食品メーカー社員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「食品メーカー社員」とは
原材料を仕入れて食品を製造し、流通させる。安全・安心に基づく商品の製造が使命。
食品メーカーとは、原材料を仕入れて、さまざまな食品を開発・製造し、完成した商品を卸売や小売の流通に乗せて販売する企業のことです。
食品メーカーの組織は、おもに「企画・マーケティング部門」「営業・販売部門」「開発・生産部門」「管理部門」などに分かれています。
社員は各部門に配属され、市場ニーズを把握して新商品を考えたり、工場における食品の製造に携わったり、新しい販売網の開拓に取り組んだりします。
食品メーカーの採用活動は、一般的に、新卒では「事務系(総合職)」と「技術系」に分けて実施され、技術系に関しては理工系の学生が中心的に採用されます。
食品メーカー社員は、人々の生活に不可欠な「食」を世に届ける重要な役割を担っており、また暮らしに身近な商品を取り扱うことから、仕事のやりがいを感じやすいでしょう。
なお、最近では少子高齢化により国内市場が縮小傾向にあるため、海外に販売網を広げるなどグローバルビジネスを手掛ける企業も増えています。
「食品メーカー社員」の仕事紹介
食品メーカー社員の仕事内容
おいしく安全な食品を開発・製造し、消費者に届ける
食品メーカーとは、原材料を仕入れて食品を開発・製造し、完成した商品を流通させて販売する企業のことです。
「食品」を大きく分けると「生鮮食品」と「加工食品」がありますが、このうち食品メーカーでは、調味料や冷凍食品、乳製品といった加工食品を取り扱うことが多くなっています。
各社で取り扱う商品群に違いがあり、企業規模についても、全国に工場をもつような大手企業から、従業員が数人~数十人規模の中小企業までさまざまです。
商品の季節性や市場ニーズも考慮しながら、安全性を十分に確保するため品質管理や流通方法などに工夫をし、消費者に受け入れられる商品をつくり出していきます。
多様な部門・職種で働く社員がいる
食品メーカーには、以下のようにさまざまな部門があり、多様な職種の社員が各部門に配属されて働いています。
・商品のアイデアを生み出す「企画部門」
・新商品を研究開発し、生産する「研究開発・生産部門」
・商品を流通させ販売する「営業・販売部門」
・組織の管理を行う「管理部門」
など
とくに、さまざまなデータを基に商品の企画を検討していく「マーケティング職」や「商品開発職」、食品の素材となる機能や効果を研究する「研究職」、製造した製品の安全性などを検査する「品質管理職」などは、食品メーカーに特有の職種の一部です。
関連記事食品メーカーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
食品メーカー社員になるには
各食品メーカーの社員採用試験を受ける
食品メーカー社員として働くには、各企業が実施する社員採用試験を受けて採用される必要があります。
大手企業では毎年、定期的に数十人以上の新卒採用を実施していますが、人員状況に応じて不定期で中途採用を行う企業も少なくないため、転職での入社も可能です。
食品メーカーの採用は、一般的に「事務系(総合職)」と「技術系」に分けて行われています。
事務系(総合職)の採用について
事務系は文系学生を中心に学部学科不問で応募できることがほとんどで、通常、入社後に本人の希望や適性などを考慮して配属部門が決定します。
営業やマーケティング、商品開発、管理など、多様な職種に就く可能性があります。
とくに大手企業では、その後も定期的なジョブローテーションがあり、さまざまな仕事を経験しながらキャリアアップを目指すことが多いです。
技術系の採用について
技術系はもともと理系学生を対象とした募集になっており、研究職などは大学院まで進んでから入社する人もいます。
学生時代に身につけた知識を生かし、自社の研究施設などで研究、食品開発、品質管理といった業務に携わることになります。
事務系総合職のように積極的な部署異動はあまり多くなく、同様の業務を担当しながら専門性を高めていくことが多いです。
関連記事食品メーカーに就職するには? 有利な大学・学部はある?
