市議会議員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「市議会議員」とは

市議会議員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

市民の代表として議会に出席し、議案審議や議決を実行。市民の声を市政に反映させる。

市議会議員(市議)とは、市民の声を市政に取り入れるために活動する人のことです。

議会会期中には、議案や市の行政運営が市民の立場から見て適切かどうかをチェックし、疑問点や問題点などがあれば厳しく追及します。

議会が閉会している時期には、議会の結果を市民に報告し、行政や市民生活の状況について調査をし、次の議会に向けた準備を整えます。

市議会議員は「満25歳以上の日本国民であること」と「3カ月以上、立候補する市内に住んでいること」の条件を満たせば、目指すことが可能です。

最近では、従来のように自治会やPTAなどで長年活躍してきた人ばかりでなく、議員インターンシップや政治塾などで政治を学んだ20代や30代市議も誕生しています。

市議の収入は財源豊かな市では多く、人口の少ない市では少なくなりがちで、暮らしを支えるために他の仕事と兼務する人もいます。

市議の定数は削減傾向にありますが、地方分権が進むなか、市議に求められることは増えており、地域社会を活性化させるための政策立案力のある人材に注目が集まっています。

「市議会議員」の仕事紹介

市議会議員の仕事内容

市民の声を市政に取り入れるために活動する

市議会議員(市議)とは、市民の声を市政に取り入れるために活動する人のことです。

市議会議員の仕事は「議会会期中」と「議会会期外」に分けられます。

議会の会期中は、議会に出席して、市民目線で議案の提出や審議、議決を行ったり、質疑を通じて行政が正しく行われているかをチェックしたりします。

議会が閉会すると、議会の結果や自らの市政についての考えを集会やブログ、SNSなどで市民に向けて発信します。

また、タウンミーティングなどで市民の要望を聞いたり、市役所で行政運営についてヒアリングしたり、ほかの都市に視察に出かけたりなどして、市政や市民生活の調査、政策の研究をすることも重要な業務の一部です。

若手市議に求められる役割

最近では、熱意のある20代や30代の若手市議の活躍ぶりに対して注目度が高まっています。

若手市議に求められているのは、政治に無関心といわれる若い世代の声を集め、市政に反映させることです。

同世代の若者をカフェなどに集めてミーティングを開催し、そこで集めた意見や要望を議会に持ち込むなど、おのおのが工夫を凝らした活動を行っています。

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市議会議員になるには

まずは市議会議員選挙に立候補する

市議会議員になるには、市議会議員選挙に立候補し、当選することが第一歩です。

市議会議員選挙への立候補条件は「満25歳以上の日本国民」「3カ月以上、立候補する市内に住んでいること」の2つです。

さまざまなバックグラウンドの人が立候補しますが、自治会やPTAなどで地域社会のために長年尽力し、幅広い人脈を築いてから出馬するケースが一般的です。

このため、市議全体に占める60代以上の市議の割合は、自治体にもよりますが3~4割ほどで、30代以下の若手市議は1~2割ほどと少数になっています。

若手市議が当選を目指すために

若手で市議になるケースでよくあるのは、もともと自営業者だった人が、地元の青年会などの推薦を受けて出馬することです。

ただし、一般の若者でも議員インターンシップや、政党・民間主催の政治塾などへの参加、国会議員秘書などを経験し、リアルな政治を学んだ人が、やる気と可能性を見込まれて当選するケースが出てきています。

若手候補者は、長年地域で人脈を広げ、信頼を積み上げてきた中年以上の候補者に比べて資金不足やコネ不足といわれることがあります。

しかし、若さを生かした工夫や知恵、熱意などが評価されると、一気に支援のネットワークを広げて当選できる可能性が高まります。

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市議会議員の学校・学費

大学などで地方政治に関する学びを深めておくと将来役立つ

市議会議員選挙に立候補するうえで、学歴は一切問われません。

このため、現役市議の最終学歴も、中卒から大学院卒までさまざまです。

しかし、最近では市議になってから、あらためて大学院に通って政策について専門的に学ぶ人が増えているといわれます。

昨今の地方政治の現場では、ますます高いレベルの政策提案力が求められるようになっているため、先に大学や大学院で地方政治について学んでおけば、将来的に市議になってからもおおいに役立つでしょう。

