手話通訳士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「手話通訳士」とは

手話通訳士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

手話の技法を用い、聴覚障害者が健常者と円滑にコミュニケーションできるよう手助けする。

手話通訳士は「手話」の技法を用い、聴覚障害者が健常者と円滑なコミュニケーションが図れるよう、サポートする仕事です。

手話通訳自体はスキルを身に付ければ誰でも行えますが、複数の公的・民間資格が存在する中、厚生労働省が認定する「手話通訳士」は、最も難易度が高いものとして知られています。

手話通訳の仕事を行う人のこと全般を指して「手話通訳士」と呼ぶケースも多いようですが、正式には手話通訳技能認定試験に合格し、登録した人のみが「手話通訳士」と名乗ることができます。

おもな活躍の場は福祉関連施設や市役所などの公的機関ですが、手話通訳士そのものの求人は非常に少なく、大半の人は職員の一般的な仕事と兼務して手話通訳の技能を活かします。

なかには銀行やお店、企業で働く人もおり、耳の不自由な方が健常者と同等のサービスを受けるためには、手話通訳士の存在が必要不可欠です。

まだまだパートやボランティアとして活躍する人が多いですが、時代とともに職業としての社会的認知度は少しずつ高まりつつあります。

「手話通訳士」の仕事紹介

手話通訳士の仕事内容

手話を使って聴覚障害者と健聴者のコミュニケーションをサポート

聴覚に障害を持つ方と健聴者をつなぐ架け橋

手話通訳士は、聴覚に障害を持つ人が健聴者と円滑なコミュニケーションを図れるように「手話」を使って、言葉を目に見える形に変換し「通訳」を行う仕事です。

相手に情報が正しく伝わることを心がけ、外国語の通訳者と同じように、健聴者が話す日本語を手話に訳したり、障害者が話す手話を日本語に訳したりします。

高度なスキルを要する仕事ですが、国家試験ではなく、厚生労働省が認定する「手話通訳技能認定試験(手話通訳士)」を受け合格することで、そのスキルを証明することができます。

この資格を取得し登録することで、裁判や警察、選挙関連など公的な場面での仕事ができるようになり、活躍の幅は広がりますが、手話通訳そのものは、資格を持っていなくても行うことができます。

高度な手話スキルが求められる仕事

手話通訳は、通訳する人の発声と同時に手話で通訳する必要があります。

限られた時間の中で、会話と同じスピードで手話を使わなくてはならないため、非常に高度なスキルが求められます。

また、会話の内容についても理解しなくてはならないため、教養や知識も必要とされます。

単に手話を使って会話をすることと、手話通訳をすることは全く違うスキルのため、通訳を目指す場合は通訳としての勉強をしなくてはなりません。

即戦力となるためには、資格取得を目指して学校で講座を受けたり、ボランティア団体で手話技術を学んだりするなどの必要があるといえるでしょう。

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手話通訳士になるには

手話を身に付けて経験を積み、資格取得を目指す

高度な手話技術を身につけるために

手話通訳を行うためには、まず基本的な手話技術を習得する必要があります。

本や通信講座を使った独学も可能ですが、手話を使ってコミュニケーションを図る仕事ですので、話す相手がいる手話スクールやサークルに通う方がバリエーション豊かな手話を学ぶことができます。

