事業開発の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「事業開発」とは

事業開発の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

事業の拡大や他企業との業務提携、M&Aなどを専門的に担当する

事業開発とは、一言で言えば事業未満の段階のものを事業のレベルにまで持っていく役割を担う仕事です。

そもそも「事業」とは、企業においては営利目的で行われる活動全般を指す言葉です。

事業開発の具体的な仕事内容としては、以下のようなものが挙げられます。

・新規事業の開発
・既存事業の改善・拡大
・ほかの企業との業務提携や資本提携
・M&A

たとえばベンチャー企業や成長期の企業における事業開発なら、既存事業とはあまり関係のない新しい分野での事業開発に携わることが多いでしょう。

一方、大企業や成熟期の企業における事業開発では、すでに一定の成果を上げている既存事業の改善や再構築などを任されることもあります。

近年、少子高齢化によってあらゆる業界の市場規模が縮小しているなか、生き残りをかけて商品・サービスの多角化や海外進出などの戦略を取る企業が増えてきました。

そのような状況を受け、新規事業の企画や既存事業の改善などを専門的に担当する事業開発へのニーズが高まっています。

なお事業開発の仕事は登場して間もないこともあり明確な定義が存在せず、業務領域や求める人材要件などは各企業でさまざまです。

「事業開発」の仕事紹介

事業開発の仕事内容

新規事業をゼロから企画する仕事もあれば、既存事業の改善を行う仕事もある

事業開発とは事業(企業に利益もたらす仕組みや活動)の成長戦略を設計し、利益を生むために必要なプランを実行する仕事です。

事業開発は「Business Development(ビジネスデベロップメント)」と呼ばれることもあります。

一口に事業開発と言っても、企業によって事業開発の意味するところはまちまちです。

たとえば新規事業をゼロから企画・実行する仕事もあれば、既存事業の改善を行う仕事もあり、各企業の置かれた状況によってさまざまな役割を担います。

ベンチャー企業においては起業そのものを指す場合もあるでしょう。

また事業開発が携わる業務領域も幅広く、事業の全体的な枠組みの設計やプロダクト開発、マーケティング戦略の立案などはその一例です。

そのほか会社の合併・買収を意味する「M&A」や、複数の企業がそれぞれ経済的なメリットを得るための企業間提携を意味する「アライアンス」などに携わるケースもあります。

このように同じ事業開発職でも業務内容は企業によって大きく異なるため、入社前によく確認しておく必要があるでしょう。

現在、多くの企業が生き残りをかけて新規事業の創出や海外進出などに乗り出しており、そのうえで事業開発は企業にとってなくてはならない仕事といえます。

事業開発になるには

多くは学歴・資格不問で採用が行われている

事業開発に必須とされる資格や、必ず通わなくてはならない学校・スクールなどはありません。

とはいえ事業開発は企業の業務のなかでも大きな金額が動く、非常に責任の重いポジションです。

いきなり事業の企画・立案を担当するのではなく、まずは事業開発部のメンバーとして就職し、企画内容を実行する役割を担うのが一般的でしょう。

就職時に求められる学歴については、一部の大手企業では「大卒以上」とされていますが、多くの企業で「学歴不問」で採用が行われています。

また新卒採用だけでなく、中途採用も活発的に行われている業界です。

事業開発には高度で幅広いスキルが必要なこともあり、たとえば「プロジェクトリーダーを務めた経験のある人」「新規事業に携わった経験のある人」などは面接でも評価されやすいでしょう。

海外展開を進めるうえでは英語力も必須であるため、企業によっては「ビジネスレベルの英語リーディングやライティング、スピーキングができること」などの条件を設けている場合もあります。

中途求人の多くは経験者を優遇していますが、チームマネジメントや法人営業などの経験があれば未経験でも採用される可能性があります。

事業開発の学校・学費

一部企業では「大卒・短大卒以上」などの条件あり

事業開発の多くは学歴不問で募集が行われていますが、一部の大手企業では「大卒・短大卒以上」などの条件が課されていることもあります。

学歴で選択肢を狭めたくないと考える人は、大学卒業後の就職を目指すとよいでしょう。

学部による優劣はほとんどありませんが、経営学部や経済学部で学ぶ知識は事業開発の仕事に生かしやすいでしょう。

また「事業開発に特化したスクール」もさまざまな企業・団体によって開催されています。

ただしこれらは就職前に通うというよりは、就職後のスキルアップとして通うケースが多くみられます。

スクールによって期間や費用はまちまちですが、期間は3日間〜7日間程度、費用は5万円〜20万円の範囲が多いでしょう。

事業開発の資格・試験の難易度

仕事を進めるうえで役立つ資格や学位もある

事業開発になるために特定の資格が必要ということはありませんが、仕事を進めるうえで役立つ資格や学位は存在します。

たとえば企業経営の診断・成長戦略作成に必要な能力を身につけられる「中小企業判断士」や、企業経営に必要な知識を体系的に身につけられる「MBA(経営学修士)」などです。

