「IR」とは

企業活動を支える投資家や株主に対して、経営や財務状況などの情報を提供する。
IR(Investor Relations、IR)は投資家や株主に対して、自社の経営方針や企業理念を紹介する、質疑に答えるなどの活動を行うとともに、報告書を作成し、投資家や株主に公表する役割を担っています。
IRには資格や免許があるわけではなく、財務や広報、経営企画などの職種で社会経験を積み、経営にかかわる理解を深めた人がキャリアアップして就くことがほとんどです。
IRに昇格した場合、給料がぐんと上がるのが一般的。上場企業で数年間の実務経験を経て、IR担当者として働いた場合の平均年収は400~800万円が相場だといわれ、年齢や経験を経るほど年収もアップしていきます。
今後、日本においてもIR活動の重要性がもっと認識されれば、企業が専任のIR担当者を置くようになり、働きやすさや仕事の進めやすさも変わっていきます。
優秀な人材であれば、年収も現在よりアップしていくでしょう。
「IR」の仕事紹介
IRの仕事内容
投資家に企業の正しい情報を伝える役割
IR(Investor Relations)とは企業が投資家や株主に対して、経営や財務の状況などの必要な情報を提供し、投資判断の材料を提供する仕事です。
広報の仕事と似ているところもありますが、IR担当は商品の情報などだけではなく、企業の経営や財務内容を理解する必要があります。
IR担当者は、企業説明会やグループミーティング、決算説明会などにおいて、投資家や株主に対して自社の経営方針や企業理念を紹介する、質疑に答えるなどの活動を行います。
また、事業年度終了後には、財務状況や今後の経営戦略などを記した「アニュアルレポート」と呼ばれる報告書を作成し、投資家や株主に公表することになります。
近年では自社のホームページでリアルタイムな情報を公開している企業も増えていますが、掲載する資料の準備もIR担当者の業務となります。
IRの就職先・活躍の場
ほとんどの上場企業に存在
上場企業は投資家に株を購入してもらい資金調達しているため、決算に影響されると思われる情報は、内容の善し悪しに関わらず周知する義務があります。
一方で非上場企業の場合はこのような義務がないので、IRの存在は必要ないので、自主的に情報提供する場合を除いて存在しません。
そのため、IRの仕事は東証から新興市場上場企業まで企業の規模に関係なく、上場企業が就職先になることが多いです。
ただし、規模の小さい企業の場合は広報や総務とIRが兼任される可能性もあります。
IRの1日
決算説明会の前などは残業が増える
普段は定時に帰れることもありますが、特に4半期毎の決算発表前などは業務が忙しくなります。決算発表間近の1日を紹介します。
8:30出勤
朝のメールチェックや雑務を片付けます。
10:00 情報収集
新聞や業界紙、雑誌、インターネットなどから、株式市場や自社の株価の動き、業界や競合他社の情報などを収集します。
12:00 昼休憩
昼食を取るなどリフレッシュします。
13:00 社内ミーティング
経営者、経営企画部、広報部、財務部、経理部などと情報共有し、投資家や株主に報告するべき情報を確認します。
また、投資家や株主から寄せられた質疑の内容などは、IR担当者から他部署へ報告されます。
15:00 報告書作成
財務状況や経営戦略を報告書にまとめて、投資家や株主に公表する報告書を作成します。
17:30 決算説明会の準備
決算説明会で話す内容をまとめたり、練習したりします。
20:30 退社
定時は18時までですが、決算期終了後から決算説明会にかけては1年の中でもっとも残業が多い時期になります。
IRになるには
企業で経営に関する知識を深める
IRには資格や免許があるわけではなく、特別な学歴が求められる職種でもありません。
また、新卒の未経験者が就けるようなものでもなく、社会経験を積んだ人がキャリアアップして就くことがほとんどです。
財務や広報、経営企画などの職種で経験を積み、経営にかかわる理解を深めた人がIR担当に選ばれることが多いです。
希望する場合は、これらの職種での経験のほか、株主や投資家へ向けた説明を行う立場上、広報的なプレゼンテーション能力、コミュニケーション能力も身につけましょう。
IRの学校・学費
上場企業入社のためなら高学歴が有利
IR分野がある会社は上場企業の場合がほとんどなので、特に大手企業を狙う場合は高学歴の大学・大学院を卒業していた方が有利になるでしょう。
また、まずは財務や経理などを経験した人がIR担当に選ばれやすいので、これらの職種に採用されるために有利な学校や学部を選ぶのが得策だといえます。
これらの学部も必ず決められた学部という訳ではありませんが、経営学部・経済学部・総合政策学部などが財務について少し触れられるという意味では選ばれやすいのではないでしょうか。
IRの資格・試験の難易度
講座を受講してから試験
IR担当として必須になる資格はありませんが、自らの理解を深めるためや企業から昇格などの条件として取得を目指すIR担当にとって有益な資格はあります。
「IRプランナー(CIRP)」という資格は、企業分析・情報開示などIR活動に関する講座を受けてから資格を受けるもので、合格率は70%程になっています。
合格率は高めですが、IR担当として必要な知識を総合的に勉強する必要があるため、全く努力せずに受かるものではないです。
レベルが2つに分かれており、上級資格はIR部署での勤務を1年以上した人が対象になります。
IRの給料・年収
経験が必要なので比較的高めの設定
広報や経営企画、財務などの部署で企業に採用され、経験を積んでからIR担当に昇格することが多いです。
