「言語聴覚士」とは

言語聴覚士_画像

話すことや聞くことが不自由な人に対し、それらの能力を回復させるためのリハビリを行う。

言語聴覚士は、生まれつきの障害や脳卒中、脳梗塞などにより、話すことや聴くことに不自由がある人に対して、言語能力や聴覚能力を回復させるリハビリテーションを行う仕事です。

言語だけでなく、食べることや飲み込むことができないという問題についても扱います。

言語聴覚士になるためには、言語聴覚士の養成課程がある大学や短大、専門学校で3年以上学ぶか、一般の大学を卒業後、指定の養成所で2年以上学んだのちに、国家試験に合格することが必要です。

高齢化社会において、言語障害や、食べる、飲む能力に問題がある人が増えているため、言語聴覚士のニーズも高まってきています。

病院やリハビリテーションだけではなく、自宅訪問の仕事も増えてきています。

「言語聴覚士」の仕事紹介

言語聴覚士の仕事内容

耳や口の機能を専門に訓練する

言語聴覚士は、難聴や言語障害、音声障害、嚥下障害(ものを上手く飲み込めない障害)の患者さんに対して、機能向上のためのリハビリをほどこす職種です。

脳の障害やケガ、ときには生まれつき言葉を発することが難しかったり、文字を理解できなかったり、ものを飲み込みにくくなってしまうといった症状が出る人がいます。

そういった人たちの症状の原因がどこにあるのか、メカニズムを理解し、医師の指示の下で一人一人に合わせた訓練プログラムを作成し、実施します。

具体的には、言葉を思い出す訓練、自分の発話を聞き直す訓練、発語に関わる器官の運動訓練、摂食に関わる筋肉の強化、呼吸筋の強化、補聴器の調整など、業務は多岐にわたります。

