薬剤師の年収・給料はいくら? 薬局・病院薬剤師の年収や低いといわれる理由も解説

薬剤師は、民間のドラッグストアや調剤薬局、医療機関など、さまざまな場所で働く人がいます。

専門性の高い職業であるゆえに、勤務先や経験によっては高収入も望めます。

この記事では、薬剤師の給料・年収、初任給や福利厚生などについて、各種調査データをもとに解説しています。

薬剤師の平均年収・給料の統計データ

薬剤師は専門性が高い職種であることから、比較的年収は高めとなっています。

大手の薬局や医療機関、ドラッグストアに就職した場合、20代のうちから平均年収400万円以上が見込め、薬剤師全体の平均年収はおよそ500万円~600万円とされています。

経験を積んだり、役職についたりすることで、年収600万円以上を得ることも難しくありません。

とくに地方では薬剤師が不足しているところもあり、都市部以上によい給料・待遇で働ける可能性があります。

アルバイト・パートなど時給制で働く人の給与水準も、他の職種と比べて高めです。

薬剤師の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

薬剤師の平均年収_2022

厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によれば、薬剤師の平均年収は41.1歳で583万円ほどとなっています。

・平均年齢: 41.1歳
・勤続年数: 9.1年
・労働時間/月: 164時間/月
・超過労働: 9時間/月
・月額給与: 414,600円
・年間賞与: 858,700円
・平均年収: 5,833,900円

出典:厚生労働省「令和4年度 賃金構造基本統計調査」
薬剤師の平均年収の推移_r4

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

薬剤師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

「令和4年度 賃金構造基本統計調査」では、薬剤師の平均年収は約583万円、ボーナスは約86万円と発表されています。

このデータから見ると、税金や保険料などを差し引いた手取りの年収は440万円~460万円程度となるでしょう。

年収からボーナスを除いた月収は40万円ほどとなり、実際の手取りは32万円前後になると推定されます。

薬剤師は専門職としての優位性もあり、若いうちから比較的よい収入が望めると考えておいてよいでしょう。

薬剤師の初任給はどれくらい?

薬剤師の初任給は勤務先によって異なり、20万円~40万円ほどと幅があります。

最も高水準なのは大手企業が経営するドラッグストアで、30万円~40万円以上になる場合もあります。

主なドラッグストアの新卒求人サイトを見ると、初任給は以下のようになっています(2023年7月時点)。

  • ウェルシア薬局:355,000円
  • ツルハドラッグ:300,000~460,000円(薬剤師手当他)
  • マツモトキヨシ:年俸4,585,910円(月額382,160円)~年俸5,055,000円(月額421,250円)

ウェルシア薬局 募集要項
ツルハドラッグ 募集要項
マツモトキヨシ 募集要項

大手の調剤薬局も比較的初任給は高めですが、調剤薬局よりもドラッグストアのほうが役職が上がりやすく、それにともなって昇給もしやすいといわれています。

製薬会社は企業の規模や学歴にもよりますが、初任給22万円~30万円ほどが一般的です。

病院は、大規模な病院であれば製薬会社と同じくらいの初任給は望めるものの、小さな病院ではあまり高くない場合があります。

薬剤師の勤務先の年齢別の年収(令和4年度)

薬剤師の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がっています。最も年収が高い世代は、55~59歳の717万円です。

全年代の平均年収は583万円となっています。

薬剤師の年収(年齢別)_r4

薬剤師の勤務先の規模別の年収(令和4年度)

薬剤師の統計上の平均年収は、1,000人以上の事業所に勤務する人が最も高く586万円となっています。10~99人は579万円、100〜999人の事業所の平均年収は582万円、10人以上は平均583万円となります。

