司法書士になるには
司法書士になるには、司法書士試験への合格が必要です。
誰でも受験可能な試験ではありますが、司法書士試験は司法試験に次ぐ難関とされており、合格までに数回の受験をする人もいます。
このほか、裁判所事務官や検察事務官として10年以上のキャリアを積み、法務大臣からの認定を得ることで司法書士になる方法もありますが、この道も簡単なものではありません。
この記事では、司法書士のなりかたについてについて詳しく解説します。
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司法書士になるには
資格を取得するまで
司法書士は国家資格であり、資格を得るには、基本的に法務省の主宰する司法書士試験を受けて合格することが必要です。
試験に受験資格はなく、誰でも受験可能ですが、司法書士試験は司法試験に次ぐ難関とされており、合格までに数回の受験を要する人も多いです。
試験は年1回、7月頃の筆記試験と10月頃の口述試験に分けて実施され、双方を突破すると合格となります。
このほか、裁判所事務官や検察事務官として10年以上のキャリアを積み、法務大臣からの認定を得ることで司法書士になる方法もあります。
こちらの場合、資格取得の確実性はかなり高いものの、10年という長い期間が必要になる点が大きなネックです。
資格を取得してから
いずれかの方法で資格を取得した後は、司法書士会が行っている「新人研修」を受ける必要があります。
3ヵ月程度の研修期間を終え、修了考査に合格すると、全国にある司法書士会のいずれかに登録することで、司法書士としての業務を開始できます。
この新人研修は、宿泊代などを含めておよそ20万円、司法書士会への登録には登録手数料などが約10万円かかりますので、試験合格後に合計30万円ほどの費用が必要な計算になります。
なお、なんらかの不祥事や業務違反を起こすなどして、司法書士会を除名処分になると、たとえ資格を保有していたとしても司法書士業務を行うことはできません。
認定司法書士になるには
「100時間研修」と呼ばれる特別研修を受け、試験を受けて法務大臣の認定を受けると、「認定司法書士」になれます。
認定司法書士は、目的価額が140万円以下である簡易裁判所での訴訟案件については、弁護士と同じように依頼者の代理人となって、法廷に立って争ったり和解交渉を行うことが可能です。
取り扱える業務範囲を拡げ、弁護士よりも気軽に相談できる「身近な街の法律家」になるために、認定司法書士を目指す人は多数います。
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司法書士の資格・難易度
司法書士は、法律に関係する資格のなかでも非常に取得難易度が高いことで知られており、その試験の合格率は、毎年3%~4%前後という狭き門です。
独学で合格にたどり着くことは困難であるため、民間の資格専門学校に通うか、社会人としてすでに働いている人は通信講座などを受講して勉強することが一般的です。
必要な勉強時間は、法律の素養がある人で1400時間、初学者は2000時間ほどがひとつの目安とされています。
集中して勉強だけに集中できるのか、仕事をしながら合間に勉強するのかといった事情にもよりますが、1~2年ほどの対策期間が必要になる難関試験です。
司法書士になるためにはどんな学校に行けばいい?(予備校・大学・専門学校)
司法書士試験には学歴や年齢などの受験要件はなく、誰でも試験を受けることが可能です。
このため、たとえばどんな種類の学校にも通わず、完全に独学のみで司法書士を目指すことも、制度上は可能といえます。
ただし、司法書士は数ある資格のなかでも非常に取得難易度が高いことで知られており、幅広い法律知識が問われます。
司法書士試験受験者は毎年2万人前後いますが、そのほとんどは大学で法律を勉強したり、皆の資格専門学校に通ったり、通信講座を受講したりして専門的な試験対策を講じています。
受験者の年齢層もかなり幅広く、それに伴って身分や環境・経済事情などもさまざまですので、多様なニーズに対応するため民間の資格学校や通信教育では数多くの講座が開講されています。
それらを利用して、自分の生活スタイルに最も適した学習方法を見出し、効率よく勉強を進めることが、司法書士試験合格への一番の近道です。
