研究者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「研究者」とは

研究者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

大学や企業、研究所などで、人々の暮らしを便利で豊かにするためのさまざまな研究を行う人。

研究者とは、おもに科学技術分野において、人類や社会の新たな発見のための研究活動を続ける人のことを意味します。

具体的な研究の分野やテーマは、病気を治す医療技術、おいしい食事を作る食品加工技術、あるいは災害を予知するシステムなど、多種多様です。

各分野で研究者たちがそれぞれの研究活動を続け、新たな知見を発表し、世の中の発展や人々の豊かな暮らしに貢献しています。

研究者の活躍の場は、大学や国立研究所などの研究機関や、民間企業が中心です。

自分が決めたテーマを深く探究していく姿勢が求められ、学生時代は大学から大学院へ進む人が大半を占めています。

研究はすぐに結果が出るものではありませんが、各界で素晴らしい功績を残した研究者は「ノーベル賞」などを受賞することができ、世界的にも高く評価されます。

「研究者」の仕事紹介

研究者の仕事内容

人類の新たな発見を求めて研究活動を続ける

研究者とは、おもに科学技術分野において、人類の新たな発見のための研究活動を続ける人のことを意味します。

研究者の活躍の場は、大学や国立研究所などの研究機関から、医薬品メーカーのような民間企業まで幅広いものとなっています。

職場によって具体的な研究の分野に違いがあり、また一人ひとりの研究者ごとにも研究テーマは異なります。

たとえば工学ひとつとっても、「安全工学」「遺伝子工学」「宇宙工学」「海洋工学」「原子力工学」「食品工学」「耐震工学」など、数十にもおよぶ分野に細分化されています。

研究者は、自らの研究テーマを見つけ、実験をしたり調査をしたりしてデータを収集しながら、新たな発見につなげていきます。

研究の成果が社会全体を発展させ、豊かにしていく

研究者の使命を簡単にいえば「真理の探究」です。

新しい発見があれば、その結果は論文として発表され、その内容をもとに新たな製品が作られたり、これまでにない知見が発見されたりします。

こうした研究の成果は人間全体の財産として、文化的・科学的な面から日常生活を支え、わたしたちの暮らしを豊かにしていきます。

日本における研究水準は世界的にも高く評価されており、研究者は日本全体の社会発展はもちろん、世界全体の学術研究の推進にも大きな役割を果たしているといえます。

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研究者になるには

大学から大学院へ進んで専門分野に関する学びを深める

研究者になるには、自分が決めた特定の分野に関して、時間をかけて深く探究していく姿勢が求められます。

そのため、基本的には大学進学が必須であり、さらに大学院まで進み、専門分野を突き詰めていくことが一般的なルートです。

将来的に大学や国立の研究所といた研究機関に所属したい場合には、とくに高い学歴や実績をもつ人材が多く活躍しています。

たとえば国内トップクラスの大学から大学院の修士・博士課程に進んで専門的な知識を深めていたり、海外の著名な大学への留学経験があったりすると、高く評価されることがあります。

