グラフィックデザイナーの苦労(体験談)

自分との戦い

グラフィックデザイナーの仕事は、上司や先輩からの助言、アシスタントの手助けがあって成り立っていますから、そういう意味では共同作業という一面もあります。

しかしそれらを含めて、最終的には自分自身の判断で作品の方向性を決め、ひたすら完成をめざさなければなりません。

作品の締め切り、プレゼンテーションや入稿までの日程は決まっており、たとえ行き詰まってもスランプに陥っても、手と頭を止めるわけにはいきません。

評価が自分に返ってくるのは、いい評価や喝采だけではありません。作品の出来が悪く、評価が低いものとなってしまえば、クライアントの担当から外されることもあります。

そうしたプレッシャーと闘いながら一定の成績をおさめられるようになるには、楽しい仕事とはいえ、強い精神力と体力、知力が必要です。

苦労が報われないこともある

かつて大手広告代理店の電通が、東京にオリンピックの招致を成功させる仕事を、ミッションとして請け負ったことがあります。

会場に居並ぶ招致委員会関係者に、東京がいかにオリンピックの開催地にふさわしい場所であるかをプレゼンテーションするための企画・演出を、すべて任されたのです。

これは有名な話でテレビでも取り上げられましたが、スピーチの原稿だけで数百回、画像の作り込みや演出には、それ以上の修正回数と時間を費やしたとされています。

当然、グラフィックデザイナーをはじめとするスタッフは、泊まり込みの状態がつづきました。

それでも招致を勝ち取れなかったことで、メディアや一般の消費者からは非難めいた声があふれ、スタッフたちの苦労が報われることは一片のカケラさえありませんでした。(みなさんご存知のとおり、その後の2020年の招致は勝ち取っています。)

またこのような日常ですから、一般の会社に勤めている人のように、5時になったら退社、土日・祝日は休みなどといったこともありません。

グラフィックデザイナーとしての仕事が大好きで、苦労を苦労とは思わない人なら、長くつづけられるでしょう。