アーキビストの仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「アーキビスト」とは

公文書などの文書管理のスペシャリスト

アーキビストとは、保存する価値のあるものを収集、整理し、長期的に保存、管理、閲覧できるようにする仕事のことです。

日本では文書管理の専門家とされ、公文書館や古文書館などの専門職員や、官公庁において公文書の管理と保管に携わる人のことを指します。

公文書(アーカイブ)は、基本的には永続的に価値があり、将来の利用のために保存・保管しなくてはなりませんが、ずさんな管理体制によって記録が廃棄されてしまうこともあります。

アーキビストとはこうした事故を防ぎ、資料を後世に残すために働きます。

まだ認知度が低く、主に国や地方自治体が作成した公文書や歴史的資料を保存・保管する仕事とされていますが、それ以外にも海外では写真や映像などさまざまな形式のものを扱います。

また、歴史的に見て価値のある資料の鑑定や評価したり、調査研究をしたり、来館者にプレゼンテーションしたりすることもあります。

2012年に日本アーカイブズ学会登録アーキビスト資格認定制度が発足し、普及が広まりつつある職業です。

また公文書をデジタルデータとして残す際には「デジタル・アーキビスト」という専門の資格があります。

主に政治学や行政学、法学に関わる分野ですが、図書館情報学やアーカイブズ学など記録管理の知識も求められます。

「アーキビスト」の仕事紹介

アーキビストの仕事内容

資料を収集、保管し後世に残す

アーカイブとは、国や地方自治体が作成する公文書のことです。

そのなかでも、とくに法令や条約、宣言といった重要な書類の原本や、外交に関わる文書、政府の報告書などは、公文書館(文書館)で保管されます。

アーキビストは、博物館における学芸員や、図書館における図書館司書といった専門スタッフと同様に、公文書館の専門スタッフとして、文書の整理や保管、管理を行います。

公文書は後世にわたって利用されるものも多く、とくに何かの課題に直面した際には過去の文書が判断材料となる場合も少なくありません。

公文書の多くは紙であるため、保存の手段や整理方法などを間違えると、状態が悪化して長期的な保存が難しくなったり、二度と日の目を見ることが亡くなったりする可能性もあります。

こうしたことを防ぐために、文書を収集、整理し、適切に保管することがアーキビストの大きな役割です。

近年はインターネットが普及し、オンラインで活用できるよう公文書をデジタル化、データベース化するところも増えてきています。

そのため、ただ文書に関する知識だけでなく、インターネットの知識も必要です。

日本ではまだ認知度が低い職業で、公文書や行政資料に関する仕事は学芸員や図書館司書、専門の知識を持たない一般の職員が行っているケースも非常に多いです。

そのため、アーキビストを要請し、全国に普及させることが急務となっています。

アーキビストになるには

大学で必要な学問を学ぶ

アーキビストを目指す場合、まずは大学や短大、専門学校で政治や行政、法律や歴史(とくに日本近現代史)などを学ぶ必要があります。

アーキビストは、公文書に関する専門知識をはじめ、文書の記録や保存、修復の技術も求められるため、さまざまな知識が必要なのです。

また、図書館情報学やアーカイブズ学を専門とする大学や大学院を卒業することもアーキビストへの近道です。

ただし、製品化された本を扱う図書館司書と違う点は、アーキビストが自ら資料を読み込んで内容を理解し、精査しなくてはならない点です。

本であればいつだれが作り、どのような内容かがすぐわかりますが、公文書の場合一枚の文書に何が書かれているのかは、政治や法律などに詳しくなければわかりませんし、その重要度も判定できません。

現代ではアーカイブ学が学べる大学は複数あり、日本アーカイブズ学会登録の「アーキビスト」資格や「日本デジタル・アーキビスト」資格認定を大学院の単位取得で取れるところもあります。

