「診療放射線技師」とは

医師の指導の下、放射線を用いた各種検査や、がん治療の際の放射線治療を専門的に行う。
診療放射線技師は、医師の指示の下で、放射線を用いて検査や治療を行うことです。
CTやMRI、微量の放射性物質を用いて病気を診断するラジオアイソトープ検査(RI検査)や、がん細胞を破壊する放射線治療などを担当します。
放射線の照射は人体に害を及ぼす危険性があるため、放射線の専門化である診療放射線技師と医師・歯科医師にしか認められていません。
診療放射線技師になるためには、放射線技師の養成課程がある大学や専門学校で3年以上学び、国家試験に合格することが必要です。
近年は、乳がん検診やマンモグラフィ検査(乳房X線検査)など、女性に対する検査ニーズが増えているため、女性技師への需要が高まっています。
「診療放射線技師」の仕事紹介
診療放射線技師の仕事内容
検査・治療のために放射線を扱う専門家
診療放射線技師は、医師の指示の下、放射線や磁気装置を用いた検査や、放射線治療を行う仕事です。
レントゲンやCT・MRI・血管造影検査・マンモグラフィー・核医学検査など、さまざまな機械を使って撮影を行い、病気の診断に必要な画像を撮影します。
また、がん細胞を破壊したり、外科手術をほどこすのが難しい部位の病気や、手術では再発しやすい病気を治療するための放射線照射も、重要な仕事のひとつです。
放射線は人の細胞を傷つけたり破壊したりする性質があり、扱うのに専門技術を要するため、診療放射線技師や医師・歯科医師のみが扱えるものです。
しかし、歯科以外の診療科では専門職である診療放射線技師が担当することが多くなっています。
通常だと超音波検査は臨床検査技師の業務ですが、画像検査に精通した診療放射線技師に任されることもあります。
診療放射線技師の就職先・活躍の場
病院で放射線を使う検査や診療をおこなう
診療放射線技師のおもな就職先は病院ですが、勤務する病院によって業務は異なります。
たとえば、がん治療をおもに行っている医療センターでは、診断に使う画像撮影のほか、放射線治療も頻繁に行うことになります。
また、人工透析の際に使用するシャント(透析専用として作られる血管)の手術は、血管造影画像を見て、きちんと血液が流れているか、とくに人工血管の場合は詰まりや炎症が無いか確認します。
整形外科の手術でも、患部の骨を繋ぐために患者さん自身の骨盤を移植したり、金属スクリューなどで固定するため、診察ごとに画像診断を行って、炎症やずれが無いかを確認します。
患者さんの放射線被ばくに対する不安を緩和するため、説明を行ったり、機材を管理するのも、診療放射線技師の大事な仕事です。
診療放射線技師の1日
患者さんの状態に合わせた業務
大規模な病院での業務は範囲が広く、それぞれに検査スケジュールが決められています。
急患が入ることはありますが、基本的には一般外来と予約で検査をする人数があらかじめ決められているため、スケジュール通りに仕事が進めば大幅な残業などはほとんどないといってよいでしょう。
<病院で働く診療放射線検査技師の1日>
7:40 出勤・使用機器の点検
8:20 ミーティング・夜間の当直者からの引継ぎ
8:30 受付開始・検査
12:15 休憩
13:30 午後の受付開始・事務作業
17:00 業務終了・当直者に引継ぎ
診療放射線技師になるには
診療放射線技師の国家資格を得る
診療放射線技師として働くには、国家資格である「診療放射線技師」の資格取得が必要です。
高校卒業後、文部科学省または厚生労働省が指定した診療放射線技師養成課程のある4年制大学、短期大学(3年)または専門学校(3年)を卒業すると、国家試験の受験資格が得られます。
学校では画像検査や放射線治療に関する勉強はもちろん、医療従事者としての倫理を学んだり、技術を身につけるための実習も多くあり、医師の診断により役立つ画像を構築する技術を学びます。
国家試験に合格すると、晴れて診療放射線技師として働くことができます。
