「出版社社員」とは

書籍、雑誌、漫画などを企画・編集する出版社に勤める人。自社の本を広める営業職も活躍。
出版社の社員には編集者や営業などさまざまな職種があり、協力しながら仕事を進めていきます。
企画に始まり、制作、印刷といった流れを経て、完成した出版物は書店などへ出荷され、読者のもとに届きます。
書店への営業や広告宣伝も出版社の仕事です。
出版社へ新卒での入社を希望する場合は、大学で学ぶに越したことはないでしょう。
転職での入社の場合は、中小の出版社で経験を積み実力が認められた人なら、高卒であっても大手に転職できる可能性は十分にあります。
大手の場合、正社員の平均年収は1300万円以上。
中小出版社を含めた出版社全般の平均年収は550万円〜600万円ほどで、大手だけと比べると平均値がぐんと下がります。
書籍離れが深刻化する中、出版業界各社は生き残りをかけた再編へと動き出しています。
元気な会社を見極めて選べば、将来性を確保できるでしょう。
「出版社社員」の仕事紹介
出版社社員の仕事内容
書籍や雑誌を発行する
出版社とは、書籍や雑誌などの出版物を発行する企業で、大きく分けると制作・営業・管理の3部門の業務を行っています。
制作は企画に始まり、誌面構成を考えて、著者やデザイナーなどのクリエイターと協力しながら原稿をつくり、印刷会社へ入稿し、納品物を確認します。
営業は、自社の商品が売れるように働きかけるのが仕事で、新刊をPRし、消費者を対象としたイベントの企画運営、雑誌に掲載する広告営業も担当します。
管理はアウトソーシング先の選定や、経営・経理・財務などといった、会社を持続させるための業務を行います。
出版物の企画から印刷、製本までのクリエイティブな業務に加え、書店への営業や広告宣伝といった、出版物がより広く読まれるための業務も出版社の仕事です。
出版社社員の就職先・活躍の場
全国の出版社
出版社社員は、全国にある出版社で働きます。
全国誌をつくっていて誰もが知っているような大手出版社から、地方誌や専門誌を作る中小の出版社など規模はさまざまで、勤務先によって仕事内容も大きく変わります。
近年は編集プロダクションとの線引きがあいまいになってきていますが、出版社の大きな特徴は自社で雑誌や書籍などのメディアを持っていることです。
メディアを自ら作り上げることによって、出版社は制作だけでなく広告収入や流通・物販によって収入を得ているところが、編集プロダクションとの大きな違いです。
出版社社員の1日
締め切りに追われる毎日
出版社社員は、どの部署で仕事をするかによって一日の流れが変わります。
管理部門などは比較的落ち着いて仕事ができますが、制作現場の場合は、締め切りに間に合わせるため激務となることもあります。
ここでは締め切り前の制作現場の一日をご紹介します。
15:00業務開始
早朝まで仕事をしていたため、遅めの出勤
編集の進捗状況を確認します
16:00 編集作業
記事を作成し、レイアウトして、実際のページ割りを決めていきます。
17:00 休憩
18:00
まだ原稿が上がってきていない担当者に、改めて連絡・催促します。
19:00 取材交渉
ライターや担当者に代って取材交渉をすることも少なくありません。
21:00 原稿確認
最終的にそろった原稿をまとめ、パソコンで編集作業を進めます。
23:00 ゲラ確認
印刷所でゲラ刷り(校正用に試し刷りをした印刷物)した内容と、原稿を照らし合わせて校正者とともに確認します。
24:00
原稿を確認し、印刷会社に連絡をして退勤
深夜や早朝に及ぶこともあります。
出版社社員になるには
大手は新卒採用が中心
ひと口に出版社といっても、大手から小規模までさまざまな会社が存在しています。
大手出版社は新卒採用を積極的に行っており、求人のほとんどは大卒が必須のため、出版社社員を目指す場合は大学で学ぶに越したことはないでしょう。
また、大手になればなるほど高倍率となり、結果的に難関大学卒の人が多いことから、難関大学を修了したほうが有利であるといえます。
もちろん学歴も大切ではありますが、たくさん本を読んでいたり、企画やアイディアを出すことが得意だったりといった素質や人間的な魅力も大切です。
出版社社員の学校・学費
出版社社員は大卒がほとんど
出版社社員になるためには、大卒が必須といっても過言ではないでしょう。
学部や学科についてはほとんど問われることはありません。
一見、文系のほうが適しているように思われますが、出版社によっては理数系出身の人のほうが好まれることもあります。
大学で何を学んできたかよりも、これから何を生み出せるかのほうが重要視されているため、学生のうちに自分がどのように出版に関わりたいか、どんな出版物を作りたいかを明確にしておきましょう。
出版社社員の資格・試験の難易度
資格よりも実力重視
実力主義の出版業界において、資格は一切通用しないと言っても過言ではありません。
第一線で活躍する編集者であっても、何の資格も持っていない人が大勢います。
資格そのものは必要ありませんが、スキルを持っていることの目安となる検定は存在しています。
DTPの知識と技術を認定するDTPエキスパート認証試験、書籍の編集実務に必要な知識や技能を認定する書籍製作技能検定、校正の技能を認定する校正技能検定などです。
採用試験のプラスになる可能性もあり、現場で技術を生かすこともできるので、こうした資格は取得しておいても損はないでしょう。
出版社社員の給料・年収
規模や売り上げで異なる年収
出版社の規模はピンキリで、当然、給料も会社の規模や年商によって、大きく差が開いています。
