医師になるには? 資格取得の難しさやキャリアプランなどを解説

医師になるには、医学部に入学し、「医師免許」が必要です。医学部に入ることは最大の難関と言われており、浪人して入る人もいます。

在学中はもちろん、医師になってからも学ぶことが続くので、それを苦だと思わない人が医師に向いていると言えます。また、医師として大切なのは思いやりの心、そして心身のタフさも求められます。

ここでは、医師になるためにはどうしたらよいかについて紹介していきます。

医師になるまでの道のり

日本で医師として働くには、まず国家資格である「医師免許」の取得が必要です。

高校卒業後に大学の医学部や医科大学で6年間学び、医師国家試験に合格しなければなりません。

医学部の入試は競争率や難易度が高いですが、入学後もすべての科について学ぶため、勉強量は相当多くなります。

数々の実習や試験を経て卒業試験をパスした人が、医師国家試験の受験資格を得られます。

医師免許取得後は病院で2年間の臨床研修を行います。その後、最低5年の実地研修を行い、専門医試験に合格することで内科や眼科などの「専門医」として働くことができます。

専門医の資格は必須ではありませんが、患者さんに取っては安心材料の一つになりますので、多くの臨床医が取得を目指しています。

医師になるまでのルート

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医師になるための学費は? 医学部の難易度はどれくらい?

医師の資格・難易度

医師の資格を得るための最大の難関は、「医科大学や総合大学の医学部に入学すること」だといわれています。

医科大学や大学の医学部医学科の入試は、大学受験のなかでも最難関レベルといっても過言ではありません。

さらに入学後も勉強の日々が続き、受験生時代の生活と変わらないと嘆く医学生もいるほどです。

とくに、最難関といわれる「東京大学理科三類(国立)」「京都大学医学部(国立)」「慶應義塾大学医学部(私立)」に関しては、いずれも偏差値70以上は確実に必要になります。

地方の国公立大学や私立大学になると若干難易度や倍率は落ちるものの、それでも例外なく高い偏差値が求められます。

中学から中高一貫の学校に通い、高校3年生までの6年間をかけて医学部合格に向けた受験対策をする学校もあるほどです。

6年間も勉強し蓄積した知識をもって受験する「医師免許」国家試験では、すべての医学系科目に関する基礎知識や、基本的な診療能力に関する出題のほか、患者の人権などに配慮した倫理的な問いも出されます。

医師として絶対にしてはならないことに関する問題(禁忌肢問題といいます)を一定以上ミスすると、それだけで不合格となってしまいます。

偏差値と同じように高い「倍率」

医学部に合格するのが難しい理由は、偏差値そのものが高いことに加えて、入試倍率の高さも挙げられます。

学費が低めで人気のある私立大学医学部の場合には、倍率が数十倍となることも珍しくありません。

実質的には、国公立の滑り止めなどで複数校受験する受験生もいるため、補欠合格などで実際の募集人数よりも多く合格する傾向が見られます。

しかし、それでも高倍率であることに違いはありません。

医学部は、「生涯続けられる医師という職業が目指せる」「社会貢献性が高くやりがいの大きな仕事ができる」「収入や地位も安定している」というような魅力から、学生からは根強い人気があります。

