「職業訓練指導員」とは

公共職業訓練施設などにおいて、求職中の人が就職できるようにアドバイスや指導を行う。
職業訓練指導員は、ハローワークなどの公共職業訓練施設や民間の認定職業訓練施設において、求職中の人や学卒者(高卒)の人を対象とした、就職の手助けとなるためのさまざまな訓練を行う仕事です。
教育プログラムの作成や講義のほか、ときには就職のためのアドバイスや生活指導にまで関わることもあります。
この仕事に就くためには「職業訓練指導員免許」を取得したうえで、各職業訓練施設の採用試験を受けて合格しなくてはなりません。
都道府県の職員となれば公務員の身分となるため、給料や待遇面も含めて安定性があるといえます。
世の中の変化が速くなっているいま、職業訓練指導員は各業界のニーズを掴み取り、それに対応した訓練を行うことが求められています。
「職業訓練指導員」の仕事紹介
職業訓練指導員の仕事内容
就職の助けとなる訓練を提供する
職業訓練指導員の主な仕事は、就職の助けとなる訓練を提供することです。
具体的な訓練の内容としてはプログラミングやデザインなどのIT関係、ビジネスマナー、パソコン基本操作など様々な種類があります。
勤務する職業訓練施設によっては医療や福祉関係の訓練を提供するケースもあります。
職業訓練指導員は求職者が技術を身につけるだけでなく就職できるまでのサポートも実施します。
キャリア形成のアドバイザーとしての役割もあるため、求職者の立場になって考える視点が求められます。
教育訓練のプログラムの作成だけでなく生活指導の改善まで業務範囲に含まれることもあります。
多くのセミナーや講座を担当するため、コミュニケーション能力やプレゼンテーションスキルが欠かせない職種でもあります。
職業訓練指導員の就職先・活躍の場
全国の職業能力開発施設で活躍できる
職業訓練指導員は全国の職業訓練施設で活躍することができます。
具体的な施設としては、職業能力開発大学校、職業能力開発促進センター、職業訓練支援センターなどがあります。
就職すると初年度は研修からスタートして、基礎的な訓練から担当します。
勤続年数を経るにつれて担当するセミナーや講座の幅が広くなっていくため、長期的に働くことがスキルを磨くことができます。
また就職支援のための企業回りも業務内容に含まれるため、外回りの業務が発生することもあります。
職業訓練指導員の1日
職業訓練指導員の1日の業務の流れ
職業訓練指導員の職場は公共職業能力開発施設が主な勤務先となります。
メインとなるのは公共職業能力開発施設で、中でも職業能力開発校と職業能力開発大学校で働く指導員が多いです。
<職業能力開発校で働く職業訓練指導員の1日>
8:30 出勤後、スケジュール確認、朝礼参加、授業で使う資料の準備
9:30 午前中の座学授業
12:00 同僚と昼食
13:00 来週の訓練で使用する課題を作成
14:00 午後は工具を使用した実践授業
17:00 明日の実践授業に必要な工具などを準備
19:00 退勤
職業訓練指導員になるには
職業訓練指導員免許の取得が必須
職業訓練指導員になるためには、職業訓練指導員免許の取得が必須です。
そのため免許がない場合、まずは免許取得を目指すことが必要となります。
職業訓練指導員の免許取得方法は大きく分けて2つあります。
まず大学などで教員の普通免許を取得している場合、職業訓練指導員免許は基本的には管轄の都道府県への申請で取得できます。
それ以外の方法としては技能検定1級などに合格した後、職業訓練指導員講習(48時間講習)を終了する、もしくは職業能力開発大学校・大学を卒業した後、職業訓練指導員試験の合格を目指すという方法もあります。
職業訓練指導員の学校・学費
4年間の学費は4年制の国立大学と同等
職業訓練指導員はどのような手段で職業訓練指導員の免許を取得するかによって必要となる学費が異なります。
職業能力開発総合大学校に4年間通学して免許取得を目指す場合、必要となる学費は国立大学と同程度です。
入学金で約30万円、年間の授業料として50~60万円が必要となります。
職業訓練指導員講習(48時間講習)を受講して免許の取得を目指す場合、受講料はテキスト代を含めると約15,000円~30,000円程度です。
受講料の詳細は各都道府県によって異なります。
職業訓練指導員の資格・試験の難易度
学科試験と実技試験が実施される
職業訓練指導員の免許の難易度は都道府県によって異なります。
難易度や倍率の詳細は公表されていませんが、都道府県によって応募者数には差があることが予想できます。
また試験の内容は学科試験だけでなく実技試験も実施されます。
学科試験の内容は全職種共通の指導方法だけでなく専攻学科も含まれています。
職業訓練指導員免許は123種類の種目があるため、学科試験の内容はどの職種を選択したのかによって異なります。
実技試験も職種に応じたものが実施されるため、職種に応じた技能を身につけておくことも大切です。
職業訓練指導員の給料・年収
都道府県の職員と同程度の年収
職業訓練指導員の年収は就業する施設にもよりますが、基本的には地方公務員と同程度の給料、年収が設定されているところが少なくありません。
大卒者であれば初任給は17万~19万円程度。
平均年収は30代で400万円、40代で500万円~600万円程度がボリュームゾーンです。
公的な施設に転職できれば報酬は地方公務員と同程度が基本なので毎月の給料は他の職種に比べると高い水準ではありませんが、福利厚生が充実しています。
職業訓練指導員のやりがい、楽しさ
業務を通して人の役に立つことができる
職業訓練指導員のやりがいは業務を通して人の役に立つことができることです。
求職者は職業訓練を通して技術を身につけることができれば、その技術で就職することができます。
