高校教師になるには? 資格の取得の方法・大学の選び方まで詳しく解説
高校の教員免許を取れる大学・学部は、文部科学省によって定められています。
その後は教員採用試験を受験しますが、近年では年齢制限が緩和される傾向にあり、社会人から高校の先生を目指すことも可能になっています。
この記事では、高校教師になるための方法を詳細に解説しています。
高校教師になるには【教員免許取得・教員採用試験の合格が必要】
この章では高校教師になるための概要を解説します。ざっくり全体像をつかんでください。
高校教師になる方法は、上の図の通り大きく3ステップです。
- 大学で必要な単位を取得
- 高等学校教諭免許状を取得
- 高校教員採用試験に合格
高校の先生になるには、まず国家資格である「高等学校教諭一種免許状」(大学卒)もしくは「高等学校教諭専修免許状」(大学院卒)、いわゆる「教員免許」の取得が必要です。
これらの免許を得るには、文部科学省が定める4年制大学・大学院に進学して必要な単位を修め、卒業して学士・修士の学位を取得します。
高校教諭の基礎資格として「学士・修士」が必要となるため、必要な単位を取得していても卒業せず、中退した場合には免許状の取得はできないので注意しましょう。
また、教員免許を取得するだけではまだ高校教師になれません。
公立高校の教師を目指す人は、自治体が実施する「教員採用試験」に合格することで、ようやく高校教師として働けます。
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高校教師になるために必要な資格の種類と大学
高校教師になるには、高校教諭養成課程のある大学もしくは大学院を卒業する必要があります。
この章では、高校教師になる最初のステップである、高校教員免許状の取得について解説します。
高校教師の資格は2種類で科目別【大卒以上】
- 高等学校教諭1種免許状:4年制大学で取得
- 高等学校教諭専修免許状:大学院で取得
高校教諭普通免許状は、大学で取得できる「1種免許状」、大学院で取得できる「専修免許状」の2種類です。どちらの免許でも職務内容に変わりはありません。
小学校教師や中学校教師を目指す場合には、短大で取得できる「2種免許状」もありますが、高校教師は短大では目指せません。
また、高校教師の免許は「教科別」になっているため、どの科目を教えたいのか、事前に決めておく必要があります。
一般的には通学して単位を取得しますが、通信教育学部など通信教育とスクーリングで教職課程を修め、免許取得を目指せる大学もあります。
- 国語・書道
- 地理・歴史
- 公民
- 数学
- 理科
- 英語
- 音楽
- 美術
- 工芸
- 書道
- 保健体育
- 保健
- 看護
- 家庭
- 情報
- 農業
- 工業
- 商業
- 水産
- 福祉
- 商船
- 職業指導
- 宗教
高校教師になるための大学の選び方
- 大学進学のときに高校教師の科目を決めておく必要がある
- 教育学部でなくても高校教員免許は取得できる
高校教師の免許状は、小学校の教員免許状と異なり、目指す科目によって取得する単位が異なるため注意しましょう。
自分が教えたい科目は何かをあらかじめ考えて、進学する大学・学部を選びます。
教育学部ではない、教職課程のある学部(例:文学部、社会学部など)で教員免許を取得することも可能です。
- 教育学部:教育に関する知識を深めたい人におすすめ
- 教職課程のある学部:専門知識を深めたい人におすすめ
よくあるのはは、地理歴史・公民の高校教師は人文学部や法学部、経済学部、社会学部から、理科の高校教師は理工学部や薬学部などに進学し、教職課程を取るケースです。
自分の興味のある分野の専門知識をより深く学ぶことで、高校教師として教壇に立ったときにも、深みのある授業ができるはずです。
一方、教育そのものについて学びたいのであれば、教育学部に進学するとよいでしょう。
教員免許状を取得できる学校については、文部科学省の以下のサイトから探してください。
高校教師になるためにはどんな学校に行けばいい?(大学学部・大学院)
高校教師になるための大学での単位の取得
- 取得単位数が多いので時間割に注意
