「哲学者」とは
哲学を研究し、論文の執筆や講演活動をする研究職。大学教授として活躍する人が多数。
あらゆる事象を多角的かつ深く探究し、新たな世界観を獲得することが哲学者の使命です。
主に大学で講義をしながら、自身の執筆活動、講演活動、そして研究活動を行っています。
研究者としての基礎は大学の哲学科で修得し、大学院に進んで研究を深化させる必要があります。
大学教授になるのは狭き門であり、ほとんどの人がポスドクやアルバイトをしながら研究実績を積み、空席を待ちます。
教授職の平均年収は1000万円と高額ですが着任するまでの不遇の時代が長く、書籍代等自腹を切ることも多いため生涯年収としてはそれほどでもありません。
物事を探究し、多角的な視点で見つめることを信条とする哲学者の思考力は社会人に求められる能力でもあるため、一般企業などでの活躍も期待されています。
「哲学者」の仕事紹介
哲学者の仕事内容
教育機関で研究することが多い
哲学者の仕事を考えるに当たり、まず哲学者とは何かを定義する必要性があります。
現代においては、教育機関等で哲学を研究している人間を意味することが多いです。
哲学を研究し、論文を発表することで業績を築いています。
主な仕事は教育機関での講義です。
時には外部から依頼を受けて講演をすることもあります。
教授職に就くのは狭き門であるため、中学や高校で教師として活躍している哲学者も少なくありません。
研究分野で大きな功績を残し、執筆活動を主たる活動としている人もいますがそれだけで生活できる人はごく少数です。
ほとんどの人が前述のような職業に従事する傍らで合間をぬって執筆を行っています。
哲学者の中には思考活動を一般企業の企画分野で行い、活躍している人もいます。
哲学者の就職先・活躍の場
代表的な就職先は大学
一番多いのは哲学科やそれに類する学科のある大学への就職でしょう。
安定した立場になるまでに時間と学費がかかりますが、上手く就職口を見つけることができれば、手厚い待遇のなかで研究を進められます。
書籍の執筆を依頼されたり、講演会に呼ばれたり、テレビ出演をはじめメディアに露出したりする哲学者もいます。
あとは高校教師として倫理の授業を行ったり、一般企業の企画分野に自身の思考活動を活かしたりと活躍はさまざまです。
哲学者の1日
大学教授は講義以外にも多くの仕事がある
哲学者の主な仕事は論文の執筆で、一日の大半を哲学に関することを考えて過ごします。
大学で働く場合、講義以外にも多くの仕事があるため実際に論文を書く時間は少なくなりがちで、工夫して時間を捻出しなくてはなりません。
<大学教授として働く哲学者の1日>
6:30 起床・朝食・身支度
8:00 研究室に出勤
9:00 論文執筆開始
10:30 休憩
10:45 講義開始
12:15 昼食
13:00 大学院生のゼミ指導
14:30 事務仕事など
16:30 論文執筆
18:00 退勤
哲学者になるには
大学院に進み学問を修める
哲学者には特別な資格はいりません。
しかし、研究を行う上で最低限、論理力や哲学史の基礎知識が必要となってきます。
まずは大学で哲学を専攻し、修得するのが近道です。
卒業後も研究を続けるためにほとんどの人が大学院に進学します。
自身の研究成果を論文として発表し、評価を得ることで実績を重ね、活躍の場を切り開く職業なので根気よく思考活動を続けることが肝要です。
さらに著名な哲学書を原書で読み解かなければならないため、語学力を高める努力もすることになります。
また大学教授として活躍している哲学者は、国内外の一流大学院を修了している人ばかりなので、まずは相応の高い学力が求められます。
哲学者の学校・学費
大学院の博士課程をめざして
大学に勤めるには相応の学力が必要です。
たとえば東大の学生を指導しようとすれば、東大卒かそれ以上の学歴が求められます。
就職先の選択肢を増やすためにも、名の知れた大学に進んでおくべきです。
よく知られているとおり、大学で専任として採用されるまでにはとても時間がかかります。
学士課程、修士課程、博士課程とすべて修める学生でいる期間がとても長く、その間の学費も大きな負担です。
学者に裕福な家庭に生まれた人が多いのはそのあたりの事情もあります。
哲学者の給料・年収
高い専門性に見合った待遇
大学教授として活躍する哲学者の平均年収は1000万円前後と高額ですが、そもそも常勤になれるのが遅く、平均年齢も50代以上と高いため、生涯年収で考えると意外と多くないこともあります。
また、研究費は人によってばらつきがあり、書籍代などでどんどん出費がかさんでしまうことも少なくありません。
安定した立場になるまでには、アルバイトをしながら研究を続けるような不遇の時代をほとんどの哲学者が経験しています。
博士課程修了後、運よくポスドクとして研究室に残れてもその平均年収は300万円程度とそれほど高くなく、実績のない若年者の場合は200万円台ということも珍しくありません。
哲学者のやりがい、楽しさ
