社会福祉士国家試験の難易度・合格率|独学でも合格できる?
その国家試験は決して簡単なものではなく、全18科目におよぶ幅広い問題が出題されます。
この記事では、社会福祉士国家試験の難易度や合格率について、過去の試験データにも触れながら説明します。
社会福祉士の国家資格とは
社会福祉士は厚生労働省の主管する国家資格であり、社会福祉士国家試験に合格することで資格を取得できます。
社会福祉士資格の種類は「名称独占資格」と呼ばれるものであり、社会福祉士と名乗って働くためには資格が必須であるものの、「業務独占資格」とは異なり、相談対応業務などは資格がなくても行えます。
しかし、福祉の現場でさまざまな相談に応じるためには、福祉・行政・医学・心理学など、複数の分野にわたる深い専門知識が不可欠です。
このため、相談対応業務を担うソーシャルワーカーになる場合、社会福祉士の資格取得を目指すことが一般的となっています。
就職する際にも、国家資格がないとそもそも採用対象とならないケースも数多くあるため、ぜひ資格を取得しておきましょう。
社会福祉士国家試験の受験資格
社会福祉士国家試験を受けるためには、全部で12通りある、いずれかの方法で受験資格を得ることが必要です。
代表的な方法としては、4年制の福祉系大学で指定科目を修めて卒業する、福祉系短大で指定科目を修めて卒業した後に実務経験を積む、一般の4年制大学卒業後に養成施設で学ぶといったものがあります。
どのルートを辿るとしても、最低でも4年以上かかるうえ、大学や短大、養成施設など、いずれかの学校で学ぶことが必須条件となっており、受験資格を得るハードルは決して低くはありません。
社会福祉士国家試験の難易度・勉強時間
社会福祉士国家試験の合格率は、近年25~30%前後という低い水準で推移しています。
上述したように、受験者がいずれかの学校でしっかり学んだ人だけに限定されていることを考えると、試験の難易度は高めといえるでしょう。
社会福祉士国家試験では、全18科目におよぶ幅広い内容の問題が出題されるため、覚えなければならない知識量は膨大です。
合格するために必要な勉強時間はおよそ300時間が目安とされており、1年ほどの期間を設けて受験対策を行うケースが一般的です。
社会福祉士は独学でも合格できる?
社会福祉士国家試験の対策は、スクールなどに通って進める人もいますが、独学で行うことも不可能ではありません。
ただし、独学には良い面・悪い面の両方があるため、大変なところも含めて情報を集め、どのように勉強を進めるか決めることをおすすめします。
以下で、独学のメリット・デメリットについて解説します。
独学のメリット
自分のペースで勉強できる
独学で試験勉強をする最大のメリットは、自分のペースで学習を進められることです。
予備校などでは、全員一律の内容とスピードで勉強しなければなりませんが、社会福祉士国家試験で出される問題は18科目もあり、人によって科目ごとに得意不得意が生じますし、その理解度もばらばらです。
独学であれば自分の苦手分野だけに注力することもできますし、日によって暗記だけに集中したり、演習問題ばかりに取り組むこともできます。
毎日コツコツと勉強したほうが効率的に進むことが多いため、あまりおすすめはしませんが、仕事で疲れている日は軽めに切り上げて休日にまとめて勉強することもできるでしょう。
費用を抑えられる
社会福祉士国家試験の対策スクールに通う場合、学校によって差があるものの、費用は総額10万円前後かかります。
1~2日の短期講座や直前対策だけでも数万円はかかりますし、模擬試験を1回受けるだけでも1万円弱かかります。
しかし、独学であれば必要になるのは、自分で購入するテキスト代や参考書、問題集程度で、費用を抑えられる点は魅力です。
受験資格を得るまでには、どうしてもまとまった学費が必要になるため、国家試験対策に多額のお金をかけたくないという人には独学がおすすめです。
時間と場所を選ばない
独学であれば、いつでも自分の好きな時間に勉強ができ、勉強する場所も自由です。
出勤する前の朝方に自宅でも勉強できますし、通勤電車の中や、お昼の休憩時間に会社で勉強も可能です。
休日には気分転換もかねて、カフェやレストランでも勉強できるでしょう。
とくに地方在住の人は、そもそも自宅や職場から通える距離に予備校がないケースも珍しくないため、独学で勉強するメリットは大きいかもしれません。
独学のデメリット
弱点を把握しにくい
社会福祉士国家試験に合格するためには、全体でおよそ6割以上得点すると同時に、全科目において最低1点以上得点しなければなりません。