薬剤師の年収(規模別)_r4

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

薬剤師の給料・年収の特徴

薬剤師の給料が高めとなる理由

薬剤師は、大学で薬学の専門的な勉強を6年間行い、国家資格を取得した人しか就くことのできない職業です。

仕事内容は非常に専門性が高く、医療現場を支える責任重大な仕事でもあることから、収入は比較的高水準です。

規模の大きな薬局や病院に就職すると、新人の平均年収がおよそ400万円で、全体の平均年収ではおよそ520万円になります。

店長やマネージャークラスになると、さらに年収はアップします。

また、製薬会社で開発系や薬事担当などの仕事に携わる薬剤師もいます。

製薬会社も平均給料は他業種より高めで、経験や実力次第で年収800~1000万円を超えることも可能です。

薬剤師の場合、給料がずば抜けていいというよりも、その安定性に魅力を感じている人も多いようです。

医薬品はコンスタントに売れるものであるため、一般企業のように売り上げに給料が大きく左右されづらく、生涯を通して安定した収入を得ることができます。

地方のほうが給料が高いケースもある

一般的に、多くの職業では地方よりも都市部のほうが平均年収は高めとなっています。

しかし薬剤師の場合、豊富な人材がいる都市部に比べ、地方によっては深刻な人手不足となっており、都市部以上に好待遇での求人が出されることがあります。

また、地方では病院や薬局の数が限られるため、患者との結びつきが強いという特徴があります。

そのため街に一つしかない病院や人気の専門医には患者が集中し、付随する薬局の売り上げもアップするのです。

少しでも給料アップを狙う場合、働く場所を問わないのであれば、地方の求人を探してみるのもよいでしょう。

ドラッグストアや調剤薬局は転勤がある?

大手企業が運営するドラッグストアや調剤薬局は、全国展開をしているところが多いです。

店舗勤務をする薬剤師の採用は、「転居をともなう全国転勤OKの人」と「エリア限定で働きたい人」に分けて行われるケースが目立ち、たいていは前者のほうが給料が高めに設定されています。

マツモトキヨシグループの場合、転居ありの場合は年俸5,055,000円(月額421,250円)、岐阜、奈良、和歌山のエリア限定勤務の場合は、年俸4,585,910円(月額382,160円)となっています。

地方の地域密着型企業でも、一定のエリア内での頻繁な異動が行われることがあります。

店舗で働く薬剤師のよい給料や待遇の裏には、こうした事情が含まれている場合がありますから、事前に確認しておきましょう。

薬剤師の年収が低すぎといわれることも

薬剤師の年収は他の職業と比較して高めの水準である一方で、実際に働いている人からは「低い」といわれることもあります。

その理由として、薬剤師として働き始めるまでに時間やお金がかかることが挙げられます。

薬剤師になるためには6年間薬学部に通う必要があり、難関国家試験に合格しなければなりません。

しかしながら、医師に比べれば年収がさほど高くないのが事実です。

また、薬剤師の年収は若いうちは高めに設定されていることが多いものの、ある程度の年齢になると上がりづらく、頭打ちになる傾向が見られます。

これは薬剤師には役職が少なく、他の職業に比べると手当が限られていたり、昇給が少ないためです。

こうした理由により、「薬剤師の年収は低い」と考えている人も多いようです。

薬剤師の福利厚生の特徴

大手企業が運営する調剤薬局や規模の大きな医療機関で働く場合、手厚い福利厚生が用意されていることが多いです。

たとえば、ワークライフバランスを重視できる休暇制度や、各種社会保険完備、健康診断や予防接種の補助制度、財形貯蓄制度などがあります。

また、大手ドラッグストアに務める場合は従業員買物割引制度があり、自社での買い物が10%ほど割引になるところが多いです。

さらに、薬剤師は女性が多く活躍していることから、育児や介護のための休業制度や各種支援制度も充実している傾向があります。

仕事を続けながら家庭生活も大事にできる、働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる企業が増えています。

薬剤師の勤務先別の給料・年収

調剤薬局の薬剤師の年収

薬剤師の勤務先のうち、最も多いのが薬局です。

厚生労働省「令和2年(2020年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、薬局に従事する薬剤師は全体の58.7%となっています。

大手企業が経営する全国規模の薬局が多くあり、平均年収は500万円以上を安定して見込めます。

なかには初任給が30万円を超えるところもありますが、調剤薬局では役職や昇給が限られていて、勤続していてもあまり給料がアップしないケースも見られます。

病院・診療所の薬剤師の年収

前述の調査結果では、病院・診療所といった医療施設で働く薬剤師の割合は19.1%で、薬局に次いで多い数字です。

医療機関は規模の大小によって収入に差が出やすいとされ、大規模な医療機関だと薬局と同水準の収入が見込めますが、小さな診療所では400万円台にとどまる場合があるようです。

