「医療情報技師」とは
電子カルテやWeb診察予約など、医療機関で使われるシステムの開発、運用、保守を行う。
医療分野の情報システムの開発や運用を担当することで、医療スタッフと患者双方の負担の軽減をめざすのが医療情報技師です。
病院や医療機器を取り扱う企業に就職することが多く、電子カルテやWEBでの診察予約など病院内のシステムの開発、運用、保守に携わっています。
医療に関する知識とITの技術両方が求められるので、専門学校や理系の学部で学んだり資格を取得しておいたりすると就職の際の選択肢が広がります。
給料は新入社員の月収は20万円前後、年収は300万円前後となることが多いようですが、資格や経験の有無によっても異なります。
医療情報技師はまだまだ世間の認知度が高くはない職業ですが、これからの時代に必ず求められる職業といえるでしょう。
「医療情報技師」の仕事紹介
医療情報技師の仕事内容
医療に特化したシステムエンジニア
医療情報技師は、医療分野の情報システムの開発や運用を担当することで、医療スタッフと患者双方の負担の軽減をはかる職業です。
医療業界に特化したシステムエンジニアというイメージを持つとわかりやすいでしょう。
病院で扱われる電子カルテやWebでの診察予約など、病院内の医療情報システムの開発、運用、保守に携わります。
院内の医療情報におけるセキュリティ対策をしながら、情報を有効に利用できるようにするのが主な仕事です。
現在では電子カルテを導入している病院も多いため、システムダウンや通信障害が発生すると診療を行うことができなくなるため、情報システムの保全は特に重要な職務となります。
また、近年ではIT技術の進化とともに「遠隔医療」という概念も生まれ、オンラインでの診療やレントゲン映像の解析など仕事の可能性が広がってきています。
間違われやすい職業に「診療情報管理士」というものがありますが、両者の資格は業務上繋がりがあるため両方の資格を持っている人も多いです。
診療情報管理士との違いは、医療情報技師は院内システムを構築・管理する役割を持ち、診療情報管理士はそのシステム上で、電子カルテに記載された診療情報を管理する役割を持ちます。
医療情報技師の就職先・活躍の場
ベンダーに就職し医療機関へ派遣される
医療情報技師の主な就職先は、医療関連システムのベンダーになります。
そして、派遣された医療機関の医療情報部や診療情報管理室などに常駐し、院内システムのメンテナンスや管理を行います。
院内の様々なシステムを立ち上げた会社の人間でないと、システムに何らかの障害が起こった場合に対処できません。
さらに、システム障害を未然に防ぎ、院内の各システムが正常に働いて、円滑な診療が行われるためにも重要な立ち位置の仕事になります。
医療情報技師の1日
医療スタッフとIT会社双方と関わる
医療情報技師は、病院のシステム運用のほか、電子カルテの操作や新規システムの提案なども行います。
ここではITシステム管理会社から病院に派遣されている医療情報技師の1日を見てみましょう。
病院に派遣されている医療情報技師のスケジュール
08:30 出勤
外来診療が始まる前にサーバー点検をして、トラブルがあればすぐに対処します。
09:00 メールチェック
メールを確認して、返信が必要なものは早めに返信します。
10:00 打ち合わせ
システム管理会社の社員と新たなシステム導入などにかかわる打ち合わせをします。
12:00 休憩
休憩をとります。
13:00 院内プレゼンテーション
院内スタッフの前で新規システムについてのプレゼンをします。
14:00 電子カルテ操作指導
院内スタッフに電子カルテの操作方法を指導します。
15:00 日程調整
クライアントと打ち合わせを行う日程などの調整をします。
16:00 サーバー点検
院内サーバーの点検とメンテナンスを行います。
17:30 退勤
外来診療の終了時間に合わせて退勤となります。
医療情報技師になるには
医療情報技師能力検定試験がある
