大学職員の年収は高い? 国立・私立の違いや今後についても調査

大学職員の平均年収は

大学職員は安定性や待遇のよさなどから人気が高い職業となっており、給料・年収は、国公立大学か私立大学かによって異なります。

全体としては年功序列の要素が強く、勤続年数や年齢とともに給料が上がるのが一般的です。

国立大学の職員は「みなし公務員」として、公務員に準ずる給料・待遇で働くことができ、生涯にわたって安定した収入を得やすいことが特徴です。

私立大学の場合は、各大学の裁量によって大きな差があります。

首都圏の人気私立大学では、平均年収が600万円以上になり、役職につくと年収1000万円以上を目指せる場合も珍しくありません。

大学職員の平均年収の統計

大学職員の平均年収・給料に関して、公的機関や求人サービスでの調査データはあまり公表されていないようです。

国立大学の職員給与については「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の役職員の給与等の水準(令和3年度)の取りまとめ」によると、事務・技術職員の平均年間給与は595万9000円(諸手当を除く)でした。

私立大学の場合、古いデータではありますが、2013年の大東文化学園教職員組合連合機関紙によると、首都圏私大の職員賃金は大卒22歳で203,850円、30歳で301,250円、40歳で405,755円となっています。

首都圏の私立大学ということもあってか、ほかの職業と比べると高めとなっていることがわかります。

参考サイト:独立行政法人、国立大学法人等及び特殊法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準(令和3年度)

大東文化学園教職員組合連合機関紙第 1067 号

大学職員の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

大学職員の給料は、各大学の教職員給与規則に沿って支払われます。

基本的には基本給をベースに、常勤の大学職員には時間外手当(残業代)や通勤手当、住宅手当といった手当もあります。

ボーナスも年に2回、合計で基本給の4~6ヵ月分ほど出るところが多いとされています。

年収が600万円だった場合、ボーナスが5ヵ月分出ると想定すると、月々の手取り額は28万円~30万円ほどになるでしょう。

大学職員の初任給はどれくらい?

大学職員の初任給は、18万円~25万円ほどが相場といわれています。

東京大学のデータでは、事務・技術職員で扶養親族がいない場合、22歳本部一般職員大卒初任給が月額180,700円、年間給与は270万9000円とされています。

早稲田大学のデータでは、学部卒業者の初任給は 223,420円、修士修了者の初任給は248,140円とされています。

大学職員の給与は年功序列の要素が強いことから、初任給の時点ではそこまで高い給料ではありませんし、民間企業の新卒社員とあまり変わりません。

ただ、その後は順調に働き続けると昇給を続け、次第に民間企業で働く人の給料と差が開いていく傾向が見られます。

また福利厚生が充実しており、初年度からしっかりとした手当がもらえたり休暇制度が利用できたりするのが一般的です。

充実した福利厚生

大学職員の福利厚生は、比較的充実しているといえます。

国立大学であれば、みなし公務員として、公務員と同様の手当や休暇制度が整えられています。

私立大学は学校ごとに異なりますが、国立と同等か、それ以上のさまざまな福利厚生を用意しているところもあります。

大学によっては職員用の宿舎や寮があって格安料金で入居できたり、住居手当が多く支給されるため、生活費を抑えやすいでしょう。

また、大学職員は女性が多数活躍していることもあって、産前産後休暇や育児休業制度をしっかりと整えている大学が多く見られます。

常勤職員であれば休業制度を利用し、子育てをしながら職場復帰する人もいますし、パートなど無理のない雇用形態に働き方を変えて仕事を続ける人もいます。

さらに、職員の資質向上のため充実した研修制度があります。

国立大学法人で採用された場合は、他大学等へ出向したり若手職員が文部科学省に研修生として勤務したりする制度があります。

大学職員の退職金はいくらくらい?

多くの大学で退職金制度が用意されているのが特徴で、定年まで長年勤めあげ出世すると5000万円ほど出る場合もあるようです。

国立大学の場合は①基本給月額 × ②支給割合 + ③退職手当の調整額 = 退職手当額と定められており、定年退職時の年齢や勤続年数から換算すると一般的な退職金は2,000万円以上と考えられます。

ただし、公務員の給料は年々減額する傾向にあるため、今後はより減額される可能性もあります

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

大学職員の年収が高い理由は?