- 大学の法学部
- 民間の資格専門学校
- スクール・通信講座
大学
司法書士を目指してこれから大学に進学するなら、法学部が有利です。
司法書士試験は、民法・商法などの六法から、不動産登記法や商業登記法といった専門的法律まで、幅広い範囲から問題が出題されます。
法学部で法律についての基礎知識を学ぶとともに、法律解釈などの独特な思考方法を身につけることで、スムーズに司法書士試験対策を行えるでしょう。
ただ、司法書士試験は非常に難関であるため、大学の授業だけでは十分に対策できないと考える人も多く、大学が終わった後に予備校などに通う「ダブルスクール」で勉強に励む人も多数います。
また、学習面以外で大学に通うメリットとして、ゼミなどを通して先輩や指導教官・教授など、法曹界での人間関係が構築できる点が挙げられます。
就職情報を共有できたり、あるいは就職先を紹介してもらえたりするケースもあり、また司法書士として働きだしてからも、そのような「横のつながり」が業務に生きるシーンは少なくないでしょう。
専門学校
司法書士と同じ法曹資格である「弁護士」の場合、「ロースクール」と呼ばれる法科大学院が公的な専門学校という位置づけですが、司法書士にはその制度がありません。
このため、司法書士を目指して専門学校に入るなら、司法書士試験対策コースのある民間資格学校のいずれかが選択肢となります。
コースの種類はさまざまで、朝から晩までみっちりカリキュラムが組まれているものもあれば、大学生や社会人向けに、夜間および休日の時間帯をメインに授業が行われるものもあります。
一日中勉強するコースの場合、1年程度の期間で合格を目指すことも可能ですが、働いたりせず、勉強だけに打ち込むためには、生活面や経済面など家族や周囲の理解・サポートが必要かもしれません。
夜間・休日コースの場合、大学での授業や社会人としての仕事と受験対策を両立させられるメリットがありますが、その分必要となる勉強期間は長くなり、2年ほどがひとつの目安とされています。
スクール・通信講座
仕事を持っている社会人などの場合、たとえ夜間の時間帯であっても、定期的に専門学校に通学することはハードルが高いかもしれません。
もちろん書店で参考書などを買ってきて、独学で勉強するという手段もありますが、司法書士試験で問われる広大な範囲をカバーするには効率的に学習を進めることが重要です。
そのような場合は、通信教育で司法書士試験対策講座を受講する選択肢もあります。
通信教育では、仕事の合間や移動中など、ちょっとした空き時間を有効に利用して試験対策を進めることが可能ですし、また費用的にも専門学校などに通学する場合と比較するとかなり安く抑えられます。
ただし、どうしても勉強にかけられる時間が限られる分、必要となる期間は長くなりがちです。
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司法書士に向いている人
- 几帳面かつ慎重な性格の人
- 事務処理能力の優れた人
司法書士の手掛ける案件は、いずれも法的効力の強い重要な業務ばかりであり、ときに依頼者の人生を大きく左右することもあるため、決してミスは許されません。
さまざまな法律や複数の関係者が絡んだり、手続きが複雑になったりするケースもありますが、それらを一つひとつ入念にチェックし、不備なく遅滞なく確実に仕事をこなすことが求められます。
このため、司法書士には、几帳面かつ慎重な性格であり、事務処理能力の優れた人が向いているでしょう。
司法書士のキャリアプラン・キャリアパス
新たに資格を取得した司法書士は、司法書士事務所や法律事務所などに就職するケースが一般的ですが、企業の法務部などに勤めて、サラリーマンとして資格を生かすというキャリアプランも考えられます。
ある程度の実務経験を積んだ後は、独立開業して自分の事務所をもつ人も少なくありません。
ただ、近年は司法書士数が増加し続けていることから、他者といかに差別化を図るかが独立司法書士全体の課題となっています。
不動産関係・法人関係、あるいは成年後見制度や相続といった個人関係など、いずれかの分野について、キャリアを通じて独自の強みを磨き続ける努力が必要になっているといえるでしょう。
司法書士を目指せる年齢は?
