食品メーカーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
大手企業から中小企業まで、各企業が自社の経営方針に沿って、いろいろな種類の食品を開発・製造しています。
この記事では、食品メーカーの代表的な部門や、主に活躍する職種の仕事内容・役割を詳しく紹介します。
食品メーカー社員の仕事とは
食品メーカーとは、人間が生きていく上で不可欠な「食品」を作り、世の中に届ける企業のことをいいます。
ひとくちに食品といっても、その種類はパン、麺、乳製品、調味料、菓子など多岐にわたります。
また、冷凍食品やレトルト食品などのように、進化し続ける先端技術を駆使して作られている食品もあります。
日本全国には数多くの食品メーカーがあり、各社で取り扱う製品の種類はさまざまです。
規模の大きなメーカーでは多様な商品群を取り扱うところも多いですが、パンに特化したメーカー、水産加工物に特化したメーカーなどもあります。
各社とも原材料を仕入れて製品を製造し、製造したものを卸売や小売の流通に乗せて消費者に向けて販売することで、収益を上げています。
20代で正社員への就職・転職
食品メーカーの種類・分類
食品は、大きく分類すると「生鮮食品」と「加工食品」の2種類があります。
このうち、生鮮食品は青果(野菜・果物)、鮮魚、精肉などを指し、生産者から卸売市場で取引され、市場へ流通するケースが一般的です。
食品メーカーが扱うことが多いのは、もう一方の加工食品で、これは生鮮食品になんらかの加工をしたものを指しています。
以下では、加工食品を扱うメーカーを細かく分類し、それぞれの特徴を紹介します。
調味料系
料理の味付けに不可欠な調味料ですが、その数は、なんと数百種類を超えるそうです。
日本の家庭には欠かせない醤油や味噌、みりんといった和風調味料のほか、鰹節やうまみ調味料などのだし類、マヨネーズ・ドレッシング類、ケチャップ・ソース類、スパイス類など、各種調味料を製造します。
とくに、醤油メーカーは数が多く、小規模の企業も含めると全国に1500社はあるといわれています。
味の素、キユーピー、エスビー食品など
冷凍食品系
食品の品質をできるだけ長期間保つための技術として生まれたのが「冷凍食品」です。
日本冷凍食品協会によれば、冷凍食品の条件は「前処理している」「急速凍結している」「適切に包装している」「品温を-18℃以下で保管している」の4つの条件を満たすものとされています。
また、冷凍された食品の種類によって、「水産冷凍食品」「農産冷凍食品」「調理冷凍食品」「冷凍食肉製品」などの区分に分けられれています。
マルハニチロ、ニチレイ、日本水産など
製粉系
小麦粉、ふすま、そば粉、ミックス粉、ライ麦粉といった粉類や関連食品の製造を行います。
これらの粉は家庭用に製造されるものはもちろんですが、業務用として、パンやそば、うどん店などでも多く利用されています。
日清製粉、日本製粉、昭和産業など
乳製品系
牛乳・加工乳などの乳飲料のほか、バター、チーズ、ヨーグルト、アイスクリームといった乳製品の生産や加工を行います。
乳製品の商品量は時代とともに増加傾向が続いており、国内生産だけでは追いつかず、輸入依存度も高いことが特徴です。
明治乳業、森永乳業、雪印メグミルク、ヤクルトなど
食肉加工系
ハム、ソーセージ、ベーコンといった食肉の加工・製造を行います。
自社で畜産を行い、安全・安心にこだわった原材料を調達し、製造まで一貫して行う企業もあります。
日本ハム、伊藤ハムなど
水産系
ちくわやかまぼこをはじめとする魚肉練り製品、塩干加工食品、珍味といった水産食料品の製造を行います。
海に囲まれている日本では、水産食品の製造も活発に行われています。
日本水産、マルハニチロなど
即席麺系
カップラーメンやカップ焼きそば、カップうどんなど、いわゆるインスタントの麺食品を製造しています。
手軽でありながら、いかにおいしく、風味豊かな味わいを生み出すかなどのポイントは、各社の技術力の見せ所です。
日清食品、東洋水産、サンヨー食品、エースコックなど
パン系
食パンや菓子パン、総菜パンなど、パン製品を製造しています。
現代の日本では米と並んで多く消費されている主食のひとつであり、素材にこだわった高級なパンからコンビニなどで買える手軽なパンまで、多種多様なパンが作り出されています。
山崎製パン、敷島製パン、フジパンなど
食品メーカー社員の業務内容
食品メーカーは、いくつもの部門に分かれ、各部門が連携しながら会社を動かしています。
ここでは、代表的な部門ごとの主な業務内容を紹介します。
企画・マーケティング
新商品の開発や市場投入は、食品メーカーの利益を左右する非常に重要な要素です。