食品メーカー社員の学校・学費
大卒以上の学歴が求められる場合が多い
食品メーカーの社員採用試験では、大手企業を中心に「大卒以上」の学歴が応募条件となることが多いです。
事務系(総合職)の採用に関しては、学部学科は基本的に不問です。
一方、技術系の場合、募集されるのは理系学生が対象となることがほとんどで、志望職種によっては「大学院卒」まで求められることもあります。
学生時代の専攻や身につけてきた知識が、就職後の業務でどう生かせるかがより重視される傾向です。
とくに農学系、生物系、化学系の学びは、食品メーカーでの仕事とリンクするところが大きく、そうした分野の勉強をしておけば就職に有利になるでしょう。
知名度の高い企業には多くの学生が応募する
食品メーカーは、人々の暮らしに身近な商品を多数取り扱うこともあって、そのなじみ深さから就職先としても比較的人気があります。
とくに知名度のある大手企業には難関大学の学生が多く志望し、競争倍率が非常に高くなることがあります。
学歴がすべてではありませんが、学生時代にきちんと勉強しておくほうが、就職活動はスムーズでしょう。
食品メーカー社員の資格・試験の難易度
食に関する資格が有利になることも
食品メーカー社員になるために、特別な資格が求められることは通常ありません。
ただし、配属先によっては日々の業務に関連する資格があり、それらを取得しておくと役立つ場合があります。
たとえば、近年の食品メーカーは海外事業に力を入れるところが増えているため、英語をはじめとする外国語のスキルを証明できる資格があると、評価されやすいでしょう。
営業職の場合は社用車で営業活動を行うこともあるため、自動車運転免許は必須といわれることもあります。
このほか、商品開発系の仕事に携わるのであれば、「管理栄養士」や「調理師」などの資格で出られる知識・スキルも役立ちます。
また、生産管理系の仕事をする場合には、食品の製造・加工・調理・販売が衛生的に行われるように指導するための「食品衛生責任者」の有資格者が活躍できます。
食品メーカー社員の給料・年収
業界トップクラスの企業は平均年収が高め
食品メーカー社員の平均年収は、さまざまな調査データを基に見ていくと、400万円から500万円程度がボリュームゾーンと考えられます。
ただし、食品メーカーは日本全国にたくさんあり、誰もが知るような上場企業から、地域密着型の小さな企業まで多種多様です。
業界トップクラスの企業では、平均年収が800万円~1000万円ほどとなっており、順調にキャリアを重ねることで高収入が見込めます。
小規模な企業では、大手ほどの年収は期待しづらいですが、食品メーカーは人々の暮らしに不可欠な商品を取り扱うため、比較的安定した経営を続ける企業が多いです。
職種によっても給与水準が異なる
食品メーカー社員の給料・年収は、配属部門や職種によっても多少の違いがあります。
たとえば理系の高度な専門知識が求められる研究職は、初任給の時点でも他職種より給料がやや高めで、若いうちから高水準の収入が期待できます。
開発職では、仕事の成果によって開発手当がついたり、営業職の場合は個人の成績に応じたインセンティブが別途支給されたりすることもあります。
関連記事食品メーカーの年収はいくら? 初任給やボーナスも解説
食品メーカー社員の現状と将来性・今後の見通し
海外進出などグローバル化が進む
「食」は人々の暮らしに欠かせないものであり、昔から食品業界は比較的安定している業界です。
しかし加速する日本の少子高齢化、さらに消費者ニーズの多様化や企業間の価格競争の激化などによって、日本国内における食品の市場規模は縮小していくと予想されています。
そのため、大手食品メーカーは積極的な海外展開を推し進めており、今後も業界全体として、東南アジアや欧米などにおけるグローバルビジネスが加速していくものと考えられます。
これからの食品メーカー社員は、日本国内の消費だけでなく海外での消費を考え、世界で求められる商品を追求していく必要があるでしょう。
また、以前にも増して食の「安心・安全」が強く問われるようになっているなか、社員一人ひとりが強い責任感と自覚をもって、職務にあたることが求められています。
食品メーカー社員の就職先・活躍の場
各社で取り扱う商品の種類や特色が異なる