市議志望者の進学先として考えられるのは、大学や大学院の政策創造学部、政治経済学部、地方政治行政学研究科などです。

現役地方議員を講師に招いたり、議員事務所でインターンシップを行う大学もあり、在学中に将来に役立つ貴重な経験を多数できるのもメリットといえます。

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市議会議員の資格・試験の難易度

市議会議員になるための資格は難しいものではない

市議会議員の資格とは「被選挙権を持っていること」です。

被選挙権とは、選挙に出て国会議員や、市議や市長など地方公共団体の議員や長に就くことのできる権利のことで、以下の2つを満たす人に与えられます。

(1)日本国民で満25歳以上の者
(2)連続して3カ月以上、市内に住所のある者

国家資格などは必要ないため、一部の職業に比べて、市議を目指すこと自体はそこまでハードルが高いわけではありません。

市議への道は広く一般に開かれており、熱意があれば、若手でも市議として活躍することが可能です。

なお、市議の任期満了や死亡、また被選挙権を失ったり、「兼業禁止の規定」に該当したりするなど、特定の条件に当てはまる場合には、市議の資格を失います。

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市議会議員の給料・年収

収入は市の財政状況によってよって大きな差が出る

「市議会議員=高収入」のイメージがもたれがちですが、実際は、すべての市議が高収入というわけではありません。

市議の給料の財源は税金であるため、実際に市議が受け取る給料は、各市の財政状況によって大きな違いが出るからです。

たとえば、月給93万円、年収は約1500万円という政令指定市の市議が存在する一方で、月給18万円、年収は約460万円で人口1万人未満の市のために奔走する市議もいます。

人口10万人未満の市では、市議の給料だけで生活するのは厳しいという声が聞かれます。

このような場合、市議は兼業で別の仕事を手がけたり、共稼ぎをしたりなどして生計を立てながら、市議の務めを果たすケースが目立ちます。

政務活動費の不足分を自己負担している市議も

市議ならではの手当が「政務活動費」です。

これは研修参加費や、調査に出かける際の交通費・宿泊し、資料購入費などに使えるものであり、こちらも市によって支給額が異なります。

政務活動費が少ない場合、市議自らが補わなくてはならないため、生活は余計に厳しくなってくるでしょう。

こうしたこともあって、つつましい生活を送っている市議は決して少なくありません。

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市議会議員の現状と将来性・今後の見通し

議員定数の削減が進むなか、高い政策立案力が求められる

市の厳しい財政を背景にした人件費カットなどの目的で、市議の定数は削減傾向にあります。

一方、地方分権が進み、各市の市議にはこれまで以上に高い政策提案力が必要になってきています。

とくに「人口減少による地域社会の衰退にどう取り組むか」を明確に示せる市議が求められており、今後は、少数精鋭の市議の時代になっていくと考えられます。

市議は、日々の調査・研究に力を入れる一方で、政策立案力を高めるための努力が欠かせません。

同時に、若者を中心とした政治に対する関心が薄い層に注目してもらうこと、そして有権者の支持を少しでも多く得られるよう、自らの考えや人となりを地域イベントやタウンミーティング、ブログなどを通じてわかりやすく伝える行動力が必要です。

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市議会議員の1日

早朝から深夜まで多様なスケジュールをこなす

市議会議員は、本会議の準備、市政調査、後援会まわり、地元行事への参加など、多種多様な業務をこなす必要があり、非常に多忙です。

業務終了後も、顔と名前を売るために懇親会に参加するなど、朝から夜まで、1日のほとんどを仕事に費やします。

<閉会中の市議会議員の1日>
6:00 起床、準備
7:00 街頭演説、ビラ配り
9:00 事務所出勤、スタッフ打ち合わせ
10:00 来客対応
12:00 昼食休憩
13:00 地域行事出席
16:00 デスクワーク、プレゼン資料作成
18:00 懇親会出席

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市議会議員のやりがい、楽しさ

地域社会をよりよいものにしていく実感が得られる

市議会議員に市民から寄せられる悩みや相談事は、何年もかけて取り組むような国家レベルの課題と異なり、市議の尽力で比較的早期に解決できるものも多いです。

このため、市議の活躍によって、その地域の暮らしや生活をよりよいものに変えていける可能性は存分にあります。

たとえば、就学前の子どもの医療費を無料化したり、交差点に信号機を置いたり、地域防災マニュアルをつくって各家庭に配布したりと、ちょっとした改善で、地域の人が大きく喜んでくれる姿を見ることもできます。