また、主に上場企業に存在する職種ということで、IR担当の平均年収は400~800万円と一般的な会社員に比べて比較的高めの設定となります。
また、IRは残業が多い部署でもあり、特に決算発表前やトラブル対応などの時は残業代も付き年収を押し上げることになります。
繁忙期は忙しく、専門的な知識が必要なのでそれに見合った年収といえるでしょう。
IRのやりがい、楽しさ
投資家に良い情報を披露できるとき
IR担当の1番のやりがいは、投資家に対して有益な情報を決算説明会などで直接伝えることができることです。
例えば、新商品の発表や特許取得、決算の上方修正などは株価を購入する投資家にとって良い情報となり、株価が大幅に上がる可能性もあります。
株価が上がるということは、企業に流入する資金も増えることになり、企業の経営安定に繋がり喜ばしいことなのです。
このような発表をできることがやりがいであり楽しさと言えるでしょう。
IRのつらいこと、大変なこと
投資家から厳しい意見を受けるとき
IR担当は企業にとって悪いニュースも的確に投資家に伝える必要があります。
例えば、業績が想定より上手く行かなかったり、プロジェクトが失敗したりした時も決算説明会では矢面に立ち説明や謝罪をします。
投資家は大切なお金を投資しているので、厳しい意見を向けるでしょうし、株価の下落も避けられません。
そのため、IR担当はこのような企業にとってマイナスな情報を発表するときも、納得を得られる改善策を同時に発表するなど信頼をし続けてもらうための対応をします。
IRに向いている人・適性
人前で論理的に話すのが得意な人
上記でも説明した通り、IR担当は決算説明会で投資家や株主の前で会社の業績や今後の見込みについて話す必要があります。
そのため、たくさんの人が見ている前でも物怖じせずに上手く話すことが得意で、とっさの質問や厳しい意見に対しても論理的に考え回答する自信がある人に向いています。
また、財務部から提出された情報をまとめて資料作成をするので、企業の財務分析や業界比較など、数字への苦手意識がないこともIR担当を目指すなら大切です。
IR志望動機・目指すきっかけ
投資家の窓口になる
上場企業にとって株価を高値で保つことは、資金を安定的に確保するために大切なことです。
IRの仕事は投資家との良好な関係を築き、投資家にとって魅力的な企業と思わせることで、投資家との窓口になりたいと思うことがIR担当を目指すきっかけになると思います。
自らが株式取引をしている人にとってIRの仕事は馴染みがあるかもしれませんが、一般的には認知度が高い仕事とはいえないです。
企業で活躍しているIR担当の仕事ぶりを見て、自らもやってみたいと思うほうが多いのではないでしょうか。
IRの雇用形態・働き方
総合職の正社員
IRの仕事は財務情報や企業情報をまとめて資料作成し、発表内容を考えるなど専門性が高いので、総合職の正社員が任されることが多いです。
IR担当として新卒から採用されることは少なく、多くの場合は他部署で経験を積んでからキャリアアップでIR担当に抜擢されるようです。
簡単な資料作成や説明会の部屋設置などの雑務に関しては一般職や派遣社員が行う場合もありますが、IR担当としてバリバリ活躍したいと思うなら総合職で入社することをおすすめします。
IRの勤務時間・休日・生活
繁忙期の残業は多め
勤務時間は企業の就労時間で、基本的には土日休みになることが多いです。
IRの仕事は4半期毎に決算レポートを提供したり、本決算の投資家に対して会見を開いたりするのが主なものになり、この時期は残業も増えます。
思わぬトラブルが起きた時は、現状把握を行い、迅速に資料を用意する必要があるので、経営陣や各部署とのやりとりと資料作成の準備で忙しくなるでしょう。
しかし、それ以外の時期はそこまで忙しい訳ではなく、昼休憩を楽しんだり、定時で帰ったりできます。
IRの求人・就職状況・需要
需要はあるが経験が必要
企業にとって、投資家に評価されて安定的に資金を集めることはとても重要なので、IRの需要は高まっています。
しかし、企業としては財務や経営の知識も身につけた、経験豊富な経験者を求めることが多く、新卒で採用されるということは現状少ないです。
ほとんどの場合は、新卒で財務部や経理部などに配属された人が経験を積んだ後に希望したり、選ばれたりしてIR担当になることが多いです。
ただし、需要は増す一方なので、今後は新卒からIR担当を育てるような企業も増えていくのではないでしょうか。
IRの転職状況・未経験採用
経験者は引く手あまた
IR担当は比較的新しい分野の仕事のため、経験者やその世界に精通している人は少ないです。
経営・財務内容を的確に理解して分かりやすく投資家に説明する必要があり、高い能力が求められるので、転職の際には経験者が優遇されます。
中高年のキャリア世代向けの人材募集広告では、年収800~1200万円を提示している企業が多数あり、経験者は引く手あまたです。
未経験からの転職はハードルが高いですが、財務や経理を担当していた場合は他部署からの転職に比べれば採用されやすいです。
IRの現状と将来性・今後の見通し
まだ新しい分野だが今後は増える見通し
アメリカが発祥のIRが日本に伝わってから20年以上が経ちIRという言葉がかなり浸透してきました。
今後ますます日本においてもIR活動の重要性がもっと認識されるようになり、上場企業はどの企業も専任のIR担当者を置くようになる日が来ると考えられます。
そうなった場合は今まで以上に需要も増えるので、新卒からIR担当を育てる会社も出てくるのではないでしょうか。
専門的な知識が必要で、企業にとって重要な部署なので、IR経験者の存在感や待遇も良くなることが期待されます。