司書の給料・年収はいくら? 手取り額や初任給、待遇も解説

図書館で働く司書は、多くが国家資格を取得し専門的な勉強をしています。

しかし、正規雇用の求人は少なく、非正規雇用で働いている人が多いため年収は低めになることが多いです。

一方で、正規雇用されている場合は安定した収入が得られ、特に地方公務員として採用されている場合、年齢や勤務年数によって順調な昇給が見込めます。

司書の平均年収・給料の統計データ

図書館で働く司書は資格を必要とされることが多く、専門性の高い職業として知られています。

しかし、正規雇用の求人が少ないので、嘱託職員や臨時職員、アルバイトやパートなどの非正規雇用で働いている人が多いのが現状です。

こうした事情から、給料に関しては高収入というわけではありません。

地方の図書館で正規雇用で働く司書の場合、月給にして15万〜20万円前後からスタートすることが多いようです。

派遣社員の場合は時給が1300円~1500円前後、アルバイトやパートの時給は1000円前後となりますが、地域によっても差があります。

司書の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

司書の平均年収_2022

厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、司書の平均年収は、42歳で580万円ほどとなっています。

・平均年齢:42歳
・勤続年数:9.3年
・労働時間/月:167時間/月
・超過労働:14時間/月
・月額給与:376,600円
・年間賞与:1,278,700円
・平均年収:5,797,900円

出典:厚生労働省「令和4年度 賃金構造基本統計調査」
司書の平均年収の推移_r4

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

司書の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

一般的な図書館で働く司書の年収は200万円~450万円ほどになることが多いようです。

年収が200万ほどの場合は、毎月の手取り額は15万~18万円、年収が300万円ほどの場合、毎月の手取り額は20万~23万円ほどになります。

この月収に加えて、企業によってはボーナスが支給され、公務員の場合は、期末・勤勉手当として年に2回(6月、12月)の支給があります。

司書の初任給はどれくらい?

司書の初任給は、15~20万円前後となることが多いようです。

この金額は地域によって差がありますし、雇用先が公立図書館か私立図書館かによって異なります。

また、大学卒か院卒か、あるいは司書としての資格を所持しているかどうかによっても異なることがあります。

一例を挙げると、埼玉県で令和2年に採用される人の初任給の標準額は、大卒の場合は約207500円、高卒の場合は約170300円とされています。

司書の勤務先の規模別の年収(令和4年度)

司書の年収は、勤務先の企業規模とあまり相関がないようです。

10〜99人規模の事業所に勤める司書の平均年収は600万円、100〜999人規模は507万円、1,000人以上の規模では644万円、10人以上規模の事業所平均は580万円となっています。

司書の年収(規模別)_r4

上記グラフの基タイトルは「他に分類されない専門的職業従事者」で行政書士通訳など他職業を含むデータです。

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

司書の勤務先の年齢別の年収(令和4年度)

司書の年収は、年齢が上がってもあまり変わらない傾向にあります。最も年収が高い世代は、40~44歳の692万円です。

全年代の平均年収は580万円となっています。

司書の年収(年齢別)_r4

上記グラフの基タイトルは「他に分類されない専門的職業従事者」で行政書士、通訳など他職業を含むデータです。

司書の福利厚生の特徴は?

公務員の場合は福利厚生が手厚い

司書の福利厚生は、雇用先によって異なります。

最も待遇がよいといわれているのは、地方公務員試験の「行政職」の試験を受けて合格し、自治体に採用されて地域の公立図書館で働いている人たちです。

公務員という立場になるので、景気や世間の流行に左右されずに固定給をもらうことができますし、産休や育休などの休職の制度も確立されています。

また、親の介護や子どもの看護のための休暇も取得しやすく、扶養手当、通勤手当、住居手当などの各種の手当ても充実しているのが魅力です。

正規雇用と非正規雇用の違い

一方で、非正規雇用の場合は福利厚生が整っておらず、社会保険に加入できなかったり、休暇をとると欠勤扱いになってしまうこともあります。

時給制で働いている司書も多く、平均時給は1000円程度ですが、各自治体の最低賃金で雇用されている人も少なくありません。

これをもとに1日7時間、週5日勤務した場合の月給を計算すると、約12~17万円とかなり低めになってしまいます。

手当も少ないことが多く、不安定な給与と立場で働いている人は大勢います。

ボーナスや昇給はある?

