「歯科技工士」とは

特殊な道具と技術を駆使して、入れ歯、被せ物、矯正装置などを作る歯科業界の職人。

歯科技工士は、歯科医師の指示に従って、入れ歯や差し歯、歯の矯正装置、マウスピースなどを作成する仕事です。

身体の一部になるものを制作するため、職人的な緻密さや正確さが必要とされます。

歯科技工士の約7割は歯科技工所での勤務です。

その他、歯科医医院や病院で勤務する人もいます。

歯科技工士になるためには、歯科技工士養成所で学んだ後に国家試験に合格することが必要です。

各都道府県ごとに試験は実施されますが、概ね高い合格率となっています。

歯科技工士は細かい作業が続くため、手先の器用さや忍耐力が求められます。

海外からの輸入が増え、単価が下がっている一方、日本の歯科技工士の技術力は、海外で高い評価を受けるようになってきています。

「歯科技工士」の仕事紹介

歯科技工士の仕事内容

歯科用の入れ歯・矯正装置などを作成する

歯科技工士は、入れ歯や差し歯、歯の矯正装置、マウスピースなどを作成する仕事です。

歯科医師が虫歯を削ったり、歯の形を整えたり、入れ歯を入れる箇所の歯型を取ったあと、歯科技工士はその歯型を基に、義歯や入れ歯などを作成します。

人の身体(口腔内)に装着するものを制作するため、職人的な緻密さや正確さが要求される仕事です。

人々の歯の健康を、歯科医師や歯科衛生士とともに担っているのが歯科技工士です。

歯科技工士の就職先・活躍の場

全国の歯科技工所・歯科医院・病院で活躍

歯科技工士の約7割は「歯科技工所」と呼ばれる施設で働いています。

ここでは歯科医院や病院(歯科)から注文を受け、指示書の内容に沿って制作を行い、納品します。

技工所の規模は大小さまざまであり、独立開業して歯科技工所を開く人も数多くいます。

次に多い職場が歯科医院です。

ここでは歯科医師や歯科衛生士と協力して歯科治療を進めていくため、歯科技工士にも協調性が求められます。

そのほか、病院内の歯科技工室での勤務もありますが、採用数は多くありません。

歯科技工士1日

勤務先の歯科技工所によって流れは異なる

歯科技工士は、基本的には、朝から晩まで入れ歯や詰め物など、歯科技工物を作っています。

具体的な仕事の流れは勤務先によって変わってきますが、ここでは歯科技工所で働く歯科技工士のある1日を紹介します。

08:30 出勤
1日のスケジュールを確認し、朝礼に参加。

09:30 営業活動へ
小規模な技工所では、歯科技工士自らが取引先の歯科医院を回ります。

10:00 取引先の歯科医院にて
仕上がった歯科技工物を納品したり、新しい注文分の歯型の模型を受けとったりします。

11:00 別の取引先へ
複雑な依頼の場合、実際の患者さんの口腔内を目視確認させてもらうこともあります。

13:00 会社に戻る
歯科技工所に戻って休憩をとった後は、注文通りに作業を進めます。

17:00 社内勉強会
歯科技工の技術向上のため、定期的に社内で勉強会が開かれます。

18:00 残業
納品日が間近の義歯が立て込んでいるため、出来る限り作業を進めます。

20:00 退勤
きりのいいところで仕事を終えて帰宅します。

歯科技工士になるには

歯科技工士国家試験に合格することが前提

歯科技工士になるには、歯科技工士の国家試験に合格する必要があります。

この試験を受けるには、高校卒業後、歯科技工士養成課程のある4年制大学や短期大学、専門学校(昼間2年・夜間3年)に進学し、所定のカリキュラムを修了する必要があります。

