司法書士の年収・給料の現実は? 「低い」といわれる理由や独立後の収入も解説

司法書士は司法書士事務所などの勤務する場合と、独立する場合があり、それぞれ平均的な給料は異なります。

勤務時では給料は一般的な収入にとどまりますが、独立すれば、実力次第で大きく収入をアップさせられる可能性があります。

この記事では、司法書士の給料・年収について解説します。

司法書士の平均年収・給料の統計データ

司法書士は、登記や供託に関する複数の独占業務をもつ難関国家資格であり、多くの人が独立開業して働きます。

しかし、実務経験ゼロのまま、資格取得後にいきなり独立することは非常に困難のため、まずは司法書士事務所などに勤めなくてはなりません。

このため、司法書士の給料については、勤務する場合と独立する場合の2パターンに分け、別々に考えることが必要です。

司法書士に関する求人サイトなどのデータをみると、年収は300~400万円台に集中していることが多いですが、それらの大半は「雇われ司法書士」としての給料であり、年齢構成については、かなり若い世代に偏っているといえます。

このため、独立者も含め、全年齢でみた場合の給料水準はもう少し高く、およそ500万円~600万円前後が実態であると推察されます。

司法書士の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

司法書士の平均年収_2022

厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、司法書士の平均年収は、47.2歳で971万円ほどとなっています。

・平均年齢:47.2歳
・勤続年数:11年
・労働時間/月:155時間/月
・超過労働:5時間/月
・月額給与:565,500円
・年間賞与:2,927,900円
・平均年収:9,713,900円

出典:厚生労働省「令和4年度 賃金構造基本統計調査」
司法書士の平均年収の推移_r4

※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

司法書士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

一般的な司法書士の年収を550万円、月給をボーナスの2ヵ月分とすると、平均月収は約39万円、ボーナスは約78万円という計算になります。

そこから年金や健康保険などの社会保険料、所得税などの税金を差し引くと、独身者の場合、月々の手取りは29万円~31万円、ボーナスの手取りは約60万円です。

ただ、司法書士のボーナス事情は事務所ごとに大きく異なり、月給1ヵ月分程度しか支給されないところもあれば、業績好調時には4ヵ月ほど支給されるところもあります。

ボーナスが年収に与える影響は甚大ですので、就職先の賞与体系については、よく確認しておく必要があるでしょう。

司法書士の初任給はどのくらい?

司法書士の初任給は勤務先の規模や地域によって差があり、大手事務所や、東京や大阪などの大都市圏の事務所では月収25万円~30万円前後、それ以外の事務所では20万円前後が相場です。

司法書士への依頼は知名度の高い事務所や、人口が集中しているエリアほど多くなりますので、それらの職場では1年目から仕事が忙しくなるぶん、給料水準も高いようです。

ただし、その後の昇給ペースは実力次第であり、地方であっても都市圏の司法書士の給料を上回るケースもよくあります。

キャリアのごく初期を除けば、司法書士にとっての初任給は、そこまで重要な要素ではないでしょう。

司法書士の勤務先の規模別の年収(令和4年度)

10人〜99人の事業所に勤める司法書士の年収は918万円、100〜999人規模は1,068万円、1000人以上規模は808万円、10人以上規模平均は971万円となっています。

司法書士の年収(規模別)_r4

上記グラフの基タイトルは「法務従事者」で弁護士弁理士など他職業を含むデータです。

賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

司法書士の勤務先の年齢別の年収(令和4年度)

司法書士の年収を年齢別に見ると、年齢の上昇にしたがって、年収も上がる傾向にあります。最も年収が高い世代は、50~54歳の1,196万円です。

全年代の平均年収は971万円となっています。

司法書士の年収(年齢別)_r4

上記グラフの基タイトルは「法務従事者」で弁護士、弁理士など他職業を含むデータです。

 

司法書士の福利厚生の特徴は?

司法書士事務所は、その大半が小規模であり、大企業のようにさまざまな福利厚生が整備されているケースは、きわめてまれです。

個人経営の事務所のなかには、いまだに社会保険に加入していないところも一部残っているようです。

また、独立開業してフリーランスになると基本的にすべて自己責任となり、たとえば病気や怪我で働けなくなればその期間の収入はゼロです。

司法書士に限った話ではありませんが、自営業者は組織からの福利厚生の恩恵がなく、さまざまなリスクに自分で備えなければならないという点が大きなデメリットです。

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司法書士の給料・年収の特徴

年功序列で昇給していくことは少ない

司法書士事務所では、年功序列で昇給していく給与体系が取られているケースはかなりまれです。

その理由は複数ありますが、司法書士は基本的に実力主義の世界であり、年齢や勤続年数があまり重視されない事情が大きいといえます。

また、数年程度で独立したり、他事務所に移籍していく人がほとんどであることも、一般企業のような昇給システムが採用されない一因といえます。

数多くの仕事をこなしたぶんだけ給料に反映されますので、平等といえば平等ですが、実務に慣れるまではかなり厳しい給与水準が続く点には覚悟が必要です。

とくに転職者については、経験がなければ30歳や40歳でも新卒の初任給と同じですので、経済的には相当苦しくなる可能性が高いでしょう。

人によって年収には大きな違いがある

日本司法書士会連合会が取りまとめた令和3年(2021)年度司法書士実態調査集計結果(司法書士白書2021年度版)によると、によれば、司法書士の年収分布はかなりいびつになっています。

