歯科衛生士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「歯科衛生士」とは

歯科衛生士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

歯科医療の現場で、歯科医師の診療補助や、虫歯・歯周病予防措置、歯科保健指導を行う。

歯科衛生士とは、歯科診療の場で、歯科医師による治療の補助や、患者さんの口内の健康をサポートする専門職です。

歯科衛生士の業務内容を大きく分けると、歯石や歯垢の除去、フッ化物等の薬物の塗布を行う「歯科予防処置」、歯科医師の指示によって歯科医療の一部を補助する「歯科診療補助」、ブラッシングのやり方などを教える「歯科保健指導」があります。

歯科衛生士になるには、歯科衛生士養成課程のある学校で所定の過程を修了し、国家試験に合格することが必要です。

養成学校在学中は勉強で忙しい日々になりますが、国家試験そのものの合格率は95%前後で、在学中にきちんと学んでいれば合格はさほど難しくありません。

歯科衛生士の大半が歯科診療所に勤務しますが、それ以外に、総合病院の歯科や保健所、企業、また福祉領域などで活躍する人もいます。

「歯科衛生士」の仕事紹介

歯科衛生士の仕事内容

歯科医師の診療補助をはじめ、予防措置や口腔ケアの指導などを行う

歯科衛生士とは、虫歯や歯周病といった歯科疾患の予防や治療の補助をおこない、患者さんの口内の健康をサポートする専門職です。

国家資格を取得し、歯科診療に関連する知識、また使用する薬の用法・副作用といった知識をもって働いています。

歯科衛生士の業務内容は、大きく以下の3つに分けられます。

歯科診療補助

国家資格をもつ歯科衛生士は、歯科医師同様に、患者さんの口の中に手を入れて処置することが認められています。

診療の場では、レントゲン撮影補助や診療器具の準備、歯の型どり、削った歯の仮詰めなどを担当し、歯科医師の指示の下で治療のサポートをします。

歯科予防処置

歯科衛生士は、虫歯や歯周病を予防し、口内の健康状態を守るためにも活躍します。

歯垢や歯石といった口の中の汚れの除去、虫歯予防のためのフッ素の塗布などを実施します。

歯科保健指導

口の健康を守るために、日常的に必要な「歯みがき」の指導を行い、さらに生活習慣や食事のとり方、食べ方や噛み方などの改善指導にも携わります。

現代では虫歯予防の考えが普及しており、小学校に行って虫歯についての授業をしたり、歯垢の染め出しを行ってみがき残しのないよう指導したりすることもあります。

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歯科衛生士になるには

歯科衛生士養成課程のある学校で勉強し、国家試験合格を目指す

歯科衛生士として働くには、国家資格である歯科衛生士の資格取得が必要です。

まず、高校卒業後に歯科衛生士養成課程のある学校4年制大学や短期大学(3年制)、専門学校(3年制)に通い、所定のカリキュラムを修了して国家試験受験資格を得ます。

歯科衛生士国家試験の合格率は例年95%程度と非常に高いため、在学中にきちんと勉強していれば合格は難しいものではありません。

資格を取得した歯科衛生士の約9割が歯科診療所(歯科クリニック)に勤務していますが、それ以外に総合病院や大学病院の歯科などに勤務する人もいます。

歯科衛生士のキャリアパス

歯科衛生士として就職してからは、現場で実務を経験しながら、スキルアップを目指すことになります。

将来的には多様なキャリアパスがあり、歯科医院内の「衛生士長」という役職に就いてほかの歯科衛生士をとりまとめたり、「指導衛生士」になって新人を指導したりするのも、そのひとつです。

また、歯科診療所の数は非常に多いため、経験を重ねるなかで審美歯科など特定の分野に特化したクリニックに転職したり、上位資格である「認定歯科衛生士」の資格取得を目指したりする人もいます。

