鍼灸師になるには

鍼灸師になるためには、まずは「はり師」「きゅう師」の両方の国家資格を取得する必要があります。

本記事では、鍼灸師になるために必要な情報をまとめて紹介します。

鍼灸師になるまでの道のり

鍼灸師になるためには、「はり師」「きゅう師」の両方の国家資格を取得し、鍼灸師として治療院等に就職します。

鍼灸治療院は、個人で開業しているところが多い関係で鍼灸師の募集は少なく、就職することは簡単ではありません

あん摩マッサージ指圧師柔道整復師など、そのほかの関連資格も取得すればより就職の幅は広がります。

鍼灸院以外の就職先

  • 病院・診療所・介護施設・在宅医療などの地域医療
  • 介護予防や週末期医療
  • 統合医療
  • スポーツ分野
  • 美容
  • リラクゼーション分野
  • 労働衛生分野
  • 小児や児童・学校保健分野

地域医療では、地域の保健医療福祉であるプライマリ・ケアとして、もしくは、リハビリテーションやキュアとしての鍼灸が基本となります。

鍼灸師になるまでのルート

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

鍼灸師の資格・難易度

鍼灸師という資格はなく、「はり師」「きゅう師」の両方の資格を持つ人を鍼灸師と呼びます。

はり師・きゅう師はそれぞれ別の国家資格のため、2つの試験を受けることが必要です。

同時に受験する場合、共通する科目については免除の規定があります。

いずれにしても、国家資格を受ける前に受験資格を得なくてはなりません。

受験資格とは、厚生労働省と文部科学省によって定められた専門学校や大学を卒業することで、修業年限は3年以上です。

はり師・きゅう師の資格を取得できる学校で3年以上学び、そこで初めて鍼灸師の試験を受ける資格が得られるのです。

鍼灸師の試験の難易度、合格率

鍼灸師になるための学校の種類

鍼灸師専門学校や大学

鍼灸師になるための学校には、鍼灸師専門学校や大学などがあります。

学科内容
  • 人体の解剖学
  • 生理学
  • 衛生学
  • 公衆衛生学
  • 病理学
  • 東洋医学概論
  • 診断学
  • 治療学
  • 治療実習

これらの科目を履修することにより、国家試験にトライすることができるのです。

なお、あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師(はり師、きゅう師)の受験資格を同時に取れる学校もあります。

数が少ないため、人気は高いですが、効率的に受験資格を得ることができます。

鍼灸師になるために勉強すること

人体のツボ

人間の身体には、全身で400個弱の「経絡経穴」、いわゆる「ツボ」があるといわれています。

それらのツボの名前や場所、効果、また周辺の筋肉や神経などについては、すべて暗記をして確実に覚えなくてはなりません

暗記はとても大変なことですが、これを覚えていないと鍼灸師としての業務に差しさわりがあるのはもちろん、国家試験にパスするのも難しいため、しっかりと時間をかけて取り組むことが大切です。

鍼・灸の理論と実技について

東洋医学の基礎である「東洋医学概論」のほか、「はり理論」「きゅう理論」も鍼灸師にとってベースとなる知識です。

養成施設では、鍼灸治療による人体への効果や変化について理論として学んだうえで、実技の時間も多くとられています。

また、養成施設のなかには同時に「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格取得も目指せるところがあり、そのような学校ではマッサージ指圧実技の授業もあります。

技術はとくに、一朝一夕で身につくものではなくやればやるほど上達するといわれるため、鍼灸師として現場に出てからも勉強会や研修などを通して日々勉強を続けることが大切です。

あん摩マッサージ指圧師の仕事

西洋医学の基礎

鍼灸は東洋医学の考え方による療法ですが、鍼灸師を目指すのであれば西洋学の基礎である解剖学や生理学も学ぶ必要があります。

これらの勉強は、人体の構造や生命維持のしくみについて知ることであり、鍼灸治療においても不可欠の知識となります。

「はり師」「きゅう師」の国家試験の科目は半分以上が西洋医学系であるため、鍼灸師にとっては重要な要素です。

鍼灸師になるための学校と費用(大学・専門学校)