基本的な手話技術を習得した後は、通訳として俊敏に訳す訓練を行います。

手話を習ったからといって、すぐに通訳ができるわけではありません。

そのため、まずは手話ボランティアなどとして働き、手話のスキルを高めていくことが大切です。

聴覚障害者としっかりコミュニケーションがとれること、また通訳をするためにはまた別の技術が必要であることから、まずは経験を積むことが大切です。

ある程度経験を積んで、通訳に自信がついたところで手話通訳士の資格をとったり、手話通訳者として登録したりして本格的に働き始める人が多いようです。

手話通訳士の資格取得

手話通訳で社会に貢献するために必要な資格はありませんが、「手話通訳士」を名乗るためには厚生労働省が認定する手話通訳技能認定試験の資格取得が必要になります。

この資格があれば政見放送や裁判、ニュース等の公的な場で手話通訳を行うことができ、活躍の幅が広がります。

手話通訳士の資格を持たなくても、「都道府県認定の手話通訳者」の試験に合格すればさまざまな場面で手話通訳を行うことができます。

また「市町村の手話奉仕員」として登録されれば市町村の依頼で手話通訳を行うことが可能です。

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手話通訳士の学校・学費

大学や短大、民間のスクールなど学ぶ場所はさまざま

手話通訳士になるための必要な学歴はないため、必ずしも大学、短大などを卒業する必要はありません

ただし、社会福祉について全体的に学びたいなどの目標がある場合、大学や短大の方がさまざまな視点から学ぶことができます。

また近年では手話通訳学科のある大学ができるなど、手話通訳への関心が高まっています。

他に手話を習得する方法として、自治体や民間のスクールやサークルで学ぶことも可能です。

さらに、都道府県や市町村で行っている手話通訳者や手話奉仕員を養成するための講座を受講することで活躍の場を広げることができます。

大学や短大、自治体、民間のスクールともに手話を学んだ後は、ボランティアで経験を積みながら手話通訳士を目指す方が多いようです。

手話通訳士の資格・試験の難易度

手話通訳士試験は難関で知られている

数パーセントしか突破できない難関資格

厚生労働省が認定する「手話通訳技能認定試験」は「手話通訳士試験」とも呼ばれており、自治体を含めたさまざまな手話通訳試験の中では最も難しい試験といわれています。

2020年度の合格率は11.0%、2019年の合格率は9.8%、2018年の合格率は8.2%と、その年によってバラつきがありますが、平均しても1桁台の合格率と考えられる難関試験です。

手話通訳技能認定試験は年に1回開催され、20歳以上なら誰でも受験が可能です。

学科試験と実技試験の両方で合否が決定されますが、現実的に手話経験が3年以上ないと合格は難しいと考えられています。

しかし、資格を取得すれば公的機関で手話通訳をすることが可能になりますので、今以上に活躍の場を広げたい方は取得すべき資格といえるでしょう。

手話に関する各種資格

各都道府県では、手話を必要とする聴覚障害者のコミュニケーション支援を図るため「手話通訳者」を設置しています。

所定の養成講座を受講し、全国手話研修センターが実施する「手話通訳者全国統一試験」に合格することで、手話通訳者として登録し活動することができます。

また、市町村では「手話奉仕員」が設置されています。

市町村が実施する手話奉仕員養成講座(入門課程・基礎課程)を修了することで、手話奉仕員として登録することが可能です。

その他、NPO手話技能検定協会が実施する民間資格「手話技能検定」や、全国手話研修センターが実施する「手話検定」などがあります。

手話通訳士の給料・年収

収入を得るのが難しい職業

手話通訳士のみで生計が立てられる人はほとんどいない

現在、「手話通訳士」のみで生計を立てている人は非常に少なく、日本にわずか数十人程度のみといわれています。

理由は、手話通訳の仕事そのものは特別な資格がなくてもできるため、スクールなどで技術を身に付けボランティアとして活動するか、福祉関連の施設で「手話通訳ができる職員」として兼任することが多いためです。

また、業務の都合上非正規職員・社員として働く人が多い状況もあり、平日は別の仕事をしたり、兼業をしたりしている人が大半です。

手話通訳のスキルが活かせる場はさまざまあるものの、手話通訳のみを職業にして生きていくのは厳しいといわざるを得ないでしょう。

勤務先の雇用形態によって大きく異なる

働く場所や雇用形態によって給料は大きく異なりますが、常勤でない場合、主に時給制となります。

代表的な職場となる福祉関連施設の嘱託職員の場合、時給は1000円~1400円程度が相場ですが、民間企業や勤める業界、職種により賃金の幅が広いのが現状です。

また、民間の介護福祉施設などでは、国家資格である社会福祉士や介護福祉士の資格を持っていると時給1500円以上を得られたり、常勤の職員として採用されたりすることもあります。

非常勤として勤務する場合、収入の不安定さがありますが、行政の職員や企業の会社員として常勤になれば、勤務先の社会保険に加入でき、ボーナスや退職金などがもらえるようになり収入アップが期待できます。

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手話通訳士の現状と将来性・今後の見通し

手話通訳士のニーズはますます増加傾向に

時代とともに障害者の社会参加が進む中、正しい知識とスキルを持つ手話通訳士のニーズは年々高まっています。

医療機関や福祉施設、教育現場だけではなく、銀行、百貨店、観光などのサービス業、警察、議会など日常生活のあらゆる場面で、耳の不自由な方が健常者と同等のサービスを受けるためには、手話通訳士の存在が必要不可欠です。