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歯科衛生士の学校・学費

歯科衛生士養成課程のある学校へ進学する

歯科衛生士になるためには、高校卒業後、歯科衛生士養成機関に通うことが最初のステップとなります。

養成機関の種類としては、4年制大学と、3年制の専門学校・短大があります。

このうち最も学校の数が多いのが専門学校で、経営母体は学校法人、社団法人、医療法人、あるいは歯科大学附属などさまざまです。

昼間部の専門学校が中心ですが、社会人を積極的に受け入れている学校では夜間部を設置しています。

歯科衛生士を目指せる3年制の短大も比較的数は多いですが、一方、4年制大学は数が限られています。

なお、3年制と4年制で、卒業後の歯科衛生士としての進路が制限されたり、業務内容に違いが出たりすることはありません。

4年制では時間をかけて多くのことを学べますが、3年制のほうが早く現場に出て経験を積めるのでよいと考える人もおり、それぞれにメリットやデメリットがあります。

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歯科衛生士の資格・試験の難易度

歯科衛生士として働くには国家資格が必須

歯科衛生士として働くには、歯科衛生士国家試験に合格し、資格を取得する必要があります。

無資格でも歯科医院などで働ける「歯科助手」とは異なり、歯科衛生士は国家資格を得ることで、患者さんの口の中に手を入れておこなう処置の実施が許されます。

そのため、歯科診療の現場では、歯科衛生士資格をもつ人が求められています。

歯科衛生士国家試験を受けるには、高校卒業後、3年制の専門学校もしくは短期大学、または4年制大学に通い、所定の課程を修めないといけません。

国家試験の難易度や合格率は?

歯科衛生士の国家試験の合格率は例年90%を上回っており、日ごろから学校できちんと勉強をしていれば、十分に合格を目指せます。

試験では、歯と口腔の構造と機能、疾病の成り立ち、人体のしくみといった基本の医療知識をはじめ、歯と口腔の健康と予防に関する社会の仕組み、歯科保健指導や歯科診療補助についての知識が問われます。

現場に出てからも役立つ知識が問われるため、十分な試験勉強をしておくことが大切です。

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歯科衛生士の給料・年収

非正規で働く女性も多く、平均年収はやや低め

令和元年度の厚生労働省賃金構造基本統計調査によれば、歯科衛生士の平均年収は34.9歳で約370万円となっています。

民間の各種調査データを基にみても、歯科衛生士の平均年収は300万円~400万円ほどがボリュームゾーンと考えられます。

国家資格が前提となる職種ではありますが、平均年収はそこまで高いわけではありません。

その要因としてには、歯科衛生士は女性の割合が圧倒的に多く、正社員以外にパートなどの非正規雇用で働く人が多いことが挙げられます。

非正規の給料は時給制で、フルタイムの正社員よりは低水準です。

また、ボーナスについては支給そのものがないか、あっても正規雇用に比べて支給額が少なめとなる場合が目立ちます。

勤務する歯科医院や働き方によって収入アップも可能

日本全国にはたくさんの歯科医院・クリニックがあり、規模や特色もさまざまです。

単純に医院の規模が大きければ給料が高い・待遇がよいというわけではありません。

個人経営の小さな歯科医院であっても、自費診療に力を入れており利益が多く出ているところなどでは、高めの給与設定であったり、待遇を手厚くしていたりするところもあります。

基本的に、歯科衛生士の給料はキャリアと能力に応じてアップしますが、どこかで頭打ちになるケースが多いようです。

そのため、何度も転職をして収入アップを目指したり、あえてフリーランスになって複数の歯科医院での勤務を掛け持ちしている人もいます。

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歯科衛生士の現状と将来性・今後の見通し

安定したニーズがあり、多様な活躍が求められている

虫歯や歯周病の予防措置、保健指導、歯科医師の診療補助をおこなう歯科衛生士は、歯科診療の場をはじめ、人々の口腔内を健康に保つために不可欠な商業です。

「歯科医院の数はコンビニよりも多い」といわれるように、日本各地に数多くの歯科医院が存在し、その多くの施設で歯科衛生士の求人が出ています。

就職先に困りづらいという点は、歯科衛生士の魅力のひとつといえるでしょう。

また、現代では「予防歯科」の考え方が広まり、定期的な歯のクリーニングや検診を受ける人が増えています。

あわせて、インプラントなど高度な治療に関するニーズ、また高齢化による在宅診療および老年歯科のニーズも高まっており、さまざまな場で歯科衛生士の活躍が求められています。

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歯科衛生士の就職先・活躍の場

歯科医院を中心に、民間企業や介護施設などで働くことも可能

歯科衛生士の就職先として最も割合が大きいのが歯科医院です。

歯科医院において、歯科医師が治療を円滑に進めるためには、専門的な知識・技術をもった歯科衛生士の活躍が欠かせません。

歯科医院は個人経営のところが多いですが、日本各地に非常に多くの施設があります。

一般的な歯科診療を手掛ける歯科医院以外に、「審美歯科」「インプラント」など特色ある診療に力を入れているところもあります。

このほか、総合病院や大学病院の口腔外科や歯科、民間の歯科専門機材メーカー、歯科材料メーカーなどへ就職する人もいます。

さらに、高齢化社会が進むなかで、介護施設や福祉施設などでの歯科衛生士のニーズも徐々に高まっています。

たとえば、寝たきりの人の歯みがきを介助したり、定期的に口の中の検診を行い、少しでも長く自分の歯でご飯を食べられるような手助けしたりといった仕事に携わる人もいます。

