医師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「医師」とは

医師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

医学の専門知識を有し、病気やケガの診察・治療や、病気の原因を解明する研究を行う。

医師の仕事は、医学の専門知識をもって患者さんの病気や怪我の診療・治療を行ったり、基礎医学の研究を通して医学の発展に貢献することです。

臨床医の場合、大きな病院では小児科、心療内科などに細かく科が分かれ、各領域を専門とする医師が診察を行いますが、町の診療所では一人でさまざまな症状を診ることが多くなります。

医師になるためには、医学部で6年間学び医師国家試験に合格することが必要ですが、医学部への入学は難関であり、入学後も国家試験の勉強に追われます。

国家試験合格後は2年間の研修を経て、一人前の医師として認められるようになっていきます。

医師の収入は平均的な会社員よりも高めですが、人の命に関わる責任の重さを背負い、心理的・身体的な負担も大きい仕事です。

経験を積むと独立して開業医として働く人も多くなります。

「医師」の仕事紹介

医師の仕事内容

患者を診る臨床医と、医学の研究を行う研究医がいる

医師を大きく分けると、患者を診る「臨床医」と、基礎研究などを行う「研究医」がいます。

一般的に多くの人が抱くイメージの医師は「臨床医」でしょう。

大学病院や街の診療所などで、外科や内科などの診療科に分かれて診察や検査を行ったり、投薬のための処方箋を書いたり、手術をしたりしますす。

臨床医をさらに細かく分けると、大学病院などに雇われて働く「勤務医」と、自身の医院を開業する「開業医」がいます。

勤務医に比べ、開業医は業務が細分化されていないこともあり、診察以外にも医療機器の選定や購入、スタッフの採用などまで幅広い仕事を行います。

基礎研究を行う医師

基礎研究に打ち込んんで、新しい病気の解明や治療法の確立などを目指す医師は「研究医」と呼ばれます。

近年、基礎研究で日本の医学者がノーベル賞を取ったこともあり、一般にも広く認識されるようになった医師の進路のひとつです。

研究医は、日々実験や症例データ収集を繰り返して研究を重ね、医学の発展のために貢献します。

なお、「臨床」と「研究」は、どちらか選択しなければならないものではなく、臨床をしながら研究を続け、論文にまとめたり学会で発表したりする医師もいます。

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医師になるには

高校卒業後に医学部に進学して医師免許を取得する

日本で医師として働くには、国家資格である医師免許の取得が必要です。

高校卒業後に大学の医学部や医科大学で6年間学び、医師国家試験に合格しなければなりません。

医学部の入試は競争率や難易度が高いですが、入学後も将来の希望に関わらず、すべての科について学ぶため、在学中の勉強量は相当量となります。

数々の実習や試験を経て、卒業試験に合格すると、医師国家試験の受験資格が得られます。

医師免許取得後も勉強が続く

医師免許取得後にも、まだまだ勉強期間は続きます。

まずは病院で2年間の臨床研修を行い、さらに最低5年の実地研修があります。

そして専門医試験に合格することで、内科や眼科など各診療科の「専門医」として働くことができます。

専門医資格は必須ではありませんが、自身のスキルアップ、また患者さんの安心のために、多くの臨床医が取得をキャリアに含めています。

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医師の学校・学費

大学の医学部で学び、医師国家試験の受験資格を得る

日本で医師として勤務するためには、医師免許の取得が前提となります。

医師免許取得のためには、大学の医学部で所定のカリキュラムを修了し、医師国家試験に合格する必要があります。

