銀行員の転勤・異動はなぜ多い? 頻度はどれくらい?
しかしながら、すべての銀行員に頻繁な転勤が命じられるわけではありません。
採用時の職種や区分などによっても、どれくらい転勤するかは変わってきます。
この記事では、銀行員の異動・転勤事情に迫りながら、それがキャリア形成にどのような影響をおよぼすのかも説明します。
銀行員の転勤のペース・タイミング
ここでは、銀行員の転勤が多い理由や、実際にどれくらいのペースやタイミングで転勤となるのかを説明します。
銀行員に転勤をともなう異動が多い理由
日本各地に支店を置く銀行が多い
銀行員は、転勤が多い職業です。
その理由のひとつとしてとして、多くの都市銀行や地方銀行が、全国各地に支店をもつことが挙げられます。
各支店には常に一定人数の銀行員を配置しなくてはならないため、転勤を前提とした枠で採用された銀行員は、基本的に転勤を避けることはできません。
大きな都市銀行(メガバンク)では、国内外に約400店舗もの支店を持っているところもあり、その場合の転勤先は全国もしくは海外の支店が候補となります。
とくに「総合職」として入社した場合には、各地への転勤が頻繁に命じられ、引っ越しの連続となる場合があります。
特定の企業や人物との癒着を防ぐため
銀行員に転勤をともなう異動が多いもう理由のひとつは、「地域の特定の企業や人物との癒着を避ける」という目的があるからです。
銀行員も一人の人間ですから、長い間、同じ土地で働いて特定の人々と接し続けると、どうしても関係が深くなりすぎて客観的な判断ができなくなることがあります。
とくに融資業務では、企業や個人に対して厳しい判断をしなければならないため、地域との一定の距離を保つことが重要です。
また、同じポジションで長く働きすぎると、個人の権限が大きくなりすぎて不正行為に繋がる可能性もあります。
これらの問題はどの企業でも起こり得るものですが、お金を直接扱う銀行では、とくに転勤制度を重視しています。
信頼性や公正性を保つためにも、銀行員にとって転勤は避けられないものといえます。
転勤のペースは2~3年に一度が基本
銀行員の転勤のペースは銀行によって異なりますが、一般的には2~3年ごとです。
通常、転勤先の部署や地域を事前に知らされることなく、突然辞令が出されます。
場合によっては1週間ほどで引き継ぎをして引っ越さなければならないため、転勤をする時期は準備などで非常に忙しくなります。
家族がいる銀行員の場合、転勤のたびに家族全員で引っ越すこともありますが、子どもが大きくなってきた場合など、単身赴任を選択する人も多くいます。
なお、各銀行では、行員の転勤後の生活サポートのために、単身寮や社宅を持っていることが多いです。
そういった福利厚生を活用しながら転勤先で生活をすることができます。
なお、海外転勤の場合は、予防接種やビザなどの準備が必要です。
海外転勤となる場合は、通常は出発の1か月~3か月前に内示として知らされるため、国内転勤よりも余裕を持って準備できます。
部署による異動のペースの違い
銀行では、多くの場合、異動のペースは2年から3年が一般的です。
とくに新入行員は最初の異動が早く、2年以内に命じられるケースがほとんどです。
これは、会社側の「早く多くの経験を積んで即戦力となってほしい」という期待からです。
また、異動の頻度は、担当する部署や配属先によって異なる傾向があります。
営業店への配属の場合、一般的には1年半から3年程度で異動することが一般的です。
しかし、営業活動を行わない内部事務の場合は、在籍期間がやや長くなる傾向があります。
本部への配属になると、5年以上在籍することも珍しくありません。
これは本部では業務が細分化され、その分野に精通したスペシャリストが求められるからです。
専門的な知識や経験を要する部署の中心人物になるほど、異動の辞令が出ることは少なくなるといわれています。
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銀行員の転勤は出世と関係ある?
銀行員に対して、ときどき「転勤の回数や転勤先は出世と関係がある」といわれることがあります。
実際のところはどうなのか、以下で説明します。
異動が多いから出世するとは限らない
異動や転勤と出世の関係性については、異動の回数よりも、どこに配属されるかが重要であるといえます。
たしかに「転勤は出世コース」と言われることもありますし、優秀な人材ほど異動のペースが早い傾向にあります。
しかし、最近は銀行業界も人員削減が進んでおり、営業店の人手が不足しているケースが多いです。
そのため、異動の決定前に、人事部が各支店長に異動内容を打診することが増えています。
支店長が積極的に人材を引き留める場合もあるため、異動の早さと優秀さが必ずしも直結しているとはいえない状況です。
なお、あまりにも短期間での異動を繰り返す人は「少々問題がある人物」とみなされていることもあり得ます。
たとえば、大きな支店で働いていた人が、特別な理由がないのに小さな支店に異動になった場合には、あまり成果を出せないと見なされていることもあります。
異動の回数よりも転勤先が重要
銀行員が出世できるか、昇進できるかを判断するには、転勤先がひとつの重要な判断材料です。
異動と同時に昇進する場合はもちろんですが、期待される人材は、各支店の中でも厳しい状況や高い成績が求められる支店に配属されることが多いからです。
とくに都市部や中心部にあるような大型店舗への異動は、出世や昇進の兆候として見なされることが多く、評価が高い証拠とされます。
したがって、異動や転勤による出世においては、単に異動の回数や早さだけを重視するのではなく、どのような配属先になるのかが重要な要素となります。
基本的には、支店での業績が良かったり、大きな支店に異動したり、専門的な役職に就いたりすると、出世の道に乗っていると考えられます。
ただし、小さな支店に異動した場合でも、頑張って成果を上げることで評価され、次の異動で昇進の機会を得ることもあります。
そのため、どんな環境でも一生懸命仕事をすることが大切です。
銀行員の海外転勤
銀行員は、勤務先によっては、海外転勤の可能性もあります。
各銀行は国内での収益化が難しくなっていることもあり、海外支店や海外法人を設立したり買収したりして、海外での収益を増やす努力をしています。
地方銀行でも、海外収益を追求するために支店を増やす動きが見られます。
このような背景から、銀行では優れた語学力を持つ人材を積極的に採用し、入社後には英語研修などを提供しています。
そのため、実際に海外駐在員として活躍する銀行員も増えており、世界中で日本人の銀行員が活躍しています。
性別に関係なく、やる気があれば、女性でも海外駐在のチャンスがあります。
ただし、海外転勤には語学力だけでなく、銀行業務を遂行できる能力も求められます。
国内での優れた実績がなければ、海外駐在員として活躍することは難しいことを覚えておきましょう。
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「銀行員の転勤・異動」まとめ
銀行員の転勤は、銀行の業務や組織の特性によって必要な制度です。
総合職として入社した銀行員には、転勤を通じて新たな経験を積み、幅広い視野を持ちながら成長することが期待されます。
なお、各銀行は異なる転勤制度を持っているため、銀行員を目指す人は、その点を考慮し、自身の適性やキャリア目標と照らし合わせて応募先を選びましょう。