大学におけるリサーチ・アドミニストレーターの仕事とは?

大学では、教員(教授など)のほかに、たくさんの職員が活躍し、学生の大学生活をサポートしています。

また、大学職員の仕事内容は多岐にわたり、なかには専門的な知識や、高度な能力が求められるものも存在します。

ここでは、大学職員のなかでも「リサーチ・アドミニストレーター」と呼ばれる専門職種について、詳しく紹介しています。

大学におけるリサーチ・アドミニストレーターの仕事とは?

リサーチ・アドミニストレーターとは

リサーチ・アドミニストレーター(RA)とは、企業や大学などの研究機関において、研究者とともに研究の企画やマネジメント、研究成果の活用促進を検討・実施する役職です。

一般的に、大学などの高等教育研究機関では、「URA(University Research Administrator)」と呼ばれています。

大学のリサーチ・アドミニストレーターは、教授や研究者の研究活動の活性化や研究開発マネジメントの強化等を支える業務に携わる大学職員として、研究面から大学の経営・運営に直接的に携わる上級管理職にあたります。

リサーチ・アドミニストレーター自身が、研究テーマをもって研究に従事することはありません。

しかし、研究活動を行う環境を整え、より戦略的な大学経営をするうえで重要な役割を担っています。

文部科学省によるリサーチ・アドミニストレーター整備事業の取り組み

文部科学省では、2012年より、リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備事業をスタートさせています。

この事業は、リサーチ・アドミニストレーターのスキル基準の策定や研修・教育プログラムの整備などを行うことで、リサーチ・アドミニストレーターを育成し、定着させる全国的なシステムをつくることを目的としています。

また、大学等が研究開発に知見のある人材をリサーチ・アドミニストレーターとして活用・育成することを支援しています。

大学でリサーチ・アドミニストレーターを育成する理由は?

日本の大学や研究機関では、研究資金の調達や管理、知的財産の管理・活用等を行う人材が十分ではないことが、以前より指摘されていました。

研究者が研究をし、それを世の中に発信していくためには、研究費獲得のための申請書作成、研究プロジェクトの運営、広報活動など、多くのことを行う必要があります。

しかしながら、研究者自身がそれらを手がけるとなると、労力や時間が取られて、本来の研究に専念できないという問題があります。

日本では長年、研究者に研究活動以外の業務で過度の負担が生じている状況だったのです。

こうした問題を解決するために、リサーチ・アドミニストレーターの育成や定着が進んでいます。

リサーチ・アドミニストレーターの業務分野

大学で働くリサーチ・アドミニストレーターが携わるおもな分野として、以下が挙げられます。

リサーチ・アドミニストレーターのおもな業務の分野
  • 知財・技術移転
  • 企画・プロジェクト
  • 産学連携
  • 国際戦略
  • 人材育成
  • 学術連携リスクマネジメント

どれも専門性の高い内容で、戦略的に大学を経営・運営していくためには欠かせないものとなっています。

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リサーチ・アドミニストレーターの仕事内容

リサーチ・アドミニストレーターは比較的新しく誕生した職業で、まだまだ定着しているとは言い切れません。

そのためリサーチ・アドミニストレーターの具体的な仕事内容や職務の範囲は、それぞれの大学や研究機関によって違いがありますが、一般的には以下の3つに大きく分けられます。

プレ・アワード業務

プロジェクトの企画から設計、調整、申請までを行う業務です。

具体的には、競争的資金情報の収集や分析、研究プロジェクトの企画立案支援、学内外での研究プロジェクトチーム構築に向けた各種調整作業、申請資料の作成支援などがあります。

ポスト・アワード業務

プロジェクト採択後の適正な運営に関する業務です。

具体的には、プロジェクトに必要な人員・組織・設備の整備、プロジェクトの進捗管理、プロジェクトの会計・財務、知的財産を含む研究成果の管理などを行います。

研究戦略推進支援

学長などの大学経営陣と一緒に研究戦略の立案などを行う業務です。

具体的には、大学及び教員等の研究力の分析、国内外の科学技術イノベーション政策の調査・分析などを行います。

リサーチ・アドミニストレーターの現状と今後

リサーチ・アドミニストレーターの現状

文部科学省の調査によって、2016年の時点で、約86%の大学等がリサーチ・アドミニストレーターを配置していないことがわかりました。

しかしながら、URAとして配置された人数は、2011年の323人から2016年には916人と、3倍近く増加しています。

現在は、企業出身者や産学官連携コーディネーターの経験者などがリサーチ・アドミニストレーターとして活躍しています。

また大学の事務職員や教員・研究者からリサーチ・アドミニストレーターに転身する人も多くいます。

リサーチ・アドミニストレーターの今後

現在、完成したスキル標準や教育プログラムを活用した研修などを実施・運用することで、URAシステムの定着やURAの質の向上が図られています。

また、シンポジウムなどを開催することで、大学間の連携を促し、URAの全国ネットワーク構築を目指しています。

大学等において、教員と一般事務職員の間をつなぐ第3の職種として、また科学技術人材の新たなキャリアパスとして、リサーチ・アドミニストレーターへの注目度は年々高まっています。

リサーチ・アドミニストレータ―は、高度な専門知識が必要な職業ですが、今後は全国各地の大学や研究機関で定着し、活躍することが期待されています。