そのため、医師を目指す人は全員、全国にある医科大学や総合大学の医学部への入学を目指します。

医科大学や医学部は6年間のカリキュラムとなっており、また、その他の学部よりも学費が高額です。

とくに私大の医学部は、国公立に比べると学費が10倍近く高額となる場合もあるため、多くの受験生は国公立大学の医学科を第一志望にする傾向があります。

医科大学や医学部の入試は倍率も難易度も非常に高いため、高校時代に人一倍の勉強を続けなくてはなりません。

医師の資格・試験の難易度

医師国家試験の難易度は国内でも最難関レベル

医師免許を取得するために受験する医師国家試験は、国内の国家資格の難易度で見ると「最難関」のレベルに位置づけられるといわれています。

合格率は全国平均で90%を超えることも珍しくないため、一見、難易度は低いのではないかと思うかもしれません。

しかし、医師国家試験を受験するのは、ハイレベルな大学受験をくぐりぬけて、さらに大学在学中の6年間でみっちりと専門的な勉強をしてきた人ばかりです。

受験者全員が医学の道を志す、きわめて特殊な国家試験であることを考えると、やはり最難関レベルであることは間違いありません。

学校によっても合格率が異なる

日本各地にある医大や医学部では、学校によって医師国家試験の合格率に違いが出ます。

高いところだと合格率は99%~100%ですが、低いと80%ほどにとどまる学校もあります。

一般的に、国家試験対策は私大の医学部のほうが手厚いとされています。

とくに国公立で基礎研究に力を入れており、研究医を目指す人もそれなりに多い大学の場合、国家試験対策には私大ほど力を入れないところもあります。

自身のキャリアをよくイメージして、進学先を考えていくとよいでしょう。

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医師の給料・年収

高収入だが責任が重く拘束時間も長い

医師の給料や年収は、世の中のさまざまな職業のなかでも、最も高い水準にあるといわれます。

もちろん、勤務先や働き方、キャリアなどによっても大きな差が出ますが、厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によれば、医師の平均年収は40.7歳で1169万円と推定できます。

研修医時代の年収は400万円程度とさほど高収入ではないものの、ある程度のキャリアを積めば年収1000万円を超す人も増えます。

また、独立した開業医のなかには2000万円以上稼げる人も少なくありませんが、設備や人件費などの経費も多くかかるため、経営が軌道に乗るまでは厳しい生活になる可能性もあります。

単に医師としての能力だけでなく、病院経営のセンスやスキルも必要になるため、開業すなわち成功とは限りません。

ハードな働き方をしている医師も

大学病院に勤める場合、助教、講師、准教授、教授とキャリアアップしていくにつれて給料は上がり、待遇もよくなります。

全体的に医師の給料は高めですが、不規則な生活や長時間労働もあるなど、責任が重く楽なことばかりではありません。

とくに勤務医はハードワークになりがちで、人の命に係わる責任の重い仕事をしている割に、給料が見合わないと感じている人もいるようです。

とはいえ、お金以上のやりがいや使命感をもって、医師の仕事を続ける人も少なくありません。

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医師の現状と将来性・今後の見通し

医師不足も問題となり、ますます需要は拡大する見込み

人々の生命・健康維持のため、医療に専門職として関わる医師は、時代を問わず安定した需要がある職業です。

ただし、時代背景などによって人気のある診療科とそうでない科に差が出ているのが実情です。

とくに重労働といわれる産婦人科や小児科などでは、人材不足が課題となっています。

また、医師は最新の情報が入ってきやすい大都市圏に集中しやすく、地方都市や田舎町では病院の経営難や医師不足により、若い医師の確保が難しいケースが問題になっています。