食品メーカーにおける企画関連の部門では、市場調査やデータ分析を通して消費者が求めているものを検討し、売れる商品を考えていきます。
また、すでに市場に流通させている商品の売上動向をチェックし、売上が伸びない商品について、その原因や課題についてのポイントも具体化します。
「マーケティング」「商品企画」「営業企画」といった職種の人が、このような仕事に携わっています。
研究開発・生産
多くの食品メーカーでは研究所を併設しており、そこで基礎研究や新製品の開発などを行っています。
食品は、バイオやゲノムなどの最先端分野とも密接に関わっているため、そうした研究活動には非常に力を入れている企業が少なくありません。
開発担当者は、企画部門が立ち上げたコンセプトを基に、実際に商品にするための原料選定や資材選定、調合の組み立て、生産方法の検討などを行います。
その後、製造工場にて実際に生産をスタートします。
開発の仕事については高度な専門知識が要求されることから、理系出身の技術者が多くを占めます。
営業・販売
営業や販売部門では「製品を売る」ことに直接携わっていきます。
スーパーやコンビニエンスストアといった量販店、あるいは外食業界の企業や店舗などへの営業活動を行い、自社製品を置いてもらうように働きかけます。
同時に、消費者の購買意欲を高めるために、店舗の売場演出やメニュー提案などまで担当することもあります。
管理部門
管理部門では、「経理」や「人事」「法務」「経営企画」など、組織を管理する仕事に就く人たちが活躍しています。
これらの仕事は、食品メーカーに限らず、どの企業でも経営を裏方として支えるうえで不可欠な存在です。
また、「広報」や「お客さま相談センター」など、マスコミに対応したり、消費者からの意見や問い合わせ、クレームなどを専門的に対応する仕事に携わる人もいます。
20代で正社員への就職・転職
食品メーカーの役割
食品メーカーは、人々の暮らしに欠かせない食をつくる大事な役割を担っています。
食品メーカーの社会における役割について、詳しく説明します。
人の暮らしに身近な食品を製造する
食品は人が生きていくために不可欠なもののひとつですが、ただ栄養をとるために存在するわけではありません。
おいしいものを口にすることで楽しい気持ちになれたり、場の雰囲気を盛り上げたりすることもできます。
おいしい食品を作り、人の暮らしを彩って豊かにすることが、食品メーカーの役割だといえるでしょう。
そのため、食品メーカーでは常に「消費者が何を求めているのか」をリサーチし、より満足度の高い製品開発を目指しています。
食品製造において安全性は最重要事項
食品メーカーは、他業種のメーカーとビジネスモデルが近しい一方、原材料が「生もの」であるところに特徴があります。
原材料を仕入れる時期に季節性があったり、時間と共に劣化しやすかったりという面があるため、品質管理や流通方法などに十分な工夫がなされています。
また、製造した商品は最終的に消費者の口に入ることから、「安全性」には細心の注意を払わなくてはなりません。
異物混入などの重大事故を起こさず、質の高い、消費者に喜ばれる食品を作ることが、食品メーカーの役割です。
食品メーカーの職種
食品メーカーで活躍する代表的な職種を紹介します。
企画系
マーケティング職
マーケティング職は、新商品を開発するために、市場動向を分析して消費者ニーズを洗い出します。
どれだけこだわりを持って作った商品でも、まったく売れなければ利益も出ず、企業として成功したとはいえません。
ですから「いま、市場でどのような商品が求められているのか」を探ることは、商品開発において非常に重要な要素です。
マーケティング担当者は、食のトレンドを探り、味の方向性やターゲットなどを定め、開発者などと議論を重ねながら具体的な製品としての形を企画していきます。
研究開発系
研究職
研究職は、メーカーが新商品を生み出していく際に不可欠な職種です。
高度な理系の知識(農学、生物学、栄養学、化学など)が必要とされ、なかには獣医師免許や医師免許を持っている人もいます。
基礎研究職
食品開発の最も基礎となる仕事です。
食の素材がもつ、さまざまな機能や効能を研究することを役目とし、研究結果を新たな食品開発につなげていきます。
応用研究職
基礎研究によって見つかった新素材や既素材を、どのように実用化していくかについて具体的に検討します。
開発職
基礎研究や応用研究の結果を土台とし、独自の技術を駆使しながら実際に製品を生産するための仕事に取り組みます。
原材料の選定、栄養計算、試作品(サンプル)の作成などを行い、試食会を重ねて、計画したコスト内で魅力的な食品が生産できるかどうかを検討します。
理系の専門知識や開発に関する知見を生かし、製品を売る営業職を技術面からサポートするのも開発職の仕事の一部です。
