鉄道会社社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「鉄道会社社員」とは

鉄道会社社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

人々の交通手段となる鉄道を街に走らせると同時に、路線沿線の街づくりに携わる。

鉄道会社のおもな仕事内容は、人々の重要な交通手段のひとつである鉄道を街に走らせ、その暮らしを支えることです。

事前に決められたダイヤに沿って、安全・安心そして正確に鉄道を動かし、お客さまに快適なサービスを提供します。

一方で、鉄道会社の事業は鉄道事業以外にも幅広く、そこで働く社員の仕事内容はさまざまです。

駅ビルなど商業施設の運営や、不動産開発、バスやタクシー事業の展開なども行いながら「街づくり」そのものにも深く関わるという人も多いです。

近年、地方のローカル線などでは赤字経営に苦しむところも多く、人口減少により業界の大幅な成長が期待しにくいなか、街づくりに関する関連事業を手がけることで新たなビジネスの可能性を探っています。

大手鉄道会社では、基本的に本社で勤務する「総合職」と駅員や車掌などになる「現業職」に分けて採用活動を行っており、現業職以外は大卒の学歴が求められるケースが多くなっています。

平均年収は600万円~700万円台程度とされていますが、会社の規模や地域などでも差が出ています。

「鉄道会社社員」の仕事紹介

鉄道会社社員の仕事内容

鉄道を運行させると同時に、街づくりも担う

安心・安全に鉄道を走らせる

鉄道会社は、重要な交通手段のひとつである鉄道を街に走らせ、人々の暮らしや産業を支える企業です。

鉄道会社の種類は大きく分けて、「JR」「私鉄」「公共交通」「第三セクター鉄道」があります。

経営は各社独立で行っているため事業展開はさまざまですが、各社連携を取ることで乗り換えなどをスムーズに行い利便性を図っています。

鉄道事業に関わる社員としては、駅員や運転士などの「現業職」や、車両や踏切を整備する「技術職」、運行ダイヤを考えたり、各種裏方作業を担ったりする「事務職」などがあります。

鉄道以外の業務

安全・安心かつ正確に鉄道を運行させることがおもな役割ですが、鉄道会社の事業は鉄道事業以外にも幅広く、そこで働く社員の仕事内容はさまざまです。

鉄道沿線や駅に隣接する商業施設の管理運営も、鉄道会社が手掛ける代表的事業の一つです。

駅ビルなどの施設は、地域住民だけでなく、ビジネスマンや観光客などの利用客も多いため、街のシンボルとして重要な位置を占めており、商業施設の運営にも注力しています。

また、不動産開発やレジャー施設運営、さらには建設業やバス・タクシー事業を展開する企業もあり、鉄道会社の事業は「街づくり」そのものにも深く関わっているといえます。

そのほか、大規模なターミナル開発や流通・サービス事業、不動産・ホテル事業などの展開、SuicaなどのITサービス展開なども鉄道会社の仕事です。

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鉄道会社社員になるには

なりたい職種に応じた試験を受ける

職種別の採用が行われている

鉄道会社社員として働くには、各鉄道会社が実施する就職試験を受けて、採用される必要があります。

大手の場合、幹部候補生としてマネジメント業務に携わる総合職、事務仕事を中心に行う一般職、現場で車掌や運転士として働く現業職など、職種ごとに採用が実施されます。

また、企業によっては、総合職が「事務系」と「技術系」に分かれていたり、全国転勤を伴う「全社コース」と勤務地域を限定した「エリアコース」に分かれていたりするケースもあります。

鉄道会社は、運転士や車掌といったおなじみの職種だけではなく、新規事業開発や不動産開発土木工事などの職種までさまざまあるため、自分がどの道を進みたいのかをあらかじめ考えておく必要があるでしょう。

学歴による区分がある場合も

新卒の場合は、応募資格に学歴による制限が設けられており、総合職だと大学や大学院、もしくは高等専門学校の卒業見込みの人が対象になっています。

運転士や整備など現場で活躍するプロフェッショナル職だと、大学や高等専門学校に加え、短期大学や専修学校の卒業見込み、会社によっては高等学校の卒業見込み者も応募可能です。