学生時代に将来の進路を具体的にイメージする

研究者の働き方はさまざまですが、メーカーなど民間企業の「研究部門」で働きたい場合には、ほかの学生と同じように就職活動を行います。

各企業とも、自社の事業に関連する知識をもつ人材を求めているため、学生時代の専攻とのマッチングが重要になってきます。

できるだけ早い段階で将来を見定め、進路を決定していきましょう。

また、研究の世界全般でいえることですが、研究者は「どのような論文を書いたか」と「論文がどのような学術誌に掲載されたか」が重要視されます。

学生時代に研究に打ち込んで、できるだけ実績を残す努力をしておくことが重要です。

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研究者の学校・学費

最低でも大卒の学歴が求められることが多い

研究者といっても、その働き方や勤務先はさまざまであり、学歴や経歴も人によって異なります。

ただし、研究者を採用する機関や企業では、最低でも「大卒以上」の学歴を求めることがほとんどです。

というのも、研究者は各分野における専門性こそが重視される職業であり、学生時代に学びを深めていないと仕事にならないからです。

実際には、多額の学費を投じて、大学卒業後に大学院まで進学する人も少なくありません。

とくに大学や国立の研究所に所属したい場合は、できるだけ大学院に進学し、論文執筆や学会での評価実績を増やしておくことが推奨されます。

民間企業ではより幅広い人に活躍のチャンスがある

一部の民間企業では、そこまで高い学歴が必要ない場合もあります。

たとえば、技術開発を行う機械メーカーでは「高専」と呼ばれる高等専門学校で、ロボット制作などの技術を磨いた人材が活躍しています。

技術者(エンジニア)としての要素が強い仕事ですが、研究にも関連する業務に携わることもあります。

また、食品開発を行う食品メーカーでは、栄養系の大学などで「管理栄養士」の資格を取得した人材が、研究や開発などの仕事に従事するケースもあります。

研究者の資格・試験の難易度

資格よりも各テーマに関する研究実績が重視される

研究者として働くために、資格そのものは必要ではありません。

ただし、研究者は研究成果を論文にまとめて、日本語のみならず、グローバルな規模の学術誌での発表を目指します。

英語で論文を書く機会が非常に多いため、語学力は必須といえるでしょう。

研究のために海外の論文や文献を読む必要もあるため、学生時代にできるだけ英語力を高めておくことは決してムダになりません。

研究者としての評価は、どの資格を取得したかではなく、自分がどのような論文を執筆し、どれだけ発表できたかによって決まってきます。

論文が有名な学術誌に掲載され、プラスに評価されれば、研究者としての注目度は少しずつ高まっていきます。

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研究者の給料・年収

専門性の高さが認められると給料も上がる

研究者は、その仕事の専門性の高さから、比較的よい収入が望めます。

大学に所属する研究者の平均年収は、大学の規模や種別(国立・私立)、また本人の実績や年齢などによって異なりますが、800万円〜1000万円ほどが相場とされています。