図書館司書や学芸員向けにこうした講座も開かれているため、社会人になってからも学びはじめることができます。

その後、公文書館や資料館、情報館などに就職しますが、こうした施設を運営するのは国や都道府県、企業や学校などさまざまで、採用方法や基準もそれぞれ異なります。

毎年定期的に採用がある施設はごく限られるため、アーキビストを目指す場合は学生の内から求人情報をチェックしておくとよいでしょう。

アーキビストの学校・学費

大学や大学院でアーカイブズについて学ぶ

アーキビストになるには、大学や大学院で図書館学、図書館情報学、歴史学、政治学、法学、記録管理学、コンピュータ・サイエンス学などアーキビストに関する勉強をするのが一般的です。

こうした勉強をしながら、資料の保存や管理、活用の仕方などを学び、図書館や博物館、文書館などで実習をするなどして技術を高めていきます。

アーキビストに関わる勉強を専門的に行うことができる大学も複数あり、有名なものとしては、法政大学人文科学研究科史学専攻に、アーキビスト養成プログラムがあります。

そのほかに、学習院大学人文科学研究科にアーカイブズ学専攻が、島根大学大学院人間社会科学研究科社会創成専攻ではアーカイブズ学分野があります。

アーキビストの資格・試験の難易度

国立文書館の認証がはじまったばかり

アーキビストに関する資格はいくつかあります。

まず日本アーカイブズ学会登録の「アーキビスト」資格ですが、これは日本アーカイブズ学会の正会員でなくては認定されません。

参考:日本アーカイブズ学会

さらに専門的業務経験が必要であるため、社会人になってからスキルアップのために取得するのが一般的です。

もう一つ「デジタル・アーキビスト」資格は、日本デジタル・アーキビスト資格認定機構が認定する民間資格です。

参考:特定非営利活動法人日本デジタル・アーキビスト資格認定機構

「上級デジタル・アーキビスト」「デジタル・アーキビスト」「準デジタル・アーキビスト」「デジタルアーカイブクリエータ」の4つの区分があります。

このうち「デジタル・アーキビスト」資格は、認定養成機関(大学)で必要な単位を取得し、認定試験に合格すれば認定されます。

また、認定養成機関が開催する講習会を受講し、5日間の授業(またはオンライン講習会)および在宅での学習の後、認定養成機構の行う認定試験に合格することでも認定されます。

認定養成機関は全国にあるため、興味のある人は調べてみるとよいでしょう。

さらに2021年からは、国立文書館が「認証アーキビスト」の制度を始めました。

これは一般からの受付も可能で、大学院の修士課程で公文書に関する論文を執筆したことや、自治体で公文書管理の実務経験を3年以上積んだことなどが条件とされています。

新たな国立公文書館の開館が予定される2026年までに資格を3等級に分類し、1000人体制とする方針で、今後はこの認証が一般化されていくと考えられます。

アーキビストの給料・年収

低賃金の場合も少なくない

文書館の職員となる場合、その文書館を運営している国や地方自治体によって定められた給料が支払われます。

たいていの場合は公務員に準ずる形で給料が支払われており、正規職員であれば生活に困ることはないでしょう。

国立公文書館で働く場合、国立公文書館は行政執行法人(職員の身分は国家公務員)であり、職員は一般職の国家公務員の給与に準じたものが支払われています。

平成30年の資料では、職員数は39人、平均年齢は45.1歳、平均年収は765万円でした。

また、モデルケースとして22歳(大卒初任給)では月額180,700円、年間給与2,962,000円、35歳では歳(本部課長補佐)では月額440,600円、年間給与7,314,000円とされています。

50歳(本部課長)クラスになると、月額742,440円、年間給与12,533,000円と高額な給与が支給されます。

さらに扶養親族がいる場合には、扶養手当も支給されています。

こうした結果をみると、安定した収入が得られると感じますが、文書館で働いている正規職員は非常に少なく、契約職員や非常勤として働いている人が多いのが特徴です。

給料も15~16万円と低めに設定されており、安定した生活を送ることができないほか、契約期間が定められているため知識や技術が次世代に継承されないという問題も抱えています。