大学職員の年収が高い理由の一つとして、大学独特のビジネスモデルが挙げられます。

大学は毎年同じ時期に同じ数の学生を募集し、一定の学費を集めています。

入学した学生は基本的に4年間(学部によって6年間)在籍するため、安定した金額を確実に納めてもらうことができ、収入の見通しが立ちやすくなります。

さらに国から補助金が交付されるため、安定した経営をしているところがほとんどです。

また、一般的な企業とは違い、景気に左右されることもほとんどありません。

大学の経営自体が大きな利益を求めるものでないこともあり、人件費として充分な費用を当てることができるのです。

国立大学と私立大学の職員の年収の違い

国公立大学

文部科学省が全国86の国立大学法人を対象に行った給与水準調査(令和2年度)によれば、大学職員(事務・技術職員)の平均年間給与は約585万円となっています。

対して、同調査における大学教員の平均年間給与は約881万円であることから、国立大学職員は教員よりは給与水準が低めではあるものの、一般的な会社員の平均年収以上の収入は見込めると考えてよいでしょう。

国立大学では「みなし公務員」の扱いとなり、公務員に準ずる待遇で働けます。

安定性が魅力であり、長く働き続け、少しずつでも確実に給料を上げていきたい人には魅力があるでしょう。

一方で、一部の職員は大学間で異動があり、希望の大学で長く働き続けられない可能性もあります。

参考:文部科学省 国立大学法人および大学共同利用機関法人の役職員の給与等の水準の取りまとめ(令和2年度)

私立大学

私立大学の職員の給料は、大学ごとに異なります。

2013年の大東文化学園教職員組合連合機関紙のデータから見ると、年収が600~700万円がボリュームゾーンとなりそうです。

東京6大学など、有名な私立大学では事務職員の平均年収が1000万円を超えるケースもあるなど、大学職員の給与は国立大学と私立大学で差があることが分かるでしょう。

経験やキャリアによっても変わりますが、勤務先によっては国公立大学職員以上の収入を得ることが可能です。

より高収入を目指すのであれば、私立大学の職員として働くほうがよいでしょう。

私立大学の職員はとても人気があり倍率も高く、優秀な人が集まるとされています。

平均年収を見るに、それに見合う待遇が用意されているといえます。

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

主な大学職員の年収

国立大学の年収例

東京大学職員

東京大学が公表している給与水準公表(令和元年度分)より職員給与について見てみると、常勤職員の平均年齢は44.9歳、平均年収は686万円で、そのうちボーナスが182万円となっています。

これは国家公務員の棒給表にほぼ準拠しており、特別に高いわけではありません。

参考サイト:国立大学法人 東京大学の役職員の報酬・給与等について

京都大学職員

京都大学が公表している給与水準公表(令和3年度分)より職員給与について見てみると、常勤職員の平均年齢は43.7歳、平均年収は644万円で、そのうちボーナスが175万円となっています。

ちなみに初任給は200,420円~ (大卒の場合、都市手当含む)となっています。

参考サイト:国立大学法人京都大学の役職員の報酬・給与等について

私立大学職員の年収例

早稲田大学職員

早稲田大学職員の年収は500~700万円ほどです。

給料は年功序列でアップしていき、40代で管理職になるとぐっと上がっていきます。

採用情報を見ると、初任給は学部卒業者 223,420円、修士修了者 248,140円となっています。

慶應義塾大学職員

慶應義塾大学の事務系専任職員の募集要項を見ると、25歳で月給23万2400円、年収約420万円、30歳では月給34万5800円、年収約630万円が例として挙げられています。

賞与は年3回、6.4ヶ月程度支払われることとなっています。

上智大学職員

上智大学の採用情報を見ると、年収例は350万円~800万円となっています。

大学卒の初任給は月給22万8100円~+期末手当(年2回)、29歳では月給294,700円(税込)+期末手当(職務経験者)が例として挙げられています。

明治大学職員

明治大学職員の年収は400~800万円ほどです。

採用情報を見ると、学部卒業者の初任給は月給200,200円、修士修了者の初任給は月給236,000円で、年収400万円が目安となるようです。

青山学院大学職員

青山学院大学職員の年収は、40代で700~900万円ほどの人も少なくないようです。

採用情報を見ると、初任給(基本給)は修士修了で234,600円、大学卒で207,200円、短大卒で187,600円(非世帯主住宅手当含む)となっています。

関西大学職員

関西大学職員の年収は、20代で400~500万円、40代になると700~900万円になる人もいるようです。

採用情報を見ると、初任給は本俸194,100円(2021年4月実績)となっています。

関西学院大学職員

関西学院大学職員の年収は、400~800万円ほどで、関西の大学のなかでは非常によいようです。

採用情報を見ると、専任事務職員の初任給は200,400円です。

立命館大学職員

立命館大学職員の年収は、30代で500~600万円、40代で700~800万円と高めになっています。

採用情報を見ると、総合職(22歳)で年俸3,625,200円、初任給は212,000円、総合職(24歳)で年俸4,001,400円、初任給は234,000円です。

