【2023年版】土地家屋調査士試験の難易度・合格率

土地の測量および表示に関する登記の専門家である「土地家屋調査士」の国家試験は、不動産系資格のなかでも「難関」といわれるものとなっています。

国家試験の合格率は8~10%ほどで、十分な対策をしないと合格は難しいのが現実です。

多くの受験者が資格予備校・スクールや通信講座を使って計画的に勉強を続けていますが、まずは自身に合う勉強法を見つけることが必要です。

この記事では、土地家屋調査士の試験内容や難易度・合格率、勉強方法などについて詳しく解説しています。

この記事のポイント

・土地家屋調査士は合格率8~10%程度の難関資格
・1200時間前後の勉強時間が必要、1~2年かけて対策する人が多い
・作図問題など、独学での対策が難しい問題も出題される

土地家屋調査士資格とは

土地家屋調査士とはどんな資格?

土地家屋調査士は、土地の測量および表示に関する登記の専門家であり、法務省を監督官庁とする国家資格です。

土地家屋調査士の資格を取得する方法は、以下の2通りがあります。

  1. 国家試験を受けて合格する
  2. 法務省職員として一定年数勤めた後に、法務大臣からの認定を受ける

2はやや特殊なルートとなるため、1のルートで土地家屋調査士を目指す人が大半です。

国家試験に合格したら、各都道府県の土地家屋調査士名簿に登録することで、「土地家屋調査士」を名乗って業務を請け負えるようになります。

なお、土地家屋調査士には不動産の表題登記や筆界特定といったような、この資格を持つ人だけが手掛けることができる「独占業務」があります。

土地家屋調査士資格取得のメリットは?

土地家屋調査士のような「独占業務」をもっとわかりやすくいうと、一部の業務については、資格を持つ人だけが「独占的に」手掛けることが認められているということです。

土地家屋調査士は誰もが簡単に取得できるような資格ではないため、資格を持っていることで、安定的に仕事を得ることにつながります。

もちろん国家資格としての社会的な信用度も十分にあり、土地に関する法律の専門家としての活躍が期待できます。

なお、この資格を取った人は測量会社や土地家屋調査士事務所に就職して働くことが一般的ですが、実務経験を積み、将来的には独立・開業する人がたくさんいます。

独立志向が強い人にはおすすめの資格といえます。

税理士」や「行政書士」など、他の士業系資格もダブルライセンス・トリプルライセンスで取得し、業務の幅を広げながらどんどんステップアップすることも可能です。

土地家屋調査士試験の出題内容・形式

土地家屋調査士試験は「筆記試験」と「口述試験」の二段階選抜で実施され、口述試験に進めるのは筆記試験に合格した人だけです。

筆記試験は「午前の部」「午後の部」に分かれており、試験時間は午前が2時間、午後が2時間半です。

午前の部では、平面測量に関する計算問題が10問、作図問題が1問出題されます。

午後の部では、不動産登記法と民法に関する法律問題が択一式形式(マークシート)で20問、土地と建物に関する問題が記述式で各1問ずつ、計22問が出題されます。

口述試験では、土地家屋調査士の業務に必要となる基礎知識について、1人15分程度で面接が実施されます。

試験範囲は筆記試験の午後の部と同じです。

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土地家屋調査士試験の受験資格は?

土地家屋調査士試験には受験資格がなく、年齢や学歴、実務経験の有無にかかわらず、誰でも試験を受けることが可能です。

なお、「測量士」「測量士補」「一級建築士」「二級建築士」のいずれかの資格を所持している人については、「午前の部」の試験が免除されます。

午前の部の試験は非常に難関であるため、まず取得難易度が低めの「測量士補」の資格を取ってから土地家屋調査士試験に臨むルートが一般的となっています。

こういった事情もあって、後ほど紹介する資格スクール・予備校のなかには、「土地家屋調査士」と「測量士補」の資格同時取得を目指すコースを設けているところもあります。

土地家屋調査士試験の難易度はどれくらい?

土地家屋調査士試験の難易度・合格率

土地家屋調査士試験の合格率は8~10%程度

土地家屋調査士試験の合格率は、かつてと比較するとやや上昇傾向にありますが、それでも8~10%程度という低めの水準で推移しています。

非常に難しい試験と考えておく必要があります。

同じ不動産系資格の「宅地建物取引士」に合格した人が、その先に土地家屋調査士を目指すこともありますが、難易度は土地家屋調査士のほうが圧倒的に高めです。

記述式では数学的な知識を使っての計算スキルや図面を書くスキルが求められることもあって、きちんと試験対策をしなければ合格は難しいでしょう。

土地家屋調査士試験の合格率が低い理由は?