今後、アーキビストという職業が認知され、その仕事の重要性が高まるにつれ、こうした面も改善されていくことが期待されています。

アーキビストの現状と将来性・今後の見通し

活躍の場が増えることが期待される

日本ではアーキビストの仕事はまだメジャーではありませんが、海外では一般的な職業として知られ、企業にもアーキビスト職を置くところが増えてきています。

近年、政治の世界では文書の改ざんや紛失などの事件が相次ぎ、国民の注目を集めるなかで、アーキビストの仕事はより重要性を増していくでしょう。

また、こうした公文書や記録文書をデジタル化した「デジタル・アーカイブ」もより一般化すると考えられます。

デジタル・アーカイブは、文書だけにとどまらず、出版物や文化財、その他歴史資料など、有形・無形を問わずあらゆる知的財産を対象としているのが特徴です。

これらをデータベース化し、広く公開し活用していくためにも、アーキビストが増えていくことが期待されます。

アーキビストの就職先・活躍の場

全国の公文書館や資料館

アーキビストの就職先は公文書館や資料館などです。

こうした施設以外にアーキビスト職を置いている企業や団体は非常に少なく、職業としても認知されはじめたばかりで、需要は非常に少ないです。

もともと日本の公文書館は、数も職員数も海外に比べると非常に少ないため、就職をスムーズにするのは難しいといえるでしょう。

一方、海外ではアーキビストの認知度は高く、企業の資料室をはじめ、大学や図書館、博物館などでも採用されています。

また、イギリスなどでは地方自治体が文書を保存するためにアーキビストを積極的に採用しています。

アーキビストの1日

所属する施設の開館に合わせた勤務時間

アーキビストは、所属する施設の開館時間に合わせて働きます。
仕事の合間には来館した方への対応や電話での問い合わせ対応なども行います。

08:30 出勤
開館時間の9:00に合わせて出勤し、メールや回覧物などをチェックします。
09:00 開館・公文書の評価、選別
持ち込まれた資料の重要性や保存が必要かを判断する業務です。
複数のスタッフで手分けして行います。
12:00 休憩
13:00 目録の作成
歴史的な公文書がわかりやすく整理できるよう目録を作成します。
保存期間の長い公文書は壊れやすいため丁寧に扱い、傷みが激しい場合は修復も行います。
15:00 デジタル化作業
近年は公文書館をオンラインで閲覧できるようデジタル化の作業が増えてきています。
公文書館で扱う資料は膨大なため、重要性の高いものや問い合わせの多いものから作業をし、公開します。
17:00 閉館・事務処理など
作業に必要な資料を集めたり、文書を作成したりなどの事務作業をします。
18:00 勤務終了

アーキビストのやりがい、楽しさ

日々さまざまな資料に触れられる

アーキビストのやりがいは、さまざまな資料に日々触れることができることです。

公文書といっても、どのような経緯でつくられたかや、その形態、保存状態などはどれも異なります。

これらをひとつひとつ精査し、資料を後世に残していくのがアーキビストの仕事で、史料など古いものに魅力を感じる人、資料の背景にあるものを想像するのが好きという人は大きな魅力を感じるでしょう。

また、新しく文書を受け入れるだけではなく、これまで大切に保管されてきたものを受け継いでいくことも重要な使命です。

アーキビストとして文書を適切に分類、保管し、今後100年、200年と残していくことにロマンを感じるところも、この仕事のやりがいです。

アーキビストのつらいこと、大変なこと

日々こつこつと地道な作業を繰り返す

アーキビストの仕事は、決して華やかなものではありません。

文書を一枚一枚確認したり、一ページごとにほこりをはらったり、破れたページを修復したりと、地道な仕事が多いです。

毎日こつこつと文書と向き合える人でなくては、淡々と作業するのはつらいと感じてしまうかもしれません。

また、日々集められる文書には際限がなく、仕事量は膨大です。

保管場所や保存方法などによって精査されますが「ここまでやれば終わり」といったものはないため、毎日毎日同じ仕事の繰り返しとなることも多いです。

一人が一日にできる仕事量には限界があり、長期的なスパンで物事を考えなくてはならないため、成果を感じづらい点もつらいところです。

アーキビストに向いている人・適性

文書や資料を扱うのが好きな人

アーキビストは、とにかく日々たくさんの文書と触れるため、文書を読むことが好きな人に向いています。

とくに公文書を扱う場合は政治や行政に関わる内容が多いため、こうした分野に興味がある人、大学で法律を学んだりした人にも向いているでしょう。

また、アーキビストは利用者からの問い合わせに応えたり、出納のあった資料を捜し出したりするサービス業の一面もあり、資料を提供することに喜びを感じられることも大切な資質です。