歯科衛生士の1日

他職種と連携しながら歯科医師の治療をサポートする

歯科衛生士は、多くの場合には「歯科医師」や「歯科助手」など、他の専門スタッフと連携して仕事をしています。

勤務先によっては「看護師」や「介護職員」などと一緒に働くこともあります。

<歯科医院に勤務する歯科衛生士(アルバイト)の1日>
午前の半日勤務のみの日のシフト例です。

8:00 出勤・診療準備
8:20 朝礼・情報共有
8:30 午前診療
12:00 午前診療終了
12:30 業務終了

<総合病院(歯科)に勤務する歯科衛生士の1日>

8:40 出勤
8:50 朝礼
9:00 外来診療
12:30 休憩
14:00 入院患者の口腔ケア
15:30 手術の準備・補助
17:30 業務終了

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歯科衛生士のやりがい、楽しさ

患者さんの口の健康に貢献し、喜んでもらえること

歯科衛生士は、患者さんとのコミュニケーションの中で、大きなやりがいを感じる人が多いようです。

不安を抱えて来院した患者さんが、無事に治療が終わって明るい笑顔を見せてくれたときや、歯科衛生士がおこなった処置で「ありがとう」と声をかけてくれたときなどには、うれしい気持ちになるでしょう。

また、現代は虫歯や歯周病の予防に力を入れるようになっており、歯石や歯垢除去、歯磨き指導など、各職場で歯科衛生士に期待される役割も大きくなっています。

患者さんと上手にコミュニケーションをとることができ、患者さんの健康な口や歯をつくることに貢献できたときにも、達成感が味わえます。

また、歯科医院は日本全国に数多くあるため、自分に合う勤務先を選びやすく、就職に困りづらい点も歯科衛生士の魅力といえます。

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歯科衛生士のつらいこと、大変なこと

職場の人間関係に関する悩みを抱える人も

職場の人間関係に関する悩みを抱える人も

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歯科衛生士に向いている人・適性

細かな作業が好きで、人に対して思いやりの気持ちをもてる人

歯科衛生士は、子どもからお年寄りまで幅広い年代の患者さんと接します。

患者さんによっては、歯科治療に大きな不安を抱いていたり、怖がっていたりするため、適切な声掛けなどリラックスできるような対応をとることが重要です。

さまざまな人と関わることが好きで、他者に対して思いやりの心をもてる人には向いている仕事といえるでしょう。

また、歯科衛生士は必要に応じて、患者さんの口の中に手を入れてさまざまな処置をします。

歯石とりやブラッシング指導など繊細さが求められる作業も多いため、細かな作業が好きな人にも向いています。

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歯科衛生士志望動機・目指すきっかけ

医療職としての専門性や、人の役に立てる仕事がしたいという思い

歯科衛生士になる動機は、人によってさまざまです。

歯医者で口の中を診てもらったり、歯をきれいにするのが好きだったという人もいれば、医療職への興味関心から歯科衛生士を目指していく人もいます。

歯科衛生士は女性の活躍が目立つ職業であるため、「国家資格を取得し、手に職をつけたい」という思いで、歯科衛生士になろうとする人も少なくありません。

歯科衛生士は高いニーズのある職業ですが、患者さんがいてこそ成り立つものです。

この仕事を目指していく際には、高い専門性を身につけることはもちろん大切ですが、同時に患者さんへの思いやりや、人の役に立つ仕事がしたいという気持ちをもつことも大事といえます。