司法書士試験に年齢制限はなく、何歳からでも資格取得を目指すことが可能です。
実際の合格者の年齢をみても、ここ数年の平均合格年齢は30代後半ですが、下は20代から上は60代まで幅広い年齢層の人が試験を突破し、新たに司法書士となっています。
とくに近年は、合格者全体の年齢層が上昇傾向にあり、社会人として一度就職した人などでも、資格取得を目指して勉強に励む人は大勢います。
完全に仕事を離れ、予備校などに通って勉強だけに集中するという方法もありますが、働きながらでも通信講座などを利用して学習することは十分可能です。
司法書士は高卒から目指せる?
司法書士試験は、学歴に関係なく、誰でも受験できます。
司法書士は取得を目指す人気資格であることから、民間の資格専門学校や通信教育などでも、司法書士試験対策のための専門コースが開設されています。
まったく法律知識のないゼロからのスタートでも、それらを利用して効率的に勉強を進めれば、試験に合格することは可能です。
ただ、試験の合格率はきわめて低く、たとえ大学の法学部などで法律を専門的に履修した人であっても、合格までに数度の受験を要するケースも多く見られます。
高卒から司法書士を目指す場合、その対策期間まで含めると、数年にわたる長い期間の努力が必要になる点には、あらかじめ留意しておくべきでしょう。
参考:司法書士登録者数の推移
司法書士の登録者数は、ほぼ一貫して増加をしています。令和3年時点における個人の登録者数は22,718人となっています。
司法書士の働き方の種類とその特徴
司法書士は、資格を生かしてさまざまな働き方が選択できます。正社員はもちろんのこと、独立や、アルバイト・パートなどで働くことも可能です。
この記事では、司法書士の働き方の種類とその特徴について解説します。
司法書士の雇用形態
- 被雇用者として働く
- 独立開業して事務所を経営する
司法書士の働き方としては、被雇用者として働くか、独立開業して事務所を経営するかという2種類に大別できます。
司法書士は難関試験を突破した有資格者だけが就ける専門職ということもあり被雇用者として働いている人の多くは正社員ですが、家庭の事情や個人の意向などから、派遣社員として期間を限定して働いたり、アルバイト・パートとして資格を生かしている人もいます。
司法書士は、有資格者数が限られている分だけ就職上は有利であり、多様な雇用形態を選択できます。
以下では、司法書士の働き方の種類とその特徴、待遇面などについて、それぞれの雇用形態を比較しながら紹介します。
司法書士の働き方
- 正社員
- 派遣
- アルバイト・パート
- 独立開業
- 副業・在宅
司法書士の正社員
正社員の特徴
正社員の募集は、司法書士有資格者、またはある程度の法律知識を備えた「司法書士補助者」としての採用が一般的です。
ただし、未経験者であっても、事務所によっては一般事務スタッフとして正規採用されるケースもあります。
正社員の業務内容は、個人のスキルレベルによって差があるものの、依頼者との面談から書類作成・裁判所や法務局への外訪など多岐にわたりますので、さまざまな経験を積めることが特徴です。
とくに将来的に独立を検討している人については、正社員として働く期間は、開業した後に必要な実務能力を身につけるための「修業期間」と捉えることもできるでしょう。
正社員の待遇
司法書士の給与は個人の実力に大きく影響されるため、正社員の年収は250万円~600万円とかなり開きがあります。
業務に慣れていない若手のうちはそこまで高給は望めませんが、経験を積んで多数の案件を同時進行でこなせるようになると、それに見合った収入が得られるでしょう。
資格未取得で、仕事が補助業務に限定されている間は、月収20万円前後であるケースが多く、年収は下限に近くなります。
ただ、実務を通して不動産登記や商業登記などの法律知識を身につけることが可能であり、司法書士試験に合格するために役立つ環境であることは間違いありません。
司法書士を目指すなら、たとえ経済的なメリットが薄くても、正社員として働く価値はあるでしょう。
司法書士の派遣社員
派遣社員の特徴
派遣社員の最大の特徴は、基本的に残業がなく、勤務時間が固定化されていることです。