しかし、国を始めとする自治体が手話通訳に充てることのできる予算は低く、多くの高齢者を抱える日本にとって、今後予算を上げていくことは難しいでしょう。

一方、企業からの需要は増えつつあり、手話通訳士という職業も広まってきています。

一人ひとりの手話通訳士が活躍し、認知度を高めることが手話通訳士の将来のカギを握っているといえるでしょう。

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手話通訳士の就職先・活躍の場

他の仕事と兼務しながら働くのが一般的

手話通訳士は、手話通訳士のみで募集をしている自治体、企業が非常に少ないため、行政の職員や企業の会社員として勤めながら手話通訳士として働くことが多いようです。

行政施設であれば、区役所や市役所などの公的機関、介護福祉施設であれば聴覚障害者関連施設、特別養護老人ホーム、社会福祉協議会、介護老人保健施設などが挙げられます。

一般企業であれば、福祉機器関連会社、医療系企業、デイサービスセンターなどが挙げられ、他にも医療機関であれば病院、介護福祉であれば精神障害者社会復帰施設などがあります。

また、手話通訳者派遣センターに登録することで、仕事があれば派遣として勤務することも可能です。

これ以外にも、聴覚障害者ボランティア団体に所属し、ボランティアとして手話通訳を行う方もいます。

手話通訳士の1日

数名が交代しながら手話通訳するのが一般的

手話通訳士の仕事は30分が目安といわれており、研修や会議など長時間の手話通訳を行う場合は、数名で交代しながら仕事を行います。

実際の手話通訳だけではなく、担当者との打ち合わせや報告、通訳の出来の振り返りなども仕事のうちです。

<手話通訳者派遣センターから派遣される手話通訳士の1日>

9:00 現地に到着
10:00 研修での手話通訳
13:00 お昼休憩
14:00 研修での手話通訳を再開
17:00 帰宅

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手話通訳士のやりがい、楽しさ

コミュニケーションが上手く図れたとき

手話通訳士は、聴覚に障害を持つ方と健聴者をつなぐ架け橋のような存在です。

職場や手話通訳派遣センターなどで派遣される勤め先やボランティア先などで上手く手話通訳ができるようになると、周囲のコミュニケーションが円滑になり、とても喜ばれる仕事です。

直接人と接する分、相手の反応がわかりやすく「人の役に立っている」という実感を味わいやすいことも特徴です。

聴覚に障害を持つ方からも健聴者からも感謝されることが、大きなやりがいになります。

また、手話通訳派遣センターなどで派遣される場合やボランティアなどでは、毎回手話通訳する内容が異なるため、新しい知識や人々との出会いが働く楽しみにつながっています。

