看護師のつらいこと・大変なこと・苦労

看護師のつらいこと・大変なこと

専門的な知識・技術と、人間性の両方が求められること

看護師の仕事は、端から見ているよりもずっとハードなものになります。

患者さんの健康と命に関わるプレッシャーがありますし、先に挙げた不規則な勤務体系に立ち仕事であることなどから、心身ともにタフさが求められます。

一方、コミュニケーション能力や人間的な魅力も必要な仕事です。

看護の知識・技術を習得していたとしても、患者さんとたわいない会話をすることが苦手では、いい看護師とはいえません。

逆に、いくら明るくて患者さんから慕われていても、専門的な知識・技術が伴わなければ、それはそれで患者さんの信頼を失ってしまいます。

看護師に求められることは多く、しかも要求されるレベルが高いため、いざ看護師になってからも大変だと感じる場面はたくさんあります。

職業病の腰痛に悩まされる看護師も

看護師の職業病といえば、「腰痛」です。

ある調査では、看護師の半数以上が腰痛に悩んでいるという結果が出たそうです。

看護師が腰痛になりやすい原因としては、立ち仕事が中心であることや、中腰での作業が多いことが挙げられます。

また、体の大きな患者さんの介助をするときには、腰に大きな力がかかりがちです。

このような日常的な負担が積もりに積もって、腰痛をこじらせてしまうケースがあります。

もし腰痛がどんどん悪化し、ヘルニアにでもなれば仕事に差し障りが出てきますから、腰痛をいかに解消させるかは看護師にとって非常に大事なことです。

毎日の入浴で筋肉の緊張をとりのぞく、寝る前には必ず簡単なストレッチをする、休みの日にマッサージを受けるなど、現役の看護師たちはさまざまな方法で腰痛解消に取り組んでいます。

看護師の仕事はストレスがたまる?

看護師の仕事でストレスがたまりやすい理由

人間関係の問題、いじめ

看護師が感じているストレスの要因を調査すると、多くの場合、1位に上がるのが「人間関係」に関することです。

看護師は徐々に男性が増えてきたとはいえ、まだまだ女性中心の世界です。

女性特有の閉塞的なつき合い方や、陰口やうわさ話、また、いわゆる「お局さん」といわれるベテラン看護師の当たりの強さなどで、ストレスをためてしまう人が多くいます。

なかには「いじめ」といえるほど、ひどい人間関係の職場も現実としてあるようです。

看護師は日々緊張感のある環境で働いていますから、誰もがストレスを感じやすく、また患者さんには笑顔でいなくてはならない分、つい気を許せる仲間内には人当たりが強くなってしまうことがあります。

もちろん、いじめは容認できることではありませんが、職場が変われば、働きやすさや職場の雰囲気がガラリと変わることが多いのも看護師の特徴です。

看護師の求人は日本全国にたくさんありますから、どうにもならなければ、思い切って別の職場を探すのもよいでしょう。

ただ、どんな職場にもたいてい一人は苦手な人がいます。

自分で努力して良好な人間関係を築くことも大切です。

仕事の責任が重いこと

看護師の仕事は、人の命や健康に関わるという、大きな責任とプレッシャーがつきまといます。

また、勤務中は患者さんの急変など予想のつかないことが多く、同時進行でいくつもの事柄を進めなくてはならないことなども、ストレスにつながってきます。

看護師を目指す人は、もともと「人を助けたい」といった責任感の強い人が多いです。

まじめな人ほど勤務時間が終わった後も、心電図のモニターの音が頭から離れなかったり、患者さんのことを考えたり、先輩看護師や医師に注意されたことを思い出したりします。

