「税理士」とは

企業や個人に向けて、所得税などの税金に関するアドバイスや税務処理のサポートをする。
税理士は主に個人や中小企業の税金に関わるサポートをする仕事です。
通常、企業と税理士とは顧問契約を結び、月に1回程度訪問し、税務処理に関するアドバイスを行います。
税理士になるためには、まず第一に税理士試験に合格しなければなりません。
合格した後に、実務経験を2年以上積むことによって税理士の資格を取得することができます。
一般的に、合格後は税理士事務所に就職します。
経験を積んだ後、自分で事務所を開業する人も多い仕事です。
また、税金の知識を生かして、企業内で活躍する税理士もいます。
弁護士や公認会計士は申請のみで税理士の資格を取得することができるため、弁護士、公認会計士の人数が増えるに連れて、税理士と競合することが多くなってきています。
「税理士」の仕事紹介
税理士の仕事内容
税金のプロフェッショナル
私たちが生きる社会は、固定資産税、所得税など、あらゆる税金があらゆる場面で発生します。
税金の仕組みは、複雑です。
慣れない個人や法人が全てを自力で完璧に行おうとすると、時間も労力も膨大なものとなります。
税理士の仕事は、個人や法人の税務にまつわることをプロの立場から、サポートすることです。
具体的には、「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つです。
税務代理とは、納税者(個人や法人)の代理で、税金の申告を行う業務です。
納税書類の作成とは、確定申告の税務書類の作成などの業務です。
また、決算書、試算表などの経営財務に関する書類の作成を行うこともあります。
税務相談とは、節税や相続税対策など、クライアントの税に関する相談を受け、解決策を提案、サポートする業務です。
これらは、税理士資格をもつ者のみが行うことが出来ると定められた独占業務です。
これらの業務にミスがあり、結果として脱税や申告漏れとなった場合、税理士だけでなく、クライアントも社会的信頼を失います。
税理士は、正しい知識のもと、正確かつ的確な業務遂行が求められる仕事です。
税理士になるには
一般的には、税理士試験に合格する
税理士になるには、科目合格制の税理資格試験に合格する必要があります。
科目合格制とは、一度の試験で全てに合格する必要はなく、1度合格した科目は生涯有効になることを指します。
合格するためには、会計学2科目、税法に関する科目3科目のあわせて、5科目合格が必要です。
税理士として、働くためには、合格後、税理士登録が必要です。
この登録には、2年間の実務経験が必要になります。
そのため、税理士資格試験に合格した人は、まず税理士法人に勤務し、経験を積むというのが一般的です。
税理士の学校・学費
一般的な受験資格は大卒以上
上記の税理士資格試験を受験するためには、国税庁が定めた受験資格を1つでも満たす必要があります。
そのなかには、簿記検定1級合格者や行政書士業務2年経験者など、資格や職歴に関する基準もあります。
多くの受験者が満たす一般的な受験資格は、大学卒もしくは大学在学中(一部条件あり)です。
税理士資格試験は、難易度が高く、独学で合格する人は少ないです。
専門学校に通う場合、習熟度に応じたきめ細やかな指導がコースごとに行われます。
選ぶコースにもよりますが、最高で1年100万程度かかるケースも多いです。
また受験には、5科目で7,500円程度かかります。
そして試験合格後の税理士登録には、入会金や登録料で25万円程度必要です。
関連記事税理士になるための学校・費用(大学・大学院・専門学校、スクール)
税理士の資格・試験の難易度
合格率は2%前後の難関資格
税理士試験は、会計学2科目、税法に関する科目3科目のあわせて、5科目合格が必要です。
各科目の合格ラインは、60%程度以上とされています。
科目合格制のため、5科目全てに一度で合格する人は、ほとんどなく、数年かけて5科目すべての合格を目指す人が大半です。
各科目の合格率は、10%~15%程度で、全体の合格率は2.0%程度と難関試験です。
