薬剤師になるには? 資格はどうやってとればいい?
薬剤師になるまでの道のり
薬剤師は、国家資格を取得している人だけが就くことができる職業です。
薬剤師の国家資格を取るためには、大学の「薬学部」もしくは「薬科大学」で6年間の薬剤師養成課程を修了したうえで、薬剤師国家試験に合格しなくてはなりません。
薬学系の学科を設置している大学は、全国に90校(2022年時点)あります。
「国立」「公立」「私立」とさまざまな大学があり、北は北海道、南は宮崎まで全国の都道府県に設置されています。
在学中に学ぶこととしては、「有機化学」「生物化学」「薬剤学」「疫病学」などの授業から、調剤薬局等での実習まで多様です。
このカリキュラムを無事に終え、6年制の課程を卒業した人か卒業見込みの人だけに、薬剤師国家試験の受験資格が与えられます。
ちなみに、かつて薬学部は4年制でしたが、制度の改革により、平成18年4月の入学者からは6年制の課程を終えなければ国家試験を受験できなくなりました。
薬剤師の資格・難易度
薬剤師国家試験は年1回実施され、「物理・化学・生物」「衛生」「薬理」「薬剤」「法規・制度・倫理」など、薬学に関する幅広い分野から出題されます。
受験会場は全国の大都市に設置されており、北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・徳島県及び福岡県で行われるのが一般的です。
合格率は、例年平均で70%~90%ほどとなっています。
不合格の場合はまた翌年受験しなくてはなりません。
試験に無事合格して申請をすると、厚生労働省の薬剤師名簿に登録され、薬剤師免許が与えられます。
なお、薬学部では6年生のうちに就職活動をしますが、3月の国家試験に合格することができないと内定を取り消されてしまうことがあるため、誰もが全力を入れて国家試験に臨みます。
薬剤師になるための学校の種類
薬学について学べる大学には、4年制の「薬科学科」と6年制の「薬学科」の2つの学科が設けられていることがあります。
このうち、薬剤師を志す場合は、6年制の薬学科を卒業しないと薬剤師国家試験の受験資格が得られないため、注意してください。
4年制の薬科学科には、おもに薬学領域の幅広い知識を習得し、将来的にMRや教員、研究者を目指す人などが通っています。
受験しようとしている学科が、本当に薬剤師国家試験の受験資格が得られるカリキュラムかどうか、入学前にしっかりと確認しておくことが必要です。
なお、短期大学や専門学校、通信教育などでは薬剤師国家試験受験資格や薬剤師資格は得られません。
なお、私大の薬学部はその他の理系学部よりも実習費などが高額になるケースが多く、6年間で1000万円ほどかかることもあります。
国公立大学に関しては、薬学科の学費も他の学部と同じ金額になっています。
薬剤師に向いている人
集中力がある人
薬剤師の代表的な活躍の場である薬局においては、次から次へと異なる調剤をしていかなければなりません。
人の健康に関わる医薬品を扱う以上、ミスは許されない仕事のため、集中力を持続し、頭を働かせながら仕事をしていくことが必要です。
健康に関心があり、注意力と責任感の強い人
薬剤師の仕事は、患者さんの治療や健康に大きな影響をおよぼす薬を扱います。
ただ調剤し手渡すだけではなく、患者さんの体調の変化や他の薬との飲み合わせなど、あらゆる情報にアンテナを張り、注意深く患者さんに対応する責任感が求められます。
また、新しい医薬品は次々に開発、発売されているため、医薬品や業界についての知識を常にブラッシュアップし続けていく姿勢が重視されます。
コミュニケーション能力のある人
薬剤師は、医薬品の専門家としての役割はもちろん、ときに接客業としての性格もあわせ持つ職種です。
高いコミュニケーションスキルが求められることが少なくありません。
患者さんから医薬品に関する相談を受けたり、医薬品について説明したりする際に、優れたコミュニケーション能力を発揮すれば、患者さんの安心にも繋がります。
親身になって人の話を聞くことができる人や、相談しやすい雰囲気の人が薬剤師に向いているといえるでしょう。
薬剤師のキャリアプラン・キャリアパス
薬学科の新規設置が増え、薬剤師資格を取る学生は年々増加しています。
この傾向が続けば、薬剤師は増える一方ですが、需要は減少していく可能性があります。
