精神科医になるには? 仕事内容はきつい? 給料や向いている人の特徴を解説

精神科医は患者の心に寄り添い、苦しみがどこにあるかを探り、医師として救います。

ほかの他の科に比べて治療効果がわかりやすく見えないことも多く、患者を救えたか評価しづらい科ではありますが、患者と心が通じ合い信頼関係を築けたときは大きなやりがいを感じられます。

精神科医は人間の心理に興味があり、患者の立場に立って診察できる人が向いています。長期に渡って心に問題を抱える患者に寄り添うことから、精神的なタフさも必要でしょう。

ここでは、精神科医の仕事内容、なるための方法、やりがいなどについて解説していきます。

精神科医の仕事の内容

医師として患者の心に寄り添う

精神科医は心の問題を扱う仕事です。

患者の心をみて、患者の苦しみがどこに起因するかを探る際には、他の分野の医師とは違う資質が求められます。

たとえば、患者の心を理解する能力や、患者の立場を考えて患者に信頼されるようにする技術などです。

精神科で主に扱う病気は、

  • うつ病や気分障害
  • 統合失調症
  • 認知症
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • せん妄治療・薬物依存症

など、心の不調によって起こる病気すべてです。

小児に対しては、心の発達における問題にも関わります。

ストレス社会といわれる現代日本では、精神疾患による患者の数はどんどん増えており、精神科の医師の役割はますます重要になってきています。

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

精神科医の就職先、活躍の場

病院やクリニックなどの医療機関に勤務

精神科医は、一般的には大学病院、市中の総合病院、精神病院、クリニックなどの医療機関で働きます。

また、最近では精神面での不調を訴える人も多く、企業の産業医などとしても需要があります。

精神科医の活躍の場は医療の枠に留まらず、行政・福祉・司法・教育などの広い分野に広がっています。

精神科は、他の診療科目に比べて、導入する高額な医療機器も少なく、比較的安価に開業することも可能です。

精神科医の1日

開院・午前の診療・昼休み・午後の診療

精神科医の1日は、病院や曜日によって異なりますが、まず担当の患者さんの回診からはじまり、外来の診療という流れになります。

食欲や睡眠の状態、排泄など基本的なことから始めて、時には雑談などからも患者さんの調子や情報をくみ取ります。

その後は外来を担当します。

8:30 出勤
カルテ確認、病棟回診
9:00 外来予診
紹介状や問診票などを参考に、短時間で患者さんから必要事項を聞く
10:00 外来本診
診察室にて、外来患者の診断
12:30 昼食・昼休み
13:00 午後の診療
午前中と同じく外来の診療。
曜日によっては会議や研修に出席します。