今後は環境の整った都会の大病院だけにこだわらず、人材不足の病院や地域で働ける強い使命感を持った医師の存在価値が、ますます高まるものと考えられています。

医師は簡単になれる職業でもありませんが、志の高い人が活躍できるチャンスはまだまだ残されています。

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医師の就職先・活躍の場

病院と診療所のほか、介護施設などで働く人も

臨床医としての医師の就職先は、医学科卒業後に進む初期臨床研修先である病院であり、多くは大学病院となります。

研究医の道と決めている人は大学院にそのまま進むこともありますが、2年の初期臨床研修は修了してから研究医の道に入るケースが多くなっています。

その後、後期の研修に入りますが、ここでは出身大学の大学病院でない研修先を選ぶケースも多く見られます。

医師として一人前になった後の臨床医の活躍の場は、日本各地の病院や、地域の診療所が多いです。

このほか、介護老人保健施設や研究機関に勤務する人、また行政機関で公務員の医師として働く人もいます。

医師の1日

病院に勤務する医師は忙しく動きまわる

臨床医の1日は、勤務先の種類や体制、診療科によって異なります。

入院病棟を備えている病院に勤務する場合、日中は外来や病棟患者の処置がおもな業務です。

朝は外来で診察を行い、午後からは外来が終われば夕方に再度病棟にいき、回診や患者の家族への手術説明や治療方針のためのカンファレンスなどに時間を費やします。

ここでは、病院勤務の医師のある1日を紹介します。

8:00 出勤
病棟で入院患者の診察をします。
9:00 外来
診察室にて、外来患者の診断、処置、治療などを行います。
12:30 休憩
13:00 午後の診療
午前中と同様、外来患者の診断、処置、薬の処方などを行います。
16:00 回診へ
再度病棟にいき、回診や患者さんへの病状説明を等を行います。
19:00 退勤
カルテのチェックをして退勤します。

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医師のやりがい、楽しさ

社会に対する貢献度がとくに高い仕事

医師は、人間の心身を治療するという特殊な仕事に携わる職業です。

医学の専門的な知識を身につけていき、一人でも多くの患者さんの力になれること、また難しい病気の患者さんを少しでもよりよい方向に導けることに、大きなやりがいを感じている医師は多いです。

ときには「一人ひとり異なる人に寄り添う」ということに難しさを感じたり、頭を悩ませたりすることもあるでしょう。

しかし、悩む人たちに対してあらゆる医療技術を駆使し、チームで治療にあたることで、その人の生活や人生を少しでも助けることができるかもしれません。

社会的な評価も高いため、自分自身の医学に対する情熱が続く限り、誇りをもって働ける職業といえるでしょう。

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医師のつらいこと、大変なこと

自分の判断が人の命を左右することもある

自分の判断が人の命を左右することもある

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医師に向いている人・適性

学ぶことを苦にせず他者と誠実に向き合える人

医師になるには、難関の医学部受験を突破しないといけませんが、医師になってからも勉強は続きます。

医学は進歩しているため、向上心があり、新しいことを主体的に学ぶのを苦にしない人に向いている仕事といえます。

一方で、医師は患者さんという人間に寄り添う仕事のため、一定のコミュニケーション能力や誠実さも不可欠です。

単に医師としての知識が豊富で能力が高いだけでなく、豊かな人間性をもち、患者さんから信頼される存在になることが求められてきます。

また、とくに研究医を目指す場合には、すぐに結果が出ないことに対しても、長時間かけて一つの事実を見つけ出すような粘り強さも必要です。

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医師志望動機・目指すきっかけ

幼い頃から憧れの職業だったも少なくない

医師は、ドラマや漫画などで描かれることも多いため、多くの人がイメージしやすい職業といえます。

とくに臨床医は、身近なお医者さんの姿として憧れられることが多く、小さいころから将来は医師になりたいと考えていたという人も少なくありません。

幼い頃に大病を患って、その時に助けてくれた医師の姿をカッコいいと感じ、医師になるような人もなかにはいます。

また、意外に多いのが、親など身近に医師として働く人がおり、その影響で医師を志すケースです。

代々医師の家系も少なくありません。

このほか、医師の社会貢献性が高いところや、多くの人の役に立てる専門職であること、手に職をつけて独立開業できることなどに魅力を感じ、医師を目指す人もいます。

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医師の雇用形態・働き方

勤務医として働く独立開業が王道

医師の雇用形態や働き方は、大学病院や街の病院などに雇われて働く「勤務医」と、自ら病院を開業して経営者となる「開業医」の2つのパターンが王道です。

開業医をさらに細かくみていくと、自らがクリニックや病院を開業するパターンと、親や親戚の病院を2代目、3代目として継ぐといったパターンがあります。

自身で一から開業した場合は、完全に自分の采配で働き方をコントロールすることができます。

一方、雇われて働く勤務医は、基本的には一般的な会社勤めの人と大きく変わりません。

勤務時間や休日は、勤務先のルールに沿って決まります。

ただ、最近では、大学病院でもおのおののライフスタイルに合う働き方を選択しやすくなっており、「非常勤」や「時短勤務」など、さまざまな働き方が用意されているところも増えています。