正規職員で地方公務員として働く司書の場合、年平均2回のボーナスが出ます。

図書館で働くうえで営業職などのようなインセンティブはないため、基本的に決められた額が定額で支払われます。

図書館司書は昇給のきっかけとなることが少なく、経験を積んでいくにつれて徐々に給料は上がっていくことが多いものの、管理職になるなどしなければ大幅な上昇はほとんどありません。

公務員の司書は着実な昇給がある一方で、非正規雇用で働いている司書にはボーナスや昇給が無い場合が多く、何年働いても同じ給与という人も珍しくありません。

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司書の給料・年収の特徴

年収は低めの傾向

司書の平均年収は、とくに高いというわけではありません。

公立の図書館で地方公務員として働いている人の場合は一般企業よりも収入が多いことがありますが、嘱託職員やアルバイト・パートとして働いている人の場合は年収が100万円台であることも珍しくないのです。

主婦のパートとして、扶養の範囲内で働いている人も多くいます。

一方で、給与が低めであっても、図書館は民間企業のように業績が不安定になることは基本的にないため、一度働くと長く働き続けられることを魅力に感じる人も多いです。

専門知識を生かして安定して働きたいという人からは人気を集めています。

転職を目指す人も

司書として就職したい学生の多くが、新卒のときに正規雇用での採用を目指して就職試験を受けます。

しかし、司書の採用は若干名しかないことが多いので、学生にとっては非常に厳しい倍率のなか選抜が行われることになります。

こうした就職試験で残念ながら不合格となった人は、ひとまず非正規雇用で図書館のスタッフとして働きながら正規雇用への転職を目指すのが一般的です。

給料や待遇、将来的なキャリアを考えると正規雇用のほうが安定していることは間違いないので、たとえ険しい道であっても、正規雇用としての転職や再就職を目指す人が多くいるのが現状です。

 

給料以上のやりがい

司書として働いている人のなかには、給料以上のやりがいを感じている人も少なくないようです。

それは、司書という仕事が「本が好き」「図書館が好き」という人にとっては、まさに天職のように思える仕事だからでしょう。

一方で、図書館で働く司書の給与や待遇の悪さは近年社会問題化しており、待遇改善に向けた動きがのぞまれているところです。

司書のやりがい・魅力

司書の勤務先別の給料・年収

地方公務員として働く司書

まずは公立図書館で地方公務員として働く司書の給料について見てみましょう。

埼玉県の令和3年4月1日時点での公表によると、大卒で一般行政職に就いている人の月給は、初任給が191,664円です。

ここからキャリアを積むと、経験10年で275,102円、20年で366,195円、25年で387,674円、30年で403,870円と昇給していきます。

平均給与月額は、42.0歳で319,815円となります。

この金額に扶養手当、地域手当、住居手当、時間外勤務手当などのすべての諸手当の額を合計すると、月給が418,771円、ボーナスを入れた年収はおよそ670万円程度になります。

 

大学の図書館で働く司書

国立大学法人の図書館でカウンタースタッフとして働く司書の場合、給料は年俸制となっていることがあります。

業務内容は図書館業務全般に携わることで、年度ごとに契約を更新することができ、最長で3年から5年までという期限付きです。

年俸は300~400万円程度ですが、経験年数や学歴などによって金額は多少前後します。

年俸制なのでボーナスはありませんが、業務に応じて超過勤務手当をもらうことができます。

学校の図書館で働く司書

学校図書館で働く司書の給料は、雇用形態によって大きく異なります。

司書教諭として働いている場合は、地方公務員の公立学校の教育職(一般教諭)と同等の給料になります。

「令和3年地方公務員給与の実態」によれば、平均基本給の月額はおよそ38~50万円で、諸手当を含めると41~52万円ほどです。

ただし「学校司書」は教員ではなく一般事務の扱いで、教員と同様の給与はもらえません。

非常勤職員や非正規雇用であることも多く、パートやアルバイトと同程度の給料であることも珍しくありません。

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司書の正社員以外の給料・年収

 

