言語聴覚士のつらいこと・大変なこと
患者さんとの信頼関係
言語聴覚士は、言語や食事等の機能低下や障害がある人に対しリハビリを行う仕事ですが、ケガや病気である日突然コミュニケーションやものを食べる能力が失われたことを受け入れられる患者さんは多くありません。
また、訓練の結果がすぐに出るわけではないため、患者さんが訓練を拒否したり消極的になったりすることがあります。
リハビリをする方1人ひとりに向き合い、信頼関係をつくることは簡単なことではありませんし、ご家族の協力を得ることも大変です。
失語症や高次脳機能障害などでは外部には現れない問題を抱えることがあるため、身近な家族でも患者さんの状態を理解できない場合があります。
ご家族に助言や指導をすることもありますが、理解をしてもらえるまでに時間がかかることも少なくありません。
常に新しい知識を学ぶ
言語聴覚士は、医師・歯科医や看護師などの医療分野、理学療法士、作業療法士などのリハビリ分野、また介護福祉や学校教育分野と連携しながらリハビリを進めていきます。
関連する分野の理解を深めるためには勉強会などに参加し、新しい知識を吸収することが必要ですが、日々の業務に追われて難しいことがあります。
常に勉強を続けなければならないのも、言語聴覚士の苦労の1つです。
技術やコミュニケーション能力を高める
言語聴覚士は、それぞれの訓練に対して高い技術力が求められます。
嚥下(食べ物や飲み物を飲み下す)訓練では、患者さんがうまくできないと肺炎をおこしてしまうなど、生死に直結することがあるため慎重に行わなくてはなりません。
また、医師や看護師などとの連携が大変重要なため、多忙な中でも患者さんの状態を的確に伝え情報を共有することが重要です。
言語聴覚士の悩み
すぐに効果や結果が出ないことも多い
リハビリはすぐに結果が出ないことも多々あります。
一般的にはある程度長期的な計画を立てて行い、患者さんへの訓練を通じて徐々に出てくる変化を正確につかみ、それを先につなげていくということが大切です。
言語聴覚士の仕事の中で、短期間で劇的な変化を実感することはあまりないでしょう。
そのため、自分の熱意が空回りしてしまうこともあれば、手応えを感じないこともあり「患者さんのためにどうにかしたい」という思いが高まるほど、その状況にむなしさを感じてしまうこともあるかもしれません。
患者さんの症状や状態に意識が強く向いていると、どうしても結果ばかりが気になってしまいますが、重要なのは将来につなげていくことで、現状を冷静に分析して、根気よく続けていくことが大切です。
子ども相手には専門の知識・技術が必要
近年、言語聴覚士は教育現場など子どもを対象とする現場で仕事をすることも増えています。
このような場面では、言語聴覚士としての専門的な知識を持っているだけではまったく対応できないことも多くあります。
子どもとの接し方や、態度の変化・心理状態をしっかりと把握することができないと、訓練をしようと思ってもできない状況になることもあります。
子どもと関わっていく言語聴覚士のなかには、訓練よりも子どもの扱いに大きく苦労をしてしまう人もいるようです。
専門領域を極めるには時間がかかる
言語聴覚士は高い専門性を発揮できる職業ですが、それを極めていくのはとても大変なことです。
口の中は外から常に見えているものではないため、患者さんの口の動きや食べ方から、ある程度予測していくことが必要になります。
そして、時を見て実際に口の中を観察し、予測を確信に変えていくというスキルが必要になります。
口腔内は外から見える要素が少ない分、経験が浅いうちは経過の観察には苦労することも多くあるでしょう。
言語聴覚士を辞める理由で多いものは?
言語聴覚士が離職・退職する理由で多いものは、待遇や環境です。
特に給料に関しては理学療法士や作業療法士と比べると低いことが多いようです。
これは言語聴覚士という国家資格ができてから日が浅く、言語聴覚士に就いている人が若い世代が多いためといわれています。
また、他の分野についてさらに勉強する、他の職場で経験を積むなどキャリアアップのための転職も比較的多いようです。