医学部を目指す人は、志望大学の医学部の偏差値の高さや倍率の高さを十分に考慮し、厳しい受験戦争に勝ち残れるよう努力したうえで立ち向かっていくことが必要です。

医師国家試験の合格率、難易度

長時間の勉強を続け、浪人して医学部に入る人も多い

医師になるために必要な「医師免許」国家資格は、大学の医学科を卒業した人にしか受験資格が与えられません。

そのため、医師を目指す人がまずすべきは、全国にある医科大学や総合大学の医学部に入学することです。

医科大学や医学部はほかの学部に比べると偏差値や入試の倍率が高い傾向にあります。

そのため医学部を志す人は、早ければ小学校から学習塾などに通い、受験を見据えて勉強し続けます。

また、浪人も珍しいことではなく、中には5年以上浪人をして合格を勝ち取る人もいます。

私立大医学部の学費は高額になる

医師になるためには「6年制の医学科」を卒業する必要があります。

医学部には、医学科のほかに、看護学科や保健学科、生命科学科などといった学科が設置されている大学もあります。

しかしながら、上述の通り医学科を卒業しなければ、たとえ医学部であったとしても医師にはなれないため、注意が必要です。

医科大学や医学部のある大学には国公立と私立の大学があり、多くの学生がまず目指すのが国公立です。

その大きな理由が「学費」にあります。

医学部は卒業までに最低でも6年間かかるので、他の学部に比べると学費が割高になります。

私立大学の医学部の場合、6年間の合計の学費は実習費や施設費などを合わせると2000万円~5000万円ほどかかります。

一方、国公立大学では学部に関わらず学費は一律のため、国公立を選択する受験生も多いようです。

しかし、私立大学は設備や進路指導、関連病院が充実していることも多いので、経済的な事情や将来の展望などを考慮した上で、どの大学を選ぶかを考えることが大切です。

やりたい研究分野や進みたい診療科に力を入れている大学に進みたいと考える人もいます。

大学には奨学金や教育ローンなどの制度もあるので、調べてみることをおすすめします。

医学部ではどんな勉強をする? 実習の内容は?

医学部での勉強内容は?

医学部では、医師になるために必要なことをたくさん学びます。

6年間の教育内容は、大きく「教養課程」と「専門課程」で構成されており、他の学部と異なり、ほとんどの科目が必修となっています。

人間性を深める教養課程

医学部生は入学後、1年生から2年生の前期までの期間で視野を広げ、教養を深めることを目的として、語学や医学科以外の科目などの教養科目を学びます。

最近の傾向としては、教養課程の時間を短縮し、早めに専門的な基礎医学を学ぶ大学が国公立・私立問わず増えています。

また、医学部ならではの教養課程の科目として「医学英語」があります。

医師は英語と切っては切れない職業です。

実際に医師になった後も論文を読んだり書いたり、専門書を紐解いたりする際に頻繁に英語を使う必要があるため、学生のうちから医学英語をしっかり学びます。

医師として必要な知識を身に付ける専門課程

医学部では教養課程と並行しながら、2年次の後半には医学の専門課程の講義が始まることが多いです。

一般的に医学部生は、2年次から3年次にかけて人間の身体の仕組みやメカニズムについて学ぶ「基礎医学」の講義を、3年次から4年次にかけて疾患や病態について具体的に学ぶ「臨床医学」の講義を受けることになります。

また臨床医学を学ぶ3~4年次の医学部生は、大学によって時期はまちまちですが、約半年間かけて人体を解剖し、その仕組みを目と手で学ぶ解剖実習を行います。

その間にも、研究室に配属されゼミを受けたり、実習や実験があったりと、基本的には1日中大学でみっちりと学ぶことになります。

また、医学部では数ヵ月、もしくは数週間に1回といった頻度でさまざまな科目の試験が頻繁にあるため、医学部生は試験期間とは別でその勉強に追われることになります。

そして4年間の総まとめである共用試験に合格したあと、5年次から始まる病院実習へ進むことになります。

臨床実習で学ぶこと

医学部では、5~6年生(大学によっては4年生から)にかけて「臨床実習」というものが行われます。

医師の臨床実習は通称「ポリクリ」と呼ばれており、大学の附属病院や外部の病院にて、実際に各診療科を回って行われます。

この実習のおもな目的は、実際の医療現場で患者さんの診察や治療を体験し、医師として不可欠となる知識や技能、そして態度を得ることです。

実際の実習カリキュラムは大学によって異なりますが、学生も医療チームの一員となって研修医や指導医とともに診療にあたり、臨床医学をより深く学ぶことができます。

また、外来実習や病棟の回診、さらには手術見学なども行われ、現場にほど近い場所で、これまで勉強で身につけてきた知識をどう生かしていけばよいか考える機会にもなります。

