「土地家屋調査士」とは

土地の調査や測量をし、不動産の表示に関する登記の申請手続きを独占的に行う。

土地家屋調査士とは、土地の測量および表示に関する登記の専門家のことをいいます。

他人の依頼を受けたうえで、土地や建物がどこにどのような形状で存在し、何に利用されているかを調査および測量し、図面などを作成して不動産の表示に関する登記の申請手続などを主に行います。

土地家屋調査士はこの表示に関する登記の調査・測量・申請手続きの代理を独占的に行えるほか、境界紛争の解決手続きの一つの手段である筆界特定手続きの代理業務なども独占的におこなえる国家資格です。

土地家屋調査士になるには、例年8月第3日曜日に行われる筆記試験に合格し、さらに11月中頃にある口述試験に合格したのち、管轄官庁である法務省に登録をする必要があります。

なお、筆記試験は合格率6〜7%の難関です。

「土地家屋調査士」の仕事紹介

土地家屋調査士の仕事内容

不動産にまつわる計測や法律手続を行う

建物を新築した際などには、必ずその面積を測量し、構造や用途などと併せて法務局に届け出て、登録しなければなりません。

その手続きを「表題登記」といい、表題登記業務を行うことを唯一許されているのが土地家屋調査士です。

また、土地の境界が曖昧な場合、土地家屋調査士が測量、登記することで、境界を確定させる「筆界特定」を行うことができます。

測量というと「測量士」という職種が思い浮かぶかもしれませんが、測量士には筆界特定をすることはできず、土地家屋調査士のみに許された独占業務ということになります。

表題登記や筆界特定だけでなく、土地を分ける「分筆」や土地をまとめる「合筆」も業務の範疇ですし、さらに上記に挙げた手続きに付随する審査請求や裁判外紛争手続き(ADR)なども行う、法律の専門家としての一面も持っています。

土地家屋調査士の就職先・活躍の場

表題登記に関わる先が主な活躍の場

土地家屋調査士の就職先としては、土地家屋調査士事務所の他、建設会社やハウスメーカーなど、不動産の新築に携わる企業が一般的な候補先です。

また、それらの企業に一定期間勤務し、必要な知識と経験を身につけた後は、独立開業して自分の事務所を構えることもできます。

ただ、土地家屋調査士だけでは十分な仕事量が確保できないケースもあります。

独立後は、土地家屋調査士の業務と関連性の高い、行政書士や司法書士といった資格を取得することで、対応できる業務の幅を拡げる場合も少なくありません。

土地家屋調査士1日

フィールドワークとデスクワークの両方をこなす

土地家屋調査士は現場での作業と事務所での作業、その両方が必要です。

また、依頼者との打ち合わせや、役所との協議、隣地所有者とのスケジュール調整なども必要であり、こなさければならない実務作業は多岐にわたります。


9:00 出社
メールチェック、案件ごとの打ち合わせなどを行います。

10:00 フィールドワーク
担当している不動産を訪れ、測量作業などを実施します。

12:00 休憩

13:00 情報収集
役所、法務局をまわり、必要書類を集めたり情報を確認したりします。

15:00 デスクワーク
帰社し、測量図面を引いたり、書類を作成します。

18:00 帰社

土地家屋調査士になるには

試験をパスすれば名乗れるが、実務経験が必要

土地家屋調査士は国家資格ですので、土地家屋調査士になるにはまず試験に合格することが必要です。

その後に土地家屋調査士会に登録すれば、正式に土地家屋調査士を名乗ることができます。

ただ、土地家屋調査士の実務は測量や法律関係の手続きなど専門性が高く、試験に合格しただけでは実戦ではほとんど歯が立ちません。

実際にこなせるようになるには、土地家屋調査士事務所などでの実務経験は必須といえます。

土地家屋調査士の学校・学費

受験資格はなく、誰でも受験できる

土地家屋調査士試験を受けるために特別な資格は不要で、誰でも受験することができます。

資格取得のために専門学校に通う人もいれば、独学で勉強する人もいます。

一般的に土地家屋調査士の合格には1000時間の勉強が必要といわれており、もし試験勉強だけに1日を費やせるなら、1日7時間勉強すると仮定して、約5か月かかります。

仕事や大学などに通いながら勉強するなら、1日2時間勉強するとして約17か月必要です。

ただし筆記試験の中には作図問題など客観的に正解を判断しにくい問題も含まれますので、第三者に採点してもらったほうが効率的である場合もあります。

専門学校に通うか独学で勉強するかは、各自で最適な方法を選択しましょう。

土地家屋調査士の資格・試験の難易度

難関試験だが、合否は環境次第

土地家屋調査士試験は選択式と記述式で出題される筆記試験と、試験官に口頭で回答する口述試験の二段階選抜となります。

両方の試験に合格した最終的な合格率は毎年8%程しかなく、1割を超えることはありません。

ただ、受験者の大半は会社員などの勤め人であり、忙しい仕事の合間を縫って勉強しているケースが非常に多いようです。

集中して勉強できる環境さえあれば、他の受験者を上回ることは十分に可能であるといえるでしょう。

土地家屋調査士の給料・年収

勤務する場合はサラリーマンとほぼ同じ

土地家屋調査士の年収は500万円台が最も多く、それに400万円台が続きます。

一般的なサラリーマンとほぼ同じか、あるいはもう少し高いくらいの水準にあるようです。

ただしこれは勤務した場合のみのデータを基にしていますので、独立開業して自ら土地家屋調査士事務所を営んでいる場合の年収は含まれません。

独立した場合は、年収1000万円を超えることもあるようですが、それには他の資格も取得したり、有力な取引先とつながりをつくるなどの経営努力が必要になりますので、必ずしも独立したほうが勤務した場合の年収を上回るとは限りません。

