大学職員に必要なこと、求められること
昨今の大学職員には、従来の事務スキルに加え、大学を発展させることのできる経営・企画力が求められ始めています。
最近、多くの大学で、四年制の学生を対象とした学部・学科以外にさまざまな講座を開設する動きがあり、そのような局面で大学職員の活躍の場は広がりつつあります。
講座の種類としては、
・高校生向けのサマースクール
・他大学の学生を受け入れる単位認定講座
・社会人が専門性を高めるための大学院
・年齢に関わらず通える生涯学習講座
・卒業資格が得られる通信制コース
・企業といっしょに研究する産学共同プロジェクト
など、実にさまざまです。
大学によっては、地域に開かれた大学をPRするため、幼稚園や子供たちに向けた講座や出張授業などを積極的に行っているところもあります。
このような幅広い取組の背景には、大学には次世代の学びを創っていくというミッションがあるからです。
ですが、少子化で大学生が減っていくなかで、大学も多角的経営をして将来の収益源を作らなければ存続できないという、現実的な課題があることも見逃せません。
そこで、四年制以外の学生を新たに想定して、その人たちが通いたくなるような講座を創るという企画力やマーケティング力(市場分析力など)、クリエイティブな発想力が大学職員に求められるようになってきました。
生涯学習ならカルチャースクール、通信教育なら盛んにコマーシャルをしているような通信教育サービス、社会人教育なら専門学校や研修会社など、その分野の大手企業が競合になります。
これらを担当し、大学の方針を定めながら企画を形にしていく大学職員には、一般企業のマーケティング担当と同じような能力が必要です。
与えられた仕事をこなすだけではなく、自らが積極的に数値の分析に基づいて論理的に入学者の分析を行ったり、大学のブランド力を生かす戦略を立てたりする機会が得られることは、自分の能力を試してみたいと考えている人や、自発的に仕事をしていきたいと考える人にとってはとても良い環境であるといえます。
実際に、現役の大学職員で経営スキルやマーケティングの勉強を続けているという人がたくさんいます。
通信制の大学や大学院で学びながら、大学職員の仕事と両立している職員さんも、実務の現場には決してめずらしくないことも知っておいて損はありません。
学生に対する面倒見のよさも必要な時代に
配属が学生課など、学生生活を直接支援する部署ではなかったとしても、大学職員には学生と接する機会が日頃からたくさんあります。
実は、職員は学生に対して、一般常識を教える教育者といわれることもあるのです。
社会人になってから学生を見ると、困った相談をしてくるものだと感じるかもしれませんが、どんな相談ごとにも共感する力、傾聴する力が大学職員には欠かせません。
たとえば大学4年生になるまでTOEICテストの存在を知らなかったと、慌てて相談してくるような学生もいますし、周囲が内定を取りはじめてから、どんな会社に入りたいか分からないと、就職相談をしてくる学生もいます。
とくに就職支援については、単に履歴書を添削するなど、チューターの役割で終わることがないのが大学職員です。
新卒学生を採用してくれそうな企業を自ら訪問し、求人票を獲得してきたり、学内就職面接会を企画して企業の担当者を大学まで招いたりと、学生を就職させるためなら何でもするという行動力も必要になってきます。
少子化が進む日本では、学生は「自律して卒業まで自らの力でこぎつける」時代ではなくなりました。
お客様とまではいかなくても、しっかり大学で勉強をし、きちんと知識などを蓄え、社会人として通用する中身に成長することを手助けし、就職につなげていく、といったことがますます重要視されています。
学生に対しての面倒見の良さは、これからの大学職員に必要な素質であることは間違いありません。
教授、研究者などとの調整能力も必要
企画力や行動力は、大学以外の職場でも必要となる能力ですが、大学独自の能力として、教授や研究者などの教員と、仕事上で円滑な人間関係を築く能力は非常に大切です。
教員は、権威がある上に話の内容はアカデミックですから、話し方や態度に細心の注意が必要であることはもちろん、教養のある受け答えも必要になります。
多くの教員は非常に多忙ですから、スケジューリングや経費申請など致命的なものは、職員が気を利かせてフォローしていかないと、どんどん業務が滞ってしまいます。
一方で、大学職員から教員に、新しい動きを提案していく機会も多くあります。
たとえば、履修ガイドをウェブサイトに載せることになったので原稿を刷新するといったものから、授業の一部をインターネットで配信、研究費補助金の新規申請など、大学をとりまくあらゆる情報をキャッチして、教員たちを主導して進めていかなければいけません。
生涯学習講座などを活性化させるために、人気が出そうなテーマは職員が考え、講義は教員にお願いして「カリスマ講師」としてプロデュースしたりもします。
ですから、大学職員は、教員の秘書的な役割をすることもありますが上司と部下の関係ではなく、時には教員以上に詳しい情報を持ったパートナーであるというところが、大学における人間関係の独特な部分と言えるでしょう。