医師の勤務時間・休日・生活

勤務時間は不規則で長時間にわたることも

医師の勤務時間は、勤務先の医療機関の規模や勤務体系などによって大きく異なります。

大学病院の勤務医は、1日の大部分を職場で過ごすことが珍しくありません。

始業前の勉強会から始まり、定時終業後も研究や医局の勉強会など、さまざまな予定がぎっしりつまり、長時間にわたって白衣を着ている人もいます。

休日は取得できますが、学会やセミナーなどが入ることも多いです。

とくに「専門医」の資格は一定数の単位を取得しなければ維持できないため、仕事の予定と照らし合わせて遠方の学会に出かけていくこともあります。

まとまった休みも一般の社会人と比較すると取りにくいかもしれません。

開業医の場合には、自身で決めた診療時間や休診日に沿って働いたり休みを取得したりできるため、比較的落ち着いた働き方が可能です。

しかし、開業医も厳しい競争の中で生き残っていくために、休み返上で忙しく働いたり、勉強を続けていたりする人もいます。

医師の求人・就職状況・需要

診療科によって偏りはあれど、ほぼ安泰

医師は非常に高度な専門知識と技術が求められる職業であるため、医師免許を所有していれば、どこかしらで働ける可能性があります。

もちろん、診療科や地域によって求人数の差はあれど、ほぼ安泰といって差し支えないでしょう。

小児科や産婦人科など、とくに人手不足の傾向が強い診療科や病院では、一般の相場よりも随分高い給料を提示して医師を募集するケースもあります。

一般的には、若手の医師ほど大学病院や大病院、専門病院などに勤務し、年齢が上がるほど開業に踏み切る人が増えていきます。

なお、近年では高齢化社会が進むなかで、高齢者施設でも医師の需要が増しています。

今後、医療機関以外で働く医師のニーズはさらに高まるでしょう。

関連記事医師の求人・採用の状況

医師の転職状況・未経験採用

勤務医は別の病院や関連施設へ移るケースも多い

勤務医として働く医師は、所属する病院や大学の関連施設などに転勤することも多いです。

一つの病院やクリニックで長きにわたって勤務するというケースは、勤務医の場合はあまりスタンダードではありません。

あちこちで経験を積んで、役職などについていき、少しずつ出世していきます。

ある程度のキャリアにたどりついたところで、一部の医師は独立開業を目指します。

なお、医師は大学の医学部で勉強したうえで医師免許の取得が前提となる職業であるため、未経験での採用は、研修医以外はほぼないと思って間違いありません。

また、診療科を変えるとゼロからのスタートとなるため、基本的には自身が選択した診療科での研鑽を積んでいくことになります。

医学部の浪人は何年まで大丈夫? 浪人生の割合はどれくらい

大学によって浪人生の割合は異なる

大学の医学部は難易度が高いため、誰もが簡単に入学できるわけではありません。

浪人によって志望の医学部に入る人も一定数います。

どれだけ浪人するかは本人の意思にもよりますが、目安として「国立のみを志望するなら2年まで、私立も視野にいれるなら3年以上も可」といわれています。

同じ医学部でも大学によって現役生と浪人生の割合は異なり、たとえば2018年度の東京大学医学部では、現役生と考えられる18歳以下の合格者は74.1%、慶應義塾大学の医学部では57.5%となっています。

一方、一部の私立大学では7割から8割ほどを浪人生が占めているところもあります。

浪人は決して珍しいものではありませんが、2年浪人すると、通常は大学に入学した時点で20歳ほどです。

浪人の年数が増えても入学後の学生生活に支障が出ることは基本的にないものの、もし医学部をあきらめることになった場合に、周囲の同級生よりもだいぶ年齢が高いと、就職活動に不利になることはあり得ます。

現実的なことをいうと、何年浪人しても合格できない人はできないため、自分の中で「〇年まで」と決めてチャレンジするのが望ましいでしょう。

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