育児や介護といった家庭の事情で、毎日決まった時間に帰宅することが必要である人や、資格取得のためにまとまった勉強時間を確保したい人などは、派遣社員という形態が最適となる可能性もあります。
ただ、正社員と比べると、限られた時間内で一定の成果を上げることが求められるため、即戦力となれる人材の採用が中心です。
派遣社員になるには、司法書士資格を有している、司法書士事務所での勤務経験がある・officeなどのPCスキルがある・金融関係の職歴があるなど、いずれかの条件をクリアしていることが必要です。
派遣社員の待遇
ある程度の実務経験がある人については、時給1,400円~1,800円前後と、比較高単価の求人が多いようです。
司法書士資格を取得していればより高くなり、時給2,000円の求人も見受けられます。
ただ、雇用期間については基本的に3ヵ月未満、それ以上は3ヵ月ごとの契約更新が必要で、一つの勤務先に留まれるのは最長でも3年程度であり、待遇的にあまり安定しているとはいえません。
業務内容も事務作業がメインであり、そこまで責任ある仕事に携われるわけではないため、人によってはやりがいを感じにくい可能性もあります。
アルバイト・パートの司法書士
正社員や派遣社員としてフルタイムで勤務するのが難しい場合、アルバイト・パートとして司法書士資格を生かすという選択肢もあります。
午前中だけ、午後だけ、あるいは1週間に数日だけといったように、各人の都合に合わせて働けるため、出産や育児などライフイベントの多い女性でも、限られた時間を有効利用しやすいでしょう。
待遇面については、実務未経験者は時給1,000円前後からスタートすることが一般的ですが、その後スキル次第で昇給することが可能です。
独立開業している司法書士
独立開業している司法書士は数多くいますが、そのスタイルはさまざまで、単独で司法書士事務所を経営している人もいれば、税理士や土地家屋調査士などと合同で「総合事務所」を経営している人もいます。
独立している場合の働き方としては、勤務時間や勤務場所などを自分で自由に決められることが特徴ですが、勤務している場合よりも一人で多数の業務をこなす必要に迫られるため、忙しくなりがちです。
また、収入面についても、近年は司法書士数の増加によって競合が激しくなっている影響もあり、そこまで高い給料を得られるわけではなく独立司法書士の大半は年収500万円前後であるようです。
勤めるよりも、リスクが増える分だけ高収入を得られるチャンスが大きいのは確かですが、司法書士としての実務スキルに加えて経営スキルや営業スキルが必要になるため、誰もが独立に向いているとはいえません。
副業・在宅の司法書士
司法書士は、依頼者と面談したり法務局や裁判所に足しげく通わないといけない関係上、会社員が副業として空き時間に司法書士業務を行ったり、あるいは在宅で仕事をするのに適しているとはいえません。
また、経済面から考えても、司法書士業務を行うために司法書士会に登録すると、会費や支部会費などの固定費が毎月数万円単位で発生するため、それ以上の報酬を稼がなくては副業として成り立ちません。
このため、副業・在宅として司法書士業務を行っている人はほとんどいないようです。
ただ、司法書士業務で身につけた知識を用いて、インターネットのクラウドソーシングサービスから、法律相談などに関する専門記事の執筆案件を受注するといった働き方もできます。
司法書士の求人の状況・就職先選びのポイント
司法書士の就職先
- 司法書士事務所
- 一般企業
- 法律事務所
司法書士事務所
司法書士の就職先として最も一般的なのは、司法書士事務所です。
ただ、ひとくちに司法書士事務所といっても、その事業規模は大小さまざまで数百人のスタッフを抱える大手司法書士法人もあれば、少人数で運営している個人経営の事務所もあります。
業務内容についても、ありとあらゆる案件を手広く取り扱っているところもあれば、「不動産登記」「相続」「債務整理」など、得意とする分野を標榜し、案件を絞って営業しているところもあります。
さらに、代表司法書士の経営理念や営業方針、職員の待遇面なども千差万別ですので、どの司法書士事務所が最適なのかは人によって異なります。
一般企業