日本国内には、誰もが名前を知っているような業界トップクラスの大手企業から、地域密着型で経営する小さな企業まで、さまざまな食品メーカーがあります。
また、そのなかには冷凍食品から調味料、乳製品、水産系など多種多様な商品を多数取り扱う企業もあれば、特定のジャンルの商品に特化した開発・製造を続ける企業もあるなど、各社で特色が異なります。
最近の大手食品メーカーは、海外事業に力を入れる傾向が見られ、すでに海外での売上が50%を超えているメーカーも出ています。
勤務先によっては、日本全国はもとより、世界を舞台に活躍することもできるのが食品メーカー社員の特徴のひとつといえます。
食品メーカー社員の1日
配属部門や職種によって勤務する時間帯に違いがある
食品メーカー社員の勤務時間は、企画職や開発職などで本社勤務をする場合、朝から夕方にかけての一般的な「日勤」となります。
ただし、製造工場の場合には夜勤を含めたシフト制勤務となることがあったり、研究所勤務であれば朝がやや早めであったりする場合があります。
ここでは、本社で開発に携わる社員の1日の例を紹介します。
食品メーカー社員のやりがい、楽しさ
暮らしに身近なものをつくり出す仕事ができる
食品は人々の生活に欠かせないものであるため、食品メーカー社員として働いていると、自分の作ったものが人の手に渡る場面を生活のなかで数多く見ることができます。
たとえば買い物に出かけたスーパーやコンビニで、自分が関わった商品が店頭に並んでいたリ、人々の手にとられているのを見たりしたときには、大きな達成感を感じます。
商品化にいたるまでの苦労や裏話が多ければ多いほど、実際に製品が形になったときの喜びはひとしおです。
世の中には「メーカー」といわれる種類の企業がたくさんありますが、生活密着型商品に数多く仕事で携われることは、食品メーカー社員のやりがいのひとつといえるでしょう。
また、各配属部門や各職種ならではのやりがいもあります。
たとえば企画職であれば自分が考えたアイデアが実現可能なものになったとき、営業職であれば自信をもっておすすめした商品が多くの取引先に支持されたときなどに、喜びを感じられます。
食品メーカー社員のつらいこと、大変なこと
食の安心・安全を担う責任感が求められる
食品メーカーで働く上で最も大変なことのひとつは「食の安心・安全」が強く求められる点だといえます。
食品は人の健康を左右するものであり、とくに日本では法律によって食品の安全性が日ごろから厳しく問われます。
もし、異物混入や食品偽装、健康被害といった重大な問題が起きれば、大きなバッシングを受けることになり、会社の存続すら危うくなってしまうかもしれません。
食品メーカーは、人々の暮らしに身近であることから名前がよく知られており、良くも悪くも注目を集めやすいです。
食品メーカー社員は、どのような職種でも、それだけ責任の重い仕事に携わっているのだという自覚が求められます。
食品メーカー社員に向いている人・適性
食を楽しみ、食の楽しさや喜びを伝えられる人
食品メーカーに務める場合、やはり「食」が好きということは重要なポイントとなります。
実際にはさまざまな職種で活躍する人がいますが、食について考え続ける仕事だからこそ、普段から食に関心を持ち、楽しみながら働ける人のほうが向いているといえるでしょう
また、食品メーカーでは「おいしい食を消費者へ安全に届けること」を使命としています。
したがって「食の楽しさを伝えたい」「安全な食を届けていきたい」という気持ちを持つことが求められます。
食を楽しむ心と、食を伝える心の両方を持ちあわせることができる人が、食品メーカー社員に向いているといえるでしょう。
なお、商品開発など一部の職種では、優れた味覚や嗅覚をもつ人が活躍しやすくなっています。
関連記事食品メーカー社員に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
食品メーカー社員志望動機・目指すきっかけ
親しみのある食品開発に自分で関わってみたい
食品メーカーを中心とする食品業界は、学生の就職先として非常に人気が高い業界のひとつです。
子どもの頃からなじみ深い商品を多数扱っていることや、人々の暮らしに密着した商品をつくり出せることなどに魅力を感じる学生が多いのでしょう。
「食を通じて人々の生活を豊かにしたい」「おいしいと思ってもらえる食品を開発してみたい」などの思いから、食品メーカーを志望する人がたくさんいます。