医療情報技師は、非常に専門性の高い職業です。
この仕事に就くためには医療関係の最低限の知識に加え、プログラミングやシステムメンテナンスなどの専門的なIT技術が必要となります。
医療関係やIT関係の専門学校、高等専門学校や大学の理工学部などで情報工学を学んでおくと即戦力として働ける可能性が高まります。
自分が医療情報を適切に扱える人材であることを示す指標として、医療情報技師能力検定試験に合格すると有利です。
医療情報技師能力検定の勉強は、指定の教科書のほか、ネット通信下で講義の動画を見て学べるeラーニング講座を受講することもできます。
医療情報技師の学校・学費
理工学・情報処理を学んでおくとよい
医療情報技師には必須の資格も学歴の制限も基本的にはありません。
しかし、職務内容をかんがみた場合、理工学や情報処理を学んでおくと就職後において有利になるでしょう。
医療系の基本的な知識も必要にはなりますが、システムを構築し管理保全を行う上では、システムエンジニアリングに関わる技術がより必要になってきます。
大学の理工学部やICT専門学校などを卒業しておくと、この職種に就く際には役に立つでしょう。
医療情報技師の資格・試験の難易度
医療情報技師能力検定は指標になる
医療情報技師に必須の資格はありませんが、医療情報技師能力検定に合格することは、自分の能力や適性を周囲に示す指標として役立ちます。
医療情報技師能力検定は「医学・医療」「情報処理技術」「医療情報システム」の3科目あり、一度に全て合格しなくても、3年以内に全科目に合格すれば医療情報技師として認定されます。
医療の知識と情報処理の知識の両方を学ぶ必要があるため、全科目の合格者は例年30%と低い水準であり、長いスパンで勉強する必要があるといえるでしょう。※2
医療情報技師の給料・年収
取得資格や病院の規模により異なる
医療業界の給料は世間の景気に左右されにくいので、医療情報技師の給料は安定した傾向にあると考えられます。
情報システムを取り扱う専門性の高い職業ということもあり、一般的な事務職に比べると給料はやや高い傾向があります。
医療情報技師の求人票を見てみると、新入社員の月収は20万円前後、年収は300万円前後となることが多いようです。
ただし、これは働く土地や勤める病院の規模の大きさによって異なり、資格や経験の有無によっても差が出てくるので参考程度に考えておくとよいでしょう。
医療情報技師のやりがい、楽しさ
診療を円滑に進める根幹を担う
院内のさまざまな場面でオートメーション化が進むにつれ、医療情報技師の存在はますます重視されてきています。
自社開発した院内システムが各地の病院に導入されることにより、院内スタッフの負担が軽減され喜ばれるときには、やりがいを感じるでしょう。
また、AIの台頭やスマートホスピタルなどにより、今後も既存のシステムに躍進的な改良がなされたり、新たな開発に携わることができる可能性が大きく、この職業の魅力ともいえるでしょう。
医療情報技師のつらいこと、大変なこと
システムが止まると診療も止まる
現在、総合病院や大学病院などの比較的大規模な病院を中心に、診療におけるさまざまなセクションにオートメーションシステムが導入されています。
特に電子カルテや、検査項目のオーダーシステムがダウンしてしまったり通信障害を起こしてしまうと、診療自体が止まってしまうことがあるため、迅速に復旧にあたらなくてはいけません。
大規模かつ患者数の多い病院であればあるほど高度な技術が導入されますが、それらが医療の根幹を担う場合、入念な点検やメンテナンスを日々行い、障害を未然に防ぐ必要があります。
医療情報技師に向いている人・適性
医療システムに興味のある人
医療機関で使われるシステムは、一般の企業内に構築されるシステムと比べてより専門性が高いものになっています。
中には、医療機関でしか扱わないようなシステムもありますので、そういった医療に特化したシステム構築や管理保全に興味のある人には向いている仕事です。