実績を残していくと、書籍の印税やシンポジウムの講演料、メディアの出演費などの副収入が増え、年収1000万円~2000万円ほどを得る人もいます。

民間企業に勤務する研究者の平均年収は、同じ企業の他職種の社員と大きくは変わりません。

しかし、大学院卒の学歴がある場合、たいていは初任給の時点で大卒者よりも2~3万円ほど高く設定されています。

研究職の専門性を考慮して、その後の基本給も、他職種よりやや高めに設定されることがあります。

実績を残すことが収入アップにつながる

研究者としての評価は、基本的にはどれだけ各分野における実績を残していけるかで決まります。

研究者といっても、まだあまりキャリアのない若手の場合、一般的な会社員の平均年収と同じくらいにとどまる場合もあります。

また、研究費がしっかりと支給されない職場で働くと、研究費がかさんで苦しい生活を送る人もいます。

一方、実績を積み上げていった優秀な研究者は大手企業や有名な研究所からヘッドハントされることもあり、よい待遇で働けるチャンスを掴みやすいです。

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研究者の現状と将来性・今後の見通し

国内の優秀な若手研究者の活躍を後押しする制度が開始

これまで、日本は「科学技術立国」として世界のトップを走り続けてきました。

しかし近年では人口減少による研究者の減少や研究予算の削減から、満足な研究ができずに苦しんでいる研究者もいるのが実情です。

こうした現状を打破するため、日本では国をあげて、国内の大学の研究環境を整えることや、能力のある人材を支援することに力を入れています。

研究者の支援制度が充実し始めており、これから研究者を目指す人にとってはチャンスといえます。

研究者は社会を発展させていくために不可欠な職業であり、それは過去も今後も変わりません。

日本から世界に通用する研究を発信していこうという高いモチベーションを備えた、若手研究者の活躍に期待が集まっています。

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研究者の就職先・活躍の場

国立の研究所から大学、民間企業まで多様な活躍の場がある

研究者の主要な就職先は、国立の研究所や大学、そして民間企業です。

国立の研究所で有名なのは「理研」と呼ばれる「理化学研究所」です。

このほか、文部科学省、厚生労働省、農林水産省など、各省庁所轄の研究所が多数存在します。

国立大学や私立大学などの大学も、研究者の勤務先のひとつです。

大学内には「研究室」があり、理系分野はもちろん、文系の研究者も多数活躍しています。

大学の研究者は「教授」や「准教授」などのポストに就き、学生への指導や学校運営と並行して研究活動を行っています。

また、民間企業でも各種メーカー(食品、化粧品、医療機器、製薬、自動車、化学など)を中心に、多数の研究者が活躍しています。

研究者の1日

研究機関によってさまざまな働き方がある

研究者の1日のタイムスケジュールは、勤めている研究機関や企業によって大きく異なります。

大学の教授や准教授として勤めている研究者の場合、学生の時間割に合わせて、講義や実験、論文執筆の指導を行い、空いている時間で研究活動を行います。

国立の研究所や民間企業に勤めている研究者の場合は、基本的に研究所で自らの業務に集中します。

以下は、民間の食品メーカーに勤務する研究者のある1日の例です。

7:30 出社
7:45 メールチェック
8:00 全体ミーティング
8:30 プロジェクトチームでのミーティング
9:00 実験スタート
12:00 休憩
13:00 実験再開
18:00 実験終了
19:00 報告書作成
20:00 退社

関連記事研究者の1日のスケジュール・生活スタイル

研究者のやりがい、楽しさ

社会に大きな影響をおよぼす仕事ができること

研究者にとっての最大のモチベーションといえるのは、「自分の手で、まだ他の人が見つけていないような画期的な発見をしたい」という情熱です。

研究者が画期的な発見をすれば、その成果によって人の命が救われたり、豊かな社会の実現につながったりします。

直接的な結果がすぐに見えない場合もありますが、研究者の一つひとつの実績の積み重ねが、社会を変え、そして発展させていきます。

また、自ら決めた研究テーマにとことん没頭し、その知識を深めていく喜びも味わえます。

「誰かのために働きたい」「人に喜んでもらえる仕事がしたい」「社会をもっと暮らしやすくしたい」と願っている人にとっては、大きなやりがいを感じられる職業でしょう。

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研究者のつらいこと、大変なこと

研究は不屈の精神で続けなくてはならない

研究は不屈の精神で続けなくてはならない

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研究者に向いている人・適性

探究心が強く、決めたことに対して没頭できる人

研究者にとって最も大切なのは、圧倒的に強い探求心といえるでしょう。

研究者が、自身の研究テーマを決めたり、実験の方法を考えたりするうえで、探求心は大きな原動力となります。

身の回りのことに対して「どうしてこうなるんだろう」「もっと調べてみたい」などと考えられる人は、研究者向きです。

加えて根気強く、自分が決めたことに深く没頭できるタイプの人が研究者に向いています。

また、実験や調査では、仮説を立てたり、その仮説を裏付けるために必要な要素を洗い出したりと、論理的な思考力が求められます。

筋道を立てて物事を考えることが得意な人は、研究者の適性の一部があるといえます。

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研究者志望動機・目指すきっかけ

とことん研究したいテーマがあること

研究者を目指す人は、子どもの頃から身の回りのさまざまな事象に興味をもち、それについて深く考えていったり、調べたりすることが好きなタイプの人が目立ちます。

そこから成長する過程で、特定のテーマや分野に関しての興味が強くなり、大学で学んだことをさらに突き詰めていきたいという思いから、大学院へ進んで研究をスタートする人が多いです。