土地家屋調査士のやりがい、楽しさ

自分のした仕事が後世に残る

土地や建物を測量し登記する「表題登記」が完了してはじめて、その所有者は所有権を主張したり、銀行から融資を受けたりすることができるようになります。

土地家屋調査士の独占業務である表題登記は、建物が存続する限り残り続ける、人々の財産を守る重要な仕事で、とても価値のある業務といえます。

また、たとえば地積測量図を作成した際などには、その作成者として土地家屋調査士の名前が残ります。

図面は半永久的に保存されますので、自分の名前が後世に残ることも、土地家屋調査士のやりがいにつながっています。

土地家屋調査士のつらいこと、大変なこと

土地所有者同士が納得しないことも

土地の境界を確定させる「筆界特定」では、境界線について隣接する土地所有者双方の承認が必要になります。

境界についてお互いの認識が違っていたり、隣同士の仲があまりよくないケースも散見され、その場合の調整が難航することもあります。

過去の図面や資料を基に、双方に合意してもらえるよう説明責任を果たしますが、自分の資産にかかわる問題であるためにどうしても双方がひかず、時間がかかってしまう場合もあり、法的措置を取らないといけないときもあります。

土地家屋調査士に向いている人・適性

現場での仕事と事務仕事のバランスが重要

土地家屋調査士は、境界の目印となる「境界標識」というコンクリートでできた杭を現場で埋めるといった力仕事が必要になります。

一方で、法務局などに提出しなければならない複雑な登記関係書類も作成しなければなりません。

体を使わなければならない現場での作業と、ミスできない精緻な事務作業の両方をバランスよくこなせる人に、土地家屋調査士としての適性があえるといえます。

また境界を確定させる際などには、関係者の意見をうまく調整するコミュニケーション能力も問われることになります。

土地家屋調査士志望動機・目指すきっかけ

関連業種からの転身、兼業が多い

土地家屋調査士の仕事は測量士や司法書士、行政書士などと関連があるため、建設業界で測量作業に従事していた人が資格試験に合格して土地家屋調査士になったり、既に司法書士の資格を有している人が土地家屋調査士の資格も取得したりといったケースがよくあります。

これらは、土地家屋調査士の資格試験が、働きながらでも時間をかけて勉強すればどうにか合格できるレベルであるということとも、少なからず関係していると思われます。

土地家屋調査士の雇用形態・働き方

経験を積んだ後は、多くの人が独立する

土地家屋調査士という資格は半ば独立するための資格といっても過言ではなく、土地家屋調査士事務所などで正社員として一定の実務経験を積んだ後は、多くの人が独立します。

このため、正社員として採用されるためには、遅くとも20代のうちに試験に合格しておく必要があります。

雇用する側もやがて独立することを前提としているため、あまり年齢がいきすぎている人は採用に二の足を踏む傾向が強いようです。

土地家屋調査士の勤務時間・休日・生活

仕事と家庭の両立がしやすい

独立しやすい土地家屋調査士は、当然その勤務地も自分で選択できますので、自宅と事務所を兼ねるケースも珍しくありませんし、勤務時間や休日も融通が利きます。

また各法務局は、それぞれの地域毎に不動産を管轄していますので、役所を含め、特定のエリアだけで仕事が完結することがほとんどです。

土地所有者が遠方に住んでいる場合などを除けば、出張することなどもほぼありませんので、他の職業よりも仕事と家庭生活を両立させやすい一面があるといえるでしょう。

土地家屋調査士の求人・就職状況・需要

関連業界からの需要も相応にある

土地家屋調査士事務所や測量会社からの求人の他、不動産販売会社、不動産管理会社といった不動産業界からの求人もあり、建設市場が縮小していく傾向にあっても、その専門性の高さから、需要は決して少なくありません。

また、土地家屋調査士以外の士事務所、司法書士事務所や行政書士事務所からの求人もあります。

これはそれらの資格保有者の業務が土地家屋調査士の業務と関連性が高いためで、自分の事務所に専門のスタッフを抱え込むほうが、外注するよりメリットがあるからです。

土地家屋調査士の転職状況・未経験採用

経験があるほど転職しやすい

土地家屋調査士は測量業務や登記にかかる法令業務といった、習熟に時間のかかる専門性の高い仕事が多いため、実務経験が豊富にあるほど、転職市場では有利となります。

また、司法書士事務所など、他資格の事務所に転職する場合はさらにこの傾向が顕著で、即戦力を求められるケースが大半となりますので注意が必要です。

未経験の場合は、まず土地家屋調査士事務所でキャリアをスタートさせるべきでしょう。

土地家屋調査士の現状と将来性・今後の見通し

生き残っていくための模索が必要

人口減少に伴って住宅着工件数が減り続けている現状を勘案すれば、今後、少ない案件を取り合う競争がますます激しくなっていくことが懸念されます。

土地家屋調査士の独占業務である表題登記は、建物を建てる際に必ず必要となる業務です。

今後も仕事がなくなるという事態は想定し難いですが、厳しい環境下を生き抜いていくためには、それだけでなく、何らかの工夫が必要です。

司法書士や行政書士の資格を取得したり、裁判外紛争手続き(ADR)などの法律業務に特化したりといった、他者との差別化を図っていくことが、今後より一層重要になってくるでしょう。