「小学校教師」とは

満6歳から12歳の児童に学習・生活指導を行い、豊かな人間性と個性を育む。
小学校教師の役割は、生徒に勉強を教えることだけではありません。
6歳〜12歳の間は人格形成に大きな影響を与える時期であり、子どもたちの個性を伸ばし、人間性豊かに育つように指導をすることも教師の大きな役目です。
また、授業や給食、ホームルームなどの時間以外にも数多くの業務があり、生徒帰宅後もさまざまな仕事があります。
小学校教師になるためには、教職課程のある学校で教職課程を修了し、小学校教員免許を取得したのち、教員採用試験に合格することが必要です。
採用倍率は、採用数の多い都市部の方が低く、地方の方が競争率が高くなっています。
学級崩壊やモンスターペアレントなど、教育現場は多くの問題を抱えており、さまざまな新しい取り組みが行われています。
「小学校教師」の仕事紹介
小学校教師の仕事内容
学級を受け持ち、学習や生活を指導する
小学校教師は、満6歳から12歳の児童に対し、学習や生活を指導する仕事です。
自分の学級を受け持ち、児童たちをまとめあげながら、すべての科目を教えていかなければなりません。
毎年度発表される小学校の学習指導要領に沿って、学習計画を立てた上で授業準備を行い、児童たちの指導に当たります。
知的能力の向上を目指すほか、ホームルームや学校行事などを通じて、児童一人ひとりの個性や人間性を育てていくことも重要な役目となっています。
保護者の声に耳を傾けながら、児童の様子を見守り、なにか問題が起きたときには的確な対応を求められる立場です。
PTAや地域と連携した活動などを含め、小学校教師の業務内容は多岐に渡るため、常に多忙な環境に身を置かなければなりません。
小学校教師の就職先・活躍の場
公立か私立かを選ぶ
就職先として考えられるのは、公立もしくは私立の小学校です。
小学校と一口に言っても、公立小学校と私立小学校では教育方針や授業内容に大きな違いがあります。
特に私立小学校は、学校ごとにカラーが大きく異なりますから、自分に合っている学校かどうかをよく調べた上で、受けてみるのがよいでしょう。
一般的に私立小学校のほうが、教育熱心な家庭の児童が多いため、学級崩壊などの問題は起こりにくいものだと認識されています。
小学校教師の1日
授業そのもの以外の業務もたくさんある
小学校教師の1日は、授業と児童の対応が中心です。
公立、私立の小学校教師ともに、勤務時間は8時前後~17時前後です。
しかし、授業の準備をはじめとする膨大な仕事量を抱えていることから、残業を含めた勤務時間は長くなる傾向にあります。
<公立小学校で働く小学校教師のある1日>
7:30 出勤・授業の下準備・職員会議
8:45 1限目開始
12:30 子どもたちと一緒に給食をとる
13:15 子どもたちに適切に指示を出しながら掃除
13:50 5限目開始
15:00 下校指導・職員会議・クラブ活動の見守り
17:00 授業準備、テストの採点などの事務処理
20;00 退勤
小学校教師になるには
いずれかの免許状が必要
小学校教師になるには、小学校教員免許状の取得が必要です。
高校卒業後、教職課程のある大学院、大学、短大のいずれかで学び、所定の課程を修了することで免許状(専修、一種、二種のいずれか)が取得できます。
なお、教職課程を履修していなくても「教員資格認定試験」に合格すれば二種免許状が得られます。
その後は、公立であれば各都道府県で実施される教員採用候補者試験、私立であれば各小学校の教員採用候補者試験を受け、採用を目指します。
小学校教師の学校・学費
学歴よりも試験重視
免許状を取得するためには、「教員資格認定試験」に合格するか、短大、大学、大学院のいずれかに進み、小学校教員免許状を取得する必要があります。
公立小学校を目指すのであれば、教員採用候補者試験が突破できるかどうかにかかっているため、大学名をはじめとする学歴はさほど問題ではありません。
私立小学校であれば、重視するかどうかは学校次第でしょう。
今後のために、教育学部に進んで学びたいのであれば、国公立大学か私立大学かによってかかる費用には大きく差が出てきます。
国公立大学ならば四年間で250万円前後、私立大学の場合は学校によって差がありますが、年間100万以上の学費を覚悟しなければなりません。
小学校教師の資格・試験の難易度
筆記試験のみでは合格できない
教員を志望する人の中で、小学校教師になりたい人の割合は比較的少なめです。
そのため、試験の倍率は中高の教師と比較すると、そこまで高くはありません。
しかし、教員採用候補者試験は決して容易なものではなく、受験者の多くが複数回受験している既卒生です。
だいたい難易度の目安は、公務員試験の地方上級レベルと言われています。
筆記試験、人物試験、実技試験、適性検査があり、自治体によって異なりますが、実技では器械運動、水泳、ピアノ、英会話などができなければならないケースもあります。
小学校教師の給料・年収
無償の労働が多い
公立小学校で働く場合は、地方公務員として各自治体の給与体系が適用されます。
地域や年齢、勤続年数によって異なるものの、平均年収は400万円~600万円程度で、40代になると700万円ほどにもなります。
ボーナスの平均は170万円ぐらいです。
数字だけ見ると安定して見えますが、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」、略称「給特法」により残業分や休日出勤分はほとんど手当がつきません。
あらかじめ給与の4%ほどの金額が、上乗せされているのみです。
私立小学校は学校によってかなり差がありますが、首都圏では公立以上に給料が良いケースもあるようです。
小学校教師のやりがい、楽しさ