研究テーマは人によってまったく異なりますが、誰に何といわれようと「自分がとことん研究したいこと」をもっているのが研究者の特徴です。

研究者の雇用形態・働き方

企業や機関によって働き方が異なる

研究者の雇用形態に関しては正規雇用が多いものの、一部の若手研究者は非常勤などで非正規雇用されることもあります。

また、国立の研究所では「研究職」として採用されることが一般的ですが、大学の場合は特殊であり、教授や准教授など「大学教員」として採用されることになります。

ただし、これらの上位ポストに空きがない場合は「講師」や「助手」として雇われて、教授らの手伝いをしながら自分の研究をすることもあります。

民間企業の場合は「研究職」や「研究開発職」として採用されることが多く、場合によっては「技術職」「開発職」などの名称で、研究の仕事をすることもあります。

研究者の勤務時間・休日・生活

勤務先によって勤務体系に違いが出る

研究者の勤務スタイルは、勤務先によって異なります。

大学で働く研究者の場合は、教授や准教授などの役職に就くため、学校の開講時間に合わせて出勤し、土日に休みを取るのが一般的です。

学生が夏休みや春休みなどの長期休暇に入れば、比較的自由に動きやすく、研究に集中できる時間も増えます。

研究所勤務の場合は、一般的な公務員と同様の勤務時間で働き、土日や祝日は休みというパターンになることが多いです。

民間企業に勤務する場合には勤め先の勤務時間に合わせて働きます。

最近ではフレックス制を導入している企業が増え、自分の研究の進捗状況にあわせて自由度の高い働き方ができる場合もあります。

関連記事研究者の勤務時間・休日

研究者の求人・就職状況・需要

地道に実績を積み上げていく努力が必要

研究者として働くためのチャンスを掴むのは、決して簡単なことではありません。

もともとひと握りの優秀な人材しか採用されない業界ではありますが、大学などはとくに採用人数が少なく、研究者の卵として働くのも大変な現状です。

さらに昇進して「教授」や「准教授」になるには、欠員が出るのを待つ必要があり、タイミングや運も関わってきます。

比較的採用が活発に行われているのは、民間企業の研究部門です。

ただし、大手企業は採用ハードルが高めで、採用人数もそこまで多くありません。

学生時代の研究実績や研究に対する姿勢が評価ポイントになる場合が多いため、学生のうちにしっかりと勉強しておくことが重要です。

関連記事研究者の求人・採用の状況・募集情報の探し方

研究者の転職状況・未経験採用

スキルアップのための転職や再就職も盛んな業界

研究者のいる世界では、転職や再就職をする人も多く見られます。

たとえば大学や研究所では、特定の専攻分野における人材交換がよく行われており、最初の就職から定年退職まで、ひとつの研究機関に勤め続けるケースはまれです。

海外の大学や研究所への留学が必要な場合は、いったん仕事を離れて海外で数年間勉強をし、帰国してから再就職するパターンもあります。

民間企業でも、他の業界で活躍してきた研究者を、その経験・スキルが生かせる場合には中途採用で受け入れることはめずらしくありません。

情熱があり、物事を究めていく姿勢を忘れなければ、年齢も関係なく活躍し続けられるのが研究者という職業です。

職業としての研究者にはどんな種類がある?

各分野でさまざまな研究者が活躍している

研究者は、一般的には「よく調べ考え、真理をきわめる人」といった意味で使われている言葉です。

ある種、非常に広い意味をもつ職業といえますが、細かく分類するとすれば「科学者」「経済学者」「社会学者」「歴史学者」「考古学者」「文学者」などが、研究者に含まれます。

また、医師免許をもつ「医師」も、患者さんを診る臨床分野ではなく研究分野中心に活躍する人がおり、そうした人は研究者といえます。

このほか、大学で働く教授や准教授などの「大学教員」も、学生への指導と並行して自らの専門分野に関する研究活動を行っています。