- 大学4年での教育実習は必須
- 中学・高校の両方の教員免許を取得する人も多い
一般的には大学在籍中に高等教諭免許状を取得します。教員免許に必要な単位は全国共通なので、たとえ一度大学を中退しても、別の機関で単位を持ち越すことが可能です。
高校教師の免許状を取るためには、取得必須の単位が膨大です。大学1年生の頃から単位取得に向けて時間割を考えなくてはなりません。
✅ 高校教諭免許状の取得のための最低限の必修単位
免許状の種類 | 所要資格 | 基礎資格 | 最低修得単位数 | ||||
教科に関する科目 | 教職に関する科目 | 教科又は教職に関する科目 | その他(注) | 合計 | |||
高等学校教諭 | 専修免許状 | 修士の学位 | 20 | 23 | 40 | 8 | 91 |
一種免許状 | 学士の学位 | 20 | 23 | 16 | 8 | 67 |
文部科学省「教員免許状取得に必要な科目の単位数」
大学では基本的に自分がとりたい授業をとって、個人が自由に時間割を作ることができます。ただし、教職を目指すのであれば、多くの授業が教職単位を取得するためのものとなるでしょう。
単位には「必須単位」と「自由単位」の2種類があり、必須単位は教師になるに向けての心構えや生徒への関わり方、心理学などを学びます。自由単位は、自分が目指す科目を中心に取ります。
また、大学4年生になると教育実習が必須単位となり、教育実習では実際の高校の教壇に立ち生徒に指導することとなります。
これらの単位を余すことなく取得することで、大学卒業時に高校教員免許状が授与されます。
大学のカリキュラムや授業の組み立て方法によっては複数科目の免許を同時に取得したり、中学校・高校の両方の免許を取得したりすることも可能です。
ただし、単位数が増えるためしっかりと確認をしながら、取りこぼしのないように単位を取得していく必要があります。
公立高校の教員採用試験
大学・大学院を卒業して高校教員免許を取得しただけでは高校の先生にはなれません。
その後、教員採用試験に合格する必要があります。
公立高校の教員採用試験は、各都道府県など自治体が行います。特徴は次の通りです。
- 3~4月に出願、6~7月に1次試験、8~9月に2次試験、10月に合格発表
- 大学生は3年生の秋から対策を始めて4年生の夏に受験するのが一般的
- 「筆記試験」、「面接試験」、「実技試験」、「適性検査」を実施
教員採用試験に合格することができれば、高校教諭として働くことができます。
私立高校の教師になるには【3つの方法】
高校教員免許を取得した人が私立高校教師になるには、大きく分けて3つの方法があります。
- スカウト型:私立中学高等学校協会が行う適性検査等をもとに高校から志望者に連絡
- 就活型:私立高校のホームページなどから直接応募
- 就職エージェント型:私立高校の教員志望者と高校をマッチングするサービス
スカウト型の方法では、私立中学高等学校協会が適性検査を行い、その試験結果が各私立高に共有されて学校の側からスカウトが来ます。
履歴書を登録しておいて連絡を待つ、という方法もあります。
通常の就職活動のように自分で私立高校の教員募集を見つけて応募することもできます。
私立高校教師の募集は、一斉に試験を受ける公立高校の採用試験とは異なり、随時行われているのも特徴です。
高校教師は社会人からも目指せる?年齢制限は?
この章では、「高校教師になりたいけど、今からでも目指せるのかな」という疑問を解決します。
高校教師の年齢制限は?
教員採用試験の受験年齢制限については、各都道府県または自治体によって違いがありますが、「年齢制限なし」とする自治体が増えている傾向です。
- 制限なし :41県市
- 51歳~58歳 :1県市
- 41歳~50歳 :23県市
- 36歳~40歳 :3県市
文部科学省「令和2年度(令和元年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施方法について」
年齢制限を緩和して教員の多様性を確保する動きは今後も続いていくと考えられます。
高校教師に社会人からも目指せる!方法は?