中途採用の際も基本的に新卒募集と同じ学歴制限が設けられているようです。

学歴によって応募できる職種が変わってくるので、自分が入社を希望する企業の採用条件や、職種の応募要件は事前に調べたほうがよいでしょう。

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鉄道会社社員の学校・学費

なりたい職種によって進路は大きく異なる

職種によって必要な学歴は異なる

鉄道会社の場合は職種によって必要な学歴が変わり、総合職であれば大卒または高等専門学校卒が必須条件です。

さらに学科の条件を設けているケースもあります。

事務系の総合職であれば全学部全学科が対象ですが、技術系の総合職の場合は 機械系、物理・材料系、電気系、電子系、情報系など職種に応じた学科卒が条件の場合もあります。

現業職に就きたい場合は、ほとんどの会社で大卒よりも高卒のほうが採用人数は多くなっているため、大学に進学するよりもむしろ高卒で就職試験を受けたほうがチャンスは大きいでしょう。

同じ職種でも学歴で仕事に差が

ある大手鉄道会社を例にすると、大卒のプロフェッショナル職の場合は運転士、車掌、線路、電気などの業務を支えることが期待されています。

業務を通して経験と知識を蓄積し、将来的にはマネジメント業務など中枢の業務をまかされる存在になっていきます。

一方、高卒のプロフェッショナル職の場合は線路や土木構造物、車両、信号システムなどの保守管理、改札業務や窓口対応など、現場をじかに支える仕事を担当します。

現場の第一線で早く働きたい人は高卒でも鉄道会社に入社できますが、採用実績がある高校に鉄道会社から求人情報が届くため、誰でも応募できるわけではありません。

鉄道会社は人気が集中するため、高校推薦を得るためには非常に優秀な学業成績を収めておく必要があるでしょう。

鉄道会社社員の資格・試験の難易度

電車を運転するには国家資格が必要

鉄道会社に就職する時点で、何らかの資格が求められることはありません。

しかし就職後については、車掌のように社内試験が必要となる役職もあります。

車掌になるには、駅員として1年~2年働いた後に受験資格が得られるケースが一般的です。

また、電車を実際に運行させる「電車運転士」については自動車と同じように運転免許が必要で、「動力車操縦者運転免許」という国家資格を取得しなければなりません。

国家試験では、筆記試験や身体検査、適性検査に加えて、難易度の高い技能試験が課されますので、駅員や車掌として勤務しながら、数年かけて技能を養っていくことになります。

なお、事務系など一般的な仕事をする場合は、特別な資格取得は必要ないでしょう。

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鉄道会社社員の給料・年収

平均水準は高いが、企業や役職でばらつきがある

職務によって給料に違いがある

鉄道会社社員の平均年収は600万円~700万円となっています。

鉄道会社の給与・年収は、勤続年数に加え、役職や階級が上がれば基本的に給与もアップするしくみになっています。

鉄道運行業務を例にすると、駅業務からはじまり、車掌業務、運転士へとキャリアを積み、指令として全体を見る職務につくため、運転士や指令になると給料も大幅にアップします。

また、鉄道会社の給料は職種による給与水準に違いが出るのも特徴です。

従業員1000人以上の企業規模の鉄道運行業務において、一番年収が高いのは電車運転士で約660万という調査結果が出ています。

次いで高いのは電車車掌の約578万円で、旅客掛(駅員など)は約518万円という結果になっています。

また、エキスパート職(いわゆる技術系)よりも総合職の方が、給与水準が高いのも特徴でしょう。

福利厚生も安定している

鉄道業界は全体として大企業が多く、企業としても経営が安定している分、福利厚生も充実している業界といえます。

雇用保険、厚生年金保険、健康保険、労災保険といった各種保険の完備はいうまでもありません。

寮や社宅の完備、住宅手当といったものから、住宅ローンに対する補助(条件と限度額あり)がある会社もあります。

さらに、仕事と育児や介護の両立支援制度も充実しており、安定した待遇の元で働けるといってよいでしょう。

当然ながらJR各社をはじめ、大手になればなるほど充実度は増していきます。

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鉄道会社社員の現状と将来性・今後の見通し

鉄道会社の事業は今後も多角化していく

鉄道会社は社会にとって不可欠なので、需要が途切れることはありません。

鉄道以外の事業も積極的に展開している傾向にあり、企業の存在価値は高いといえます。

都市部では各鉄道の相互乗り入れも年々進み、ますます利便性が高まっている一方、地方のローカル線などでは赤字経営に苦しむところも出てきており、廃線を余儀なくされるケースが増えています。

人口減少によって業界自体が徐々に縮小していくなか、各社は従来の鉄道事業だけではなく、商業施設運営や不動産開発などの関連事業を多数手がけ、新たなビジネスの可能性を探っています。