子どもたちの成長を一年かけて見守っていく
小学校教師になって担任を持つと、子どもたちの成長を一年かけて見守っていくことができます。
多くの選択肢を持つ子どもたちを後押しできるという点で、小学校教師は未来に貢献する仕事です。
行事に関しては、一年を通して取り組む内容がほぼ固定されているため、年数を重ねるごとに上手くこなせるようになります。
児童と共に、行事をやり遂げた達成感を分かち合うこともできるでしょう。
責任が重く大変な仕事ですが、熱意と愛情をもって接し、その気持ちが子どもたちに届いたときには嬉しいものです。
小学校教師のつらいこと、大変なこと
激務だが手当はつかない
小学校教師には授業以外の雑務が山のようにあります。
毎日朝早く出勤し、夜遅くまで残業せざるを得ない状況です。
休日も部活などを理由に仕事をしなければならないケースが多々あります。
それにも関わらず残業手当も休日出勤手当もほぼ支給されません。
そうした厳しい労働環境の中で、保護者からの過剰なクレームや、学級崩壊、学級内のいじめ問題などにも対応しなければならず、心を病んで離職する小学校教師も少なくありません。
小学校教師に向いている人・適性
子ども一人ひとりを尊重する姿勢が大切
指導力や熱意、コミュニケーション能力はもちろんですが、一番大切なのは子どもたち一人ひとりを尊重する姿勢です。
子どもの集団をまとめあげるに当たって、統制をとることばかりに注意がいくと、それぞれの児童の抱える悩みを見落としてしまいます。
特に公立小学校にはさまざまな背景をもった児童が通います。
中には、教師に対して、SOSの信号を出しているような子どもと出会うこともあるはずです。
気づいてあげられるよう、子どもたちに対し常にアンテナを張り、その尊厳が脅かされていないかを見守る必要性があります。
小学校教師志望動機・目指すきっかけ
自分なりの教師像をもって
小学校時代の思い出を糧に、教師を目指すというケースは多いでしょう。
たとえば、担任が尊敬できる先生で影響を受けたため、というのは多いパターンです。
また、逆に先生のことが嫌いだったから別の教師像を目指したい、という場合もあります。
それ以外にも、子どもが大好きで何か関わる仕事がしたかったという人、勉強の魅力を子どもに伝えたい人、現在の教育のあり方に問題意識があり内部から変えていきたい人など、動機はさまざまです。
小学校教師の雇用形態・働き方
非正規雇用は欠員が出たときに多い
小学校教師というと正規雇用のイメージが強いですが、実際には非正規雇用も存在しています。
公立小学校における正規雇用は、小学校の教員免許状を取得し、教員採用候補者試験に合格していることが前提条件です。
しかし、非正規雇用の場合、幼稚園や中学校の免許状しかなくても助教諭免許状がもらえ、教壇に立つことができます。
非正規雇用は臨時的任用教員と呼ばれ、常勤講師と非常勤講師の二種類に分かれます。
ここで言う常勤講師は期限付きであり、産休育休などで欠員が出たときの穴埋めで働くことが多いです。
非常勤講師は小学校ではかなり少ないですが、授業単位での穴埋めを行います。
小学校教師の勤務時間・休日・生活
プライベートがほとんどない場合も
小学校に限らず教師の仕事は激務であり、社会問題化しています。
教師には長い夏休みがあるという誤解を持たれがちですが、授業がないだけで通常どおり勤務しています。
授業期間中は、朝は7時台に来て子どもたちの登校を見守ったり、夜は事務や保護者対応で遅くまで残ったりして、プライベートを犠牲にしなければ働けないのが現状です。
部活で土日出勤をしなければならない場合、運動部などハードな部活を受け持つと、休みがほとんどとれないこともあります。
残業手当と同様、休日手当もつかず、ただ月給の4%相当が上乗せされているだけなので、仕事が生きがいでなければ難しいのが現状です。
小学校教師の求人・就職状況・需要
教師不足が続いている
全国的に教師不足が深刻な問題になっているため、教師志望者は引く手あまたの状態です。
その一方で、小学校の教員免許状を取得している人の数は決して少なくありません。
つまり、免許状だけ持って教員にならない人が一定数いるということです。
その背景には、社会問題になるほど、ブラックな労働環境があります。
文科省も働き方改革に乗り出し、国のガイドラインで時間外労働の上限が「月45時間」と定められましたが、実際にはそれを超える労働が発生しているため、教師不足の改善にはつながっていません。
小学校教師の転職状況・未経験採用
民間からの転職も可能
民間から転職する人も中にはいます。
売り手市場なので、免許状を持っていて、教員採用候補者試験もしくは私立校の教員採用試験に合格できれば、採用の可能性はある程度あるでしょう。
ただし教員採用候補者試験を目指すには、相応の勉強量が必要となります。
そのため、仕事を続けながら転職しようという場合には、いかに勉強時間を確保するかが問題です。
私立の学校に勤務していて、他の学校に転職するという場合であれば、これまで積み重ねてきた経験が評価につながることでしょう。
小学校教師の現状と将来性・今後の見通し
予算の問題もあり、改善への道のりは長い
小学校で過ごす6年間は、児童の人間形成にとって非常に大事な時期となります。
特に現代は、学校生活における「いじめ」や「不登校」など、さまざまな問題が取り上げられており、小学校教師に対する世間の目も一段と厳しくなっています。
小学校教師の迅速かつ的確な対応力が問われる一方で、労働環境の厳しさがそれを許さない現状もあり、課題は山積みです。
部活や雑務を教師以外の人材が担う方向で、改善が図られつつありますが、予算の問題もあるためまだまだ道のりは長いでしょう。