実際に就職できるところまで指導することは簡単ではありませんが、訓練生から感謝の言葉をもらった時は特にやりがいを感じることができます。
また職業訓練指導員は日々多くの訓練生と関わりを持つため、人間的に成長することもできます。
担当分野について専門知識を磨くことができるのも、職業訓練指導員の魅力の一つです。
職業訓練指導員のつらいこと、大変なこと
やる気のない訓練生を指導することも
職業訓練指導員は、様々な訓練生との出会いがあります。
素直な訓練生への指導はスムーズに進めることができますが、全ての訓練生が前向きに訓練に取り組んでくれるわけではありません。
やる気のない訓練生を担当することもあります。
また他の訓練生と同じように指導しても、理解が遅い人もいます。
そういったやる気がない人や理解が遅い人への指導は、通常の指導よりも根気と粘り強さが必要です。
またどのような職種を担当しても、業界には常に新しい技術が取り入れられるため常に勉強を続けなければいけない苦労もあります。
職業訓練指導員に向いている人・適性
相手の気持ちになって考えることができる人
職業訓練指導員は、訓練生からキャリアについてアドバイスを求められることが少なくありません。
その時に相手の気持ちになることができなければ、見当違いのアドバイスとなってしまいます。
そのため職業訓練指導員を目指すなら、相手に気持ちになって考えることができることが大切です。
また職業訓練指導員は自分が担当する職種については、常に学び続ける姿勢が求められます。
訓練指導員として担当する職種に情熱を持ち続けられるかどうかは、適正を見極める際の重要なポイントの一つだといえるでしょう。
職業訓練指導員志望動機・目指すきっかけ
教育への関心や情熱を伝える
職業訓練指導員の志望動機としては教育への関心や情熱を伝えること人が少なくありません。
訓練生は社会人経験者が多くなるため、高校や大学と雰囲気は異なりますが職業訓練指導員も教育者であることに違いはないからです。
志望動機として教育への興味を選ぶのであれば、なぜ教育に関心を持つようになったのか、具体的なきっかけまで伝えることが大切です。
また職業訓練指導員の仕事は安定的に働ける仕事ではありますが、訓練生以外にも日々多くの人と向き合うことが求められるため、人間関係のストレスは他の職種に比べると多くなります。
そのため対人関係が得意であることを伝えると採用担当者に良い印象を残せる可能性があります。
職業訓練指導員の雇用形態・働き方
正社員以外の働き方も選択できる
職業訓練指導員の雇用形態は正社員だけではありません。
フルタイムの契約社員や短時間のパートとして働くこともできます。
また職業訓練校は日本全国にあるため、免許を取得することができれば様々な職業訓練校へのエントリーが可能となります。
自分が専門とする職種の職業訓練指導員の募集がされている必要はありますが、タイミングがあえば幅広いエリアから就業先を選ぶことができます。
施設によっては非正規雇用で雇用期間が1年もしくは1年半と決まっている場合もあるため様々な施設でキャリアを形成するという選択肢もあります。
職業訓練指導員の勤務時間・休日・生活
基本は土・日・祝が休み
職業訓練指導員の勤務時間は勤務先によって異なりますが、基本的には日勤のみです。
勤務時間は8:30~17:00、もしくは9:00~17:30が一般的です。
休日は土・日・祝日が基本です。
また休日は基本給以外に、有給休暇や夏季休暇、年末年始、介護休暇、育児休暇制度などが設けられていることが多くなります。
残業の有無は施設によって異なるところもありますが、定時で帰宅できる施設も珍しくありません。
業務時間中は密度が濃くなりますが、残業が少ないためプライベートを充実させながら働くことができます。
職業訓練指導員の求人・就職状況・需要
求職者だけでなく在職者への需要もある
厚生労働省では職業訓練指導員が活躍できる場面として4つの訓練を提示しています。
それは離職者訓練、学卒者訓練、在職者訓練、障がい者訓練です。
職業訓練施設は訓練の分野が複数あることからも分かるように、職業訓練指導員は様々な領域で需要があります。
就業先は公的機関が基本となるため決して多くはありませんが、今後も安定した需要は見込むことができます。
また職業訓練指導員の求人はハローワークからも探すことができます。
ハローワークではフルタイムだけでなく短時間の求人まで掲載されているため、個々の状況に合った雇用形態を選ぶことができます。
職業訓練指導員の転職状況・未経験採用
免許があれば未経験採用もあり
職業訓練指導員は免許を取得していれば未経験でも就職を目指すことができます。
しかし地方公務員としての職業訓練指導員を目指すことは簡単なことではありません。
地方公務員は充実した福利厚生と将来の安心感も得ることができるため、採用枠に応募者が殺到することがほとんどだからです。
また転職先としては認定職業能力開発施設もありますが、非正規雇用として募集されることが多くなります。
そのため職業訓練指導員の免許を取得しても職業訓練指導員としてではなく、一般の民間企業へ転職する人も少なくありません。
職業訓練指導員の現状と将来性・今後の見通し
公務員として就職できれば安定的に働ける
職業訓練指導員は地方公務員として就職できれば、今後も安定的に働くことができます。
基本的には公的機関で働くことが前提の職種であるため、採用枠が急激に増えることは期待できません。
しかし地方公務員としての需要は各地域で定期的に発生します。
地方公務員になることができれば、リストラや倒産に伴う給与未払いなどの不安もなく安心して働くことができます。
安定を重視する場合、職業訓練指導員は今後も魅力がある職種の一つです。