土地家屋調査士試験の合格率を下げている大きな要因のひとつが「足切り制度」の存在です。

午後の部の試験で課される択一式問題と記述式問題には、それぞれに「基準点」が設定されており、どちらかの得点が基準点に満たないと、その時点でもう片方は採点すらされずに足切り、つまり即座に不合格となります。

片方の失敗をもう片方でカバーすることができないため、合格するためには、択一式と記述式をバランスよく得点することが求められます。

また、記述や作図問題も出題され、単なる丸暗記だけでは対応できない内容になっていることも、土地家屋調査士試験の難しさです。

もうひとつ、問題量の割に試験時間が短めとなっていることに苦労する受験者もいます。

とくに苦労するのが午後の試験で、2時間30分のうちに、択一問題(20問)と作図問題(2問)に対応しなくてはなりません。

作図では、三角関数といった数学的な知識を使い、ある程度の時間をかけて考えなくてはならない問題が出題されます。

全体の試験形式に慣れ、時間配分を意識しながら問題を解く訓練をしていないと、時間内にすべてに着手するのは難しいと考えておきましょう。

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土地家屋調査士試験の勉強方法・勉強時間

土地家屋調査士試験の勉強方法

土地家屋調査士試験の勉強方法の種類

資格予備校・スクールに通う

土地家屋調査士試験を目指す人の大半が、どこかしらの資格予備校やスクールに通っています。

予備校・スクールで学べば、プロの講師からポイントを絞ったわかりやすい講義を受けられる、不明点はすぐに質問できるなどのメリットがあります。

土地家屋調査士試験の通学制の予備校・スクールとして有名なのが「東京法経学院」です。

同校では、1967年から土地家屋調査士の受験指導を続けており、歴史ある予備校として信頼度は抜群です。

年度によっては、土地家屋調査士試験合格者の7~8割程度は東京法経学院の出身者というデータも出ています。

開講場所は東京・名古屋・大阪・福岡・高松となっています。(「本科+合格直結答練2023」の場合)

このほか「LEC東京リーガルアカデミー」や「日建学院」でも、通学制の講座を開講しています。

予備校・スクールによって費用や使用教材、講座形式、サポート体制などが異なるため、よく比較して自分に合う講座を選んでください。

通信講座を受講する

自宅から通える範囲に通学制の予備校・スクールがない人、仕事などで通学するのは難しい人は、通信講座を利用することが多くなっています。

通信講座は通学制の予備校・スクールよりも費用を抑えて学べるものが多く、コストパフォーマンスのよい勉強方法として人気が高いです。

土地家屋調査士の通信講座でよく知られているのが「アガルートアカデミー」です。

歴史はさほど長くありませんが、令和4年度土地家屋調査士試験におけるアガルートアカデミー受講生の合格率は53.65%(全国平均の約5.6倍、初受験者の場合)と十分な実績を誇ります。

講義のわかりやすさ、サポート体制の評判もよく、通信講座で勉強していきたい人にはおすすめの講座です。

このほか、先に挙げた「東京法経学院」や、大手予備校として有名な「LEC東京リーガルマインド」、また土地家屋調査士に特化した学校で、多数の関連テキストも出版している「早稲田法科専門学院」などでも通信講座を提供しています。