参考:一般社団法人中小企業診断協会 中小企業診断士試験

これらは取得までに期間や費用がかかるため、すでに事業開発として働いている人がステップアップのためにチャレンジするケースも多くみられます。

事業開発の給料・年収

事業責任者として働く場合は年収1,000万円を超えるケースも

事業開発の年収は、企業内のどのポジションで働くのかよって大きく異なります。

たとえば企画内容を実行する役割を担う、事業開発部の一メンバーとして働く場合は年収400万円〜500万円程度が相場です。

この場合、高いコミュニケーションスキルは必要なものの特別な知識や技術は求められないため、新卒のほか業務経験のない第二新卒や20代後半の人も採用される可能性があります。

一方、事業開発計画そのものを企画・立案する事業責任者として働く場合は、求められるスキルが高度になる分、年収も高くなります。

具体的な金額は企業によって差があるものの、年収600万円〜700万円程度はもらえる可能性が高く、大手企業であれば年収1,000万円を超えるケースもあるでしょう。

ただし事業責任者は結果を出すことが要求されるため、募集時の要件も厳しくなり実務経験もほぼ必須となります。

また就職した企業内で昇進を目指すだけでなく、より条件の良い企業に転職することで年収を上げるのも一つです。

事業開発は中途採用も活発的に行われている業界であるため、幅広いビジネス経験がありたしかな実績を積んでいる人なら転職は比較的容易です。

とくに優秀な人は、大手企業からヘッドハンティングを受けるケースもあるでしょう。

事業開発の現状と将来性・今後の見通し

事業開発に関する豊富な経験をもった人材の需要が高まっている

少子高齢化の問題により国内では多くの分野で市場が縮小しているため、近年は海外進出に力を入れる企業が増えてきています。

それにともない現地でのM&A(会社の合併・買収)や業務提携を進めるうえで、事業開発に関する豊富な経験をもった人材の需要が高まっています。

なお海外では事業開発やビジネスデベロップメントなどの職業は一般的に知られていますが、日本ではそこまで認知は広がっていない状況です。

今後、需要の高まりとともに事業開発の認知度も広がっていくことで、フリーランスとして事業開発の仕事を請け負う人が増えていくと予想されています。

事業開発の就職先・活躍の場

IT企業の求人が増えている傾向

事業開発の就職先にはいろいろな業界・企業がありますが、傾向としてはIT企業の求人が増えてきています。

大規模プロジェクトを開始したり、海外展開を狙ったりといったタイミングで事業開発の人材を募集するケースが多いでしょう。

また自社のプロジェクトだけでなく、クライアント企業のプロジェクトを推進するうえで事業開発のポジションを募集する場合もあります。

いずれにしても就職先によって業務内容はさまざまであり、それにあわせて「求められる人材像」も大きく変わります。

事業開発の1日

関係会社と連携しながらプロジェクトを進める

事業開発の1日の流れは、就職先の業界や会社によって大きく変わります。

ここでは、商社で自社商品の企画・開発に携わる事業開発部社員の1日を紹介します。

8:30 出勤
少し早めに出勤して、昨日からの未読メールに目を通します。
9:00 朝礼
部署で朝礼を行い、1日の予定や業務の進捗状況を報告し合います。
10:00 市場調査
自社商品の開発に向けて、世の中のトレンドや市場ニーズなどをリサーチします。
12:00 休憩
1時間の休憩です。社外にランチに行くこともあります。
13:00 取引会社との商談
デザイン会社と商品パッケージについて話し合ったり、メーカーから持ち込まれた新商材をテストしたりします。
15:00 社内業務
再び商品開発に関するデータ収集を行い、必要に応じて関係部署との連携も図ります。
18:00退勤
最後、今日やるべき仕事が完了したかどうかを確認して退勤します。