今後についても、鉄道会社社員の携わる仕事はより幅広くなっていく見通しです。

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鉄道会社社員の就職先・活躍の場

鉄道会社は全国にあり活躍の場はかなり幅広い

鉄道会社の種類

鉄道会社の種類は大きく分けて、「JR」「私鉄」「公共交通」「第三セクター鉄道」があります。

JRは日本国有鉄道(国鉄)が1987年に民営化して発足した鉄道会社です。

日本全国を網羅したグループ企業になっており、7社に分かれています。

経営は独立しているため事業展開などは異なりますが、乗客の利便性を追求するために各社の協力・連携体制は強いです。

私鉄は民間企業が運営する鉄道会社で、大手16社を含めると全国で70社以上あり、各社特色のある事業やサービスによって運営されているほか、地域活性化にも貢献しています。

公営交通とは地方公共団体が運営する鉄道です。

公営なので利益はある程度求めますが、地域や地元住民の生活を便利にするための事業展開に重点が置かれています。

第三セクター鉄道は国や地方公共団体と民間事業者の共同出資によって設立された鉄道会社です。

活躍の場は同じ会社でも異なる

鉄道会社社員の勤務先は職種によって異なり、現業職は駅や鉄道がおもな職場ですが、技術職はターミナル駅などに設けられた整備工場に、事務職は本社や支店などの事務所に勤めます。

また、職種を限定しない「総合職」の場合、企業によっては、商業施設の運営や不動産事業など手掛けるグループ内の子会社に出向を命じられる社員もいるようです。

このため、鉄道会社社員であっても、駅ビルや百貨店、不動産会社など、鉄道事業に直接関係のない場所で働く可能性もあります。

鉄道会社社員の1日

こまめに休憩を挟みながら乗務をこなす

鉄道会社社員のスケジュールは職種によって大きく異なります。

鉄道は早朝から深夜まで運行しているため、基本的にシフト制の勤務となり、オフィスワークの事務職以外は不規則な勤務となります。

<現業職車掌の1日>

12:00 出勤・着替え・点呼
13:00 引継ぎ・乗務開始
15:30 休憩
16:00 乗務再開(休憩を挟みながら乗務をこなす)
23:30 乗務終了・報告書作成
0:00 夕食・風呂・仮眠など
5:30 始発電車に合わせて業務再開
11:00 乗務終了・帰宅

鉄道会社社員のやりがい、楽しさ

大企業ならではの幅広い仕事を経験できる

近年の鉄道会社は、規模の大小に関わらず、鉄道事業を軸としてさまざまな事業を展開しており、商業施設の運営や沿線周辺のマンション開発、介護事業など、ビジネスは多角化する傾向にあります。

鉄道という強力な交通インフラを生かして、街や地域そのものの発展に貢献できる点が、鉄道会社の仕事の大きな魅力といえます。

とくに総合職として入社した場合は、鉄道事業はだけでなく、さまざまなビジネスに挑戦できる機会があるでしょう。

また、経営が苦しい鉄道会社があるのは確かなものの、交通インフラは人々の生活を支える重要な役割があり、鉄道会社がなくなることはありません。

企業規模が大きいところが多いため働く際の安定感は増し、安心して働ける環境が整っているといえるでしょう。

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鉄道会社社員のつらいこと、大変なこと

鉄道事業の公共性や社会的責任の大きさ

鉄道事業の公共性や社会的責任の大きさ

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鉄道会社社員に向いている人・適性

きっちりと仕事をこなせる真面目な人

社会インフラの一つである鉄道事業において、最も重視しなければならないのは安全です。

このため、鉄道会社社員には、どんな業務も一切手を抜くことなく、決められた手順通りに、かつ時間通りにきっちりこなせる、勤勉で真面目な性格の人が向いているでしょう。

日常生活において、忘れ物がないよう事前に準備し、スケジュール確認を怠らないなど、常に用意周到に行動できる人は、鉄道会社社員の適性があるといえるかもしれません

また、鉄道を運用するには鉄道事業法という法律をはじめ、厳しい社内規則があります。

数多くのルールを守るためにもルーティンワークは効率的であり、運転士や整備関連、指令などを目指す人は同じ仕事を繰り返すことに対する適性が必要です。

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鉄道会社社員志望動機・目指すきっかけ

志望動機は入念に練っておく必要がある

鉄道会社を志望する直接のきっかけは、電車が好きだったり、運転士に対する憧れがあったりするケースが多いかもしれません。

しかし、鉄道会社は公共交通機関としての重要な社会的役割を担っているため、そういった個人の趣味嗜好だけでは十分な志望動機とはいえません。

就職試験においては、鉄道会社で働くことの重みを理解していること、鉄道会社において自身がどんな業務に携わり、どんな形で社会に貢献したいかなどを、具体的に面接官に伝えることが必要です。

