絵本イラストレーターの仕事

子どもにどう見えているかを意識

絵本のイラストと一口に言っても、使う画材や絵のタッチなどは、無限といっていいくらいたくさんあります。

一番メジャーなのは、黒の輪郭線とCGの彩色の組み合わせですが、昔の絵本のように、色鉛筆や水彩絵の具、パステルなどでアナログに表現している絵本も、まだまだたくさんあります。

また、日本の昔話などの場合、水墨画や版画などを使うこともあります。

もっと変わったところでは切り絵や貼り絵などもありますし、実に多様な能力が要求される分野だといっていいでしょう。

絵本の読者は、当然ながら子どもです。

本を読んであげる保護者さんももちろん読者ではありますが、保護者の方が望まれるのは、子どもが喜ぶことなので、やはりメインの読者は子どもといえるでしょう。

それを考えると、絵本の絵は「子どもにどう見えているか」を意識する必要があります。

「そんなの当たり前」と思われるかもしれませんが、これはとても難しいことです。

子どもの心に届く絵

たとえば、絵本の歴史で一番有名な作品の一つに「ねないこだれだ」(せな けいこさん作)があります。

夜遅くまで起きている子どものところに、おばけがやって来て、子どもをおばけに変えて、おばけの国(?)に連れていってしまう、という内容です。

これは、何十年にもわたり、日本の子どもたちを苦しめてきたホラー絵本であり、「ねないこだれだ」で検索すると「ねないこだれだ トラウマ」という検索候補まで出てきます。

そして、それだけ怖い本なのですが、おばけの絵はいたってシンプルで、子どもが描いたような絵です。

大人になってから見ると「何でこれが怖かったんだ?」と不思議になるくらい、かわいくてシンプルな絵です。

多分、これがリアルなお化けだったら、逆に子どもはこれほど怖がらなかったでしょう。理由は、「リアルな映像」は、子どもの脳内で、まだ再生できないからです。

子どもは大人と違い、映像の認識力が発展途上です。

ですので、絵本を読んだ後、脳内で再生できる映像は、「ねないこだれだ」のような、シンプルなものに限られるのです。

読んだ後、毎晩あのおばけの映像が頭に浮かぶので、子どもたちは怖がるわけです。

このように、子どもの印象に残る絵と、大人の印象に残る絵は、まったく違います。

その違いを認識して子どもの心に届く絵を描ける人は、すばらしい絵本のイラストレーターといっていいでしょう。

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