歯科技工士免許取得後は歯科技工所や歯科医院などに就職し、実践を重ねながら技術を磨いていきます。

ほとんどの人は歯科技工所に勤めますが、経験とスキルが身につくと、独立して自らの技巧所を開業する人もいます。

歯科技工士の学校・学費

各地に歯科技工士専門学校がある

歯科技工士の専門学校は、昼間部は2年制(夜間部は3年制)のカリキュラムが組まれています。

また大学の歯科技工士課程であれば4年制となっていて、短大では2年制のところがほとんどです。

このような養成施設では、国家試験合格に向けた知識定着や技術習得のための授業が行われます。

学費は学校によって違いがありますが、2年間の総額は約350万程度です。

一方、全国に数校ある、国立大学の歯学部付属歯科技工士学校の場合は、年間約60万円程度で学べます。

歯科技工士の資格・試験の難易度

養成施設できちんと学べば合格できる

歯科技工士は国家資格であり、厚生労働省が実施する歯科技工士試験に合格することで免許を取得できます。

国家試験では学科だけでなく実地試験も行われますが、全体の合格率は90%以上となっているため、養成施設できちんと学び、カリキュラムを修了すれば合格はそこまで難しいものではありません。

国家試験に合格すると歯科技工士名簿に登録され、これによって初めて歯科技工士免許書を受け取ると同時に、「歯科技工士」と名乗ることができます。

歯科技工士の給料・年収

高収入を得ているのは限られた人のみ

歯科技工士として技工所に就職した場合の給料は、初任給で15万円~17万円前後、歯科技工士全体の平均年収は400万円程度とされています。

医療系の専門職の中では低水準といえ、長い労働時間に見合った給料や待遇ではないという厳しい声も聞かれますが、一部特殊な技術を有している場合は、高収入を得られる職場もあるようです。

歯科技工士としてキャリアを積み、技術がついていけば年収も上げていきやすくなりますが、歯科技工所の規模が大きくなるにつれて年収は下がるという統計もあり、厳しい環境で働いている人は少なくないようです。

歯科技工士のやりがい、楽しさ

自分の技術で患者さんの健康に貢献できる

歯は小さいうえに、人によって歯の形や大きさや溝も違うため、歯科技工物を作る際には非常に神経を使います。

ミリ単位よりももっと細やかな精度が求められてきますが、自分の技術によって患者さんの生活・健康に貢献できることは、歯科技工士としての一番のやりがいといえるでしょう。

歯科医院と併設している歯科技工所に勤務している場合は、来院している患者さんに直接状況をお聞きする機会もあります。

自分自身の手で完成させた義歯を患者さんが装着し、感謝の言葉をもらったときの喜びにまさるものはありません。

歯科技工士のつらいこと、大変なこと

高い集中力や緻密さを要求される仕事

歯科技工士の仕事では、かなりの集中力や緻密さが要求されます。

ちょっとした不注意や手先のブレが、患者さんにとっては義歯の装着感に違和感となって現れてしまうため、勤務中は神経を使います。

一方、仕事内容そのものというよりも、給与や労働環境といった待遇面に苦労を感じるという声も聞かれます。

歯科技工士は給与面でさほど恵まれていない職場も多く、仕事内容に見合ったお金が手に入っていないと感じる人もいるようです。

しかし、努力を続けて高いスキルを身につければ、やった仕事に見合う報酬を得られるような歩合制の職場で働いたり、独立開業をして歯科技工所を経営したりすることも可能です。

歯科技工士に向いている人・適性

手先が器用で、技術向上のための努力ができる人

歯科技工士の仕事では細かな作業が多いため、手先は器用であるほうが望ましいでしょう。

技術は少しずつ身につけていくことができますが、集中力を保ち、手先を細かく動かしていく作業を苦痛にしないタイプの人に向いています。

この仕事は技術職といえる面もあるため、もっと上手に義歯などを作り上げることができるよう、日々練習を繰り返していくことが重要です。

最初は完璧にできなくても、仕事に対する前向きさや向上心を持っている人であれば、少しずつ能力を高めることができるでしょう。

歯科技工士志望動機・目指すきっかけ

手に職をつけ、人の役に立てること

歯科技工士を目指す人は、もともと手を動かしてものづくりをすることが好きであったり、とくにプラモデル作りなど細かなパーツを扱うような作業が好きというケースが多いようです。

