「考古学者」とは

過去の人が残した遺跡や遺物を発掘し、人類の生活様式や文化を研究・発表する。
考古学者とは、「遺跡や遺物など人類が残した過去の痕跡から、その生活様式や変化を研究する」人のことを指します。
遺跡が発見された場合に発掘チームを結成し、発掘を行い、そこでの出土品や遺構を記録し、整理したうえで報告書にまとめます。
考古学者として学芸員の資格をとって博物館で働く人もいれば、教育委員会で文化財の専門家として働く人、また大学教員として考古学の講義を行う人もいます。
考古学について専門的に学べる場所は、大学の史学科や歴史学科です。
そのまま大学院に進み、さらに専門性を高める人もいます。収入や待遇は働く場によってまったく異なってきますが、そもそも募集人員があまり多くないため、まずは大学で考古学についての知識を深め、働き口を探すことが一般的な道と言われています。
「考古学者」の仕事紹介
考古学者の仕事内容
発掘作業を通し、過去を研究する
考古学者は、遺跡や遺物などを発掘し、人類の生活様式や文化、もしくは恐竜に代表される昔の生物や自然環境の変化などを研究する仕事です。
発掘チームを作って発掘作業を行い、出土品があれば記録・保管し、報告書にまとめます。
組織に所属する人ばかりではありませんが、文化財の専門家として役所や教育委員会で働く人が多く、大学教員になる人や博物館に勤める人もいます。
就業場所によって、仕事の内容は変わってくるでしょう。
たとえば大学勤務であれば講義を通して、学生に考古学のなんたるかを教えることになりますし、博物館に勤めるのであれば来館者に展示の説明をすることになります。
発掘作業では海外に長期滞在することもあるため、知力に加えて体力も求められます。
考古学者の就職先・活躍の場
大学以外にもさまざまな就職先がある
考古学者というと、メディアのイメージで大学教授を想像する人が多いかもしれません。
実際には大学以外にも、博物館や教育委員会、民間の発掘調査会社、埋蔵文化財センターなどさまざまな活躍の場があります。
調査対象となるフィールドも、国内外を問いません。
なお、有名な考古学者になれれば、講演会を依頼されたり書籍の執筆を依頼されたりするケースもあります。
考古学者の1日
これらに正規職員として採用された場合の勤務時間は、一般企業に勤めるサラリーマンと同様に8時から8時くらいの間で、1日の実働は8時間程度となります。
博物館や自治体に勤めている人であっても、自分の休日を利用して、個人的に考古学の勉強や研究活動に勤しむ人がいます。
考古学者として生きる人は、「考古学は自分の趣味であり、生きがいである」と話すことも少なくなく、仕事とプライベートを切り離さず、自らのライフワークとして考古学に接しているのかもしれません。
<大学で働く考古学者の1日>
考古学者になるには
大学に進学し知識を身につけよう
考古学者になるのに、絶対に必要な資格はありません。
しかし「考古学者」と名乗るには、考古学を専門的に学び、研究を続けていることが大前提となるため、大学の史学科などに進学することが第一歩と言えます。
また、大学院に進んで論文を書き、修士号や博士号をとっている人も多いのが特徴です。
就職先の選択肢はあまり多くありませんが、教育委員会の文化財保護課や民間の考古学研究所などが挙げられます。
考古学者の学校・学費
文学部史学科に進むケースが多い
考古学を学ぼうと思ったら、基本的に大学の文学部に進む必要があります。
考古学者は史学科出身者が多いです。
大学選びに際しては、日本考古学協会が、ホームページに考古学の大学講義一覧を掲載しているため、参考にすることをおすすめします。
自分の関心のある分野に関する授業はあるか、専門の教員がいるかどうかをチェックしてみてください。
学費は私立大学に進むか公立大学に進むかによって、大きく差が出ます。
考古学者の資格・試験の難易度
博物館に勤める場合は学芸員資格が必要
考古学者になるために特別な資格は必要ありません。
ただし、仕事をする場所によっては資格が求められることもあります。
たとえば博物館に勤務するためには国家資格である学芸員資格が必要です。
まずは自分の興味ある分野を学べる大学を選んでください。
その上で、国が定める博物館に関する科目を置く大学や短大で、必要科目を修得し、卒業する方法が一般的です。
他にも試験認定、論文や業績によって判断される無試験認定などがあります。
考古学者の給料・年収
考古学者の給料は、どんな働き方をするかによって変わってきます
役所や教育委員会、大学、一般企業などに勤める場合は、毎月固定の給料が支払われることが一般的です。
年収は大学教授となれば1,000万円前後ですが、教授になるまでの期間が長いため生涯年収はそこまで多くありません。
学芸員の場合は私立であれば250万~400万ほどです。
国立の博物館の館長であれば1,000万円をこえるケースもあります。
ただし、安定した収入を得られるのはほんの一握りであり、非正規雇用の占める割合が大きいのが現状です。
考古学者のやりがい、楽しさ
歴史に名を残す可能性がある