また、精神科は他科からのコンサルテーションを受けることも多く、必要に応じて他の病棟へも診療にいきます。

19:00 診療終了

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

精神科医になるには

医師免許を取った後、精神保健指定医を目指す

精神科医になるには大学の医学部、または医科大学を卒業し、医師の国家試験に合格することが必須です。

大学(医科大学)では6年間、医学全般の知識、解剖、病院実習を経験して学習を積みます。

無事卒業し、医師国家試験を受けます。国家試験の合格率は約9割です。

医師の資格取得後は、初期研修医として2年間基礎的な診療技術を取得します。

研修後、医局の精神科に所属したり、市中病院の精神科に入職したりし、後期研修としてトレーニングを行います。

精神科医は、患者さん本人の意思に反して強制的に入院させることが必要な場合もあります。

そうした行為をするには、医師免許の資格だけでは不十分で、精神保健指定医という資格も取る必要があります。

精神科医になるための学校・学歴・学費

国立、私立を問わず医学部のある大学へ

精神科医を目指すなら、まずは医学部のある大学または医科大学へ入学しなければなりません。

6年間医学部の勉強や研修を行い、その後医師国家試験が受けられるのです。

国立、私立どちらでも構いませんが、どちらも難易度が高いため、かなりの偏差値が必要です。

国立の狭き門を突破した場合、年間の授業料は60万円ほどで、6年間にかかる学費としては400万円位となります。

私立は膨大な学費が必要となり、安くて2000万円から、高ければ6000万円ほどかかります。

精神科医の資格・試験の難易度

精神科専門医・精神保健指定医の資格を取得

まず大学を卒業してからの医師国家試験は、6年間きちんと勉強していれば9割の確率で受かると言えるでしょう。

精神科医の資格には、「日本精神神経学会専門医」「精神保健指定医」があります。

専門性の高い知識や技能を確かめる審査に通過した医師に与えられるのが「日本神経学会専門医」で、「精神保健指定医」は、厚生労働省の定める資格で、措置入院などを行えるようになります。

精神科専門医の資格を得るためには、後期研修を始めたら「研修開始申請書」を日本精神神経学会の専門医研修委員会に提出します。

そして指定された医療機関において3年間の研修を行い、専門医の認定試験に受かれば資格を得ることができます。

近年の合格率は約7割位となっています。

精神保健指定医になるには、初期研修2年に加えて精神科3年の研修を経て、措置入院や精神科各疾患のケースレポート(症例報告)を提出する必要があります。

合格率が低く、毎年5~6割にとどまります。

精神科医の給料・年収

他の診療科と同じくらいか、やや低め

精神科医の給料・年収については、他科の医師と基本的には変わらず、年収の平均は約1200万円~1500万円くらいです。

日本においては、専門医を取得してもそこまで年収が上がることはありませんが、精神科では精神保健指定医を持っているかどうかで同じ病院でも年収が数百万円変わることがあります。

精神科は専門医などの資格が一つのアピールポイントになるため、高い収入を得るためには重要な要素だと覚えておきましょう。

精神科医のやりがい、楽しさ、魅力

精神疾患を持つ老若男女への貢献

精神科医の仕事は、治療効果が外からはっきりと見えるわけではないため、患者を救えたかどうかを客観的に評価しづらい部分もあります。

しかし、患者さんと理解し合い、信頼し合うことは決して簡単なことではないので、心が通じ合えたという実感はやりがいにつながります。

長く治療を行っていて、最初は会話すらできなかった患者さんが徐々に話せるようになって社会生活を送れるようになったときに、やりがいを感じます。

精神科医のつらいこと、大変なこと

精神的なタフさが必要

精神科医の一番つらいことは、患者さんが自殺などで亡くなってしまうことです。

細心の注意を払いますが、それでも救えなかった時は無力感に苛まれることがあります。

治る見込みの少ない患者さんも多くいますが、自殺以外で病気によって命を落とすことは稀です。

そのため、治すというよりも長期にわたって寄り添っていくような医療が求められる場合があります。

そのほか、統合失調症やアルツハイマー病の治療に比べて、人格障害などの診療においては、精神科医自身にも精神的ストレスがかかる場合があります。

精神科医に向いている人、適正

人間への興味が尽きないこと

精神科医の仕事は患者さんの心の不調を治療することです。そのため「心」という目には見えないものを、じっくり分析して考えられる人に向いているでしょう。

また人間の心理に興味があり、患者の立場に共感し、患者の立場になって診察できることも大切です。

感受性豊かな人のほうが患者に共感しやすい面もありますが、精神疾患にかかりやすい素因のある人が精神疾患の診療をしていると、心の健康を保ちづらくなって、医師自身が健康を害してしまうこともあります。