卒業後にも臨床研修の受講が求められる

臨床研修とは

医師は大学在学中にさまざまな学びを通して成長し、医師国家試験合格を目指します。

しかし、いざ医学部を卒業してからも、また勉強の日々が待っています。

というのも、現在の医師には「臨床研修」の受講が必須になっているからです。

平成16年以降、「診療に従事しようとする医師は、医学部を置く大学に附属する病院または厚生労働大臣の指定する病院において、2年以上の臨床研修を受けなければならない」と義務付けられています。

現在では、この臨床研修を受けなければ医師として診療に従事することはできません。

この必修化によって、医師は地域医療との接点が増えたり、専門の診療科に偏らずに幅広い科での研修を行ったりもできるようになりました。

ただし、この臨床研修は、あくまでも臨床に従事する人の場合に必要になる研修です。

大学などの研究機関で研究者としての道を歩む医師や、法医学、産業医などの場合は、臨床研修を受けなくても業務に差し支えはありません。

臨床研修のプログラム

医師の臨床研修のプログラムや実際の内容は、受け入れ先の病院によって異なります。

規模の大きい総合病院では各診療科を1~2ヵ月単位で回ることもありますし、専門分野に特化した病院では、特定の診療科で時間をかけて知識やスキルを磨くこともあります。

どの病院の研修プログラムに参加するかについては、個人の希望によって自由に選択可能です。

ひと昔前は出身大学の附属病院にそのまま研修にいくことが一般的でした。

しかし、最近ではインターネット上でプログラムの内容を公開する病院も増えており、より選択の幅が広がっています。

なお、以前は研修医が診療のアルバイトをするケースもしばしば見られたものの、近年はこういったアルバイトは基本的に禁止されており、研修プログラムに専念することが求められています。

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医師の資格・医師免許とは?

医師は「国家資格」が必要

医師免許とは

医師は、「医師免許」を取得している人だけが就くことができる職業です。

医師免許は国の法律に基づいて与えられる国家資格のことで、これを持たない人が患者さんに診療や治療を施すことはできません。

医師は人の命に係わるという大きな責任の伴う仕事のため、無免許で仕事をすることは重大な法律違反にあたります。

臨床医になるには研修が必要

2004年度から臨床医として勤務するためには「2年間以上の臨床研修を行うこと」とする方針が出され、この期間の間の医師は一般に「研修医」と呼ばれます。

基礎研究医や産業医、社会医学者、法医学者などはこの臨床研修の義務はないとされていますが、実際には、病院などの医療機関で医療行為を行う臨床医がほとんどです。

そのため、医学部を卒業し、医師免許を取得するとほぼすべての人はそのまま臨床研修に入ります。

なお、一度与えられた医師免許は更新の際に試験などはなく、基本的にはずっと有効です。

医師免許でできること

すべての診療科の医療行為ができる

日本の大学の医学科では、歯科を除くすべての診療科の授業を受け、国家試験でもすべての科目に関する問題が出題されます。

そうした流れで、医師免許は診療科ごとに交付されるものではないので、医師は法律上はすべての診療科における医療行為を行うことができます。

また、薬剤師に調剤指示を出す「処方箋」、また人が死亡した時の証明となる「死亡診断書(死体検案書)」は、医師(処方箋は歯科医師も可能)にしか発行できない独占業務となっています。

医師が持つ資格

医師免許を取得し、医療業務に従事する医師が持つ資格には、医師免許の他にもいくつかの認定・専門医資格などがあります。

医療の進歩とともに、高技術・専門化、また分野の細分化傾向が強まり、各診療分野の学会などが「学会認定医」や「学会専門医」などの学会認定専門医制度を導入するようになりました。