長い人は10年くらいかけて、合格を目指す人もいます。
長期的にコツコツと努力を続けられる人こそ、税理士資格試験に向いているでしょう。
税理士の給料・年収
専門職として高収入も可能
税理士事務所に勤務する場合、500万~1,000万円程度の年収が期待できます。
大手税理士事務所の稼ぎ頭や役員クラスになると、1,500万円以上の年収をもらう税理士もいます。
独立開業した場合、クライアント数や働き方により、幅があります。
しかし、自分で顧問料を設定し、営業活動を行えることから、実力によっては、1,000万以上稼ぐことも可能です。
以上のように、税理士として働く場合、一般企業の平均年収より、高収入を得ることが生涯にわたって可能となります。
税理士の現状と将来性・今後の見通し
専門性とコンサルタント力が鍵
前述の通り、安定した専門職とはいえ、国内の需要は減少し、税理士間の競争も激化することが予想されます。
また、会計ソフトの充実やAIの普及により、単に数字を扱うだけの税理士の仕事は、縮小されていくかもしれません。
しかし、今後国際化が進めば、より高度な国際税務などの知識を求める企業も多いでしょう。
強みをもった税理士のもとには、仕事は集まると思います。
また、税理士の深い知識を経営に役立てたいという経営陣は多いです。
税務相談をこえ、財務、企業再生など、コンサルタント力をもつ税理士は、生き残ることが可能でしょう。
資格をとったから、安泰という考え方はすて、時代にあわせ、自己研鑽を続けることができる税理士を目指しましょう。
税理士の就職先・活躍の場
税理士事務所、独立、企業などで活躍
税理士事務所には、大手税理士法人と中小税理士法人があります。
大手税理士事務所に税理士として勤務する場合、国際税務など高度な知識を備えたスペシャリストとして活躍できます。
対して、中小では、クライアントに関する一連の業務は、税理士1人が担当することになります。
中小税理士事務所に税理士として勤務する場合、広範囲にわたる一連の実務を1人で行うことが可能なゼネラリストとして活躍できます。
また銀行などの一般企業で活躍することもできます。
財務分析やM&A業務などで、税理士のプロとしての深い税務知識が活かされます。
会社員として、勤務するのではなく、自分の税理士事務所を開業することもできます。
税理士の1日
クライアントとのやり取りが多い
事務所と担当先を往復する
税理士は、自身のオフィスでデスクワークなどを行いつつ、担当する顧客の自宅や事務所に訪問し、面談しながら業務を進めます。
日によっては、複数の訪問先をまわるケースも珍しくありません。
<税理士事務所で働く税理士の1日>
8:30 出勤・メール対応、税法などの情報収集
9:00 社内で共有事項についてミーティング
9:30 税務書類作成、税額計算
12:00 昼食休憩
13:00 顧客訪問、税務相談応対
16:00 帰社、資料整理、財務書類作成
18:00 退社
税理士のやりがい、楽しさ
「先生」と呼ばれ、人に頼りにされる
企業の経営者や個人にとって、税理士は税務相談に加え、事業の財務書類の作成なども行ってくれる重要なパートナーです。
税金に関する知識が少ないクライアントは、不安を抱えることも多いものです。
それをクライアントの立場にたちながら、相談にのってくれる税理士の存在は、頼もしく、感謝の言葉をもらうことも多いです。
人に頼りにされているという実感に加え、経営や人生の大切な節目である相続などに関われることは、やりがいにつながります。
税理士のつらいこと、大変なこと
ミスは許されない責任の大きさ
税理士は独占業務として、納税者であるクライアントに代わり、税務資料の作成、申告を行います。
万が一、税理士のミスで誤記載や記入漏れがあり、結果として脱税や申告漏れともなれば、一大事です。
税務署は、後日調査のため、銀行や会社、法人を訪問し、調査を行います。
そこでミスが発覚した場合、税理士としての信頼は失墜します。
そればかりか、ニュースや同業者の噂になり、クライアントの社会的信用すら、失うリスクがあるのです。