考えることが仕事になる
世の中の多くの人は一般企業に就職します。
就職活動では自分ならではの意見を求められていたのに、いざ会社勤めをすると、いかに自分の意見が求められていないかを痛感するはめになりがちです。
その点、哲学者は自身の考えをどう深めていくかが仕事に直結しています。
その人だからこそ発信できる考え方があり、優れた論考は後世に引き継がれていきます。
哲学者ならではの醍醐味だといえるでしょう。
また、同業者との交流ができる環境にあるのも、魅力のひとつです。
哲学者のつらいこと、大変なこと
研究以外の仕事も多い
学者といえば自身の研究に没頭しているイメージがありますが、実際のところ他の仕事にも多くの時間を割いています。
本音のところは研究に集中したくても、講義や学生の指導はずっとついて回りますし、教授会をはじめ会議や打ち合わせにも駆り出されます。
学者は副業が可能であったり、講義以外の時間をどう使うかという点で、自由度が高い仕事ではありますが、やらねばならないこともとても多いのです。
学問を究めていくことへのプレッシャーはついて回りますし、同業者から手厳しく批判されることもあります。
哲学者に向いている人・適性
考えることを諦めない
哲学者は世の中のあらゆることに問いを立てて向き合っています。
一般論に流されることなく、思考を深めていかなければなりません。
常識、当たり前とされることにも批判的な精神を忘れない姿勢が必要です。
またこれまでに積み重ねられてきた研究や同業者の研究にもアンテナを張り、考えをアップデートしていかなければなりません。
常に学びを怠らない姿勢が求められます。
批判精神、発想力、思考力、論理性、向学心などが備わっていなければ目指すことは難しいでしょう。
哲学者の雇用形態・働き方
安定するまでが長く厳しい
大学で働くまでにはとても厳しい道のりが待っています。
運よくポストドクター(博士研究員)として大学に残れても、安定した仕事が得られるようになるかといえば、なかなかうまくいきません。
非常勤講師をかけもちしても収入は低く年間300万円ほどです。
これは社会保険や学会にかかる費用が含まれていないため、手取りとはかけ離れています。
専任になれれば待遇も安定し、年収600万円ほどなのですが、なれるのは本当に一握りの人間だけです。
そのため就職するタイミングを逃してしまうと、フリーターのような生活が続くというリスクもあります。
哲学者の勤務時間・休日・生活
大学に勤める場合は、学校ごとのスケジュールに合わせて
大学に勤める場合、勤務時間は講義などの予定に合わせて組まれます。
どうしても休めない予定を除いて、時間の使い方の自由度は高く、副業を行う人も少なくありません。
できるだけ稼いで研究費を補う、という場合もあります。
しかし、だからといって本業を疎かにできるはずもなく、大学教員は多忙です。
休日は大学の休みに合わせてとり、夏休みも一週間ぐらいあります。
勤務先での拘束時間こそ短いですが、研究者になるようなタイプは、家に帰っても執筆にいそしんだりと、公私の区別がつかない生活をしている人も多いです。
哲学者の求人・就職状況・需要
採用枠は減っている
大学で働くのはとても厳しいのが現状であると言わざるを得ません。
補助金は減らされ、学生の数は減り、大学側もコストカットの手を緩められないのです。
また、大学教授や准教授は一般企業と異なり、退職するケースがほぼありません。
つまり特定の分野のポストが空くまでに何十年もかかかるということです。
そのため名の知れた大学院で博士号を取得し、実績を積んできた人も簡単には就職できません。
大学で採用されるためにはコネがものを言うといいます。
学会を通して人脈を広げておくことが必要です。
哲学者の転職状況・未経験採用
リスクが高いため覚悟が必要
哲学を大学で研究したくても、安定するまでに時間と学費がかかるため、転職しようと思ってすぐ目指せるようなものではありません。
たとえば大学卒で民間企業に勤めていて、哲学者をめざすために学びなおそうとすれば、大学院から始めても5年間は学生でいなければなりません。
そのあとポスドクなどで収入の安定しない状態が続き、下手をすればそのままという可能性もあるのです。
もちろん、目指してはいけないわけではなく、時間と学費の確保ができ、リスクを覚悟できるのであれば挑戦する価値はあります。
哲学者の現状と将来性・今後の見通し
哲学者のポストは少ない
哲学の分野は未開の部分が多く、常に見直され、懐疑され続けています。
したがって、後世に残るような新たな哲学の確立が常に期待されているといえるでしょう。
しかし、哲学研究の第一人者である大学教授、助教授のポストは希望者に対して圧倒的に数が足りません。
この現状を懸念する声は学会を中心に上がっていますが、残念ながら先行きは不透明な状況であると言わざるを得ません。
その一方で、哲学者の生命倫理に関する探究が医療の現場で生かされるのではないかという声もあります。