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手話通訳士のつらいこと、大変なこと

さまざまな専門用語や難しい表現に苦戦することも

手話通訳士は、職場や研修会場などさまざまな場面で手話通訳を行うため、それぞれの専門用語を事前に学ばなければなりません。

また、人によって1つの言葉でも表現はさまざまなため、読み取った瞬間や聞いたその瞬間に、その人が示す表現に合った手話通訳をしなければなりません。

ちょっとした表現の違いが、ニュアンスの認識のずれにつながってしまうこともあります。

どうやって手話通訳をすれば、俊敏に正しい表現が伝わるのか、日々学んでいく意識が非常に重要となる職業です。

また、日本では手話通訳士が職業としてしっかり確立していないのが現状であり、手話通訳の技術を取得したにもかかわらず、活躍の場が見つからないという苦労もあります。

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手話通訳士に向いている人・適性

さまざまな人とコミュニケーションをとるのが好きな人

手話通訳士にとって大切なことは、人とコミュニケーションをとることが好きであることです。

聴覚に障害を抱えている人はもちろん、健聴者、さまざまな年代の人とやり取りをします。

多くの方とコミュニケーションをとりながら楽しみ、手話や会話を通じてたくさん話すことで、手話通訳士としての腕も磨かれていきます。

また、「困っている人を助けたい」「誰かの役に立ちたい」という気持ちがとにかく強い人も、この仕事に向いているでしょう。

なお、現場に出ると専門用語を手話通訳することも多く、手話通訳する度に学ばなければならないことがたくさんあります。

日々探求心を持ち、より良いコミュニケーションのために学び続けることも大切な要素です。

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手話通訳士志望動機・目指すきっかけ

手話通訳士の強みをアピール

手話通訳士を目指すきっかけは、聴覚障害者と触れ合う機会があり、この仕事を知ったという人が多いでしょう。

まるで障害がないかのように自由に手話通訳をする様子に感動を覚える人も非常に多いです。

就職をする際は、どのように手話通訳士という仕事を知ったのかきっかけを交えて語ると熱い気持ちが伝わりやすいでしょう。

手話通訳士としての募集はとても少ないため、行政でも民間でも他の職種と兼務することが一般的です。

希望する業界、職種への志望動機を含めながら、手話通訳士としてもどのように活躍することができるかアピールしましょう。

行政などの公的機関では、公務員試験を受けてから面接に進むのが一般的で、企業であれば、まず書類選考を通過した後に、二次試験に面接があり、そこで志望動機を伝えます。

手話通訳士の雇用形態・働き方

行政、医療機関以外にも企業からのニーズが増加

手話通訳士の雇用形態は、常勤から非常勤と多岐に渡ります。

区役所や市役所などの公的機関や医療機関で常勤として働きながら手話通訳士を行う人もいれば、特別養護老人ホームなどで非常勤として働きながら手話通訳を行う人もいます。

近年では、観光客向けのサービス業などでも手話通訳士のニーズが広がり、常勤だけでなく契約社員やアルバイト、パートを含めた非常勤として活躍している方が増えています。

勤める業界、職種により月給はさまざまで、一概に平均年収を示すことは難しいでしょう。

非常勤であれば、サービス業と兼務する手話通訳士の平均時給は1,000円前後で、福祉関連施設の嘱託職員であれば平均時給は1000円~1400円程度とされています。

手話通訳士の勤務時間・休日・生活

公務員は暦通り、医療機関、介護福祉施設はシフト制が一般的

手話通訳士は勤める業界、兼務する職種によって、勤務時間、休日が変わります

行政などの公的機関に勤めれば、基本的にカレンダー通りの休日で日勤のみとなり、勤務時間は8:45~17:00前後が一般的です。

病院などの医療機関、特別養護老人ホームなどの介護福祉施設に勤める場合は24時間シフト制が一般的で、日勤、夜勤を含む働き方が主となります。

企業でも業界により平日勤務のところもあれば、サービス業や接客業であればシフト制が基本です。

また、手話通訳の仕事がある時にだけ派遣され、指定された曜日や時間のみ働くというスタイルもあります。

将来的にどんな業界で働き、どんな職種と兼務したいかを考えながら就職先を考えると良いでしょう。

手話通訳士の求人・就職状況・需要

単独の募集は少ないが、兼務は増加傾向に

手話通訳士のみや、手話通訳者専属の求人募集は非常に少ないのが現状ですが、他の職種と兼務であればニーズが年々増えつつあります。

特に都市では、ユニバーサルデザインやバリアフリーなど、高齢者や障害を抱えている人でも暮らしやすい街づくりが進んでおり、さまざまな業界で手話通訳士の必要性が認められつつあります

特に医療、介護福祉、サービス業では手話通訳ができる職員の募集が目立ち始めています。

今はまだ難しい状況ですが、今後は専任の手話通訳士として募集が増えることも予想されるでしょう。

なお、通訳の仕事は集中力が必要な上、手話通訳の際には腕を大きく使うため肉体的負担が大きく、専門的な技術が求められることから志望者は非常に少ないです。

手話通訳士の転職状況・未経験採用

ニーズのある業界や企業では転職しやすい

新卒で手話通訳者となる人はほとんどおらず、多くの人が仕事をしながら手話を勉強したり、ほかの仕事と兼務したりしながら手話通訳者として働いています。

専任の手話通訳士として転職活動をするのは現状難しいですが、兼務としてニーズのある業界、職種への転職はしやすい傾向にあります。

どの業界でも、簡単な接客レベルの手話であればできるという方が多く、より高度なコミュニケーションがとれる手話通訳士を求めています。

また、手話通訳士として社会人経験がなくとも、ボランティア活動での経験も立派な経験としてアピールすることができます。

そのため、手話通訳として社会人経験のない方でも有利に就職、転職活動を進めることができます。

独学で手話通訳士になれる?

手話技術は独学でも取得可能だが、通訳技術を学ぶのは難しい

手話通訳士試験の合格率は10%前後と非常に低く、手話通訳士になるのは極めて難関であるといわれています。

手話通訳士を目指すに当たって、独学によって手話を学んだという人も少なくありませんが、その後は手話サークルや自治体の講座等に参加し、技術を向上させる人がほとんどです。

また「手話で会話すること」と「手話で通訳すること」はまったく異なり、手話通訳士はただ手話でコミュニケーションがとれるというレベルでは務まりません。

この技術を独学で習得することは難しく、講座や学校等でしっかりと学んだほうがよいといわれています。

なお個人で努力できることはたくさんあり、語彙力や表現力を高めたり、時事問題を素早く理解したりするなどは、多くの人が実践しています。