20代で正社員への就職・転職

20代で正社員への就職を目指す

「Re就活エージェント」は、第二新卒・既卒・フリーター・ニート向けサービス。20代未経験OKの求人が多数。

20代登録比率No.1

鍼灸師に向いている人

医療人としての資質

鍼灸師になるには、日々学習する意志があるかどうかと、医療に関わる医療人としての資質を兼ね備えているかどうかにかかってきます。

医療人としての資質
  • 鍼灸術を施す患者を思いやる姿勢
  • コミュニケーション能力
  • 自分自身を客観的に振り返る姿勢や習慣

現代医学の知識も必要

鍼灸師として活躍するには、その鍼灸技術のもとである東洋医学についての知識だけではなく、現代医学の知識も必要です。

鍼灸師は単独で鍼灸技術を行うこともありますが、疾病の種類やその重傷度などによっては、医師と連携して治療をする場合もあるからです。

鍼灸師は東洋医学のスペシャリストではありますが、医療に携わる1人として現代医学の知識も欠かせないのです。

鍼灸師に向いている人・適性・必要なスキル

鍼灸師のキャリアプラン・キャリアパス

鍼灸治療への期待の高まり

近年、病気の予防に有効であるとして、鍼灸への注目が集まっています。

海外でも研究が進み、予防医学のひとつの手段として積極的に使われるようになってきました。

日本においても、医療費の増大や高齢化社会の進展という状態において、鍼灸への期待が高まっています

また、予防医学以外にもアレルギーに対する治療やがんの緩和としての鍼灸治療にも注目が集まっています。

鍼灸師を目指せる年齢は?

鍼灸師を目指す人の年齢層は幅広く、実際に専門学校には幅広い年齢の人がいます。

30代や40代、さらには50代で入学する学生も少なくなく、社会人になってから鍼灸師を目指す人も珍しくありません。

鍼灸師は年齢に関係なく働けるため、他の職種から転職する人も多く、手に職をつけたいなどの理由で多くの人が鍼灸師への就職・転職を目指します。

参考:鍼灸師に関するデータ

はり師・きゅう師就業者数

はり師・きゅう師の資格を持つ人の数は増え続けています。両方の資格を同時に持つ人がほとんどですが、令和2年時点で、はり師は126,798人、きゅう師は124,956人の人が働いています。

はり師数の推移_r2
出所:厚生労働省
きゅう師数の推移_r2
出所:厚生労働省

はり及びきゅうを行う施設所数

はり及びきゅうを行う施設所、あん摩、マッサージ及び指圧、はり並びにきゅうを行う施術所ともに年々増加をしています。

あん摩、マッサージ、指圧のみを行う施設所数は減少しており、はり・きゅうのニーズが高まっていることが伺えます。

はり及びきゅうを行う施術所の推移_r2
出所:厚生労働省

鍼灸師の雇用形態

鍼灸師は、街の治療院に正社員として勤務している人もいれば、派遣で働く人、アルバイト・パートとして働く人、独立して自分で治療院を開業している人などさまざまです。

また、自分の治療院を持ちたい場合は独立して鍼灸院を開業する以外にも、チェーン展開している鍼灸院に勤め院長となる方法もあります。

正社員の鍼灸師

鍼灸師として正社員になる場合、「鍼灸師」のみの求人はあまり多くありません。

鍼灸師と比べると、同様の国家資格である「あん摩マッサージ指圧師」や「柔道整復師」の方が需要は大きいようです。

鍼灸師はこれらの資格を併せて取得している人が多いため、鍼灸師の資格を持ちながらあん摩マッサージ指圧師や柔道整復師として働く人も多いようです。

もし鍼灸師のみで仕事を続けていくのであれば、安定した収入を得られるようになるためにも、独立することを目標にしてプランを立てておいたほうがよいかもしれません。

派遣の鍼灸師

派遣の鍼灸師は少ない

鍼灸師は、鍼灸院を中心に活躍しています。

正社員や常勤といったフルタイムで働く人だけでなく、アルバイトやパート、さらに派遣として働く人も存在します。

街の鍼灸院は個人で経営する小規模のところも多いため、たとえ人を雇うとしても、養成学校在学中の学生を見習いとして受け入れたり、あるいは受付や事務スタッフをアルバイトとして採用したりするケースが目立ち、鍼灸師の場合は派遣として働く人はさほど多くないのが実情のようです。