独立開業している司法書士の令和元年の税引前収入(売上)で一番多かったのは、「1,000~4,999万円」です。これは回答者全体の30.8%にのぼります。

次いで多いのが「200~499万円」で全体の11.8%、3番目が「500~749万円」で全体の8.76%を占めています。

一方、勤務司法書士の令和元年の年収で一番多かったのは「300~400万円未満」で、全体の21.0%、次いで多いのが「400~500万円未満」で18.3%、「500~600万円未満」で15.1%です。

年収300~600万円未満が全体の54.3%を占めるため、平均年収としては400万円程度だと推計されます。

つまり、司法書士は「平均的な収入を稼いでいる大勢の勤務司法書士」と、「大きく成功している一部の開業司法書士」というふたつの集団が存在していることになります。

後者の集団のなかには年収2000万円や3000万円という大金を稼いでいる人もおり、そうしたごく一部の成功例が、世間一般の「司法書士は高給」というイメージをつくっているのかもしれません。

ただ一握りとはいえ、大きく成功している司法書士が存在しているのも事実ですので、イメージ通りの給料が稼げるかどうかは、個人のがんばり次第といえるでしょう。

司法書士白書 2021年版

専門性の高い人は高収入

司法書士の主要業務としては、不動産登記業務や商業登記業務が挙げられます。

しかし、これらの仕事はいわば「事務代行」であり、一通りの手順さえ覚えてしまえばそれほど専門的知識は必要ない反面、得られる報酬単価は高くなく、1件あたり数万円が相場です。

登記業務で稼ごうと思うと数をこなす必要がありますが、近年は人口減少や中小企業数の減少などを背景として、登記業務の需要は縮小傾向にあります。

さらに、現在ではweb上に登記申請書類のひな形が掲載されていますし、法務局のスタッフも書き方をサポートしてくれるため、自分で手続きする人が増えている事情もあります。

その一方相続案件や成年後見の受任といった業務は、専門的な知識やスキルが求められるぶん、登記業務よりも高単価であり、また昨今は高齢化の影響により需要も拡大傾向です。

こうしたことから、登記業務中心の司法書士が稼げなくなっているのに対し、専門性の高い司法書士ほど、高収入を得やすくなっています。

司法書士として上位の収入を狙うなら、資格取得後もスキルを磨き続ける努力が必要といえるでしょう。

司法書士のの勤務先別の給料・年収

司法書士事務所で働く司法書士の給料

司法書士事務所勤務の司法書士の年収は、300万円~400万円くらいが相場であり、若手が中心であることもあって低い水準といえます。

ただ、キャリアを積んで一人前になった後も、事務所に残り続ける人も一部おり、その場合の年収は500万円~600万円前後が相場です。

一般企業で働く司法書士の給料

数としては少ないものの、司法書士としての法律知識を生かして、一般企業の法務部などに所属し、契約書の作成やリーガルチェック・コンプライアンスチェックなどを手掛ける人もいます。

その場合の年収は勤務先次第ですが、およそ400万円~800万円前後が相場であり、資格手当が支給されるぶん、ほかの社員よりも高くなるケースが一般的です。

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独立・開業して働く司法書士の給料

自分の事務所を経営する場合、実力次第で収入事情は千差万別ですが、独立型司法書士の平均年収は約600万円といわれています。

しかし、上述したように一部の超高所得者が全体の平均値を押し上げている事情もあり、例外的な数値を除いた中央値の年収は500万円台になると想定されます

独立すると自分で営業をし仕事を獲得する必要があるため、本人の力量によって大きな差が出てきます。

独立・開業して好収入を得るには、司法書士の専門知識はもちろん、集客に関する知識や、営業力も身につけなくてはなりません。

一方で、自分の努力次第では、大きく年収をアップさせるチャンスが広がっている働き方だといえます。

ほかの士業との年収の違いは?

士業とは、司法書士のように高度な専門性を持つ資格職業で「〜士」という名前がついている職業のことです。

令和4年度の厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、士業の年収は以下のようになっています。

おもな士業の年収

司法書士の平均年収は、47.2歳で971万円ほどとなっていることから、公認会計士や税理士、行政書士と比べるとかなり高いといえるでしょう。

一方で、弁護士の平均年収とは、さほど変わらない傾向にあります。

しかし、これらの資格は実力によって大きく年収が変わり、さらに独立開業が可能であるため、一概には比較できないところもあります。

司法書士の年収は男性・女性で違いはある?