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歯科衛生士の雇用形態・働き方

正社員をはじめ、さまざまな働き方が可能

歯科衛生士の雇用形態・働き方はさまざまです。

正社員としての採用も積極的に行われており、一般歯科であれば、歯科衛生士は基本的な3つの業務(診療補助、保健指導、予防処置)を全般的に担います。

矯正歯科や審美歯科などの専門領域に特化した医院では、それぞれの専門知識やスキルを身につけて、歯科医師をサポートします。

経験を積むと、後輩の歯科衛生士の指導などにも携わります。

また、歯科衛生士はアルバイト・パートの求人も多数出ており、ライフスタイルに応じた働き方を選択しやすいことが特徴です。

たとえば、もともと正社員として働いていた人が、結婚・出産を機に、パートに切り替えるといった形で仕事を続けていく人も多いです。

このほか「紹介予定派遣」と呼ばれる働き方や、フリーランスとして働く歯科衛生士もいます。

歯科衛生士の勤務時間・休日・生活

診療時間を中心に勤務し、規則正しい生活を送りやすい

歯科医院に勤める歯科衛生士は、各医院の診療時間に合わせて働きます。

診療時間を中心として、その前後の30分から1時間程度で準備や片付け、掃除などを行います。

残業時間はあまり多くなく、規則正しい生活を送りやすい仕事ですが、患者さんが多かった日、診療時間ギリギリに患者さんが入った日などは、片付けや診療に使う器具の補充などが多少長引くこともあります。

医院の休診日はスタッフも休みをとります。

フルタイム勤務の場合、完全週休2日制で休める場合もあれば、休診日が少ない医院では交替で休みをとって月に8日程度の休みとなることもあります。

パートタイムで1日に数時間だけ働く人や、フリーランスでいくつもの職場を掛け持ちする歯科衛生士もいます。

歯科衛生士の求人・就職状況・需要

日本各地の歯科医院を中心に多数の求人が出ている

歯科衛生士のほとんどが歯科医院に勤務しています。

いまや、歯科医院の数はコンビニよりも多いといわれるほどで、日本各地のどの地域でも働けるチャンスがあります。

とくに都市部には歯科医院が乱立しており、年間を通じて歯科衛生士の求人を出しているところも見られます。

経験者は歓迎されやすいですが、人手不足であることから、国家資格を取得していれば新卒や実務未経験でも就職することは可能です。

希望条件を厳しく設定し過ぎなければ、就職先を見つけることはそこまで難しくないでしょう。

歯科医院以外では、大学病院や総合病院の歯科や口腔外科、また検診センターや介護施設、福祉施設などでも歯科衛生士の求人が出ることがあります。

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歯科衛生士の転職状況・未経験採用

転職希望者向けの中途採用を行う歯科医院も多い

歯科衛生士はまだまだ人材が不足しているため、転職希望者を受け入れる歯科医院は多くあります。

とくに現場で経験を積んだ人材は歓迎されやすく、実際にスキルアップや待遇面の向上などを目的として、何度も転職をしている歯科衛生士もいます。

もともと無資格の「歯科助手」として働いていた人が、業務内容に不足感を覚え、あらためて歯科衛生士の学校に通って国家資格取得を目指すといったケースもあるようです。

いずれにしても、歯科衛生士としての確かな知識・技術を身につけていけば、まだまだ転職のチャンスは十分になる職業といえます。

他業界から歯科衛生士を目指す際の注意点

他業界から歯科衛生士への転職を希望する場合は、歯科衛生士養成学校に通う時間やお金について、よく調べて計画的に行動したほうがよいでしょう。

国家試験を受けるには最低でも3年以上の勉強期間が必要になり、思い立ったらすぐ働けるといった仕事ではありません。

なかには現在の仕事を続けながら、夜間部の養成学校に通い、安定収入を得ながら転職のために勉強していく人もいます。

なお、歯科衛生士国家試験には年齢制限がないため、何歳からでも転職を目指すことは可能です。

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歯科衛生士と歯科助手の違い

歯科衛生士は養成課程を修了し、国家資格取得が必要

「歯科衛生士」と「歯科助手」は、どちらも歯科医院を中心に勤務し、歯科医師の治療のサポートなどを行います。

ただし、両者にはさまざまな違いがあり、最もわかりやすいのは国家資格の必要の有無です。

歯科衛生士になるには国家試験に合格し国家資格を取得する必要がありますが、歯科助手には法的な資格の定めがなく、特別な勉強をしていない人でも働けます。

こうした違いから、歯科衛生士には歯科医師の指示の下で、患者さんの口の中に手を入れる処置をおこなうことが認められています。

歯科衛生士は歯科に関する専門知識をもって、歯科医師の治療をそばでサポートしていきます。

一方、歯科助手は一般的に、歯科医院を円滑に運営するための裏方としての業務を任されます。

たとえば受付や会計、カルテの記入といった事務全般や、掃除や片付けなどの雑務です。

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