鍼灸師としてのチャンスを広げる

鍼灸師として患者に治療を行う場合は、たとえ派遣であろうと、「はり師」や「きゅう師」の国家資格が必要です。

そのため、鍼灸院などで派遣の鍼灸師が募集される場合は、ほぼ確実に即戦力になれる人が求められることになります。

全体として、鍼灸師の就職状況はあまりよいとはいえず、せっかく国家資格を取っても正社員としての就職先が見つからないという人も珍しくありません。

養成学校卒業後は医療職を扱う派遣会社に派遣として登録しておき、仕事を紹介してもらえるチャンスを待つのもひとつの手です。

派遣で働くメリット

派遣で働く場合は、基本的に時給で給料が支払われます。

実力や経験によりますが、時給1,000円から2,000円が一般的なようです。

派遣は決められた期間のみ働く場合が多いため、新人の鍼灸師が長期的な目で見てキャリアを築いていくには不安な面もあるかもしれません。

しかし、鍼灸師は経験を積むことで独立開業をする人が多くいます。

実力を磨くためにさまざまな現場を経験できるという意味では、派遣という働き方が最適でしょう。

アルバイト・パートの鍼灸師

アルバイトでも国家資格が必要

鍼灸師のなかには、正社員としてではなくアルバイトとして活躍している人も少なくありません。

鍼灸師として患者に治療を行うのであれば、たとえアルバイトであろうと国家資格が必要であるため、はり師・きゅう師の資格を持たない一般の人が治療院でアルバイトを行うことはできません。

学びながらアルバイトをする人も多い

ただし、たとえ国家資格を持っていなかったとしても「アシスタント」や「見習い」といった形でアルバイトとして雇ってもらえることがあります。

この場合、直接患者さんへの治療を行うことはできないため、任される仕事内容は受付や院内の清掃、道具の準備などが主な仕事です。

先輩鍼灸師の仕事を間近で見ることができるため、鍼灸師の養成学校に通いながら、鍼灸院でアルバイトをする学生もいるようです。

その後、国家資格を取得することで、鍼灸院にて正社員へとステップアップできるケースもあります。

アルバイトとして働くメリット

アルバイトで働く最大のメリットは、時間に融通が利きやすいことでしょう。

「すでに鍼灸師の資格があるけれど、さらにスキルアップを目指し、柔道整復師の資格をとるための学校に通いながら働きたい」という人や、「家庭があるためフルタイムで働くのは難しい」といったさまざまな事情がある人でも、アルバイトであれば鍼灸師として無理なく働き続けやすいといえます。

独身時代には正社員として働いていたけれど、出産を機に1度現場を離れ、再度アルバイトとして鍼灸師の国家資格を生かして働く人もいるようです。

アルバイトとして働くデメリット

雇用形態がアルバイトであることでの不安も考えられます。

アルバイトは普通、毎月決まった給料がもらえる固定給ではなく時給制であるため、その月に働いた時間によって毎月の給与額は左右されます。

勤務先の都合によっては、希望した通りのシフトで働けないこともあります。

また、ボーナスの支給や福利厚生、社会保険などの待遇に関しても、アルバイトは正社員ほど充実していない場合が多いです。

アルバイトの鍼灸師として活躍している人は「尊敬できる師匠の下でノウハウを学ぶため」あるいは「近い将来の独立を視野に入れた修業」として、期間を決めてアルバイトとして働いているケースが多いようです。

将来的に正社員への就職を目指すにしても、独立開業を目指すにしても、アルバイトの鍼灸師としてしっかりと働けば、そこで培った経験は大きな力となるでしょう。

鍼灸師の求人状況・就職先選びのポイント

鍼灸師の就職先にはどんなところがある?