たとえどれだけ高得点を取っても、18科目のうちひとつだけでも0点の科目があると、不合格となってしまいます。
このため、受験対策においては何よりもまず苦手科目をなくすことを最優先させなければなりませんが、独学で勉強する場合、自分の個々の科目ごとの実力を正確に把握することは困難です。
多少の費用はかかってしまいますが、できれば模擬試験だけでも受けて、その結果を基に自分の弱点をつぶしていったほうが合格できる可能性は高まります。
最新の情報に対応しにくい
福祉制度や介護制度などは、社会情勢の変化に対応するため頻繁に改正が実施されます。
社会福祉士国家試験においても、最新の改正内容に基づいて問題が出題されますが、独学で最新の情報を更新し続けるのは多大な労力を要します。
また、社会福祉士国家試験の参考書や問題集は、一般の書店でも多数販売されているものの、そのすべてが最新の改正内容に対応しているわけでもありません。
国家試験対策自体は独学で行うとしても、最新の情報については、自身が受験資格を得るために通っていた大学や養成施設の講師に助力を求めることが望ましいでしょう。
モチベーションを保ちにくい
社会福祉士国家試験に合格するための勉強時間は、300時間ほどが目安とされています。
勉強だけに集中できる環境にあるなら、数か月程度の期間でも間に合いますが、働きながら試験合格を目指す場合、1年ほどかけて対策するケースが一般的です。
日々の仕事に加えて、単位を取得するための勉強と受験勉強までこなすとなると、体力的にも精神的にもかなり大変です。
独学の場合、自分の周囲には先生も友人もおらず、勉強することを強要されるわけでもないため、勉強が捗らないこともあるかもしれません。
長期間にわたって一人で勉強するモチベーションを保ち続けるためには、どうしても社会福祉士になりたいという強い熱意が必要です。
社会福祉士国家試験の効率的な勉強方法
ここからは、社会福祉士国家試験への合格を目指すために、効率的な勉強方法を紹介します。
ポイント1.バランスを意識する
社会福祉士国家試験の合格基準は2つあります。
- 全科目合計で約60%以上得点すること
- 全科目で1点以上得点すること
つまり、8割も9割も得点できる実力は必要ない一方、ひとつでも0点の科目があると、全体でいくら高得点を取っても不合格となってしまいます。
このため、社会福祉士国家試験においては、得意科目を伸ばすことよりも苦手科目をなくすことのほうがはるかに重要です。
おおまかでも構わないため、あらかじめ勉強計画を立てておけば、特定の科目に偏ることなく、均等に対策を進めることができるでしょう。
ポイント2.ノートにまとめる
社会福祉士国家試験の出題範囲は広く、覚えなければならない知識量は膨大です。
ただ教科書や参考書を読むだけで暗記できるレベルではないため、要点やキーワードなどを自分なりにまとめたノートを作成することをおすすめします。
その際は、各ページの右側にラインを引くなどして、ある程度の余白を空けておくと、法改正などの最新情報を追記したり、何度も間違えた苦手項目を補足したりするのに役立ちます。
問題演習や模擬試験の際など、折に触れては何度も見返して、知識の定着を図りましょう。
ポイント3.過去問に取り組む
ある程度の基礎学力が身についたら、本番の半年前を目安に、国家試験の過去問に取り組みましょう。
試験は、5つの選択肢の中から1つないし2つの正解を選ぶ定型の様式で毎年実施されるため、繰り返し過去問を解くことで、本番の試験形式に慣れることができます。
また、試験問題は全部で150問もあり、午前と午後に分け、合計240分で実施される長丁場であるため、過去問で時間配分の感覚を身につけておくことも非常に大切です。
過去問を勉強する際は、ただ正解を選択するのではなく、ほかの選択肢の何が間違っているのかまで一つひとつ検証することがポイントです。
最低でも5年分、できれば10年分の過去問を入念に勉強してから本番に挑みましょう。
【参考】社会福祉士国家試験の受験者数・合格率
ここからは、社会福祉士国家試験の受験者数や合格率などのデータを紹介します。
社会福祉士国家試験受験者数の推移
社会福祉士国家試験の受験者数は、30,000人〜45,000人前後で推移しています。令和5年度の受験者数は、前年からやや減少し34,539人となっています。
社会福祉士国家試験合格率の推移
社会福祉士国家試験の合格率は30%弱を推移していましたが、令和5年度の合格率は例年よりかなり上昇し58.1%となりました。