このプレッシャーと戦いながら、数字を正確に扱う精神的ストレスは大きく、辛いと感じる時もあります。
税理士に向いている人・適性
努力家で、真摯に話を聞ける人
税理士に向いている性格として、数字に強く、地味な作業も継続できる忍耐力があることがあげられます。
税理士資格試験に合格すること自体、コツコツと何年も試験勉強を行う必要があります。
また税理士になってからも、期限までに税務書類を的確に作る、毎年変わる税法の勉強を怠らないなど努力を継続できる人であることも大切でしょう。
他には、税理士の仕事は、クライアントからの相談にのることも重要です。
クライアントの困っていること、悩みに真摯に耳を傾け、的確なアドバイスができるコミュニケーション能力が求められます。
税理士志望動機・目指すきっかけ
安定した資格職
税理士を目指す志望動機は大きく2つあります。
まず1つ目は、「几帳面な性格で、法律にかかわる仕事がしたい」「数学が好きで、それを生かす職につきたい」という、性格、能力面からの志望動機です。
2つ目は、安定した収入、独立開業もできる強い資格であることをメリットに感じている志望動機です。
特に税理士は、前述した通り、一般企業に就職するより、期待される年収も高いことから、学生に人気です。
在学中から、税理士資格試験の科目合格を目指す人もいます。
関連記事税理士の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
税理士の雇用形態・働き方
独立の場合、定年がない
税理士の資格には、定年がありません。
そのため、60歳を過ぎても、税理士として、長く活躍することが可能です。
また、最近は女性の税理士も増加しつつあります。
税理士は、その高い専門性から、再就職が比較的容易で、子育てや介護で一時的なブランクがあっても活躍できます。
また、働き方も正社員としてではなく、パートやアルバイトとして働くことも可能です。
税理士の業務の性質上、決算期、確定申告期などの繁忙期だけ、パートを募集する税理士事務所もあります。
また、営業を自分で行うなど大変な面もありますが、家で開業できるのも強みです。
決められた勤務時間ではなく、自分でクライアント数や労働時間を調整できます。
税理士の勤務時間・休日・生活
繁忙期に仕事が集中する
クライアントである法人や個人との打ち合わせが業務の中心です。
そのため、独立でも、税理士事務所勤務でも、基本的な勤務時間は、9時~17時前後です。
この勤務時間のなかで、クライアントとの打ち合わせ、資料作成、税務署訪問などを行います。
税理士の大きな業務として、税務書類や財務書類作成があります。
そのため、確定申告期、企業の決算期が重なる時期は、仕事が集中します。
期日が決められているため、遅れることがないよう、残業や土日出勤で対応します。
税理士の求人・就職状況・需要
中小企業数減少による競争激化
日本の99%以上が中小企業といわれています。
いま、中小企業は国際化や後継者不足から、合併や自主廃業を選ぶ企業も増加しています。
それはすなわち、税理士の全体クライアント数の減少を意味します。
また、前述の通り、定年がないことから、60歳以上の現役で働く税理士も多いです。
最近は、公認会計士が税理士として活躍する、非正規の女性税理士が増加するなど、税理士は減少せず、増加する傾向にあるでしょう
クライアントの需要数に対し、税理士資格保有者が多くなることから、採用も狭き門になっていくことが予想されます。
税理士の転職状況・未経験採用
若いほうが比較的有利
一般企業の社会人が税理士に転職したいとき、まずは試験に合格することが必要です。
前述した通り、試験合格には長い年月を要します。
そのため、若いうちに税理士資格試験への挑戦を決意し、計画的に勉強をすすめたほうがよいでしょう。
また税理士事務所に未経験で採用を希望する場合、試験科目に1~2科目は合格していることが大切です。
学生であれば、なお有利ですが、異業種からの転職であれば、30代になる前までに動くほうがいいでしょう。