鍼灸師としての就職先は、鍼灸院、病院・医院、鍼灸整骨院、福祉施設などが主です。

鍼灸師には「開業権」があり、医者と同じように院を開業することができるため資格を取ってすぐ開業する人もいます。

また、院を開業せずとも、出張の届けを保健所に提出すると、出張専門鍼灸師としての活動もできます。

開業には院を構える費用が必要ですが、出張専門なら移動費だけで済むので、比較的実現しやすいといえるでしょう。

鍼灸師の求人の状況

鍼灸院は新卒の募集数が少ないのが実状です。

鍼灸院には、徒弟制度が設けられているところもあるようで、見習いからスタートする場合、給料が低かったり無給だったりすることもあります。

病院・医院への就職もあまり多くありませんが、たいていの場合、リハビリ室に勤務します。

鍼灸整骨院へ就職する鍼灸師は病院よりも多いといわれていますが、「あん摩マッサージ指圧師」や「柔道整復師」の資格の所持を採用条件とするところもあります。

福祉施設への就職は、老人ホームなどの施設がその対象です。

鍼灸師の就職先の選び方

どの分野で活躍したいか

鍼灸師は、一般的な治療院のほかにもさまざまな分野で活躍ができる仕事です。

そのため、自分がどのように活躍したいか、どのような分野で働きたいのかをしっかりと考え、就職先を選ぶ必要があります。

スポーツトレーナーとして働く

近年、スポーツ選手のケガなどを予防するために鍼灸が取り入れられるようになり、鍼灸師のスポーツトレーナーとしての需要が増加しています。

狭き門ではありますが、スポーツの知識を持っていればスポーツトレーナーとして働くことができる可能性もあります。

美容業界で働く鍼灸師

そこまで多いわけではありませんが、最近では美容業界で鍼灸師の資格を持った人が活躍することもあります。

エステサロンや美容クリニックに就職する際に、鍼灸師としての知識やスキルを持っていると優遇されることがあるようです。

鍼灸師の志望動機・面接

針灸師を目指す人の多くが、「人の役に立ちたい」「困っている人を助けたい」という気持ちを持っています。

また、過去に自分がケガをしたり身体の調子が悪かったりして、針灸の治療を体験したことがあるというケースも目立ちます。

最近では鍼灸師の活躍の場が美容やスポーツの分野まで広がっているため、鍼灸師を見かける機会も増えたことも、鍼灸師になりたいと考えるきっかけのひとつになっているかもしれません。

鍼灸師の仕事は自分が健康である限り、歳をとっても長く続けることができるため、ある程度の年齢になってから鍼灸師への転身を志す人も決して少なくありません。

鍼灸院の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?

就職先はどのように探したらいい?

鍼灸師が就職先を探す場合は、ハローワークや求人サイトなどが一般的です。

ただし鍼灸師はもともと求人が少ないため、採用状況についてもそれほどよいとはいえないのが現状です。

学生にうちにできるだけ実力を高めて開業を目指すか、「あん摩マッサージ指圧師」や「柔道整復師」などの資格をあわせて取得し、より広い視野で就職先を探すほうがいいかもしれません。

鍼灸師になるにはのまとめ

鍼灸師になるためには、「はり師」「きゅう師」の両方の国家資格を取得し、鍼灸師として治療院等に就職します。

鍼灸師になるための学校には、鍼灸師専門学校や大学などがあり、中にはあん摩マッサージ指圧師と鍼灸師の受験資格を同時に取れる学校もあります。

鍼灸師に向いているのは、鍼灸術を施す患者を思いやる姿勢のある人やコミュニケーション能力の高い人、
自分自身を客観的に振り返る姿勢や習慣がある人が挙げられます。

上記に加え、資格さえ取得することができればいくつからでも目指すことができる職業です。