数としては決して多くありませんが、司法書士試験に合格して資格を取得しても司法書士会に登録せず、一般企業に就職することを選択する人もいます。
たとえば「法務部」や「総務部」といった法律を取り扱う部門では、契約書のチェックや顧問弁護士との協議・商業登記・株主総会の運営・社員へのコンプライアンス指導などを行っています。
そうした部門では、法学部出身者をはじめとして、法律に精通した人材が求められるため、司法書士資格を持っていれば優遇されることがあります。
法務セクションをもつ企業は、上場企業をはじめとた大企業が中心であるため、安定的に働ける点も魅力です。
法律事務所
法務省が指定する研修を受け、考査に合格して「認定司法書士」になると、少額の訴訟案件については弁護士と同じように依頼者の代理人となり、相手方と裁判で争ったり、和解交渉ができたりするようになります。
このため、法律事務所に勤めて、過払い金請求などの案件を専属的に手掛ける司法書士が近年増加傾向にあります。
法律事務所側からしても、民法や商法などについての法律知識が豊富である司法書士を雇用するメリットは大きく、弁護士のサポートスタッフとして司法書士を求めるケースも珍しくありません。
今後についても、司法書士法が改正されるにつれて、司法書士業務はより弁護士業務に近接していくと想定されるため、法律事務所に就職する司法書士がより増えていく可能性も十分にあります。
司法書士の求人の状況
司法書士試験はきわめて合格率の低い難関試験であり、毎年の合格者は全国で600人前後しかいません。
新規の資格取得者が限られるうえ、ある程度の経験を積んだ有資格者が事務所を退職して独立するケースもよくあることから、各事務所は定期的にスタッフを補充する必要もあり、求人数はかなり豊富です。
エリアごとの求人情報についてみれば、ほかの職業と同様、東京近郊や名古屋・大阪といった大都市圏の求人が目立つものの、人口の少ない地方でも求人を見つけられます。
不動産登記などの業務は、どの地域でも一定の需要があるため、司法書士は全国各地どこでも働けられるでしょう。
さらに、体力をあまり必要とせずデスクワークが主体である関係上、女性でも就職先を見つけやすい点も司法書士のメリットといえます。
司法書士の就職先の選び方
- 業務内容で選ぶ
- 待遇面で選ぶ
業務内容で選ぶ
司法書士の業務は多岐にわたりますが、おおまかには、法務局での登記関連手続きと、裁判所での簡易訴訟手続きに大別できます。
どちらも重要な業務ですが、必要となる知識や仕事の進め方・ノウハウなどは大きく異なるため、就職先を選ぶ際にはどちらを担当したいかを第一に考える必要があるでしょう。
数として多いのは登記関連をメインとしている事務所ですが、ある程度大きな司法書士事務所ではどちらも取り扱っており、分野によって担当者が振り分けられているケースもあります。
あらかじめ求人情報を調べたり、面接時に確認したりして、自身の希望に合致した業務を行えるところを探しましょう。
将来的に独立を検討している場合、キャリア的に遠回りにならないためにも、独立後に自分がどんな案件を手掛けたいかから逆算して、就職先を選ぶことが望ましいです。
なお、簡易訴訟関連の業務を手掛けたいなら、司法書士事務所ではなく弁護士の経営する法律事務所に就職するという選択肢もあります。
待遇面で選ぶ
司法書士報酬は案件ごとの単価制であり、いくつの案件をこなせるかが収入面に直結します。
このため、待遇面には個人の実力が反映されやすく、実務未経験者を対象とした求人とある程度の実務経験がある人を対象とした求人では、提示されている給与に大きな開きがあります。
5年以上の実務経験があると、年収500万円以上という比較的好条件の求人が目立ちますので、自分の実力に見合った就職先を選ぶというのもひとつの選択肢です。
ただし、収入面が好待遇であることは、それだけ任せられる業務量も多いため、給与を優先するあまり実力以上の就職先を選んでしまうと苦労することになるかもしれません。
就職先を選ぶ際の注意点
司法書士も一般的な求人と同様、35歳という年齢がひとつの節目といえます。
司法書士資格自体が将来的な独立を前提としていることもあって、あまり年齢のいきすぎた人については、雇う側も二の足を踏むことが多いです。