令和5年度 社会福祉士国家試験 合格者男女比率
令和5年度の社会福祉士国家試験の男女別合格者数は、男性6,185人、女性13,865人で、比率にすると男性30.8%、女性69.2%となっています。
令和5年度 社会福祉士国家試験 受験資格別合格者数
令和5年度の社会福祉士国家試験受験資格別の合格者数は、福祉系大学等卒業者が11,181人、養成施設卒業者が8,869人となっています。
令和5年度 社会福祉士国家試験 年齢別合格者数
令和5年度の社会福祉士国家試験の年齢別合格者数は、30歳以下が8,494人で最も多く、続いて41歳〜50歳の4,380人となっています。31歳〜40歳では3,526人、51歳〜60歳では2,860人です。
令和6年度 社会福祉士国家試験の概要
試験日 | 令和7年2月2日(日) |
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申込書受付 | 令和6年9月5日(木)から10月4日(金) |
試験地 | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県 |
受験資格 | 1.4年制大学で指定科目を修めて卒業した方(令和7年3月31日までに卒業する見込みの方を含みます。) 2.2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した方(令和7年3月31日までに従事する見込みの方を含みます。) 3.社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方(令和7年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます。) 4.社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方(令和7年3月31日までに卒業(修了)見込みの方を含みます。) |
試験科目 | 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム、社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度、地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉、ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎、高齢者福祉、児童・家庭福祉、貧困に対する支援、保健医療と福祉、ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)、ソーシャルワークの理論と方法(専門)、福祉サービスの組織と経営 |
合格基準 | 1 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。 2 1を満たした者のうち、以下の6科目群(ただし、(注意2)に該当する者にあっては2科目群。)すべてにおいて得点があった者。 [1] 医学概論、心理学と心理的支援、社会学と社会システム [2] 社会福祉の原理と政策、社会保障、権利擁護を支える法制度 [3] 地域福祉と包括的支援体制、障害者福祉、刑事司法と福祉 [4] ソーシャルワークの基盤と専門職、ソーシャルワークの理論と方法、社会福祉調査の基礎 [5] 高齢者福祉、児童・家庭福祉、貧困に対する支援、保健医療と福祉 [6] ソーシャルワークの基盤と専門職(専門)、ソーシャルワークの理論と方法(専門)、福祉サービスの組織と経営 (注意1) 配点は、1問1点の129点満点である。 |
合格率 | 58.1%(令和5年度) |
合格発表 | 令和7年3月4日(火) |
受験料 | 社会福祉士のみ受験する場合:19,370円 社会福祉士と精神保健福祉士を同時に受験する場合:36,360円(=社会16,840円+精神19,520円) 社会福祉士の共通科目を免除して受験する場合:16,230円 |
詳細情報 | 財団法人 社会福祉振興・試験センター |
「社会福祉士国家試験の難易度・合格率」まとめ
社会福祉士の国家試験は決して簡単なものではなく、近年の合格率は25~30%前後を推移しています。
試験科目は18科目にもおよび、全科目合計で約60%以上、そして全科目で1点以上得点する必要があります。
独学での対策も可能ではありますが、確実に合格するためには計画的に学習を進めることが重要です。