教員採用試験の年齢制限が緩和されていることもあって、社会人から高校教師を目指すことも十分に可能です。
教員免許を持っていない社会人から高校教師になる主な方法を紹介します。
- 大学に入学する
- 通信制大学で単位を取得する
- 特別免許状の制度を利用する
大学に入学して教職に必要な単位をとり、高校教員免許を取得します。
「教職特別課程」を設けている大学では1年間で教職に必要な単位を取得できますが、日中も授業があるため、働きながら通うことは難しく、金銭的負担も大きいです。
仕事と両立しながら教員免許を取得したいのであれば、通信制の大学で学ぶのもよいでしょう。
特別免許状とは、教員免許を持っていなくても、教師としてふさわしいと都道府県教育委員会などが認めた場合に授与される免許状です。
たとえば、「英会話スクール講師や大学での助手・助教授の経験がある」人や、「メーカーの研究職として働いた経験がある」などです。
前例は少ないですが、社会人経験を持つ教師を迎え入れて学校教育をよりよいものにしていく、と文部科学省は方針として示しているため、今後の活用も期待できます。
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高校教師を目指す人が知っておきたいこと
高校教師になりたい人が知っておきたい以下の4つをまとめました。
- 高校の先生になる難易度は?【倍率は7倍】
- 高校教師の仕事内容【授業以外にも!】
- 高校教師になった後のキャリア【管理職も目指せる】
- 高校教師の給料・年収は?【平均年収は710万円】
高校の先生になる難易度は?【倍率は7倍】
高校の教員採用試験の平均倍率は例年7~8倍を推移しています。近年は団塊の世代の退職により採用数が増えており、倍率が下がっています。
自治体によって倍率は大きく異なり、教員採用数が多い都市部の倍率が低く、地方の倍率が高いという傾向にあります。
高校の教員採用試験は地区ごとに実施日程が異なるため、日にちが異なれば併願も可能です。
倍率が7倍、地域や教科によっては10倍を超えることもあり狭き門といえます。
高校教師の仕事内容【授業以外にも!】
高校教師の仕事内容は、授業とその準備だけではありません。
- テストの準備・採点・成績判断
- クラスの担任業務
- 進路指導
- 生活指導
- 部活動指導
このように、多岐にわたる仕事があります。
また、高校の授業は小学校や中学校と比較してより専門的ですから、授業の準備にも時間をしっかりかける必要があります。
大学受験の対策など生徒の進路に合った対応も必要です。
業務量は決して少なくはありませんが、未来を担う高校生の指導に携われる仕事にはやりがいも大きいでしょう。
高校教師になった後のキャリア【管理職も目指せる】
一度高校教師になると、仕事を続ける人が多いのが特徴です。
なかには教師として現場に立ち続けるほかに、教頭や校長などの管理職を目指して勉強をする人もいます。
高校の管理職選考試験の場合、各都道府県別に受験資格が設けられ、年齢制限があるため注意が必要です。
高校教師の給料・年収は?【平均年収は709万円】
- 平均年収:709万円
- 平均勤続年数:14.3年
- 平均年齢:43.7歳
厚生労働省「令和元年度賃金構造基本統計調査」
高校教師の平均年収は709万円です。
日本人全体の平均年収が約420万円なので、高校教師の平均年収は高いといえます。
また、福利厚生も充実しており、扶養手当や住居手当などが含まれます。
一方で、残業手当は基本的になく、部活動などで休日出勤した際にも手当はかなり少ないです。
高校教師に向いている人の特徴3つ
- 生徒に愛情をもって指導ができる人
- 生徒の適性などを見極めて適切に指導ができる観察力がある人
- いじめや不登校等の問題にも対応できる精神力
高校教師は、生徒のさまざまな悩みや相談に対応していかなければなりません。
生徒に対して愛情があり、人間性が豊かであることが求められます。
また、高校生活になじむことができなかったり不登校などの問題を抱えたりした生徒を、良い方向へ導いていけるような熱意を持っていることも必要になります。
高校教師になるには|まとめ
高校教師になるには、大学・大学院を卒業して高校教諭免許状を取得して、教員採用試験に合格する必要があります。
大学の学部によって高校で教えられる教科が異なりますから、あらかじめ希望教科を考えておきましょう。
教員採用試験の年齢制限が緩和される傾向にあり、社会人からも目指すことができます。