同志社大学職員

同志社大学職員採用HPを見ると、30歳で平均年収600万円が目安となっています。

採用情報を見ると、専任職員の初任給は201,200円です。

参考サイト:転職会議
参考サイト:OpenWork
参考サイト:ライトハウス

大学職員の正社員以外の給料・年収

派遣社員

近年、多くの大学で正規職員ではなく、非正規雇用の職員を増やす傾向があります。

派遣の大学職員の募集も増えていますが、その場合「大学事務」という名称で求人が出されることもあります。

派遣の大学職員は、基本的には常勤の専任職員の補佐業務が中心です。

時給は1,500円程度が相場とされ、大学によってはもう少し高時給で働けますが、専任職員のような待遇が適用されない場合がほとんどです。

また、期間限定での働き方になるため不安定さがあり、大学側の経営判断により、派遣会社にアウトソーシングしていた業務の規模縮小や、直接雇用の職員への業務移管などの理由で、契約が終了してしまう場合もあります。

多くの大学では正規職員の採用倍率が非常に高く、派遣社員から大学の正規職員に採用されるパターンはほとんどないようです。

嘱託職員

嘱託社員とは、一度定年退職した人が定年退職した企業に再び採用されることです。正社員とは異なり、契約社員と同様の条件とされるのが一般的です。

契約社員は、一般的にフルタイム勤務を条件に契約しているケースがほとんどですが、嘱託社員の場合、短時間勤務や週の出勤日数が5日未満といった不定期な勤務になるケースが多いです。

長年慣れ親しみ、働きやすい職場でスキルを活かしながら働き続けられることはメリットですが、正社員よりは待遇がわるくなることが多く、雇用契約が更新されない場合は自己都合退職となってしまうデメリットもあります。

非常勤(パート・アルバイト)

大学では「非常勤職員」として働く職員も多く活躍しています。

一般企業におけるパート・アルバイトのような形で、あらかじめ勤務日数や勤務時間が決められていることがほとんどです。

ただし、 非常勤としてフルタイムで働きながら、正社員と同等の仕事をすることもあります。

非常勤職員は、おもに総務経理・人事といった事務に携わりながら、教員や学生が大学で快適に過ごしやすく、教育や研究に集中できる環境を整えます。

非常勤職員は時給制もしくは日給制で働くことが多く、首都圏であれば時給は1,200円前後、日給は8,000円前後のスタートが相場のようです。

非常勤であっても一定時間以上勤務する場合は、社会保険に加入できたり、各種手当が受けられたりすることがあります。

ひとことで「非常勤」といっても、大学によってどのような条件で働くかが異なるため、事前に募集要項をよく確認したほうがよいでしょう。

大学職員になるには? 必要な資格や学歴はある?

大学職員が収入を上げるためには?

大学職員の勤務先である大学は、歴史や伝統を大切にする傾向があり、給料に関しては年功序列の要素が強いです。

したがって、実力と成果次第で若くても一気に収入を伸ばす、というのは難しいと考えておいたほうよいでしょう。

基本的には長く勤めることで徐々に昇給します。

ただし、大学によって平均給与は異なりますし、私立大学であればさらに大学ごとの給与額に差が出てきます。

給料が高めの私立大学に10年以上勤めたり、役職がついたりすることによって、年収800万円~1000万円以上を目指すことも可能です。

大学職員の倍率はどの大学でも高くなりがちですが、経験を積みながら、より高い給料やよい待遇で働ける大学への転職を目指すのもひとつの方法でしょう。

大学職員の年収の今後の見込みは?

近年は少子化により、大学に入学する生徒が減少しつつあります。

地方の小規模大学では4割を超える私立大学が定員割れを起こしているといわれ、こうした大学では今後大学の再編や職員数を減らす動きが出てくる可能性があります。

大学職員は安泰と考えている人も多いですが、こうした動きをみるといつまでも高収入を維持できるとは限りません。

国公立大学の場合はあらかじめ決められた給与が支払われますが、不景気や人件費削減の影響を受けて今後年収が下がることも考えられますし、私立大学の場合もその影響を受けて減少傾向になるかもしれません。

少子化が今すぐに大学の経営に影響を及ぼすものではありませんが、この先何十年と続いていくと経営や大学職員の給与を見直さざるを得ない大学も出てくるでしょう。