パートタイム

司書は非正規雇用が多く、アルバイトやパートでの求人も多くあります。

地方にある県立図書館の司書スタッフのパートの募集要項によると、業務内容は「カウンター業務、図書の整理・配架、図書資料の登録、その他」となっており、雇用は最長で5年間とされています。

給料について見てみると、日給で8,598円、月収で146,166円で、これに期末手当、通勤手当などが加算されることになります。

健康保険・厚生年金・労災・雇用保険に入れるほか、有休もあるので、待遇としては充実しています。

ただし、最長で5年までしか雇用されないため、長期的に安定して働けるわけではありません。

 

アルバイト

司書は、学生や主婦向けのアルバイトとして求人募集が出ていることもあります。

時給は1000円程度となっていることが多く、通勤手当も支給されます。

アルバイトの場合は司書の資格がなくても採用されることがあり、図書の整理や運搬などの補助的な業務を手伝うのが一般的です。

司書を目指す人が経験を積む場として働くにはよいでしょう。

司書の年収が低い理由は?

非正規雇用が多い職種

図書館で働く司書は、他の職業と比べると圧倒的に非正規雇用が多いです。

日本図書館協会の統計によると、1998年に約8千人だった非正規職員は、2018年には約3万人と激増しています。

また、1998年には全体の5割以下であった非正規職員の割合は、現在7割以上になっているともいわれています。

これは、自治体の財政難により非正規雇用がすすめられてきたことや、図書館事業は「娯楽」とみなされ軽視されやすく、予算が削られてきたことなどが背景にあります。

需要は少ないが司書を目指す人が多い

本や図書館が好きで、そこで働くことに魅力を感じる人は多く、学生時代に司書資格を取得する人も非常に多いです。

一方で求人はごく限られているため、たとえ低収入だとしても、アルバイトやパートでも、どうにかして図書館で働きたい、司書として経験を積みたいという人は大勢いるのです。

そのため人手不足になることが少なく、人件費をかけてまで優秀な司書を雇いたいという自治体や企業はほとんどないのです。

司書の年収は他の職種と比べて高い?低い?

一般事務の平均年収は、勤務先にもよりますが300万円前後がボリュームゾーンといわれており、正規雇用の司書よりは低いものの、非正規雇用の場合は一般事務職の方が給与は高くなると考えられます。

同じく本に関わる仕事をしている書店員の平均年収は、厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、42.6歳で358万円ほどとなっています。

こちらも一般的な職業と比べると低めとなっており、非正規雇用の司書と同程度、または若干高いくらいの年収です。

書店員も司書と同様、自分の好きな本に囲まれて仕事ができることから、賃金以外のところに魅力を感じている人が多いようです。

司書が収入を上げるためには?

司書が収入を上げるために最も大切なのは、待遇の整った雇用先を選ぶことです。

アルバイトやパート、あるいは雇用期限付きの職員として雇われている場合、時給にすると1000~1500円前後になり、昇給はのぞめません。

たとえ司書の資格を所持していても、仕事をしながらコツコツ勉強を続けて専門的な知識や技能を磨いたとしても、残念ながら給料には反映されないのです。

雇用も不安定なので、常に将来的な心配が付きまといます。

こうしたことを踏まえると、収入をアップさせて生活を安定させたいのであれば、地方公務員や私立大学の図書館スタッフなどを目指すのがよいでしょう。

司書の場合は正規雇用の求人自体が非常に少なく、就職試験を受けてもなかなか採用されないかもしれません。

それでも諦めずに何年もかけてチャレンジを続けることが大切です。

司書の給料・年収のまとめ

本が好きな人にとって、司書は好きな本に囲まれ図書館で働くことができる憧れの職業です。

一方で、求人は少なく、非正規雇用化がすすんでいるため、安定して働くことは難しい職業です。

図書館司書として長く働きたいのであれば、地方公務員や正規雇用してくれる図書館を目指し、こつこつと努力をしていくことが大切です。