生産・品質管理系
生産管理職
生産管理職は、スケジュール通りに問題なく製造が進むように、生産の現場を管理・調整する仕事です。
生産工場内で働く人員配置や生産設備の調整などを行い、納期に間に合うようにマネジメントします。
営業と製造の橋渡し役になることが多く、データや情報を見て的確な判断をしながら、上手に物事を調整していくスキルが求められます。
品質管理職
品質管理職は、製造した食品に関しての安全性チェックなどを専門的に行う仕事です。
食品は人間が口にするものだけに、高いレベルでの安全性が求められます。
安全・安心な製品を流通させるための細菌検査や衛生指導のほか、製品が基準通りに作られているか、味は正確か、作業手順は間違っていないかといったような、自社製品の品質に関わるあらゆる内容をチェックします。
営業・販売系
営業職
営業部門は、さまざまな業種のメーカーで活躍していますが、食品メーカーの場合、量販店や食品商社、コンビニエンスストア、飲食店などが主要顧客です。
営業職は、自社製品をこれらの顧客にできるだけ多く取り扱ってもらうため、製品の魅力や特徴を正しく伝えながら、提案型の販売促進活動を進めていきます。
ときには売り場づくりのアドバイスも行い、自社製品がより多く売れるようにサポートします。
グローバルビジネス職
大手食品メーカーの多くは、国内事業のみならず海外事業を展開しており、専任の海外プロジェクト担当者を置くケースが大半です。
国内拠点でグローバルビジネスに携わることもありますが、海外拠点を置く企業の場合、海外赴任をして、現地で営業やマーケティングなどの各業務に従事する人もいます。
管理系・バックオフィス系
ここまで、食品メーカーならではといえる職種を中心に紹介してきました。
それ以外に、他業種の企業と同様、管理系部門において、総務や経理、人事、法務、経営企画のような組織を管理する職種があります。
また、実際に食品を口にした消費者からの声を受け付ける「お客様サポート」のような仕事に携わる人もいます。
食品メーカーの有名な企業
食品メーカーは非常に数が多く、企業ごとに特徴が異なります。
生鮮食品に手を加えた「加工食品」を扱う会社だけでも、細かく分類すれば、調味料メーカー、冷凍食品メーカー、乳製品メーカーといったように多種多様です。
また「総合食品メーカー」といわれる大きな会社は、調味料や麺、レトルト食品、冷凍食品など複数の製品群を扱っている場合が多いです。
有名な大手食品メーカーとしては、明治、味の素、キッコーマン、日清食品、日本ハム、マルハニチロ、キユーピーなどがあります。
このほか、「山崎製パン」や「敷島製パン」、また「森永製菓」や「亀田製菓」などのように、パンやお菓子を中心に扱う食品メーカーもあります。
食品は人々の日常生活に身近なものであるため、「名前は聞いたことがある」「この会社の商品が自宅にある」などと感じることが多いはずです。
食品メーカーの仕事の流れ
食品メーカーで、ひとつの新しい製品が生まれ、世に出ていくまでには、長い工程があります。
ここでは、加工食品を扱うメーカーが、製品をつくる際の大まかな流れを紹介します。
-
研究
研究職の社員たちは、日頃から素材などに関する研究活動を続けています。ここで得た研究結果が、将来的に新しい商品開発の礎となることがあります。
-
市場調査
マーケティングや企画担当者が、世の中の売れ筋商品や競合商品の調査、消費者のニーズなどを集め、どのような商品が売れるのかを分析します。 -
商品開発
集めた研究結果やマーケティングデータを基に、開発職の社員たちが製品開発を進めていきます。原料を組み合わせて試作品を作り、問題があれば別の組み合わせを試して完成度の高い商品作りに取り組みます。
-
製造
試作品の完成度が十分に高まったら、生産ラインに乗せて製品を作ります。食の安全・安心を守り続けるために、製品の安全性に問題がないかなどを判断する厳しい品質チェックも必ず行います。
-
営業
食品メーカーが作った製品を実際に売るのは、食品メーカーにとっての顧客となる販売店(小売店など)です。営業担当の社員は、そのような顧客に対して自社製品の特徴を説明し、取り扱ってもらえるよう商談します。
-
流通
生産された製品は、検品や仕分け、配送などの工程を経て、顧客先の店舗へ届けられます。この流通工程にも、多くの社員が携わっています。
「食品メーカーの仕事」まとめ
「食品メーカー」とひとことで言っても、その数は非常に多く、各社が扱う食品の種類は多種多様です。
また、社内はいくつもの部門に分かれ、各部門に配属された社員たちが自身の専門性を発揮し、協力しながら働いています。
ひとつの食品が世に出るまでには、開発・生産・流通など、いくつものプロセスをたどっていくことになります。