外科医の仕事内容・なり方や必要な資格・給料を解説
外科医の仕事内容
手術をして病気を治す医師
医師の中でも、患者さんの体の外側から働きかける治療(手術)を専門とする人たちが外科医です。
内科にさまざまな種類があるように、外科医も脳神経外科、食道外科、胃外科、肝胆膵外科、大腸肛門外科、泌尿器科、心臓血管外科など、さまざまな種類の診療科があります。
広い意味では、眼科、耳鼻咽喉科なども外科の領域に入ります。
外科医は、それぞれの臓器の疾患に対して、メスやレーザーを用いて病変部位を切除したり、滞留したものを取り除いたり、人工臓器などに置換することによって治療をします。
外科手術は、急性疾患や重篤な疾患に用いられることが多く、人命救助、痛みの緩和、機能回復、QOL(生活の質)の向上などを目指して行われます。
20代で正社員への就職・転職
外科医の就職先、活躍の場
総合病院から開業医までさまざま
外科医の就職先は、標榜する診療科にもよりますが、まず入院施設のある病院が挙げられます。
ある程度の規模の手術を経験するためには入院施設のある病院で働くことが必要となるからです。
外科は修練が必須なので、ベテランの外科医の下でしっかりと技術を磨かなければなりません。
眼科などは日帰り手術が多くなってきていますが、やはり大きな手術や高齢の患者さんの手術になると、入院施設が必要になってきます。
大きな病院で手術経験を積んだ後、開業する外科医もいますが、ある程度の施設が必要となるため、内科医に比べ開業する医師は少なくなります。
外科医の1日
手術の予約状況などにより異なる
外科医は、手術の予約状況や、緊急手術への対応などにより毎日過ごし方が異なります。
ここで外科医のある1日のスケジュールを見てみましょう。
外科医の1日のスケジュール
20代で正社員への就職・転職
外科医になるには
医師として研修後、外科に入局する
高校卒業後、大学医学部を卒業すると、医師の国家試験受験資格を得ます。
国家試験に合格すると医師の国家資格を得ることができます。
医師の国家資格を取得したあと、指定の研修病院にて2年間の研修を行ったのち、入局したい外科医局に希望を出し、許可がおりると入局することができます。
診療所やクリニックで好きな診療科を標榜して開業することもできますが、基本的には大きな病院でしばらく勤務医をする人がほとんどです。
新任の外科医は、簡易な手術から執刀医(その手術を担当指揮すること)をはじめ、必ずベテランの医師が助手としてついています。
また、120例以上の執刀、執刀例を含めた350例以上の術式を経験し、一定の修練をおさめると、「外科専門医」の認定試験を受験することができます。
外科専門医とは、外科の基礎的な知識と手技において一定水準以上の技術を有していることを示す認定資格で、厚生労働省の認可を受けているものです。
外科医の給料・年収
勤務形態で差が出る
外科医の年収は、勤務先で幅はありますが、おおむね1000万円~2500万円程度です。
外科医としての勤続年数が長くなればなるほど、また役職が上がるほど年収は高くなるのが一般的です。
夜間の当直の有無、オンコール(呼び出しがあればすぐ病院に駆けつける)の有無でも収入に差が出ます。
また専門医の認定を得る前と後とでは、専門医の認定を得たあとのほうが需要は多く、年収も上がってきます。
非常勤で救急対応や夜勤のみを単発で行う場合もあり、そのときは勤務1回ごとに給与が出ます。
非常勤1回あたりの給与は、約5万円~10万円程度です。
外科医のつらいこと、大変なこと
手術による体への負担が大きい
大きな手術の執刀医となると、長ければ15時間以上もの長丁場を耐えなければなりません。
手術を受けている患者さんの容態にも常に気を配りながらの仕事であるため、精神的にも肉体的にも負担が大きいといえます。
そのようなことから、男性とくらべて体力のない女性外科医はとても少ないのが現状です。
男性でも、年齢が高くなって老眼や細やかな手先の動きが出来なくなると、手術からは退かなくてはならず、外来診療のみを受け持つことになります。
特に、心臓血管外科などの急性疾患が多い診療科の外科医は、オンコールといって、自宅にいても呼び出しがあればすぐに病院に駆けつけなければいけません。
また、重篤な患者さんの外科手術はリスクを伴うこともあり、後遺症が残ってしまうと、患者さんのQOLが低下してしまい、それを改善するために改めて手術が必要になったりします。
外科医のやりがい、楽しさ、魅力
危うい人命を救う達成感
外科手術を受ける患者さんの中には、命に危険がある人も少なくありません。
脳神経外科や心臓血管外科、移植外科などは、特に重篤な患者さんが多く、手術は迅速かつ慎重に行われなければなりません。
しかし、困難な手術を外科医、麻酔医、看護師、臨床工学技士などと連携し、成功させたときの達成感は大きいでしょう。
そうやって大変な手術を乗り越え、回復した患者さんから、何年にもわたりお礼状が届くこともあります。
術後、普段の生活に戻ることができた患者さんの様子を知ることができたときの喜びは何にも代えがたいものがあります。
外科医に向いている人、適性
器用さ、空間認識能力、冷静さが重要