診療放射線技師は患者さんとじかに接する機会の多い職種のため、患者さんの状態に合わせて気配りをしたり、患者さんが安心して検査に臨めるよう、機材のメカニズムを分かりやすく説明します。
診療放射線技師の学校・学費
放射線技師の受験資格を得られる学校へ
診療放射線技師になるには、文科省もしくは厚労省指定の養成機関(4年制大学、短大もしくは専門学校)に通い、国家試験の受験資格を得ます。
即戦力が求められる診療放射線技師を目指す人にとっては短期大学や専門学校の方が、実践的教育をしっかり受けられるメリットがあります。
一方、4年制大学では実践的な教育はもちろん、教養部で幅広い学問を修めることができ、放射線技師の養成者になったり、大学院に進んで研究をすることもできます。
自分がどのような働き方・学び方をしたいかによって、選ぶべき教育機関が変わります。
学費は、約250万円〜400万円程度のようです。
診療放射線技師の資格・試験の難易度
国家試験受験者数が増えている
診療放射線技師として働くには、診療放射線技師の国家資格を取得する必要があります。
また、平成28年度(2016年度)より、新たに沖縄県でも診療放射線技師の国家試験が受けられるようになりました。
診療放射線技師の国家試験の合格率は、新卒・既卒合わせて75.3%、新卒のみで84.8%です。
しかし、診療放射線技師を目指す人は増えており、受験者数が増加している一方で、合格率は低下しています。
他の国家試験にも言えることですが、卒業後年数が経つごとに国家試験合格率は急激に下がってゆきます。
ですから、学生のうちに十分な知識を蓄え、新卒で合格を目指すのがもっとも合理的といえるでしょう。
診療放射線技師の給料・年収
病院の規模や夜勤の有無で差がある
病院正職員の診療放射線技師の給与は、月収約20万円〜30万円、年収300万円〜500万円程度が相場となっています。
ただし、病院の規模や地域によって差があるほか、夜勤当直の有無によって給与が変わることがあります。
また、中には契約社員や派遣社員として働く人もおり、その場合は時給1500円〜3000円程度が一般的です。
待遇も勤務先によって違いがありますが、超音波検査のできる診療放射線技師を求めている病院が多くみられます。
診療放射線技師のやりがい、楽しさ
透視下での手術や放射線治療で活躍する
診療放射線技師の重要な仕事はいくつもありますが、透析専用の血管(シャント)を作る手術や、整形外科の骨移植手術・金属で骨を固定する手術に参加することもあります。
診療放射線技師のエックス線透視下で手術をすることで、目視できない場所へも細かな調整をしながら手術をすることができます。
また、がん患者さんへの放射線治療も診療放射線技師の大切な業務です。
放射線治療により、病変部位を摘出したり、体の機能を失うことなしに治療を行うことができ、患者さんのQOL(生活の質)向上に貢献することができます。
診療放射線技師のつらいこと、大変なこと
検査をする患者さんの不安と向き合う
診療放射線技師の行う検査には、患者さんの体の内外から放射線を利用して行う検査・治療があります。
撮影に使われる放射線による被ばくはごく少量のものですが、患者さんによっては不安を感じる人もいます。
患者さんが納得をして、自ら機材の前に来てくれない限り、検査や治療はすることができません。
そんな患者さんの不安な気持ちに寄り添い、患者さんが納得いくまで説明をして、不安を取り去らなければならない場面もあります。
また、放射線物質を使わないMRIなどの検査でも、狭い空間に入ってもらうために、患者さんにとっては怖い思いをさせてしまうこともあります。
もっとも近くにいる診療放射線技師が温かく見守り、「この人がいれば大丈夫」と感じてもらえるまでの信頼を築く努力が必要です。
診療放射線技師に向いている人・適性
人と接するのが得意な人、工夫できる人
診療放射線技師は、看護師と並び、患者さんと接することが多い職種に入ります。
ですから、患者さん一人ひとりの気持ちを汲み、その背景を想像して、思いやりをもって仕事ができる人に特性があると思われます。