司法書士の場合、男性でも女性でも仕事に違いはなく、男女で年収の違いはありません。

基本的に実力主義であり、性別によって年収に大きな違いが出ることがないのは、司法書士の魅力の一つです。

離婚や借金といったデリケートな問題を、男性の司法書士には話しづらいという女性相談者も少なくありません。

相談先に女性の司法書士がいることは大きな強みとなり、同性だからこそできるコミュニケーションは、営業に生かすことももちろん可能です。

ただし、女性の場合、家庭と両立するために残業を減らしたり、無理のないよう仕事量をセーブしたりする人も多いため、年収が低くなることはあります。

司法書士の年収が低いともいわれる理由は?

勤務司法書士の年収が低め

司法書士は、資格を得たからといってすぐに高収入が得られるわけではありません。

他の職種と同様に、まずはどこかの事務所で勤務し、キャリアアップしていくなかで年収がアップしていきます。

企業に勤務する司法書士の場合、平均年収は250万~400万円ほどがボリュームゾーンです。

一見低い金額に見えますが、司法書士として経験を積み、さまざまな仕事をこなせるようになるなかで、給料も徐々に上がっていきます。

また、大型事務所や有名事務所に転職したり、独立開業したりすることで、年収を大きく伸ばすこともできます。

難関資格で合格するまでに時間がかかる

司法書士の試験は超難関といわれ、資格取得までに非常に時間のかかる資格です。

合格までにはテキストや参考資料、予備校代など多額の費用をかけている人も少なくありません。

そのため司法書士試験に合格後、すぐにはコストを回収できないのではないかと考える人も多いのです。

一方で、司法書士の専門性を生かして働くことができれば、高収入を目指すことも可能です。

司法書士は年収1,000万を目指せる?2,000万も可能?

令和3年(2021)年度司法書士実態調査集計結果(司法書士白書2021年度版)によると、独立開業している司法書士の令和元年の税引前収入(売上)で一番多かったのは、「1,000~4,999万円」でした(回答者全体の30.8%)。

次いで多いのが「200~499万円」で11.8%、3番目が「500~749万円」で8.76%でした。

最も多い1,000~4,999万円は幅が広いですが、5,000万円以上も含めると全体の38.9%が1,000万円以上の年収があるということがわかります。

「司法書士は難関資格の割に年収が低い」といわれることもありますが、実際には3分の1以上の開業司法書士は年収1,000万円を超えており、高収入を得ている人は非常に多いといえます。

一方、勤務司法書士で年収1000万円以上は2.9%しかおらず、開業司法書士よりもはるかに少ないことがわかります。

しかし勤務司法書士でも、キャリアを積むことで年収1000万円に達するケースがあるのも事実です。

とくに「認定司法書士」となったり、「行政書士」「税理士」などのダブルライセンスを得て働く人は、高収入を得られていることが多いです。

司法書士が収入を上げるためには?

独立開業し他の事務所と差別化する

司法書士が収入を上げるためには、独立開業することが欠かせません。

ただし、独立開業しただけで年収を大幅に上げることは難しく、他の事務所と差別化を図ることが必要になります。

高齢化が進むなかで、相続や成年後見に関する案件を専門的に行ったり、外国人の移住に対応し帰化に関する案件を請け負うなど、今後需要が増えるであろう分野を積極的に開拓することは、ビジネスチャンスにつながります。

司法書士としてのキャリアを積みながら、得意な分野や専門性に特化し、アプローチしていくことが重要になっていくでしょう。

ダブルライセンスで仕事をする

専門性を高める方法として、法務省が実施する研修を受けて「認定司法書士」となり、弁護士のように訴訟案件を手掛けるという方法が考えられます。

あるいは、行政書士や税理士、宅地建物取引士など、司法書士と相性のよいほかの国家資格を取得し、ダブルライセンス・トリプルライセンスで働くという方法も非常に有効です。

関連資格を取得することで、対応できる業務の幅を広げ、年収をアップさせることができますし、司法書士だけでなくほかの資格でもキャリアを積んでいくことができます。

司法書士の給料・年収のまとめ

司法書士の年収は、本人の実力や働き方に左右されることが多いものの、高収入を目指すことが可能な職業です。

ただし、そのためにはまず司法書士という難関資格を突破し、事務所に勤務するなどして経験を積んでいくことが必要です。

実力次第で年収が決まるため、年齢が高ければ給料も高いとは限らず、若いうちから高い年収を期待できるところも大きな魅力といえるでしょう。

独立開業したり、ダブルライセンス・トリプルライセンスで働く場合は、年収1000万円を超えることも珍しくありません。

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