大手の場合、正社員の初任給は平均約26万円だといわれ、ベテランも含めた平均年収は1300万円以上と、他の出版社に大きく差をつけています。
中小の出版社も含めた出版社全般の平均年収は550万円から600万円ほどで、大手だけと比べると平均値がぐんと下がりますが、そんな中でも医学系出版社は年収が高く、平均1200万円台を誇っているのが特徴です。
出版社社員のやりがい、楽しさ
多くの読者に感動を与える
出版社社員にとって、雑誌や書籍の完成は待ちに待った瞬間です。
特に編集者にとっては、製本された書籍の完成品を手に取っても、実際の売り上げや読者の反応などを見るまでは不安がつきまとうものです。
無事に読者の手に届き、反応があったときは何にも代えがたい喜びを感じます。
さらに、レビューや寄せられた感想などで、多くの読者に感動を与えることができたことを知る機会があると、「この仕事をやっていてよかった」と心から実感する人が多いようです。
出版社社員のつらいこと、大変なこと
板挟みになることも
出版社社員は、ライター・デザイナー・イラストレーター・カメラマンなど制作スタッフをはじめ、営業や管理スタッフ、作家や取材先の人たち、そして印刷会社をはじめとする業務委託先と、たくさんの人たちとかかわる仕事です
時には人と人との板挟みにあったり、プレッシャーを受けたりすることも少なくありません。
しかし、そうして多くの人と協力しなければ、書籍や雑誌は作ることができません。
こうした苦労を乗り越えて、編集者はメディアを作っているのです。
出版社社員に向いている人・適性
コミュニケーション能力は必須
出版社社員は、パソコンに向かって黙々と作業をするようなイメージがあるかもしれません。
しかし実際には、それぞれ専門の異なる人たちが、協力し合いながら仕事を進めていきます。
そのためには、こまめにコミュニケーションを取って、コンセプトやテーマなどの全員の認識を統一することが大切です。
特に編集者の場合は、大勢のスタッフのクリエーションをまとめ上げる業務が中心となるため、幅広い人脈とコミュニケーション能力が不可欠です。
出版社社員志望動機・目指すきっかけ
活字が好き・読書が好き
出版社社員の志望動機として、小さい頃から本を読むのが好きで、文章を書いたり読解したりすることが苦にならないということがあげられます。
また、特定の出版物や書籍のファンで、自分も制作に携わりたいと出版社を目指す人もいます。
志望動機を語る際には、自分のエピソードに加え、出版社が出している出版物や企画について絡めて話すことができると、より効果的です。
面接では志望動機以外に、最近読んだ本や雑誌、気になる企画などを問われることもあるので、しっかりと対策を考えておきましょう。
出版社社員の雇用形態・働き方
アルバイトや契約社員も多い
編集補助や事務職などにアルバイトを使う出版社は多く、会社の規模にかかわらず募集を出している期間が長いのが特徴です。
出版社のアルバイトは入れ替わりが激しいため、常に募集している出版社もあります。
アルバイトの場合は、学歴は問われないことが多いものの、将来有望な大学生の採用が優先される傾向にあり、そのまま社員に登用されるケースも少なくありません。
また、近年ではこうした雑務をアウトソーシングしている会社もあり、派遣会社から出版社へ派遣されるケースもあります。
出版社社員の勤務時間・休日・生活
締め切りと長時間残業
出版社の定時の勤務時間は9時から18時、10時から19時などで、事務や経理などの職種の人は大体定時で勤務しているようです。
ただし、制作の現場はそうはいきません。
雑誌の場合は発行日があらかじめ決まっているため、印刷会社へ入稿する締め切り日を何としても死守しなければなりません。
そのため、締め切り前はどうしても長時間残業を強いられることになってしまいます。
書籍の場合は最悪、発行日を動かすことができるため、雑誌ほどの過酷な残業時間にはならないようです。
出版社社員の求人・就職状況・需要
定期採用は高倍率
定期採用は、大手出版社を中心に毎年行われ、基本的に学部や学科は問われません。
内定辞退を防ぐため、大手出版社の内定が決まった後のタイミングで、中小の出版社の採用試験が行われるのが一般的です。
採用される人数は規模の大きな出版社ほど多くなる傾向にありますが、人気のある職種で非常に高倍率のため、狭き門となっています。
配属については本人の希望は聞きながらも、適性によっては希望する分野以外へ配属されることもあるので覚悟しておきましょう。
出版社社員の転職状況・未経験採用
一般職とクリエイティブ職で異なる
大手出版社では毎年決まった期間に、その年に必要な職種の経験者を募集することが多く、中小の出版社では欠員が出ると不定期で募集をかけることが多いようです。
一般職の場合、その職種における実務経験のある人を募集するのが大半です。
クリエイティブ職の場合、学歴は問われず、経験と能力で合否を判断されることがほとんどです。
激務のクリエイティブ職では、他分野の職種に比べて人の入れ替わりが激しいため、一般職に比べ求人情報も多いのが特徴です。
出版社社員の現状と将来性・今後の見通し
生き残りの道を模索する
出版業界全体の市場は今後も厳しい状態が続くものと予想され、出版業界各社は生き残りをかけた再編へと動き出しています。
大手印刷会社が大手書店数社を傘下に入れたり、中堅出版社と中堅書店が経営統合をしたりと、結束する形で勢力を拡大しています。
また、通信教育、情報・チケット販売、地図データベース事業といった、ほかの領域へシフトしている出版社も目立っています。
こうしたさまざまなコンセプトを打ち出したビジネスモデルを展開することで、生き残りをかけているのです。