独学

土地家屋調査士試験は独学合格を目指すことも無理ではないものの、非常に難しいと考えておいたほうがよいでしょう。

正確なデータはありませんが、合格者のうち完全独学した人はほとんどいなかった、という声も聞こえてきます。

土地家屋調査士試験は受験者があまり多くないことから、独学用の市販教材がほとんどありません。

限られた教材で勉強しなくてはならないことや、本来は第三者の添削を受けて実力アップを目指すべき作図問題への対応の難しさを考えると、独学は得策とはいえなさそうです。

なお、上記で紹介してきた予備校・スクールや通信講座では、総合的な講座のほか、一部の科目に絞った講座や直前模試なども開講されています。

独学を軸に、苦手なところや自信がないところだけは予備校・スクール、通信講座を活用するといったハイブリッド型で効率的に勉強を進めていくのもひとつの手でしょう。

土地家屋調査士試験の勉強時間は約1200時間・勉強期間は1年半

合格までに必要な勉強時間は、約1200時間がひとつの目安とされており、1年~2年ほどかけて受験対策に励むケースが一般的です。

人によって理解スピードに差はありますが、最低でも1000時間、場合によっては1500時間ほどかかると考えておきましょう。

1日に平均3時間勉強するとすれば、ちょうど1年ほどで1000時間に達します。

休日は7~8時間ほど勉強できるという人で、効果的な勉強方法を続けていれば半年~1年以内で合格することも可能でしょう。

なお、土地家屋調査士試験の受験者の大半は、先に「測量士補」の資格を取得して「午前の部」の免除認定を受けます。

そして、筆記試験の後に実施される口述試験で落ちる人はほどんどいません。

したがって、土地家屋調査士試験の合否は、実質的に「午後の部」の出来で決まってくるとみなすことができます。

択一式の20問は1問2.5点で50点満点、記述式の2問は1問25点で50点満点、合計100点満点であり、近年の基準点は各30点~35点前後、合格点は70点~80点前後です。

以下では、択一式と記述式、双方のポイントを簡単にご紹介します。

択一式のポイント

択一式の近年の傾向をみれば、不動産登記法から16問、民法から3問、土地家屋調査士法から1問程度の出題となっています。

民法は、総則、物権、親族・相続からの出題がメインであり、債権からはほとんど出題されません。

例年、合格者と不合格者の総得点は僅差であるため、この択一式の正解が1問多いか少ないかで合否が分かれることもよくあります。

過去問や模試などでは、正答率8割、つまり16問正解を目標に、勉強に励みましょう。

記述式のポイント

記述式では、座標や面積を定めるための計算問題や、図面作成問題、数ページにわたる資料からどんな登記が必要なのかを問う読み取り問題などが出題されます。

記述量の多さの割には試験時間が短く、相当なスピードが要求される内容となっています。

単に知識を丸暗記するだけでは得点できないため、「なぜそうなるのか」についての確かな理解が必要です。

計算問題では、三角関数などの数学力が求められますが、出題内容はある程度パターン化されていることから、慣れれば電卓のボタンをどう押すかだけです。

演習問題を繰り返して、身につけた知識を応用する力を養いましょう。

土地家屋調査士試験は独学で合格できる?

土地家屋調査士の試験勉強は、予備校・スクールや通信講座を活用して進めていくことが一般的です。

初めて受験する場合には、まず「測量士補」などの別資格を取得し、科目免除制度を使って土地家屋調査士試験に臨む流れがスタンダードです。

先にも挙げましたが、土地家屋調査士試験は市販教材がさほど多くないこともあり、勉強効率を考えると、やはり予備校・スクールや通信講座を使いながら勉強する方がおすすめです。

どうしても独学をするのなら、2~3年ほどかけて合格を目指すことも覚悟しておきましょう。

令和4年度土地家屋調査士試験の受験者数・合格率

土地家屋調査士試験受験者数

土地家屋調査士試験受験者数_令4

土地家屋調査士試験合格率

土地家屋調査士試験合格率_令4

令和3年度 土地家屋調査士試験合格者男女別構成

土地家屋調査士試験合格者男女比率_令4

令和4年度 土地家屋調査士試験の概要

試験日 ・筆記試験:令和4年10月16日(日)
・口述試験:令和5年1月26日(木)
受付期間 令和4年7月25日(月)~8月5日(金)
試験地 法務局又は那覇地方法務局ごとに、それぞれの局が指定した場所
受験資格 年齢、性別、学歴等に関係なく、誰でも受験することができます
試験内容 多肢択一式及び記述式
試験科目 不動産の表示に関する登記につき必要と認められる事項であって、次に掲げるもの
1.民法に関する知識
2.陶器の申請手続き(登記申請書の作成に関するものを含む)及び審査請求の手続きに関する知識
3.土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能であって、次に掲げる事項
 (ア)平面測量(トランシット及び平板を用いる図根測量を含む。)
 (イ)作図(縮図及び伸図並びにこれに伴う地図の表現の変更に関する作業を含む。)
4.その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力
合格基準 多肢択一式問題又は記述式問題の各成績のいずれもそれぞれ一定の基準点に達した場合
合格率 9.6%(令和4年度)
合格発表 令和5年2月17日(金)
受験料 8,300円
詳細情報 法務省 土地家屋調査士試験

土地家屋調査士試験の難易度まとめ

土地家屋調査士試験は、合格率8~10%の難関試験です。

合格までには1200時間前後が必要といわれており、1年~2年ほどかけて勉強計画を立てていく人が多いです。

作図問題など独学での対策が難しい内容が含まれることもあって、多くの受験者が予備校・スクールや通信講座を使って勉強をしています。