国会議員では味わえない、地域密着型の市議だからこそ、得られるやりがいが多数あります。

また、市民との触れ合いを通して、自分が頼りにされている、信頼されている実感を味わったり、自らの政策立案力や実行力で地域社会の未来をつくっていけることも魅力です。

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市議会議員のつらいこと、大変なこと

資金面で厳しく、不安定な身分で生活に余裕がない場合も

資金面で厳しく、不安定な身分で生活に余裕がない場合も

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市議会議員に向いている人・適性

地域を愛し、問題解決のために考え、行動できる人

市議会議員に向いているのは、地域の魅力を存分に理解し、地域をもっとよくしていきたいという強い思いをもてる人です。

地域に対する愛着が強い人は、困難にもくじけず、懸命に力を尽くすことができるでしょう。

また、市議は市民からさまざまな意見や要望を拾い上げ、その解決のために動きます。

問題解決をすることを苦にせず、しっかりと頭を悩ませながら最善策を考えていけるタイプの人は、市議の適性があるといえます。

しかし、ただ考えているだけ、悩んでいるだけではダメで、どれだけ政策を行動に移していけるかも市議としての重要なスキルのひとつです。

信じた道を突き進む熱意や行動力、アグレッシブな姿勢なども求められる仕事です。

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市議会議員志望動機・目指すきっかけ

市民に寄り添い、地域の暮らしをよりよく変えていきたい思い

市議会議員になる人の経歴はさまざまであるため、志望動機も人によって多様です。

ただし、もともと地方政治に関する関心が強く、「学生時代に学んできた政策の知識を生かしたい」」「地域の暮らしをよりよいものにしたい」などの思いから、この職を志す人が多いようです。

現状の地方政治のあり方に疑問を抱いていたり、「もっとできることがあるはずだ!」など、強い危機意識をもっている人も少なくありません。

政治家のなかでも、市議はとくに市民との距離感が近いため、その点に魅力を感じて志望する人も多いです。

市議会議員の雇用形態・働き方

特別職の地方公務員として活動する

市議会議員になった人は「特別職の地方公務員」の身分となります。

公務員の特別職とは、選挙で選ばれた者や、あるいは政治的な使命を帯びている役職に任命されている者などを指します。

役所などで勤務する一般職の地方公務員とは異なり、地方公務員法が適用されないことが特徴です。

このため、副業も可能となっており、実際に別の仕事と兼業で市議を務めている人も多くいます。

なお、市議会議員として経験を積み、支援者を増やしていった人のなかには、次のキャリアとして「市長」を目指す人もいます。

市議会議員の勤務時間・休日・生活

会期中・会期外を問わず多忙になりがち

市議会議員が出席を義務づけられている市議会の平均会期日数は、1年間当たり約87日です。

議会のうち、定例会は一般に、3月、6月、9月、12月の年4回開催され、臨時会は必要に応じて開かれます。

議会の開会・閉会時間は議会ごとに多少異なりますが、午前9時〜10時くらいから始まり、午後5時くらいまでには終わるのが一般的です。

ただし、会期中でも空いた時間には議員有志との研修会へ出席したり、夜には近隣の市の市議たちとの会合に参加したり、有権者対象の各種説明会を開いたりなど、忙しくしている人が多いです。

会期外は基本的に自由に動けますが、昼夜を問わず、地元自治会や市民からの要望の聞き取り、要望に答えての視察、議会活動について市民を対象にした報告会の開催などがあり、決してのんびり生活できるわけではありません。

また、4年ごとに開かれる市議会議員選挙の時期は、遊説や、辻立ち、演説会などの選挙活動などを日々おこない、激務となります。

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市議会議員の選挙費用・資金・供託金

選挙費用は工夫次第で抑えられるが、供託金は必須

市議会議員になるためには、まず市議会議員選挙に立候補しなくてはなりません。

立候補準備や選挙運動にかかる費用は、家屋費、人件費、通信費、交通費、広告費などさまざまなものがあり、掛けようと思えばいくらでもかけられます。

ただし、一般の人は用意できる資金に限界があるため、若手市議の多くは100万円程度で済ませている人が多いようです。

一定の条件をクリアすれば、一部の費用は市が負担する「公費負担」の対象となりますが、それ以外の部分は手づくりをしたり、知人に手伝ってもらったりしながら、できるだけ費用を抑えています。

また、選挙に出馬する際には「供託金」と呼ばれるお金も必要です。

これは、法務局に預けなければならないお金のことをいい、市議選の場合、政令指定市は50万円、それ以外の市は30万円と定められています。

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市議会議員の任期は何年?

任期は4年で、その後は再出馬する人も

市議会議員には「4年」という任期が定められています。

任期満了となった後に、引き続き市議を続けたい場合には、再び市議会議員選挙に出馬して選挙を戦わなくてはなりません。

在職中に信頼を築いた市議であれば、また当選できる可能性はありますが、確実なものではなく、落選するケースも多々あります。

ちなみに、市議には退職金がないため、任期満了して次の仕事が見つからなければ無職、無収入になってしまうリスクがあります。

落選した元市議の場合、どうしてもまた市議に挑戦したい思いが捨てきれず、次の選挙までの4年間はアルバイトやパートをしながら選挙準備を行う人もいます。

市議は決して安泰とはいえない職であり、金銭的には厳しい生活を送っている人も少なくありません。

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