ピリピリとした環境に身を置きながら働いているうちに、過度に自分に厳しくしてしまい、それがさらなるストレスになることもあります。

しかし、どんな仕事でも少なからずストレスは感じるものですから、ストレスをどう発散させるかが大切です。

その方法は人それぞれ。カラオケで大声を出すのもよいでしょうし、キレイな景色を見たり、お風呂にゆっくり入るのも効果大です。

看護師になったら、自分の心が元気になるための自発的行動として、ストレス発散方法を学んでいきましょう。

不規則な勤務体系であること

病院で働く看護師は、夜勤が入ることが珍しくありません。

どうしても不規則な勤務体系で働かなくてはならないことから、心身の調子が狂い、そこにストレスを感じてしまう人もいます。

そのストレスに負けないための最も基本的なことは、バランスの取れた食事、睡眠、そして規則正しい生活リズムです。

夜勤のある看護師にとって「規則正しい生活リズム」は一見ムリな気もしますが、たとえ夜勤がなくても、毎日深夜まで夜更かししている生活は健康的ではありません。

夜勤があっても、夜勤明けにしっかり睡眠をとり、夜勤のない日には夜更かしをしない、という自分なりのリズムをつくることが大切です。

そして、食事は手軽なインスタント食品や出来合いのお弁当、お菓子ばかりではなく、しっかりと栄養をとるように心がけましょう。

どうしても夜勤が厳しければ、地域のクリニックなど、日勤のみで働ける職場に移るのもひとつの方法です。

経験や階層によってもストレスの中身は異なる

1〜2年目に感じやすいストレス

新人の頃は、知識や技術、経験不足から感じるストレスが中心となります。

先輩に怒られ患者さんにも指摘されることが多く、「自分は看護師に向いていない、やめたい」と考えてしまう看護師は少なくありません。

臨床の現場で起こることは教科書通りとはいかず、何か問題が起きるたびにどうしたらいいのかわからなくなりがちです。

看護学生時代に思い描いていた現場とは違うことも多く、「こんなはずではなかった」という思いがストレスになることがあります。

3〜4年目に感じやすいストレス

看護師3〜4年目になると、上司と後輩の間に挟まれ、自由がきかなくなり、仕事のしづらさを痛感するようになります。

ある程度は先輩の指導なしで仕事もできるようになるため、後輩の指導を任されたり、病棟内の雑務といった係活動への参加も求められます。

上司からは理不尽に怒られるようになり、人間関係がうまくいかないことでストレスを感じる看護師が多いです。

5年目以降に感じやすいストレス

5年目以降になるとリーダー業務を任され、病棟内の会議や研究といった業務以外の分野にも参加を促されるようになります。

業務の面では、医師や患者さんとそのご家族の間に入ることが多くなり、後輩が受けたクレームの処理と師長への報告など、非常に責任ある立場にいることを実感するでしょう。

こうなると、看護業務の他にさまざまな心配事が増えてきます。

患者さんの安全だけでなく、下のスタッフや病棟全体の安全への配慮、他病棟との連絡や医師からの直接的な指示受けなど、責任が増える分、自らが看護業務をする機会は減り、デスクワークが多くなります。

上司からはさまざまなことで注意を受け、リーダー業務をしながら後輩の行動にも目を光らせ、必要があれば指導するといった毎日です。

中堅になると、新人時代よりもよほど大変だと感じる看護師もいます。

看護師は激務? 離職率は高い?

看護師の離職率

新卒よりも既卒のほうが離職率は高め

公益社団法人 日本看護協会が実施した「2019年 病院看護実態調査」によれば、正規雇用看護職員の離職率は10.7%です。

ここでいう離職率とは、「採用年度内に離職した人」を指しています。

とくに過去に看護職を経験している既卒採用者の離職率は新卒の看護師よりも高く、17.7%となっています。

一方、新卒採用者の離職率は7.8%であり、知識・技術ともに磨かれているであろう看護職経験者のほうが、現場を離れやすい傾向にあることがうかがえます。

参考:日本看護協会 2019年 病院看護実態調査

他の業種の離職率は?

厚生労働省が毎年調査を行う雇用動向調査では、令和元年上半期(平成31年1月~令和元年6月)の常用労働者(※)の離職率は9.1%です。

※常用労働者とは、次のいずれかに該当する労働者のことです。

  • 期間を定めずに雇用されている者
  • 1ヵ月以上の期間を定めて雇われている者

この調査では、日本標準産業分類に基づく16大産業(建設業、製造業、情報通信業、小売業、金融・保険業、宿泊・飲食サービス業、教育・学習支援業など)の雇用動向についてのデータが集められています。

つまり、幅広い産業分野で働く人の離職率となっており、その数字と比較してみると、看護師全体の離職率はやや高めの水準です。

経験豊富な既卒の看護師をいかに定着させるかは、多数の看護師を必要とする医療現場での大きな課題となっています。

参考 厚生労働省 令和元年上半期雇用動向調査

看護師は転職経験者が多い

看護師は転職する人が多い職業で、2~3回の転職は珍しくなく、人によっては生涯で10回以上も職場を変えている人もいるといわれています。

それだけ転職経験者が多い理由は、下記のようにいくつか考えられます。

  • キャリアアップしたい
  • 職場の人間関係が合わない
  • 現在よりも労働条件(給料や待遇含む)職場で働きたい
  • 看護師として異なる業務を経験したい
  • 家庭の事情

など。

なかには看護とまったく関係のない異業種へ転職する人もいますが、転職を希望する看護師の多くが、看護師資格や経験を生かして別の勤務先を探しているようです。

看護師は全国的に人員不足とされ、看護師経験者が新たな働き口を見つけるのは決して難しくありません。

こうしたことから転職に踏み切るハードルがさほど高くないと感じ、積極的に転職を考える看護師もいます。

激務が続き、体力面の理由で離職する人も

看護師の多くが入院病棟を備えた病院で働いており、そこでは24時間体制で看護を行うため、夜勤勤務が発生します。

若いうちであれば問題がなくても、30代、40代と年齢が上がるうちに不規則な生活スタイルが激務と感じ体力的に厳しくなり、体力面の問題から離職を考える人もいます。

また、結婚・出産といったライフイベントを経験することで、家庭の事情でそれまでのような長時間勤務や交代制勤務が難しくなる人も少なくありません。

看護師には、診療所など日勤のみで働ける職場もたくさんありますから、勤務先を変えることで自身が抱える問題の解決につながる可能性は十分にあります。