志望動機を考える際の注意点
実際に食品メーカーに応募する際の志望動機は、「食が好きだから」だけでは少々弱いものになってしまいます。
食品メーカーにはさまざまな職種があるため、自分が何をしていきたいのか、入社後どのような仕事をしていきたいのかなどを、具体的に考えていくことが大切です。
また、同じ食品メーカーでも、企業によって扱う商品も違えば、取引先の種類や事業展開なども異なります。
志望する企業についてしっかりと企業研究しておき、「そこで働きたい理由」まで併せて語れるようにしておくと、より説得力がある志望動機となり、熱意も伝わりやすいでしょう。
関連記事食品メーカー社員の志望動機と例文・面接で気を付けるべきこと
食品メーカー社員の雇用形態・働き方
職種によっては派遣社員や契約社員として働く人も多い
食品メーカーの求人の大半は正社員ですが、派遣社員や契約社員などの雇用形態で働く人もいます。
とくに事務系職種や工場勤務では非正規雇用の求人が多く、人員が不足したときに不定期に採用が行われているようです。
食品メーカーは就職先として人気があり、倍率も高くなりがちですが、派遣社員や契約社員であれば正社員よりも求人数が多いことから、働き口を見つけやすいでしょう。
食品メーカーへの転職を希望する場合には、派遣会社に登録したり正社員以外にも視野を広げて探してみたりすると、よい条件での求人が見つかるかもしれません。
ただし、研究職や商品開発職などは、正社員中心の採用になっていることが多いため、注意が必要です。
食品メーカー社員の勤務時間・休日・生活
配属部門によって勤務時間が異なる
食品メーカーの勤務時間は、本社や各支社でオフィスワーク中心に行う社員の場合、朝から夕方にかけての一般的な「日勤」となります。
研究所勤務であれば、オフィスワークの社員よりも30分から1時間程度、前倒しになることもあります。
多くの社員は規則正しい時間で働いていますが、製造工場に関しては、たいてい24時間体制で生産ラインを動かすため、夜勤を含めたシフト制勤務になることが多いです。
全体として、繁忙期など一時的に残業量が増えることはありますが、落ち着いていれば土日休みに有休をつけて連休を取ることも可能です。
とくに大手の食品メーカーでは、残業時間が厳しく管理されており、ムリな働き方になることはほとんどないでしょう。
ただし、トラブル発生やクレーム対応などの際には、遅くまで残って仕事をしなくてはならないことがあります。
食品メーカー社員の求人・就職状況・需要
大手企業では定期的な採用が行われている
食品メーカーは、日本国内に大手企業から中小企業まで、多種多様な企業が存在しています。
規模が大きめの企業であれば、定期的に新卒採用を実施しており、1回の募集で数十人以上の新入社員を迎え入れる企業もあります。
ただし、大手食品メーカーは学生にとってもなじみ深い商品を多数開発していること、待遇がよいことなどから人気があり、多くの応募者が集まります。
内定を得るのは決して簡単ではないため、十分な企業研究をして、就職活動を乗り越える努力が必要です。
インターンに参加しておくのもおすすめ
食品メーカーではインターンシップを開催する企業が多くあります。
インターンへの参加は義務ではありませんが、食品メーカーの仕事内容や会社の雰囲気、働く社員の様子を肌で感じられる貴重な機会です。
実際の社員採用試験を受ける際にも、インターン経験で得たもの、感じたことなどが問われることもあるため、積極的に参加しておくとよいでしょう。
食品メーカー社員の転職状況・未経験採用
技術系職種と営業職の需要が大きい
食品メーカーは、新卒採用に加えて中途採用を実施している企業が多くあります。
とくに転職に関しての需要が大きいのは「技術系職種(研究・開発等)」と「営業職」です。
技術系職種では理系大学や大学院で学んだ人が望まれますが、中途採用の場合、さらに専門性が問われると考えておいたほうがよいでしょう。
未経験からの転職は難しく、前職でも化学系、農学系などの研究や開発経験が求められてきます。
一方、営業職については高いコミュニケーション能力や人当たりのよさ、誠実さ、フットワークの軽さなどが求められることが多く、場合によっては未経験からでも挑戦できます。
業界は違っても、それぞれ技術職・営業職としての経験と実績がある人は採用されやすいでしょう。