ただし、病院の場合は夜勤や休日出勤などが発生する可能性が多く、こうした勤務に手当がつくことで、平均よりもさらに多くの収入を得ている人も少なくありません。

ドラッグストアの薬剤師の年収

ドラッグストアなど、医薬品関係企業に勤務する薬剤師は12.1%です。

ドラッグストアの薬剤師も高めの収入になりやすく、大手企業では平均年収500万円~600万円以上が見込めるでしょう。

薬剤師がいるかいないかは、ドラッグストアの運営を大きく左右するため、とくに地方では優秀な薬剤師を確保しようと好待遇を用意しているところも多いです。

一方で、ドラッグストアは医療というよりはサービス業に近く、場合によってはレジ対応などお客さまへのサービスもしなくてはならないこともあります。

店長やマネージャーなど管理者になると大きく昇給し、各種手当などもついて年収1000万円近くになるケースがあります。

製薬会社の薬剤師(研究職・MR)の年収

製薬会社で研究職として働く薬剤師の年収は、500~1,000万円ほどが相場といわれます。

研究職の仕事内容は企業により異なりますが、基本的には新薬開発に携わることになります。

求人は主に大学院卒以上が対象となり、新薬の開発には10年以上を費やすため、年収も高めに設定されています。

また、製薬会社では薬剤師の知識・スキルを生かして「MR」として活躍する人もいます。

MRはMedical Representativeの頭文字をとった言葉で、日本語では「医薬情報担当者」を意味します。

営業職のように直接的に医薬品を販売することはなく、病院や診療所などに自社医薬品に関する情報を提供する仕事です。

MRの年収は400万~600万円ほどとなることが多いですが、外資系企業の場合は700万円を超えることもあります。

営業職に近い仕事であり、昇給や昇格のチャンスも多いため、給与が高くなりやすい傾向があります。

MRの仕事

国家公務員の薬剤師の年収

薬剤師の多くは民間企業や医療施設で勤務していますが、実は公務員として働く薬剤師も存在します。

国家公務員として活躍する薬剤師の多くは、国家公務員採用試験総合職試験を経て、厚生労働省に採用されます。

そうした人たちは「薬系技術職員」として、医薬・生活衛生局、保険局、医政局、食品基準審査課および食品安全委員会などで、行政や研究に関連する業務を担当します。

国家公務員薬剤師は、法律にもとづき「医療職俸給表(二)」に沿って支給されます。

以下の図は、人事院の「平成4年国家公務員給与等実態調査」をもとに、「医療職俸給表(二)」の年収等をまとめたものです。

医療職俸給表(二) _2022

国家公務員として働く薬剤師の平均年収は583万円程度と考えられます。

ただし、「医療職俸給表(二)」は保健師のほかに「栄養士」も含み、実際の給料は個人の経験年数や職務階級によって異なります。

この数字はあくまでも参考程度に見てください。

薬剤師の正社員以外の給料・年収

派遣社員

派遣社員として働く薬剤師の時給は、2,000円~3,000円程度がボリュームゾーンとされ、派遣として働ける職種のなかでは比較的高時給といえます。

この背景には、薬剤師が国家資格を持つ専門職であることが挙げられます。

とくに地方の一部地域では薬剤師の人手不足が深刻であり、都市部以上に高時給で採用されることもあります。

ただし実際の給料・待遇は派遣会社によってまちまちですから、派遣として働く場合は、どの派遣会社に登録するか事前によく調べたほうがよいでしょう。

アルバイト・パート

薬剤師はパート・アルバイトとしての求人も多く出ています。

パート・アルバイトの給料も、一般的な事務などの仕事に比べると高く設定されていることが多く、時給1,500円〜2,500円ほどからのスタートとなる場合も珍しくありません。

もともとフルタイムの薬剤師として働いていた人が、結婚・出産などを機に、時間的な自由度が高いアルバイト・パートの形に働き方を変えることがあります。

独立・開業

薬剤師資格を取得した人が、薬局を独立・開業するケースもまれに見られます。

しかし個人での薬局経営で利益を出すのは簡単ではなく、結局、雇われの薬剤師のほうが安定して稼げると廃業するケースもあるようです。

今後は、国の医療費削減の動きによってさらに経営が厳しくなる可能性も指摘されています。

もし独立・開業をするのなら綿密な経営計画が必要になるでしょう。

薬剤師が所属する代表的な企業の年収

会社名 平均年収 平均年齢
ウエルシアホールディングス株式会社 795万円 58.8歳
株式会社アインホールディングス 663万円 42.3歳
日本調剤株式会社 528万円 34.8歳