こちらは国家資格などではない民間の認定資格ではありますが、一定の知識や技術度をはかるものとして、取得する医師が増えています。

しかしながら、これらの認定資格は法的には肩書きの種類であるため、たとえ持っていない医師であっても、たとえば眼科医が内科の診療を行うことなども問題ありません。

ただし、麻酔科だけは特別で、麻酔科医として業務にあたるには、厚生労働省の許可を得なければならないことになっています(歯科医師は麻酔を扱うことができます)。

医師に向いている人

医師に向いている人
  • 学ぶことを苦にしないこと
  • 人に対する思いやりの心が持てること
  • 心身ともにタフであること

学ぶことを苦にしないこと

医師になるには、難関の医学部受験を突破しないといけないので、まず「勉強が好き」という適性が重要です。

知的好奇心旺盛で、自主的に学ぶことに取り組めるようなタイプの人が、医師に向いています。

人に対する思いやりの心が持てること

医師が業務で対応する相手は人間なので、「他者に寄り添うという資質があるか」も重要な要素になってきます。

いくら勉強ができる医師でも、患者さんを思いやれないような人では、信頼されるのは難しいからです。

患者さんから頼られる医師になるには、一定のコミュニケーション能力や誠実さ、温かな心が不可欠です。

心身ともにタフであること

このほか、医師はどのような状況でも治療に際して前向きな考え方を持ち続けるなど、メンタル面の強さも求められる仕事です。

また、人の健康や命に関わる仕事をするので、集中力がある、マメであるといった性格が求められます。

さらに長時間の拘束や手術など、体力的にタフであることも重要な適性のひとつになります。

医師に向いている人・適性・必要なスキル

医師のキャリアプラン・キャリアパス

医師の多くは病院やクリニックなどの医療機関に勤めますが、それ以外にも、高齢者ホームや介護老人保健施設などの介護分野に携わったり、研究機関や官公庁などに医師免許を持つ専門職として就職したりすることができます。

さらに、専門分野で臨床を究めた先には、ベストなタイミングで独立・開業をしたり、大学や学校で教鞭を取ったりといったシフトチェンジの可能性も多く残されています。

もし大学に残って教授の椅子を目指すとしても、その椅子はひとつしかなく狭き門です。

関連病院で重要な役職者のポストに就いたり、理事長などの名誉職を任されることも、長いキャリアパスの中に描ける将来の道であることは間違いありません。

積み重ねてきたキャリアや知識、経験をもって、勤務医だけで終わらないキャリアパスを早い段階から意識する人も少なくありません。

医師を目指せる年齢

医師という職業には、はっきりとした年齢制限はありません。

いったん社会に出た人が、小さいころからの夢である医師を諦めきれず、医学部を受け直して医師になるケースも案外少なくありません。

医学科には、どの大学でも1割程度再受験生がいるといわれています。

大学によっては、現役志向や、地元の医師を育成する方針を打ち出しているところもありますが、医師になるためには医学科を卒業し、医師免許を手にすれば年齢制限はありません。

いくつであってもチャレンジできる職業です。

しかし、現役で医学科に入学した若い学生でも大変な6年間になる医学生の生活は、勉強や実習、試験の数々など現実的にかなり負担のある大学生活であるといえます。

この厳しい学生生活をしっかり乗り越える自信があれば、チャレンジに年齢は関係ないといえるでしょう。

参考:医師数に関するデータ

医師数の推移

医師の人数は年々増加を続けています。令和2年度における厚生労働省の調査によると、医師の数は339,623人でした。そのうち女性の医師は73,822人となっています。

医師数の推移_r2
出所:厚生労働省 令和2年医師統計

医師数の男女比

医師数の男女比は男性77.2%に対して、女性22.8%となっています。

医師数男女比_r2
出所:厚生労働省 令和2年医師統計

年齢別の医師数と女性比率

年齢別に医師数をみると、40代、50代の医師が多いようです。また、女性比率は年々高くなってきており、20代の医師の女性比率は36.3%まで上昇しています。

年齢別医師数と女性比率_r2
出所:厚生労働省 令和2年医師統計

医師になるにはのまとめ

医師になるためには、医学部に入り「医師免許」を取得することが必要です。医学部に入ることはもちろん、医師免許を取得するための難易度は相当高いといえます。

医師になった後も勉強は続くので、学ぶことを苦にしない人、人に対する思いやりの心が持てること、心身ともにタフであることが求められます。

医師を目指すにあたっての年齢制限はありませんが、厳しい学生生活になりますので、しっかり乗り越える根性が必要となるでしょう。