これらのリハビリを実施することで、患者さん自身の自立や社会復帰をサポートしていくのが言語聴覚士のおもな仕事です。

言語聴覚士の就職先・活躍の場

病院、歯科医院、障害者施設などで活躍

言語聴覚士の就職先としてまず挙げられるのが、脳神経外科、耳鼻咽喉科、整形外科などの診療科のある病院です。

神経機能の低下による言語障害や嚥下障害、耳鼻科領域の疾患による聴覚の低下や、整形外科手術後の筋力低下による言語障害などのリハビリを担当します。

口腔外科や歯科医院でも、口の中の治療によって発語が難しくなった患者さんの機能を向上し、QOL(生活の質)改善のため、言語聴覚士が常駐していることがあります。

障害者施設では、先天的または後天性の病気やケガで聴力が低下したり、言語障害を抱えた人など、それぞれの症状に合わせて機能向上のためのリハビリを実施します。

言語聴覚士の1日

目の前の一人を注意深く見守る仕事

言語聴覚士の1日は、急患や繁忙期などがないため、あらかじめ定まったスケジュールをきちんとこなしていくことが大切になってきます。

ここでは、医療機関に勤める言語聴覚士の1日を挙げてみます。

・医療機関勤務の言語聴覚士のスケジュール

08:00 ミーティング

出勤後、理学療法士、作業療法士などを交え、患者さん一人一人の状態や今日のスケジュール、伝達事項を共有します。

10:00 言語訓練

言語に障害のある患者さんの訓練を行います。

障害の原因は人それぞれで、状態も微妙に違いがあるので、その人に合わせた訓練を行います。

12:00 患者さんの昼食付き添い

ものを飲み込むのが難しい患者さんの場合、誤って喉にものを詰まらせることがないよう付き添いをします。

訓練を重ねてきた患者さんにとっては、食事そのものが訓練でもあります。

14:00 回診同行

患者さんの回診に同行して、病状の把握をし、今後のプログラムに生かします。

16:00 嚥下検査

嚥下機能の検査には嚥下造影検査や内視鏡検査がありますが、これらは医師により実施されます。

言語聴覚士は検査によって撮影された写真の読影を行い、患者さんの病状把握に役立てます。

18:00 勉強会

一通りの訓練・検査を終え、業務は終了しますが、勉強会がある日は参加します。

新たな訓練法を取り入れたり、一つの症例に対して討論方式で訓練方針を話し合ったりする(ケースカンファレンス)こともあります。

言語聴覚士になるには

養成課程を修了し、国家試験を受ける

言語聴覚士として働くには、国家資格である言語聴覚士の資格取得が必要です。

言語聴覚士になるには、言語聴覚士養成課程のある短大か専門学校(3年ないし4年)、もしくは4年制大学を卒業し、国家試験の受験資格を得ます。

国家資格に合格すると、言語聴覚士として働くことができます。

大学を卒業している場合は、2年間の養成課程を修了すると国家試験を受けることができます。

言語聴覚士養成学校の入学試験では、5教科からまんべんなく出題される傾向がありますので、高校在学時から苦手科目を克服しておくと有利でしょう。

言語聴覚士の学校・学費

認可された教育機関で3年~4年学ぶ

言語聴覚士になるには、文科省および都道府県知事の認定した養成施設で3年~4年学ぶ必要があります。

4年制大学を卒業している人の場合は、2年学ぶと国家試験の受験資格を得ることができます。

学費は、地域や学校によって差はありますが、約200万円~500万円のところが多いです。※1

さらに、社会人生活をしながら言語聴覚士の資格を取りたい人のために、夜間部のある学校もあります。

しかし通信教育ですと、必要な実習の時間を十分に取れず、人の生活に深くかかわるだけの学習には不足が多くなります。

そういった理由から、言語聴覚士になれる通信コースはありません。

※1 参照元:医療・福祉・保育系専門学校完全ランキング http://www.sch-navi.com/ranking/ranking_c.html

言語聴覚士の資格・試験の難易度

ほかのリハビリ系資格より難易度は高い

言語聴覚士の試験の合格率は、近年60%前後で推移しており、理学療法士や作業療法士の合格率と比べても低い値です。

専門課程を規定の年数学習した人たちが受験しているということも鑑みると、難易度は多少高めといってもよいでしょう。

問題の難易度自体も年度によりばらつきがあり、難しい年は合格率約40%というときもあったようです。

どのような問題が出てもスムーズに回答できるよう、なるべく早いうちから国家試験対策に取り組んだほうがよさそうです。

言語聴覚士の給料・年収

平均年収は低めだが、勤務先にもよる

正社員として働く言語聴覚士の平均年収は300万円~400万円程度が一般的で、他のリハビリテーション関連の職業と比べると若干低めとなっています。

ただし、地域や勤務先によっては給料や待遇にだいぶ違いがあり、特に大きな病院では各種手当や有給休暇、各種保険制度など、手厚い待遇が用意されていることも多いようです。

非常勤やパートを募集しているケースも増えており、時給にすると1300円~2300円程度が相場となっています。

言語聴覚士のやりがい、楽しさ

患者さんの障害を軽減することがやりがい

言語聴覚士のたずさわる「読む力」「文字を見る力」「話す力」「食べる力」「聞く力」は、さまざまな理由によって失われたり、機能が落ちたりします。

それぞれの患者さんがどのような理由によって、どのような障害が出るのかを、さまざまな検査器具を使ったりなどして探り、最も効果的な訓練法を考えます。

自分の考えた訓練法によって、患者さんの声や聴力を取り戻せたとき、患者さんの喜ぶ顔を見られるのは言語聴覚士のやりがいに繋がります。

また、リハビリ業務はチーム医療でもあります。チームの一員として、患者さんを多角的に見つめなおし、その後のケアに役立てることができるのが、言語聴覚士など、リハビリ職の魅力です。

言語聴覚士のつらいこと、大変なこと

話したくても話せないもどかしさの壁

患者さんは、もっと自分のことを伝えたいと思っているかもしれません。

ですが、話す力や聞く力が低下してしまうと、コミュニケーションに直接的に影響してしまいます。

それでも言語聴覚士はさまざまな手段を使い、患者さんの困っていること、不安や苦しみまでも理解しなければいけません。

一朝一夕で解決することが難しいリハビリ職だからこそ、どんな患者さんとも理解し合えるよう、常に新たな技術を取り入れる努力なくして、よい仕事はできないでしょう。

言語聴覚士に向いている人・適性

細かな観察力や機転、団結力がある人

言語聴覚士が担当する患者さんたちは、言語でコミュニケーションを取るのが難しい状態にあります。

言語聴覚士は、そんな患者さんの「言語以外で伝えようとしている何か」を少しでも多く理解するために、いろいろな視点から細かく患者さんを観察しなけれないけません。

そして、会話をするのが難しい患者さんに、自分の思いを伝えるために、患者さんに合わせた方法を編みだす機転が利く人は、この仕事に向いていると思われます。

また、チーム医療で他のリハビリ職や、医師、看護師、臨床心理士など、さまざまな職種の人と連携をとり、患者さんのことを多方面から理解できる人に適性があるといえるでしょう。