処方せんや薬歴の電子化が進んだことで、かつては薬剤師が自分の手で行ってきた入力作業がどんどん簡略化され、薬局の人手そのものが少なくても調剤作業ができるようになってきました。
調剤作業に関しても、医療機器の発達で大幅に時間の短縮が叶うようになっています。
また、規制緩和の流れで、コンビニやインターネットなどでの医薬品販売が可能になってきています。
薬局での対面販売も減る傾向にあり、薬の種類によっては、薬剤師ではなく「登録販売者」という資格があれば販売できるようになったことなどから、薬剤師の需要は減少傾向にあるとみられています。
とはいえ、人の健康に深く関係する分野である以上、医療業界自体が縮小されることはおそらくないものと考えられます。
たとえAIやインターネット販売などで薬剤師の需要が減った場合でも、薬の専門家としての薬剤師の需要は減ることはないでしょう。
しっかりとキャリアプランを描き、それに応じた知識の研鑽やスキルアップを積んだ薬剤師は、医療現場で今後も必要とされ続けるに違いありません。
薬剤師を目指せる年齢
薬剤師を目指す人は、薬学科6年間で医薬品に関する知識を徹底的に学び、数ある実習を乗り越え、卒業試験や国家試験をパスして、ようやく薬剤師資格を手にすることができます。
薬学科の入学に年齢制限はありませんし、薬剤師国家試験の受験に関しても年齢での受験資格制限はありません。
その気になれば、何歳からでも目指すことのできる職業だといえるでしょう。
ただし、私立大学の薬学部の場合、6年間通うとなると相当の学費がかかります。
その間、アルバイト程度は可能でも仕事と両立して学生を並行することは不可能です。
そのような経済的な理由などで、社会人が一から薬剤師を目指すことは難しいかもしれません。
また、薬剤師資格を取った後の就職の際も、年齢がネックになるケースがまったくないとは言い切れません。
他の職種同様、新卒の薬剤師の就職でも年齢は若いほうが有利という見方をされることもあります。
ただし、年齢不問で採用されるケースもあるため、年齢が多少高くなっていてもそれだけであきらめる必要はないでしょう。
薬剤師の欠格事由
薬剤師の欠格事由とは、「薬剤師として働いてはいけないとみなされ、国の公的機関から許可申請が下りないこと」に対する理由を意味します。
欠格事由は薬剤師に限らず、さまざまな職業でも取り決めが行われています。
薬剤師の欠格事由は薬剤師法によって、「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」という2つが存在しています。
どのような内容なのか、それぞれについて紹介します。
絶対的欠格事由
「絶対的欠格事由」の一つに、未成年者、成年被後見人又は被保佐人には、免許を与えない、というものがあります。
成年被後見人とは、精神障害によって判断能力が欠如していることによって、後見人が必要な人のことで、被保佐人とは、同じく精神障害があることで保佐人(助ける人)が必要な人を示します。
上記に上げた成年被後見人も被保佐人もいずれも精神障害があるために薬剤師免許を与えることができないということになっています。
相対的欠格事由
「相対的欠格事由」として、次の各号のいずれかに該当する者には、免許を与えないことがあると定められています。
一、心身の障害により薬剤師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
二 、麻薬、大麻又はあへんの中毒者
三 、罰金以上の刑に処せられた者
四 、前号に該当する者を除くほか、薬事に関し犯罪又は不正の行為があつた者
相対的欠格事由とは、絶対的欠格事由のように、どうしても薬剤師になれない、といったものではありません。
しかしながら、絶対的欠格事由も相対的欠格事由もいずれにせよ、薬剤師の欠格事由として当然といえることが規定されています。
参考:薬剤師に関するデータ
薬剤師数の推移
薬剤師の人数は年々増えてきています。令和2年度の薬剤師数は321,982人になっています。

出所:厚生労働省
薬剤師の男女比
令和2年時点における薬剤師の男女比率は、男性38.6%、女性61.4%となっています。

出所:厚生労働省
性・年齢別の薬剤師数
年齢別に薬剤師の人数を見ると30代、40代の比率が高くなっています。
薬剤師の女性比率はどの年代でも高くなっていますが、40代、50代が約70%であるのに対して、20代64.6%、30代は59.6%と比較的少なく、男性薬剤師が増えているといえます。

出所:厚生労働省