それに加えて、技術力を生かして人の健康に携わることができるという点に魅力を感じ、この仕事を志す人もいます。

「人の役に立ちたい」という気持ちは、歯科技工士を続けていくうえでも重要な考え方だといえます。

歯科技工士の雇用形態・働き方

歯科技工所などで正規職員として勤務する人が多い

歯科技工士の多くは、歯科技工士国家資格試験に合格すると、歯科技工所に就職し、正規職員として勤務することがほとんどです。

パートやアルバイトの採用もありますが、子育てが一段落した女性がこの雇用形態を選ぶことも多いようです。

技術を磨き、経験を積むと、独立をして歯科技工所を立ち上げて働く人も出てきます。

その場合は従業員ではなく、経営者の立場になります。

自分の技術や知識を磨くことに加え、自分の技工所の経営をいかに維持し、発展させていくかも考えなくてはなりません。

歯科技工士の勤務時間・休日・生活

歯科医院からの依頼によって柔軟に対応することも

歯科技工士の勤務時間は、基本的に勤務先が定めるものに沿います。

しかしながら、歯科医院からの依頼に合わせて納品日に間に合わせなければならないため、所定の勤務時間を超え、残業を余儀なくされることがあります。

とくに歯科医師からの信頼が厚く、繁盛している技工所であればあるほど急ぎの仕事も多くなり、勤務時間が伸びる傾向があるといわれます。

休日も、顧客となる歯科医院の営業日や休診日に合わせて取ることがあり、突発的な休日出勤など、なかなか自分の思うように働けない場合があります。

歯科技工士の求人・就職状況・需要

高齢化および離職者も多く、つねに新しい人材が求められる

歯科技工士はベテランの従事者が多い反面、厳しい労働条件などの理由で、若いうちに離職してしまう人が少なくないようです。

慢性的な人材不足気味となっている状況であり、新しい人材を採用したいと考える歯科技工所は数多くあります。

歯科医療を行ううえで、優秀な歯科技工士はなくてはならない存在です。

現状、需要が一気に減ることは考えにくいですが、近年ではアジアなど、海外からの技工物の輸入が増えており、価格の面で押され気味な一面もあります。

とはいえ、日本の歯科技工技術は世界トップレベルとされ、確かな技術力を身につければどこにいっても通用するでしょう。

歯科技工士の転職状況・未経験採用

歯科技工士の資格を取得して研鑽を積む

転職によって歯科技工士になる場合でも、所定の養成施設を卒業し、歯科技工士の国家資格を取得することは必須です。

そのため、この仕事は未経験者やまったく異業種からの転職というよりは、よりよい給料や待遇などを求めて同業界内での転職者が多いとされています。

もっと条件のよい技工所に転職することを見越している場合、普段から転職関連情報をチェックしておく必要があります。

しかし最も重要なのは、自分自身の歯科技工士としての腕を磨くことです。

高いスキルのある歯科技工士のニーズは高いため、技術力さえあれば転職先を見つけることは十分に可能です。

歯科技工士の現状と将来性・今後の見通し

技術力の向上によって活躍のチャンスは広がる

現在、歯科技工士として活躍している人の多くは40歳以上の世代が中心で、新卒者や若手はあまり多くないとされています。

歯科技工士の人材不足解消のため、労働環境を改善させる企業も増えつつありますが、まだまだ厳しい状況は続いています。

一方、日本の歯科技工術は海外で高く評価され、一流の技術を持った日本の歯科技工士が海外へ進出するケースも出てきています。

逆に、簡単な技工物はアジア各国から安く輸入する流れが一般的となっているため、いかに高い技術を身につけるかが、長く第一線で活躍するポイントとなるでしょう。