出典:2023年現在(各社有価証券報告書より)

ウエルシアホールディングス株式会社の全従業員の平均年収

ウエルシアホールディングス株式会社は、2022年度ドラッグストア売上高ランキング1位です。

平均年齢が50代と高い分、平均年収も795万円と高水準です。

調剤薬局を備えた店舗展開に力を入れており、ウエルシア薬局のほか複数のグループ企業を運営、日本全国と海外にも店舗を構えています。

株式会社アインホールディングスの全従業員の平均年収

株式会社アインホールディングスは、2022年調剤薬局売上高第1位の企業です。

2023年1月期末で全国に1,286店舗を展開し、女性向けにコスメやファッションを扱う店舗の出店も進んでいます。

平均年収は663万円となっており、業界内でも高水準です。

日本調剤株式会社の全従業員の平均年収

日本調剤株式会社は、2022年調剤薬局売上高が第2位の企業です。

2023年5月1日時点で726店舗展開しており、ジェネリック医薬品の普及や在宅訪問での服薬指導にも力を入れています。

平均年収が528万円で、他のトップ企業よりも平均年齢が若めなのが特徴です。

薬剤師が収入を上げるためには

高収入の職場や大手企業に転職する

年収アップのためには、高収入の職場や大手企業に転職することが考えられます

大手企業や製薬会社で働く場合、転職直後から600~700万円以上の年収が得られる場合も珍しくありません。

また、大手企業や製薬会社に勤められれば、給料だけでなく福利厚生も安定しており、より働きやすい環境が整えられているでしょう。

働く場所をいとわない場合は、都市部よりも地方の方が薬剤師の需要が高いため、地方の求人にも目を向けるとより給与が高い企業を見つけられる可能性があります。

役職に就く

薬剤師が収入を上げるためには、大手企業へ就職して長く働き、管理職への昇進を目指していく道があります。

役職の枠自体は少ないものの、役職につくことができれば基本給がアップしたり、役職手当がついたりします。

大手企業は待遇もよいですから、順調にキャリアアップすれば年収1000万円を実現するのは決して無理な話ではありません。

また管理薬剤師になれば手当がつく企業が多いため、安定したプラスアルファが得られます。

資格を取る

認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取ることで給料をあげる病院や薬局が多いです。

なかには資格取得を奨励し、補助金を出してくれる企業もあります。

こうした資格は転職の際にも手当がつきやすいだけでなく、「勉強熱心で優秀な人材だ」ということをアピールする材料になるため、勉強をしてスキルアップしていくことも給料アップには大切だといえます。

薬剤師でも年収1000万円稼ぐことはできる?

薬剤師の仕事はほかの職業に比べると高収入ではあるものの、医師のように年収1,000万円を超える割合は少ないです。

薬剤師で年収1000万円を目指すには、外資系のCRAで働くのがよいでしょう。

CRAとは臨床開発モニターのことで、新しい薬を製品化する上で治験(臨床開発試験)が適切に行われているかモニタリングする仕事です。

外資系のCRAは年収1000万円超えることも珍しくなく、高収入を狙う人におすすめですが、その分非常に狭き門となっています。

臨床開発モニター(CRA)の仕事

薬剤師は他の医療従事者と比べて年収は高い?

薬剤師の年収が低いと言われる理由に、同じ6年制大学を卒業した医師と比べると圧倒的に年収が低いということが挙げられます。

厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、医師の平均年収は、44.1歳で1,429万円なのに対し、薬剤師の平均年収は約583万円です。

医師免許も薬剤師免許も同じ国家資格でありながら、薬剤師の年収は医師の半分ほどしかありません。

一方で、看護師の平均年収は40.7歳で約508万円となっていることから、看護師に比べると平均年収は高めとなっています。

薬剤師の年収・給料のまとめ

薬剤師にはさまざまな勤務先があり、働き方も正社員、派遣、パート・アルバイトなど多様であるため、年収も大幅に違いがあります。

一方で需要が高いことから転職も比較的多く見られ、結婚や出産などののちに復職して働く人も少なくありません。

一度資格を取得すれば、自分の希望やライフスタイルに合った働き方ができる職業であるといえるでしょう。