外科医は、患者さんの体にメスを入れ、必要な部分だけを取り除く手技を習得する必要があります。
ですから手先の繊細な動きと共に、どこにどのように血管や神経が走っているか、筋繊維の方向などをイメージできる空間認識能力のある人が向いているでしょう。
術中には患者さんの容体が急激に変化することもありますが、焦ることなく的確な指示を出し、対処できる冷静な判断力も必要であるといえます。
また、十数時間にわたる手術を担当したあと、受け持ちの入院患者さんの診察もこなさなければいけないという場面もありますから、それに耐えうる体力も必須です。
外科医の志望動機・目指すきっかけ
自分や身内の手術、ドラマの影響まで
外科医を志望するにいたる理由として多いものは、自分自身や近しい人の手術に直面したときに、自分も人を救える人になりたいと思い、外科医になる、といったケースです。
そういった志望理由で外科医になる人たちは、例外は多少ありますが「手術自体が人命を左右することがある」という事実を真摯に受け止め、修練に励む人が多くみられます。
意外に多いのがテレビドラマ、映画などの影響です。この場合、理想と現実に少なからずギャップはあるものの、理想の医師像を持って職務に没頭し、ベテラン医になる場合も少なくはありません。
外科医の雇用形態、働き方
勤務医、企業、新たな医療サービス提供など
病院の勤務医では、常勤の正職員医師のほか、夜間勤務や救急受け入れのみを担当する非常勤の医師を採用する病院が増えています。
これにより常勤医師の負担軽減を実現し、同時に育児中の女性医師の勤め先としても有意義であるといえるでしょう。
しかし、個人の技術力が問われる外科医の業界では、そういった勤務形態だけで医師の負担が簡単に軽くなるとは言えないのも現状です。
また病院勤務のほかでは、医療機器メーカー、製薬会社、メディカルライターといった企業の正社員として就職したり、ITを利用した新たな医療サービスの提供にたずさわる医師も少しずつ増えています。
外科医の勤務時間・休日・生活
定まった休日をとるのは難しい
外科医の受け持つ患者さんは比較的症状の重い患者さんが多い傾向にあり、休日でもオンコールがあれば駆けつけないといけない場面があります。
そういった点では、なかなか予定通りにきちんと休むといったことが難しいこともあるのは、知っておいたほうがよいでしょう。
そして、外科手術は大掛かりなものになると、朝9時から翌朝5時までといった長時間の手術になることもあり、生活サイクルも狂いがちであるのも事実です。
企業に勤めたり、研究職に就く場合には変わってくる部分もありますが、病院勤務の場合は定時出勤ではあるものの、残業が多い職種と言えるでしょう。
外科医の求人・就職状況・需要
需要は常に一定数ある
外科医が人の手技によって左右される診療科である限り、定年退職したベテラン医を補うためには一定数の求人が常にあると思われます。
外科医の就職活動では、勤務先の病院がどのような病院と提携しているか、その医局の教授がどのような疾患を専門に研究しているかなども大切な懸案事項です。
また、大学病院や総合病院などベッド数が200床以上ある大きな病院では標榜科が細かく分類されますが、中小の病院ではひとりの外科医が診療する部位は広範囲にわたる傾向があります。
ですので、いろいろな外科手術を経験し、外科専門医の認定を受けるか否かによっても志望すべき病院に違いが出てくるでしょう。
外科医の転職状況・未経験採用
臨床経験があると有利
臨床医・研究医に関わらず、医師は2年間の研修期間に全ての診療科で研修を行うことが必須である構造上、未経験者の採用というものはないようになっています。
外科の勤務医として一定の手術の修練をしたあとは、外科専門医の認定を受けたり、みずから専門の診療科を標榜して開業することができます。
また、製薬会社や、非立会系の手術ロボットを開発販売する医療機器メーカーに転職し、新薬や手術用機器の研究開発にたずさわる道もあります。
ただし、企業で研究開発業務にたずさわりたい場合、ネイティブレベルの英語力(商談・論文に必要)と、臨床経験が必要な求人が多く見受けられます。
外科医の現状と将来性・今後の見通し
手術ロボット導入で低侵襲手術が増加
昨今の医療機器業界では、患者さんの負担をなるべく軽減すべく、内視鏡での手術や、「da Vinci(ダヴィンチ)」といった手術ロボットが導入され始めています。
da Vinciは、患部近くに小さな穴を空け、そこから細い管を挿入して、患部をモニターに写しながら、ロボットアームを操作して必要な部位のみを切除することが可能になっています。
今後こういった手術ロボットが普及することにより、細かな部位の手術も、手のブレなどによる周辺部位への侵襲を極力抑えた術式が可能になってくることが予想されます。
しかしこのような手術ロボットにも「病変を捉えた感覚がない」「視野が狭い」などの欠点があり、外科医が直接メスを持って手術を行うことは今後もなくなることはないでしょう。
手術ロボットの適用外である脳外科手術では、覚醒下手術によって、術後の後遺症を最小限に抑えることができるのが明らかになってきました。
今後、ICUが併設される大きな病院から、脳外科の覚醒下手術が普及していくと考えられています。