言語聴覚士志望動機・目指すきっかけ

職場体験やボランティアでの体験

言語聴覚士という仕事は、同じリハビリ職の理学療法士や作業療法士と比べるとややマイナーな職種です。

ですから、始めからこの職種を目指していたというよりは、職場体験やボランティアなどで初めて言語聴覚士のことを知り、志す人が多いようです。

話す、食べるといったことは日常に欠かせない機能であり、それが失われてしまう人がいることに衝撃を覚え、またそのような人を救える言語聴覚士という仕事に惹かれたという人もいます。

もともと医療職に興味があり、見学会などで言語聴覚士の仕事内容について知り、興味を持ったという人など、さまざまな理由で言語聴覚士を目指す人がいます。

言語聴覚士の雇用形態・働き方

正社員雇用が多いが、パート求人もある

高齢化にともない、聴覚障害や言語障害、嚥下障害になる人が増えている昨今、言語聴覚士は正社員として長く働き続けてほしい人材となっています。

女性も多く活躍している職種のため、育児しながらの仕事にも理解を示す職場が多く、育休や時短勤務などのサポートが手厚い職場も多くみられます。

また、リハビリ施設などでは、午前のみや午後のみのパート勤務で働ける場所もあります。

福利厚生は正社員ほどではありませんが、自分の子育てのリズムに合わせて働けるのがパート勤務の利点といえます。

言語聴覚士の勤務時間・休日・生活

シフト勤務制が多く、残業は少ない

言語聴覚士の場合、勤務時間は8:30~18:00くらいの時間帯で、正社員なら8時間前後、パート勤務だと1.5時間からOKというところもあります。

残業は月に多くても10時間、休日は月に9日程度の職場が多く、そこまで多忙な勤務時間ではないといえると思います。

また、定時勤務よりシフト勤務のほうが多くみられますので、子育てをしながら働く場合は自分のスケジュールに合わせてシフトを入れるよう、気をつける必要がありそうです。

言語聴覚士の求人・就職状況・需要

高齢化により求人はどんどん増えている

高齢者社会になってくると同時に、加齢や脳障害による言語障害、聴覚異常、嚥下障害を抱える人が増えており、言語聴覚士言語聴覚士は不足傾向です。

ですので、言語聴覚士を求めている職場は増えてきており、今後もどんどん求人は増加していくと予測されます。

就職活動も売り手市場の職種のため、困難なケースは比較的少ないといえそうです。

言語聴覚士の分野における発見や新しい検査法、訓練法も次々と導入されており、就職後も積極的に学ぶ姿勢があれば、職場でも重宝されるはずです。

言語聴覚士の転職状況・未経験採用

転職先、未経験採用も多い

言語聴覚士は、その性質上経験を積めば重宝される人材であり、絶対数も少ないので、ある程度の経験があれば転職も難しくはないでしょう。

未経験・ブランクあり・新卒採用なども積極的に行い、特に女性の育児などに関しては、どこの職場も協力的なところが多いのが特徴です。

新卒や未経験の場合は先輩の言語聴覚士についてもらい、また先輩の仕事ぶりを見て学び、勉強会も活発に行われています。

新しい発見や情報を取り入れていく向学心さえあれば、いつからでもキャリアを積むことができそうです。

言語聴覚士の現状と将来性・今後の見通し

さまざまな職場で需要が増えている

乳幼児から高齢者まで、多くの人々が言語聴覚士のリハビリテーションを必要としています。

高齢化社会が進む中、高い専門知識と技術を持った言語聴覚士の需要はさらに高まっていくものと考えられています。

また、この仕事は患者さんと直接接するばかりでなく、コミュニケーションをとりながら患者さんの不安を和らげることも大事です。

そのような理由から、気配りのできる女性にとっても活躍しやすい職業のひとつだと言えます。