もちろん、35歳以上でも応募できる求人もありますが、その場合は法曹界に限らず、これまで勤めてきた企業での職務経験などがポイントになるでしょう。
司法書士の志望動機・面接
司法書士が難関国家資格であり、資格保有者が少ないのは事実ですが、それだけですぐ希望の企業に就職できるわけではありません。
ほかの職業と同様、就職試験で実施される面接対策は必須であり、業界研究や各個別企業の研究を行ったうえで、入念に志望動機を練ることが必要です。
それぞれの司法書士事務所によって得意としている案件の分野は異なるため、就職先の事務所にどのような特色があり、どういう種類の案件をおもに手掛けているのか、しっかりと下調べしておきましょう。
また、司法書士事務所は小規模なところが多く、スタッフ同士の結びつきが強いため、職場の雰囲気に馴染めるかどうか、言い換えれば「人柄」がよいかどうかが重視されやすい傾向にあります。
面接においては、チームワークや協調性、コミュニケーション能力などをアピールするように心がけるとよいかもしれません。
就職先の探し方
- 研修先にそのまま勤める
- 司法書士会に紹介してもらう
- 一般の求人サイトから探す
研修先にそのまま勤める
司法書士試験に合格した後は、司法書士会が実施する新人研修を受講する義務があります。
研修前には、具体的にどのような分野の業務を手掛けたいか尋ねられる機会があり、その要望にもとづいて、できる限りイメージに近い事務所に配属されます。
このため、研修を修了した後も、同じ職場で働き続けるケースもよくあります。
十分にキャリアを積んで一人前となった後は、そのまま事務所に勤め続けるという選択肢もありますし、独立して大きな飛躍を目指すために選ぶ人もいます。
司法書士会に紹介してもらう
研修先がイメージと違っていたり、ほかの業務に関心が出てきたという場合は、司法書士会から就職先の紹介を受けるケースが一般的です。
各地域を管轄する司法書士会では、ホームページなどで求職者情報提供を行っており、自分の希望に合致した就職先を見つけられるでしょう。
司法書士会によっては、正社員だけでなく、パート・アルバイトなど、勤務形態についてもある程度選択できます。
一般の求人サイトから探す
ほかの職業と同じく、民間の求人サイトやハローワークなどでも、比較的簡単に司法書士の求人情報を見つけられます。
就職先によっては、司法書士資格だけでなく「認定司法書士」まで必須であるケースもありますし、反対に、将来的に資格を取得する意思さえあれば、入社時点では無資格でも採用するというケースもあります。
これから司法書士を目指す人であれば、一般の求人サイトから求人情報を見つけてアシスタントとして就職し、働きながら試験勉強に励むという道も考えられるでしょう。
司法書士になるにはのまとめ
司法書士試験は、試験に学歴や年齢は関係なく、誰でも受験可能です。
試験の難易度は高く、一度で合格できるとは限りません。
独学で合格にたどり着くことは困難なため、大学の法学部、民間の資格専門学校、スクール、通信教育の講座などで勉強することが一般的です。
なかには大学が終わった後に予備校などに通う「ダブルスクール」で勉強に励む人も多数います。
専門学校に入るなら、司法書士試験対策コースのある民間資格学校のいずれかになるでしょう。
大学での授業や社会人としての仕事と受験対策を両立させやすい夜間・休日コースを設ける学校もあります。
このほか、通信講座でマイペースに勉強を進めることも可能です。
司法書士試験では、民法・商法などの六法から、不動産登記法や商業登記法といった専門的法律まで幅広い範囲から問題が出題されるため、効率よく勉強を進めることが合格への一番の近道です。
資格を取得した後は、3ヵ月程度の新人研修を受けて修了考査に合格すると、全国にある司法書士会のいずれかに登録することで、司法書士としての業務を開始できます。
司法書士の手掛ける案件は、いずれも法的効力の強い重要な業務ばかりですし、ときに依頼者の人生を大きく左右することもあります。
几帳面かつ慎重な性格の人、事務処理能力の優れた人に向いています。
基本的には専業で行う仕事であり、副業・在宅として司法書士業務を行っている人はほとんどいませんが、資格を生かして多様な働き方はできる職業といえます。