事業開発のやりがい、楽しさ

企業の成長に貢献していることを実感しやすい

事業開発は新規事業をゼロから立ち上げる場合もあれば、既存事業の改善‧発展を行う場合もあります。

そのどちらも企業のミッションやビジョンの実現のために行われるものであり、自分が企業の成長に貢献していることを実感しやすい仕事といえます。

成功のルールがないなかで、強い意志をもってダイナミックに仕事に取り組めることは大きなやりがいとなるでしょう。

決して簡単な仕事ばかりではありませんが、困難を乗り越える過程で自分自身が成長できる点も事業開発に携わるやりがいの一つです。

事業開発のつらいこと、大変なこと

答えがわからないものに対して向き合う場面が多いこと

答えがわからないものに対して向き合う場面が多いこと

事業開発に向いている人・適性

失敗を恐れず前向きに取り組める人

事業開発に向いているのは、未経験の分野でも失敗を恐れず前向きに取り組める人です。

事業開発の仕事は曖昧かつ先行きが見えづらい部分も多く、そういった場面でも臆することなく前に進んでいけるような人が求められます。

動く金額も大きいケースがほとんどですが、それでも萎縮せずに行動できなければプロジェクトの成功はありません。

加えて社外のさまざまな関係者と協力しながらプロジェクトを進めていくケースも多いため、高いコミュニケーション能力も必須の仕事です。

事業開発志望動機・目指すきっかけ

新たに事業や仕組みを生みだす仕事がしたい

「新たに事業や仕組みを生みだす仕事がしたい」と考え、事業開発を目指す人は多くみられます。

新規事業をゼロから企画・立案しそれを実行していくのは難しさもある分、ほかの仕事にはない楽しさがあり、そこに魅力を感じる人は少なくないでしょう。

また前職で新規事業の立ち上げに関わったことでやりがいの大きさに魅力を感じ、「事業開発をメインに携わっていきたい」と考え転職する人もいます。

そのような経験のある人は即戦力として評価されるため、自分が手掛けたプロジェクト内容や成果を具体的にアピールするとよいでしょう。

事業開発の雇用形態・働き方

正社員での採用が基本

事業開発の雇用形態は正社員での採用が基本です。

事業開発は予算の大きい大規模プロジェクトも多く、また基本的に長期間を要するものです。

そのため、たしかなスキル・経験を有した人材を正社員として雇い、責任をもったうえでプロジェクトを進めてほしいと多くの企業は考えています。

一部の企業では契約社員やアルバイトの募集が出されていることもありますが、その場合はトレンド調査やユーザー調査、資料作成サポートといったメイン業務の補助をまかされるケースがほとんどです。

事業開発の勤務時間・休日・生活

プロジェクトの進捗状況によっては残業や休日出勤もある

事業開発の勤務時間は、9:00〜18:00の時間帯で実働8時間程度としている企業が多くみられます。

ただし担当しているプロジェクトの進捗状況によって勤務時間は変動すると考えておきましょう。

プロジェクトが大詰めを迎えていたり、クライアントと約束していた期限が迫っていたりする場合には残業が続いてしまうケースもあるでしょう。

休日については土日・祝日が休みの完全週休2日制が基本ですが、こちらもプロジェクトの状況しだいでは休日出勤を命じられることがあります。

事業開発の求人・就職状況・需要

求人数は多いが、厳しい応募資格が設けられていることも

大手転職サイトなどを使えば事業開発の求人はたくさん見つけられるでしょう。

ただし応募資格の部分で「ITプロジェクトの管理経験」「英語でのビジネスディスカッションや商談経験」などを必須条件としている求人も少なくありません。

事業開発は会社の将来を左右するような重要なポジションであるため、高いレベルの人材が求められています。

企業によって求められる条件は異なるため、一つひとつの求人内容をしっかり確認したうえで応募を検討していきましょう。

事業開発の転職状況・未経験採用

中途採用は活発的に行われている

事業開発は中途採用も活発に行われている業界であり、転職してそのポジションに就く人も多いでしょう。

ただし事業開発の中途採用では、基本的には「仕事に生かせる経験を持っている人」が求められています。

事業開発の経験があればベストですが、そうでなくても「社内プロジェクトのリーダーを務めてきた」「海外企業との商談・交渉を日常的に行っていた」などの経験のある人は重宝されるでしょう。

なかにはまったくの未経験者を受け入れている企業もありますが、応募者のなかに事業開発につながるような業務経験をもった人がいれば、選考では不利になってしまう可能性が高いといえます。

事業開発と事業企画の違い

ゼロから1を作り出すか、1を10にするか

事業開発とよく似た言葉に「事業企画」がありますが、これらの違いは以下のように表せるでしょう。

・事業開発:新規事業の企画や推進を行う。ゼロから1を作り出す役割をになう。
・事業企画:既存事業の拡大や再構築を行う。1を10にする役割をになう。

それぞれ上記のように定義できますが、実際にはそこまで明確に線引きしていない企業がほとんどです。

事業開発部に配属となった場合でも既存事業の改善や拡大を担当するケースは往々にしてあるため、置かれた状況によって幅広い役割を与えられると考えておくとよいでしょう。