自分が興味関心を寄せる研究対象と、発掘を通し向き合えることは、大きなやりがいだといえるでしょう。
世界中にまだ解き明かされていない謎があり、活動すべきフィールドは無限大に広がっています。
ひとつひとつ手がかりを積み重ねることで、歴史に埋没していた研究対象が像を結んでいく楽しさは、他の仕事ではなかなか味わえないものです。
これまで誰も知らなかった事実を明らかにすれば、歴史に名を残す存在になれるかもしれません。
考古学者のつらいこと、大変なこと
過酷な環境で成果が出ないことも
発掘作業はときに過酷な環境で進められます。
気温や天候に苦しめられることはよくありますし、フィールドが海外の場合は、慣れない環境に身を置かなければなりません。
怪我のリスクもある厳しい環境下、粘って成果が出るとは限らず、掘っても掘ってもなにも出てこないこともあります。
また、所属する組織によって仕事内容は変わるため、自分の興味のある対象を追いかけられるとは限りません。
雑務に煩わされ、自分が本来携わりたいと思っていた研究はほとんどできないままという事態もあり得ます。
考古学者に向いている人・適性
知的好奇心、根気のよさ、体力が必要
考古学者に向いている人は、男性女性を問わず、知的好奇心が強く継続的に物事に取り組める人です。
発掘作業は時間のかかるものですし、易々と結果が出るものではありません。
成果が出なくても諦めない情熱と根気のよさが求められます。
得られた手がかりを結び付けて歴史の謎を紐解いていくには、知識と探究心が欠かせません。
歴史に強い関心を持ち、学び続ける姿勢が大切です。
また発掘自体は肉体労働の側面も強いため、体力がなければつとまらないでしょう。
考古学者志望動機・目指すきっかけ
人の数だけきっかけがある
考古学に興味を持った背景は人によってさまざまです。
たとえば、恐竜が子供のころから大好きで自分でも化石を発見したいと思った人や、伝記を読んで心動かされた人、歴史に対する関心の延長線上で発掘に至った人など、人の数だけ理由があります。
考古学をテーマにした漫画や映画も多く、物語を通して感化された人もいることでしょう。
実際に目指す人は限られているかもしれませんが、興味を持ったり憧れを寄せたりする人は決して少なくない、魅力的な仕事です。
考古学者の雇用形態・働き方
採用枠の少ない職種
考古学者として、生活できるだけの収入を得るのは難しいものです。
大学教授を目指すにしても博物館や専門機関で働くにしても、募集枠が非常に少ないため、実力と運の両方に恵まれなければ安定した職は得られません。
非正規雇用で働く期間が長く続き、見切りをつけて職から離れてしまうケースは数多くあります。
それでも、夢をあきらめきれない人は、大学などに所属せず他に仕事を持ちながら休日などを利用して研究を続けています。
考古学者の勤務時間・休日・生活
就職先によって異なる
大学勤務であれば、勤務時間は講義や会議といった予定がなければ、自由に調整できます。
博物館や教育委員会、民間の発掘調査会社、埋蔵文化財センターなどで働いている場合は、原則はサラリーマン同様の勤務時間です。
ただし、博物館は展示前の期間に残業が発生し、なかなか帰れないことも多くあります。
生活リズムは就職先によって大きく変わるといえるでしょう。
なお、休日を利用して発掘を行っている研究者も少なからずいます。
考古学者の求人・就職状況・需要
求人数が少ないため、人の輪を広げておこう
求人数は非常に少なく、なかなか就職先に恵まれないのが現状です。
そのため、アルバイトやボランティアで発掘に参加する人も多くいます。
考古学を仕事にしようと思ったら、実力と運、それからコネクションが必要です。
学会を通じてコネクションをつくったり、民間の機関で一緒に働く機会を持ったりすることで就職の際に声をかけてもらえる可能性があります。
在学中には、積極的に人の輪を広げておくとよいでしょう。
考古学者の転職状況・未経験採用
転職、未経験採用ともに厳しい
専門性の高い職種であるため、未経験採用はほとんどないといってよいでしょう。
そもそも採用枠が少ないため、考古学者に転職をするのは厳しいです。
考古学を学ぶところから始め、コネクションをつくりながら大学院に進む必要があります。
今現在の仕事を辞めて転職を試みても、非正規雇用でしか職が得られず食べていけない可能性が高いといえるでしょう。
転職を目指すのではなく、仕事を続けながら、発掘に参加するのが現実的な選択です。
考古学者の現状と将来性・今後の見通し
どんな考古学者を目指すのかをイメージして
日本では、興味さえあれば、素人が発掘作業に参加することも可能です。
そのため、考古学の魅力に関心を寄せる人々は今後も増えていくでしょう。
一方で、考古学者として働ける職場は限られていて、正規雇用で採用される人数も少ないのが現状です。
代表的な就職先である役所や教育委員会に勤めれば「いち公務員」の立場になるため、安定はしているものの、夢見ていたような働き方ができない可能性もあります。
将来をしっかりと見据えて、どんな考古学者になりたいのかイメージする必要があるといえるでしょう。
そのイメージが、次の世代の考古学者をつくっていくはずです。