鉄道業界は人気が高いため、毎年、優秀な学生が多く応募しています。

基本的な志望動機に違いはないため、いかに自分らしさを加え、印象を残せるかがポイントになるでしょう。

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鉄道会社社員の雇用形態・働き方

多くは正社員で、現業職はシフト制で働く

駅員や車掌などの現業職は、始発から終電までの電車の運行時間に合わせて、早朝勤務や夜勤、当直などをこなす必要があるため、働き方は基本的にシフト制となります。

企業によって差がありますが、当直業務後は「明け」となって業務終了後ほぼ丸一日休みとなり、次の日に日勤をこなした後、翌日が休日となる「四交代制」が多いようです。

トラブルが発生しない限り残業はありませんので、プライベートなスケジュールを組みやすいといえますが、体力的にはハードとなりがちです。

一方、一般職などの事務を担う場合は、9:00~17:00など一般的な勤務時間で、土日祝日が休みというところが多くなっています。

鉄道会社社員の勤務時間・休日・生活

勤務時間や休日は職種によって違いがある

鉄道会社はさまざまな業務があるため、勤務時間や休日も職種によって違いがあります。

鉄道運行に関わる職種は、365日休みなく鉄道を運行させるため仕方ありませんが、どうしても不規則な勤務になることは認識する必要があります。

例えば駅業務の場合はシフト制勤務を行うケースも多く、9時ごろから終電まで勤務し、仮眠のあとに始発対応、その後、9時ごろに次のシフト勤務者に引き継ぎして退勤という日もあります。

車両整備や設備関連職では、夜勤もあります。

車両や線路のメンテナンス、補修工事などは運行中にできない部分も多いため、夜のうちに作業を行うケースも多く見られます。

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鉄道会社社員の求人・就職状況・需要

現場で働く職種の需要は非常に高い

鉄道会社の多くは毎年新卒採用を行っており、JRなどの大手企業は毎年数百人、あるいは1000人以上の大量採用を実施するケースもあります。

しかし、採用人数の大半は駅などで働く現業職や技術職であり、本社勤務となる総合職の採用人数は最大手でも100人程度です。

鉄道会社の総合職は学生からの人気が非常に高く、一流国立大学や難関私立大学の学生がこぞって就職を希望するため、内定を得るには厳しい競争を勝ち抜かなくてはならないでしょう。

また、地方の鉄道会社の場合は定期的に新卒採用をしていなかったり、即戦力となる中途採用者を中心に採用したりしているところもあります。

希望する鉄道会社の求人情報をしっかりと調べ、必要な学歴などを確認しておきましょう。

鉄道会社社員の転職状況・未経験採用

中途採用にはさまざまなパターンがある

鉄道会社では、不定期ながら第二新卒・社会人採用を実施しているところも珍しくありません。

基本的に退職などによる欠員に応じて募集が行われるため、新卒時とは異なり、中途採用では職種や勤務エリアが指定されることが多いようです。

「キャリア形成のため28歳くらいまで」と制限している鉄道会社もありますが、年齢制限を設けている会社は全体的に少なく、誰でも積極的にチャレンジできると推測できます。

また、事務職や駅員、客室乗務員などについては、正社員でなく契約社員やパート・アルバイトとして募集されることもあります。

数年間の勤務実績を積めば、正社員登用試験の受験資格が得られるケースもありますので、幅広い人に鉄道会社社員となれるチャンスがあるでしょう。

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鉄道会社の職種の種類

企業によってさまざまな職種に分かれている

鉄道会社社員は、多くの職種に分かれて仕事をしており、その区分や仕事の違いは企業によって多少違いがあります。

JR東海を例に挙げると、まずは採用の段階で「総合職」「プロフェッショナル職」「アソシエイト職」の3つに分かれます。

総合職はマネジメントがメインの仕事となり、異動を繰り返しながら各部署では施策の企画・立案・推進を行い、採用区分は「事務」「運輸」「車両・機械」「施設」「電気・システム」の5つの系統です。

プロフェッショナル職は、鉄道部門で高い技術力・専門性を発揮する職業で、採用区分は「運輸」「車両・機械」「施設」「電気・システム」の4つの系統に分かれています。

アソシエイト職は基本的にオフィスワークとなり、これらの業務のサポート業務を行います。