格(あるいは知識・スキル)を積んで、ようやくフライトナースになることができます。

フライトナースの給料・年収

看護師の中でも高い給与水準

フライトナースの職場は、ドクターヘリを配備している病院に限られます。

つまり、ドクターヘリを配備できるだけの大病院や大学病院に勤務することになるため、給与水準はクリニックや施設勤務等の看護師に比べれば高い傾向にあります。

とはいえ、基本的には看護師の年収とあまり大差はありません。

厚生労働省によると、看護師の平均年収は390~520万円と、病院の規模、看護師の経験などによって差があります。

フライトナースの基本給はこの金額と同等であり、それに危険手当や待機手当が発生するため、400~550万円がボリュームゾーンとなるでしょう。

フライトナースのやりがい、楽しさ、魅力

ドクターヘリはメディアなどで取り上げられる機会も多く、救急救命医療×ドクターヘリの組み合わせが人気を呼んでいます。

しかしフライトナースのやりがいは、ヘリに搭乗することではなく、ヘリの内部で進行しているチーム医療にあるでしょう。

ヘリ内部では医師との連携、患者を病院へ搬送する際には救急外来などとの連携、震災時には消防・警察との連携をとり、大きな仕事を成し遂げ、人の命を救った実感がやりがいにつながります。

ICUを無事に退院する患者の姿を見るときにも、この仕事をしていてよかったと実感できるでしょう。

フライトナースのつらいこと、大変なこと

限られた医療機器のみで対応する緊張感

フライトナースが医療行為を行うにあたって、ヘリ内部に搭載した医療機器のみで対応しなければなりません。

ヘリに積める医療機器は質量や体積が限られており、患者の症状や様態によって、ある程度想像して準備してから搭乗します。

そのため、見立てが誤って、患者のもとに到着したら思ったような状況ではなく、持参した医療機器では対応できない時に大変さを感じるでしょう。

また、フライトナースは患者の家族対応も行います。

患者の様態急変にともない、茫然としていたり、パニック状態になったりしている家族も少なくありません。

そのような家族を落ち着かせ、様態が変わるまでの経緯を聞き出し、今後の展開に関する説明を行うことは容易ではないでしょう。

フライトナースに向いている人、適性

リーダーシップと柔軟さが歓迎される

日本航空医療学会フライトナース委員会が規定しているフライトナースの選考基準として、上記で紹介してきた看護師経験5年以上、救急看護師3年以上の経験は、「それだけの経験があればリーダーシップをとれる」ことを想定しています。

そのため、厳しい条件を乗り越えてでも救命救急に携わりたいと思う人の中でも、周囲の関係者を統率できるリーダーシップがある人は向いているでしょう。

また、救急医療では患者の様態が急変することもあり、ヘリに搭載してある限られた医療機器で現場に対応できる柔軟さ、臨機応変さも求められます。

フライトナースの志望動機・目指すきっかけ

最近ではテレビドラマの影響が強い

志望動機はさまざまですが、最近ではやはりテレビドラマの影響を受けたからという理由が多いようです。

また災害時など、自分自身あるいは家族がドクターヘリに命を助けてもらったことがあるからという理由も目立ちます。

現役フライトナースの中には、救急医療に看護の面から携わりたいと思い、救急看護師として勤務しているうちに必要条件を満たしてフライトナースになったという人もいます。

実際は現役看護師がテレビドラマの影響や、現場で働くフライトナースへの憧れから志望する人が多くなっているようです。

フライトナースの雇用形態、働き方

フライトナースはほとんどが正規職員

フライトナースはほとんどすべてが正規職員として勤務しています。

前述したように、救急看護師として勤務しながら、シフトの入っている日はフライトをともなう業務をこなしています。

そのため、通常は救命救急センターで正規職員として救急看護師の業務をこなしながら、当番の日はドクターヘリに搭乗して、医療行為を行っています。

フライトナースは競争率が高く、常勤の看護師の中でもそのポストをねらう人が多いため、非常勤医ではフライトナースになることは困難だといえます。

フライトナースの勤務時間・休日・生活

フライトナース=看護師ですから、基本的に他の一般的な看護師と勤務時間は変わりません。

変則2交代制の場合
  • 8:00~20:00
  • 19:30~8:30
3交代制の場合
  • 8:00~16:30(日勤)
  • 16:00~0:30(準夜勤)
  • 0:00~8:30(深夜勤)

フライトの際に患者を搬入する病院が見つからないなど、フライトが長引くと、これ以上の勤務時間になることもよくあります。

大学病院や大病院勤務でも土日関係なくフライトのシフトが入れば出勤します。

フライトナースの求人・就職状況・需要

直接的な求人はほぼなし

フライトナースは、看護師経験、および救急看護師経験を積んだ後に用意されているポストであるため、最初からフライトナースに限定した求人はほぼありません。

フライトナースとしてよりは、看護師として救命救急医療で経験を積んだ人が、病院側から声を掛けられて、あるいは志願してなるというキャリアパスのほうが一般的です。

現在はドクターヘリを配備していない病院も多いですが、今後ますます配備が進めば、フライトナースの需要は今よりも高まるでしょう。

フライトナースの転職状況・未経験採用

国家資格のため未経験者採用は希望薄い

フライトナースへ転職するためには、異業種の場合まずは国家資格の取得が先決です。

しかし、このような選択肢は現実的ではなく、実際には現役看護師が憧れを捨てきれずにフライトナースにキャリアチェンジするというケースが多くなっています。

そもそも看護師経験のない人はフライトナースにはなれないため、看護師未経験からのフライトナース採用は実質不可能です。

もしも異業種の人がこれからフライトナースを目指すのであれば、高校さえ卒業していれば、看護大学や短大、専門学校などでまずは看護師の資格を取るところから始めましょう。

フライトナースの現状と将来性・今後の見通し

ドクターヘリの配備率上昇に伴いニーズ高まる

看護師の離職率が高い中、テレビドラマなどの影響によってフライトナースの人気は高まっており、フライトナースを目標として働く看護師も少なくありません。

また、ドクターヘリは2001年4月に初めて正式に配備され、災害救助などでの活躍も考慮され、年々配備数が上昇しています。

現在53機配備されているドクターヘリは、本来47都道府県に80機配備されることが理想的だとされており、今後ますます配備する病院が増えていくでしょう。

それに伴い、フライトナースの求人数の増加、待遇改善なども期待できるといえます。

フライトナースになるには?のまとめ

フライトナース単独の求人はほぼなく、看護師として救命救急医療で経験を積んだ人がなるというケースが一般的です。

日本は災害も多く近年はとくにドクターヘリの需要も高いため、今後ますます配備が進めば、フライトナースの需要もさらに増えていくと考えられます。