精神科医の志望動機・目指すきっかけ

こころの不調のつらさを理解し、助けになりたい

精神疾患の患者数は年々増加しており、これからも社会の複雑化と共に増加していく可能性があります。

会社でも、長時間労働やパワハラなどの人間関係により、精神疾患を患う人が増えてきています。

メンタルチェックなど予防に力を入れている企業も多くなってきています。

「さまざまな精神疾患の治癒法に取り組みたい」「人の話をじっくり聞いて身近な人を救いたい」などが精神科を目指す代表的な志望動機です。

精神科医の雇用形態、働き方

ライフスタイルに合わせてキャリア形成

精神科医が、内科や外科の医師と比べて大きく違うところは、急患対応や夜間勤務が少なく、残業も少ないというところです。

ただ、医療機関によっては精神科救急を行っていることもあり、夜間に措置入院などを行うこともあります。

精神科医の数は増えてきていますが、潜在的な需要も含めるとまだ足りていないのが現状です。

精神科は女性医師の割合も高く、それに合わせて結婚や出産、子育てなど多様なライフスタイルに応じたキャリア形成も可能になってきています。

日本には精神科単科の病院が多々あり、数十年もそこに入院している患者さんもいましたが、最近では長期入院を減らす政策が行われています。

今後はより社会復帰を目指すような方向性になっていくと思われます。

そうした変化に対応して働いていく必要があるでしょう。

精神科医の勤務時間・休日・生活

残業や緊急の対応、休日勤務も少ない

精神科医の勤務時間は、勤め先や所属する病院によって異なりますが、基本的には平日は朝から夕方まで、土日休みというのが一般的です。

基本的には定時に終わることが多く、時間外に呼び出されることも少なく、自分のプライベートな時間を持ちやすく、私生活の充実が望めます。

結婚・出産・子育てなど、家族の生活を大切にしたいと考える人にとっては比較的働きやすい科です。

精神科医の求人・就職状況・需要

ストレス社会でますます必要とされる

精神疾患の患者数は年々増えており、これからも社会の複雑化、高齢化と共に増加していくものと思われます。それに対して日本の精神科医の数は欧米諸国に比べるとまだまだ少ない状況です。

精神科医の活動は医療という枠にとどまらず、福祉・行政・司法・教育など幅広い分野での役割を期待されています。

精神科医の転職状況・未経験採用

精神科専門医を取得できる施設での研修

精神科医の求人は安定していて、さまざまな医療機関で活躍できる場があります。

精神科医は、精神医学や医療に関して定められた実務経験を持ち、専門性の高い知識や技能を高めたことを認められた「日本精神神経学会専門医」の資格や、厚生労働省が定めている「精神保健指定医」の資格を有する方は、希望通りに転職できる可能性が高まります。

精神科医の求人のほとんどが専門医や指定医を条件としていることが多いです。

新卒など精神科未経験の場合には、まず精神科専門医と精神保健指定医を取得することのできる施設で研修することを目指しましょう。

知識・技術を磨き、スキルを蓄えていくことが重要です。

精神科医の現状と将来性・今後の見通し

ストレス社会でニーズは増える一方

高齢化に伴い認知症は増加するでしょう。また、体力の衰えや身体的病気は精神的不調を引き起こします。

高齢者だけでなく、若年者の精神疾患も増えています。

インターネット社会になり、人間関係も希薄で精神的に問題を抱えている人が増えつつあり、将来的にもますます精神科医の需要が増えると思われます。

精神疾患は症状を定量化できる検査がほとんどありませんが、最近では脳機能の画像解析も徐々に有用性が高まってきており、今後は生物学的な側面で精神疾患にアプローチすることも今より増えてくる可能性があるでしょう。

精神科の仕事内容のまとめ

精神科医はうつ病や総合失調症、認知症など心の問題を扱う仕事なので、他の分野の医師とは違う資質が求められます。

治療効果が外から見えるわけではないので、客観的に評価しづらい部分もありますが、患者さんと心が通じ合えたと実感できたとき、やりがいを感じます。

一方で、患者さんが自殺などで亡くなってしまうケースなどもあることから、精神的ストレスがかかる場合が多く、精神的なタフさが求められます。

「心」という目に見えないものを分析して考え、患者さんの立場に共感できる人が精神科医に向いていると言えるでしょう。