役員にはどんな種類がある?
会社法上の役員の定義と種類
会社の設立や組織、運営管理について定めた「会社法」という法律では、役員とは「取締役」「監査役」「会計参与」の3つの任に就く人をいいます。
それぞれの主な役割は、下記の通りです。
・取締役:会社経営や業務執行の意思決定を行う
・監査役:取締役と会計参与の業務を監査する権限をもつ
・会計参与:取締役と共同して、株式会社の計算書類等を作成する
役員は、一般社員(従業員)のように会社と「雇用契約」や「労働契約」を結ぶのではなく、株式会社の最高意思決定機関である株主総会で選任され、会社に「委任」される形で任に就きます。
以下では、3種類の役員について、さらに詳しく説明します。
20代で正社員への就職・転職
取締役とは
会社の業務執行に関する意思決定をする
取締役は、会社の業務執行に関する意思決定を行う役割を担います。
あらゆる株式会社は取締役を置くことが義務付けられています。
取締役は必ず1名以上置く必要がありますが、「取締役会」を設置する株式会社では、最低3名の取締役が必要です。
なお「委員会設置会社」「公開会社」「大会社」のいずれでもない会社の場合には、取締役会の設置は義務付けられていません。
取締役が1人であれば、その人が業務執行の代表権を持ちますが、取締役が2名以上になる場合は、会社の権利や義務などに関する最終的な決定を行う「代表取締役」の選任も必要になります。
取締役の人数は会社によってさまざま
設立したばかりの小規模な会社では、取締役会を設置しないケースも多いです。
つまり取締役は1名で、「代表取締役」だけで会社を経営することになります。
一方、大手企業になればなるほど選任される取締役の数は増える傾向にあり、多ければ15名程度で取締役会が構成されることもあります。
なお、取締役には通常の「(社内)取締役」と、その会社や子会社に在籍したことがない「社外取締役」がいます。
最近では、第三者的な立場から経営に携わる社外取締役を置く企業が増えているといわれます。
役付きの取締役
日本の会社では、肩書きのついている役職者が取締役になるケースがよく見られます。
・取締役会長
・専務取締役
・常務取締役
・取締役CEO など
これらのように、「専務」や「CEO」などの肩書きに「取締役」がついている場合には、その人は役員(取締役)の一人ということです。
逆に「専務」や「CEO」でありながら「取締役」がついていない場合は、その人は役員ではありません。
監査役とは
取締役や会計参与の職務執行を監査する
監査役は、取締役や会計参与の活動状況を監査し、その正当性や健全性などを維持する役割を担っています。
取締役らの活動が法に反していないかどうか、不正をはたらいていないか、社会常識に照らして不当なものでないかなどの観点から厳しくチェックすることで、適正な企業経営ができるように努めます。
さらにかみ砕いていうと、取締役会がなれ合いなどによって正常に機能しなかったり、違法行為が発生したりするのを防ぐ役割を担っているのが監査役です。
万が一、不正や違法が見つかった場合には、取締役会に対してその行為に関する差し止めの請求や、株主総会での報告などを行います。
監査役が設置される会社とは
監査役を置かなくてはならないのは、「取締役会設置会社」と「会計監査人設置会社」です。
それ以外では監査役の設置が義務付けられていないため、実際に監査役がいない会社も見られます。
なお、取締役会を設置している会社で会計参与を設置する場合には、原則として監査役を設置しなくてよいとされています。
大企業や株式公開企業などでは、取締役が適切に職務を執行しているか監査をするために「監査役会」を置くことが義務付けられています。
監査役会の構成員は、3名以上の監査役です。
なお、監査役には、その会社出身の人がなる「社内監査役」と、外部からその任に就く「社外監査役」の2種類がいます。
20代で正社員への就職・転職
会計参与とは
会計の専門家として活躍する
会計参与は、取締役と共同して、会社の計算書類などの作成を中心に行う役割を担っています。
株式会社では、事業年度ごとにさまざまな計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表)と、その附属明細書を作成しなくてはなりません。
これらの作成を通じて、会社の業績や資産状況などを数字で明確にすることが義務付けられているのです。
この計算書類などに専属的に関わるのが、会計参与です。
会計参与には会計のプロフェショナルであることが求められるため、この任に就けるのは「税理士(税理士法人を含む)」もしくは「公認会計士(監査法人を含む)」のみとなっています。
会計参与は必要があれば、計算書類一式を株主などに開示する役割も担います。
ただし監査役とは異なり、監査権限はありません。
会計参与がいない会社も多い
会計参与は、2006年5月に施行された会社法の誕生によって新たに生まれた制度です。
そのため、取締役や監査役と比べると、知名度がまだそこまで高くありません。
なお、会計参与を設置するかは会社の任意であるため、すべての会社に存在するわけではありません。(ただし、取締役会を設置している会社は、監査役か会計参与などを設置しなければならないと定められています)
会計参与を置くメリットとして、金融機関からの融資が受けやすくなったり、信頼性が高いと考えられたりすることが挙げられます。
そのため、大きな企業では積極的に会計参与を設置するところが増えています。
税法上の役員もいる
ここまで紹介した役員は「会社法上」の役員の種類ですが、もう1種類の役員として「法人税法上」で定められている役員がいます。
このような人は「みなし役員」と呼ばれています。
みなし役員になるのは、大きく以下の2つに該当する人です。
・法人の使用人以外の人で、その法人経営に従事している人
・同族会社の使用人のうち、一定数の株式を所有しており、なおかつその会社の経営に従事している人
みなし役員になる人は、会社法上の役員よりも範囲が広いことが特徴です。
また、みなし役員に該当する人は一般社員と同じ従業員(使用人)の身分ではあるものの、月々の給与は「役員報酬」とみなされます。