そうでなくてもシステムエンジニアリングに興味があり、その分野を学んできた人には適性があると言えるでしょう。
また、医療機関で扱う情報は人命にかかわるものもあり秘匿性の高い情報であるため、守秘義務を守れる責任感のある人でなければなりません。
医療情報技師志望動機・目指すきっかけ
IT企業からの転職が多い
はじめ、システムエンジニアとして別の企業に所属して、働いているうちに医療系のシステム構築をする機会があって、必要性を感じて資格を取ったという人が多いです。
とくに、医療の知識もITの知識もまだあまりない頃に医療関連のチームに入り、苦労した経験から医療情報技師になった人もいるようです。
また、IT技術を活用して医療にたずさわることで人の役に立ちたいという思いを持ち、医療情報技師を目指すことなどもあります。
医療情報技師の雇用形態・働き方
契約社員または正社員がほとんど
医療情報技師の雇用形態は、契約社員や正社員がほとんどです。
雇用先は医療システムの開発・管理などを担当しているICT企業が多いですが、勤務先はその企業の医療システムを導入している医療機関になることも多いです。
正社員の場合、勤務時間や残業の有無なども企業によってだいたい決まっており、その企業の福利厚生を受けられます。
また、契約社員となっていますが、医療情報技師の場合は何度でも任期更新が可能で、自分から退職しない限りは働き続けることができるところが多いようです。
医療情報技師の勤務時間・休日・生活
日勤のみの勤務が多い
医療情報技師は、たいてい8:00~18:00くらいの時間帯で、7~8時間勤務という場合が多く見られます。
ただし、システムを運用していく上で何かしらの障害が認められる場合、診療に支障をきたさないために、診療終了後の時間を使って残業したり、病院の休診日に出勤したりすることもあります。
そのようなアクシデントがない限りは、平日の日勤、施設によっては土曜日に半日勤務、日曜日が休日というところが多いです。
勤務時間も休日も基本的に定まっているので、生活のスケジュールは管理しやすい部類の職種といえるでしょう。
医療情報技師の求人・就職状況・需要
上級医療情報技師の資格があると有利
現在、規模の大きな病院を中心に、紙のカルテから電子カルテへ移行する病院が増え、それとともに医療システムの開発をするベンダー、管理保全をする医療情報技師の需要は増えています。
特に、医療情報技師の上位資格である「上級医療情報技師」の認定を受けていると、就職先の幅が広がるでしょう。
医療情報技師は主にICT開発管理をする企業からの求人が主ですが、勤務先はその企業が開発した医療システムを導入している病院になることが多いです。
医療情報技師の転職状況・未経験採用
上級認定資格や実務経験があるとよい
医療情報技師の転職の際、上級医療情報技師の認定資格の所持者は特に優遇する企業が多くみられます。
また、病院で医療システムの管理保全をした実務経験があることも、転職には有利に働きます。
それ以外にも、ICT関連企業でシステム構築や運用の経験がある人の医療情報技師への転職も、比較的採用されやすいといえるでしょう。
未経験採用の場合は、医療情報技師・上級医療情報技師の認定を受けているか、理工学系の大学を卒業していると就職には有利です。
医療情報技師の現状と将来性・今後の見通し
医療従事者と患者双方のさらなる負担軽減へ
電子カルテやWEBでの診察予約を始めとした医療関係のシステムを築き上げることは、医師や看護師や薬剤師などの医療スタッフの負担を減らします。
患者さんやその家族にとっても、スマートフォンで簡単に診察予約が取れたり、先に問診票を送信しておけることで、病院で長い待ち時間を過ごす必要がなくなるなどの負担軽減に繋がります。
また、既往歴や手術の記録などの個人情報を的確に管理することが医療ミスの防止に、遠隔医療の実現が過疎地域に住む人々の命を守ることにも貢献します。
医療情報技師はまだまだ世間の認知度が高くはない職業ですが、これからの時代に必要とされる職業といえるでしょう。