また、医師の診断しやすい画像を撮影するために、機材のメカニズムを把握し、患者さんの姿勢の微調整をしたり、もっとも適切な状態で撮影する工夫をこらせる人は重宝されます。
診療放射線技師は医師や看護師と共に手術に立ち会うこともあるので、チーム医療の一端を担うものとしてのコミュニケーション力・責任感も重視されます。
診療放射線技師志望動機・目指すきっかけ
知人や身内がきっかけの人は多い
レントゲンを撮影してくれる人がいるのは知っていても、その人たちが「診療放射線技師」という職種で、国家資格であるということは、必ずしもよく知られたことではありません。
自分や身の回りの人が怪我をして、エックス線撮影などを行う専門の人がいるのをはじめて知ったという人も、よく見受けられます。
とくに女性の場合、人に触れる仕事なのに女性技師が少ないという現状を知り、診療放射線技師になろうと思ったという人が多いようです。
近しい人が病院に勤務していて、そこで診療放射線技師という職種の人がいるのを知り、興味を持ったという人もいます。
診療放射線技師の雇用形態・働き方
正職員のほか、パートやアルバイトも
ベッド数100以上の病院では、正職員の求人が多い傾向があります。
また、入院施設のない診療所ではパート社員として、午前中のみ勤務を求められることもあります。
正職員として働いている場合でも、子育て支援を積極的に行い、時短勤務の相談にも応じてくれる病院もあります。
さまざまな雇用形態があり、人の手が必ず必要な職種であること、体に触れる職種でもあることから、女性の診療放射線技師の活躍は今後も増えていくと考えられます。
診療放射線技師の勤務時間・休日・生活
需要増加に伴いシフト制への移行も
最近では、緊急で血管造影撮影をすることも増えてきており、診療放射線技師の勤務時間にも変化があるようです。
そのため、定時勤務からシフト制に移行し、夜間の検査にもこたえられるような体制を整えている病院が増えています。
しかし、全体の労働時間が大きく増えているということはなく、休日も確保されています。
子育てをしながらの勤務の場合は、夜勤の時間帯に子どもの世話をしてくれる人の有無で働きやすさが変わってくると思われます。
診療放射線技師の求人・就職状況・需要
求人は増加傾向にある
夜間の検査が増えてきていること、女性技師の需要が増えていることなどから、病院からの診療放射線技師の求人は増加傾向にあるようです。
診療放射線技師の国家資格の所持者であることはもちろん、「放射線取扱主任者(1級・2級)」の国家資格を所持していると、さらに就職はしやすいでしょう。
放射線取扱主任者、とくに1級の国家資格は平均合格率21.7%の難関資格であり、放射線を安全に取り扱う責任者として大きな強みとなります。
中級以上の英語(読解、記述、会話)力があれば、画像診断機器の輸入販売メーカーでの営業販売業務に就くこともできます。
診療放射線技師の転職状況・未経験採用
病院職員から企業への転職も可
病院職員の場合は、未経験者・新卒・ブランクのある診療放射線技師も積極的に採用している傾向がみられます。
ですが、企業への就職は、応募資格として診療放射線技師の実務経験者であることを挙げている企業が多いです。
実務未経験者であっても、画像診断機器に関して精通した知識をもっている人や、経営・コンサルタントに興味がある人を募っている傾向です。
企業に就職を希望するにせよ、画像診断機器の取り扱い経験を積む必要があるでしょう。
診療放射線技師の現状と将来性・今後の見通し
適切な処置と思いやりが問われる
技術の進歩によって次々と最新機器が開発されていますが、重要なのは、いかにわかりやすく適切な画像を撮影するかどうかであり、それは診療放射線技師の腕にかかっています。
また近年はピンクリボン運動などにより、マンモグラフィ検査(乳房X線検査)を定期的に受ける女性も増えており、女性技師の需要が高まっています。
患者さんと直接接する機会が多いため、患者さんの不安を取り除きながら、放射線のスペシャリストとして誇りをもって活躍できる人材が求められます。