鍼灸師の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介

鍼灸師は、さまざまな不調に悩まされる現代人にとって頼れる仕事のひとつです。

本記事では、鍼灸師の業務内容からその役割、仕事の流れなどを紹介します。

鍼灸師の仕事とは

鍼灸師(しんきゅうし)とは、「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を持っている人のことです。

はり師ときゅう師は別々の資格ですが、両方の資格を同時に受験するケースが多く、また両方の施術を行う人が多いため一般的に鍼灸師と呼ばれていますが、「鍼灸師」という資格はありません。

鍼灸師の仕事は、身体に鍼(はり)や灸(きゅう)を用いた刺激を与えることで、さまざまな疾病の治療や健康増進を促すことのできる医療技術である「鍼灸」を行うことです。

この鍼灸は古代中国に発生し、日本でも古くは平安時代から鍼灸技術が取り入れられ、鍼灸を行う医療職が存在していたというとても歴史のある職業です。

もともと視覚障害者の割合が多い仕事でしたが、規制緩和などの影響もあり、一般の人も鍼灸師となることが増えてきています。

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鍼灸師の業務の内容

日本では、鍼灸師の資格が「はり師」と「きゅう師」に分かれていることから、その施術内容もそれぞれ異なります。

「はり師」は鍼術を行い、「きゅう師」は灸術を行います。

はり師は、患者の症状に合わせて、適切な場所のツボ(経穴)に金属の鍼(はり)を刺し、ときには電流を流して、刺激を与えます

針は非常に細いものなので痛みはほとんどなく、刺激を与えることで血流のバランスなどを整え、治療を行います。

きゅう師は、はり師と同様にツボに刺激を与えますが、針ではなく、もぐさを燃焼させることによって、ツボに温熱刺激を与えます

どちらも東洋医学に基づき、人が本来持っている自然治癒力を活性化させることを目的としています。

「ツボ」を刺激するという基本の概念や共通の技術が多いことから、鍼灸師と呼ばれるほとんどの人たちが「はり師」「きゅう師」の両方の国家資格を持っています。

また、日本でこの「鍼灸」が行えるのは、はり師、きゅう師と医師だけと決められています。

鍼灸師の役割

東洋医学に基づく治療法でさまざまな症状を改善に導く

鍼灸師は、東洋医学の考え方に基づく「はり」や「灸」という治療法を使って、人々が抱える身体のさまざまな症状を改善させ、健康な身体へと導く仕事です。

鍼灸を含む東洋医学の大きな特徴は、病気に対して薬を服用したり、外科的な処置をしたりする「現代医学(西洋医学)」とは異なり、人間がもともと備えている自然治癒力を高め、症状を改善させようという考え方です。

鍼灸治療では薬を使用しないため、薬による副作用がなく、子どもから高齢者まで幅広い年代の人が安心して治療を受けることができます。

また、東洋医学は、原因ははっきりしないが「何となく身体がだるい」といった症状や、慢性的な生活習慣病など、現代医学ではなかなか解決できないものに対しても効果があると考えられています。

さらに、病気の症状が出る前に鍼灸治療を受けることで、病気になるリスクを減らすことができると考えられ、鍼灸は健康な身体を維持することができる「予防医学」としての役割も担っています。

「はり師」「きゅう師」の国家資格を取得している鍼灸師は、人々の生活や健康状態が多様化、複雑化する現代社会において、健康な身体を維持するために必要な職業として期待されています。

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鍼灸師の勤務先の種類

鍼灸師の活躍の場
  • 灸治療院を開業
  • 鍼灸治療院に勤務
  • 整形外科のリハビリ
  • 内科や神経内科などの疾患の治療に鍼灸を取り入れている病院
  • スポーツチームなどの専属トレーナー
  • 美容業界で働く