さらに膨大な文書を扱うため、日々地道な作業をコツコツとこなすことができる人、一人での作業が苦ではない人が向いているでしょう。

アーキビスト志望動機・目指すきっかけ

大学での学びがきっかけ

アーキビストの志望動機として多いものは、大学でアーカイブ学や史学などを学ぶうちに、文書の整理や保存について興味を持ったというものです。

アーキビストという仕事はまだ一般的ではないため、図書館司書や学芸員などの勉強をしているうちにアーキビストの仕事を知り、そこから本格的に勉強するようになったという人も少なくありません。

アーキビストは採用が少なく狭き門のため、面接の際には志望動機が非常に重要です。

これまで勉強してきたことや経験してきたことをエピソードとして志望動機に加え、ありきたりではなくオリジナリティのあるものを考えましょう。

アーキビストの雇用形態・働き方

正規雇用は非常に少ない

アーキビストという職業はまだ認知度が低く、採用も非常に少ないのが現状です。

公文書の正規職員の求人はめったになく、とくに経験のない新人の場合は非常勤職員など数年の有期雇用がメインです。

こうした不安定な身分のまま、各地の文書館を転々とする人は少なくありませんし、大学院を卒業しても先の見通しがないことに不安を抱える人も多いです。

大学や大学院を卒業しても、アーキビストとして安定した就職の見込みがないことは覚悟しておきましょう。

一方で、こうした施設ではアーカイブズ学を勉強した人でなくても、アルバイトや臨時職員などとして働けることも多いです。

社会人になってから経験を積み、勉強することで専門性を高めるチャンスはあるといえるでしょう。

アーキビストの勤務時間・休日・生活

文書館など施設の開館に合わせて働く

全国各地にある公文書館、文書館、資料館、情報館などは9:00~17:00または18:00程度の開館が一般的です。

アーキビストはこの開館時間に合わせて働くため、基本的には日勤で、特別な事情がない限り大幅な残業や夜勤などはほとんどありません。

安定した生活リズムで働ける環境が整っているといえるでしょう。

ただし、施設によっては土日も開館していたり、夜間に開館したりする場合もあるため、その際にはシフト勤務となることもあります。

また、勤務時間後に勉強会が行われたり、休日でも研修に参加しなくてはならなかったりすることもあります。

アーキビストの求人・就職状況・需要

求人は非常に少ない

アーキビストは、もともと非常に数が少ない職業で、正規職員の募集も非常に少ないです。

公文書館では不定期で求人がありますが、その多くは非常勤職員や契約職員など有期雇用のもので、安定した身分で継続して働けるアーキビストはごく一部です。

ただし、まずこうした非正規雇用からキャリアを積んで正規職員になる道もあります。

安定的に働きたいのであれば、全国にある公文書館やアーキビスト職の求人情報をチェックしなくてはならないでしょう。

また、大学や大学院を卒業してすぐに正規職員になれる人はまれで、ほとんどの求人が経験者を優遇しています。

正規職員を目指すのであれば長い道のりを覚悟する必要があります。

アーキビストの転職状況・未経験採用

転職でなる人も多い

アーキビストは、転職でなる人も多い職業です。

全国の公文書館に勤める人の中には、かつて図書館司書や学芸員として働いていた人、政治や経済、近現代史などを教えていた人などもいます。

また、企業や大学の資料室などで実際に資料の保存や保管に携わっていたという人もいます。

現在のところ、アーキビストには国家資格がないため、こうした経験者は転職の際も優遇されやすくなっています。

また近年は文書のデジタル化が進んでおり、パソコンやデジタル資料、通信ネットワークに詳しい人が知識を生かすために転職することもあります。