この鍼灸師の活躍できる場はさまざまですが、自ら鍼灸治療院を開業したり、鍼灸治療院に勤務したりするのが一般的です。

病院で働く鍼灸師

鍼灸は本来東洋医学の分野ですが、現代医学と連携を図りながら病院で活躍する鍼灸師もいます。

整形外科のリハビリや、内科や神経内科などの疾患の治療に鍼灸を取り入れている病院で患者の症状を和らげるべく鍼灸を行うのが主な仕事です。

患者さんの症状に応じて、医師や看護師などの医療関係者と協力しながら適切な治療します。

スポーツトレーナーとして働く鍼灸師

鍼灸治療を行うスポーツトレーナーとして、スポーツ選手やアスリートのサポートに携わることも可能です。

スポーツ選手やアスリートがケガから復帰するためのリハビリテーション・疲労回復・コンディション調整などにも鍼灸が用いられるようになりました。

スポーツトレーナーとして働く人の中には、鍼灸師や柔道整復師の資格を持つ人も少なくありません。

鍼灸では薬の内服をしないため、「ドーピング」の心配がないという点も、スポーツの分野で鍼灸治療が好まれている理由のひとつです。

ただし、競争率は高く、人数はそれほど多くありません。

介護施設で働く鍼灸師

副作用のない鍼灸治療は、リハビリが必要な高齢者の身体にとって負担が少ないものです。

そのため、近年は高齢者向け介護施設では鍼灸治療が行える人の需要が高まり、介護施設で働いたりケアマネージャーとして働いたりする鍼灸師も増加しています。

美容サロンで働く鍼灸師

最近では美容鍼灸として、女性向けのエステサロンやリラクゼーションサロンなどでも針灸師のニーズが増加しています。

鍼灸は、顔のたるみやしわ・むくみ・肌荒れを改善させたり、ホルモンバランスを整えたりすることができます。

こうした効果が注目され、近年は女性向けのエステサロンなどで、鍼灸を使ったメニューが取り入れる機会が増え、女性の鍼灸師も増加しています。

美容鍼灸や美容鍼は近年注目を集める分野のひとつであり、美容鍼灸を専門的に学べる養成学校も増加しています。

小児専門で働く鍼灸師

鍼灸には「小児鍼」という子ども向けの施術方法があります。

子どもが抱える以下のようなさまざまな症状に対し、はり治療を行うことで改善に導く専門の鍼灸師もいます。

小児鍼で改善する子どもの症状一例
  • 夜泣き
  • アトピー
  • 小児ぜんそく
  • 虚弱体質

一般的には、生後1ヵ月くらいから6歳くらいの子どもを対象とし、子どもの年齢や症状に合った施術を行います。

鍼灸師の仕事の流れ

鍼灸師は、患者が来るとまず「脈診」と「望診」を行います。

一般的に脈拍を調べるために行われる脈診とは違い、鍼灸師の脈診とは手首の脈を診て、身体のバランスや流れを診察します。

望診とは、視診ともよばれ、患者の顔色や表情、肌や舌や目の状態を見て、総合的に状態を判断します。

その後、患者から症状や不調を聞き出し、それぞれに合った適切な治療を行います。

鍼灸師と関連した職業

鍼灸師と柔道整復師の違い

鍼灸師はツボを刺激して症状を改善するのに対し、柔道整復師は骨や関節にアプローチして症状を改善します。

柔道整復師はじん帯や筋肉などの症状に特化しているのが特徴で、鍼灸師のように道具を使わずに手技のみで施術を行います。

柔道整復師の仕事

鍼灸師は副業・在宅でも働ける?

副業としての鍼灸師

鍼灸師の副業は可能

鍼灸師は、その仕事を専業としてやっている人ほとんどですが、副業で働いている人もいます。

求人を探すと、派遣など希望の時間帯のみ働くことのできるものや、アルバイト・パート等で昼間帯・夜間帯だけ働くことができるものもあるため、資格さえ持っていれば副業として働くことは比較的容易です。

一度は鍼灸師の資格を取得し道を志したものの一般企業に就職した人が、副業として休日や夜間に鍼灸師として働くこともできます。

副業でも資格は必須

たとえ副業であれ、患者さんに対して鍼灸治療を施すのであれば、はり師・きゅう師の国家資格が必要です。

つまり、3年や4年程度の時間をかけて大学や専門学校などの鍼灸師養成施設で学び、国家試験に合格して、鍼灸師として登録しなくてはなりません。

鍼灸師の場合、副業といっても誰もが簡単にできるものではないという点には注意が必要です。

いくつもの治療法を組み合わせて治療する

鍼灸師と同様の「治療家」といわれる職業に「柔道整復師」や「あん摩マッサージ師」などがあります。

鍼灸治療の知識や技術を持っている人が、普段は鍼灸師としてではなく整体やマッサージの仕事をメインにしながら、鍼灸治療も行っている例は珍しくありません。

鍼灸師は独立開業している人も多いですが、実態として、鍼灸の施術のみで治療院を運営していくのは難しいといわれています。

しかし、鍼灸と他の手技を組み合わせることで、より患者さんの幅広いニーズに対応することができ、提供できる治療の幅も広がります。

こうした場合、鍼灸師の仕事は副業と捉えている人もいるようです。

鍼灸師の訪問治療

近年、ニーズが高まっているのが鍼灸の訪問治療サービスです。

たとえば寝たきりの高齢者や、ケガをしてリハビリが必要な人などの自宅へ訪問し、その場で鍼灸治療を施します。

高齢者施設へ定期的に出向き、そこで鍼灸治療を行うケースもあるようです。

訪問治療サービスであれば、治療院を構える必要がなく、自分の都合のよいときに依頼をうけることができるため、本業としてまったく異なる仕事をしながらも、空いた時間を使って訪問鍼灸治療を行うことも可能です。

鍼灸師の国家資格を持ち、確かな知識や技術を備えていれば、このような働き方も可能になります。

鍼灸師の副業

治療院で正社員として勤務したり、スポーツトレーナーとして鍼灸師の資格を持っている人が、副業として別な治療院で働いたり、派遣で訪問治療を行ったりすることも珍しいことではありません。

鍼灸師は一般的に給料が低めであることから、少しでも資格を生かして働きたいと空いた時間に副業をする人もいるようです。

また、派遣や訪問鍼灸師として働き、鍼灸の知識や技術をより身につけたい、独立などのキャリアアップのために経験を積みたいと職場を掛け持ちしたり、副業をしたりする人もいます。

鍼灸師とあん摩マッサージ指圧師との違い

あん摩マッサージ指圧師とは、一般的にマッサージ師とよばれる職業のことです。

マッサージや指圧などの手技を使用して、筋肉を刺激したり揉みほぐしたりする施術を行います。

あん摩マッサージ指圧師の仕事

鍼灸師の仕事内容のまとめ

鍼灸師の仕事は、身体に鍼(はり)や灸(きゅう)を用いた刺激を与えることで、さまざまな疾病の治療や健康増進を促すことのできる医療技術である「鍼灸」を行うことです。

鍼灸を含む東洋医学の大きな特徴は、病気に対して薬を服用したり、外科的な処置をしたりする「現代医学(西洋医学)」とは異なり、人間がもともと備えている自然治癒力を高め、症状を改善させようという考え方です。

原因ははっきりしないが「何となく身体がだるい」といった症状や、慢性的な生活習慣病など、現代医学ではなかなか解決できないものに対しても効果があると考えられています。