商社マンの仕事内容、具体的には何をするの? わかりやすく解説
この記事では、商社マンの仕事内容をイメージしやすいように、実際の仕事内容を例に挙げて解説します。
商社マンの仕事への理解が深まるはずです。
商社マンの仕事内容とは?
- 商社:食品や医療品、繊維、鉄鋼、石油、自動車など様々なものを取引する会社
- 商社マン:商社内で事務職ではなく、総合職として営業などに携わる人のこと
商社とは、「カップラーメンからロケットまで」という有名な言葉の通り、世の中のありとあらゆるものを取引する会社です。
扱っている商材が多いことが、商社の仕事内容をイメージしにくくしている一つの要因です。
商社の仕事内容を図にすると以下のようになります。
世界中には星の数ほどの生産業者があり、さまざまな商品を、さまざまな価格・条件で販売しています。
一方、メーカーや小売業者などは、できる限りよい品物を、できる限り安く調達したいというニーズを抱えています。
商社マンは、世界中を飛び回ってそれらの情報を集め、業者と取引条件を交渉し、売り手と買い手をつなぐ「パイプ役」となることがおもな仕事です。
私たちがさまざまな商品を手軽に購入したり、サービスを利用したりできるのは、その影に商社マンの働きがあるからであり、商社は私たちの暮らしにとって必要不可欠な存在といえるでしょう。
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商社の仕事内容は大きく分けると3種類
商社の仕事内容が「パイプ役」であることは上述の通りです。
この仕事内容を大きく3つに分けることができます。
- 商取引業務
- 金融業務
- 投資業務
ひとつずつ解説します。
商取引業務
商社マンの仕事内容と言われて多くの人がイメージするのが、この「商取引業務」です。
仕入先から調達した商品を、取引先へと販売する商取引業務、いわゆるトレーディングのことです。
商社マンの仕事は、単純に品物を右から左へ流すだけではありません。
上記の通り、商社マンの仕事は商取引にまつわる付帯事業全般に広く及びます。
ときには、商品や業界全体のマーケティングを行って、それに基づいて販売戦略を立案し、広告宣伝を企画したり、販路を開拓したりと、流通の上流から下流まで総合的にプロデュースすることもあります。
また、商社は扱う商材の種類が決まっているか否かで、一般的に2つの種類に分けられます。
- 総合商社:ありとあらゆる商材を取り扱う
- 専門商社:一部の分野に特化した商材を取り扱う
商取引の金額は1件で数億円や数十億円にのぼることも珍しくなく、地理的にも経済的にも大規模である点が特徴的です。
金融業務
商取引にはリスクがつきものです。
【商取引のリスクの例】
- 為替の変動
- 過剰在庫
- 輸送時の積荷の破損
- 悪天候による配送の遅延
- 資金不足
このようなリスクを抱える仕入先・販売先企業問題を解決するために、以下のような金融事業を手掛けている商社が多くあります。
【商社が行う金融事業の例】
- 外国為替取引
- 先物取引やデリバティブ
- 保険代理業務
- 子会社や取引先への保証付与
このような金融事業は、一般の人がイメージする商社の仕事内容と異なるかもしれませんが、金融事業から得られる手数料収入や保険料収入は、商社を支える収益の柱のひとつとなっています。
投資業務
近年の総合商社は、資源開発や新エネルギー開発など、投資事業にもきわめて積極的です。
成長が見込める産業に対しては、ただ単純に資金を投下するだけでなく、自社の人材を出向させるなどして管理運営に主体的に参画し、事業拡大を図っています。
典型的な事例は、総合商社によるコンビニ業界への出資です。
【総合商社によるコンビニ業界への出資】
- 三菱商事⇒ローソン
- 三井物産⇒セブンイレブン
- 伊藤忠商事⇒ファミリーマート
各社は、それぞれの出資先に対して商品企画を行ったり、「POS」と呼ばれる在庫管理システムを提供したりして熾烈な覇権争いを繰り広げており、コンビニ同士の戦いは商社の代理戦争ともいわれています。
出資しているコンビニエンスストアの業績が上がれば、総合商社には以下のメリットがあります。
【コンビニエンスストアの業績上昇で商社にはこんなメリットが】
- 保有しているコンビニエンスストアの株式価格上昇
- コンビニエンスストアの配当金の上昇
- 商社のバリューチェーン内の収益上昇
出資したコンビニエンスストアの業績が上がれば、商社が配当金などを受け取れるだけではなく、商社が出資する食品加工会社や日用品会社の収益も上がります。
このように、総合商社は投資による相乗効果でさらに収益を上げる仕組みを構築しています。
商社マンの仕事内容と役割
商社マンの役割は、生産業者と製造業者・販売業者をつなげ、商取引をサポートすることです。
ただし、近年は総合商社を中心として業務は多様化・複雑化しており、それに伴って商社マンに求められる役割も、単なる仲介役に留まらなくなっています。
上述したように、事業投資に注力する商社もあれば、自社で製品開発から製造、販売まで一貫して手掛ける「SPA事業」を行う商社、IT事業を手掛ける商社もあります。
商社マンは、ときと場合に応じて、卸売業者ではなく、投資家になったりメーカーになったりIT業者になったりと、その役割がさまざまに変化する点に大きな特徴があります。
世間でいわれるように、商社マンの役割は「何でも屋」なのかもしれません。
現在の商社マンには、ひとつの商品・サービスに対して、複数のツールを用いてさまざまな角度からアプローチし、今までになかった新しいビジネスを創出していくことが求められています。
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商社マンの勤務先・有名な企業
商社マンの勤務先は大きく分けると3種類あります。
- 総合商社
- 専門商社
- 商社の子会社・出資先企業
ひとつずつ見ていきましょう。
総合商社
学生から人気が高いのは総合商社です。
有名な商社としては、以下の総合商社7社がまず第一に挙げられます。
【主な総合商社7つ】
- 三菱商事
- 三井物産
- 伊藤忠商事
- 住友商事
- 丸紅
- 豊田通商
- 双日
総合商社には、三菱商事や伊藤忠商事、丸紅など、日本を代表するそうそうたる大企業が名を連ね、世界規模で大きくビジネスを展開していることが特徴です。
いずれの企業も日本経済をけん引する大会社であり、最大手の年間売上高は10兆円を超えるという破格のビジネススケールで、グローバルに活躍することができるでしょう。
また、たとえば三菱商事は環境インフラやエネルギーに、三井物産は機械インフラや生活産業分野に強みがあるといったように、同じ総合商社でも、各社が得意とする商材には違いがあります。
さらに近年の総合商社は、「商取引」と「投資」の二輪で事業を展開しています。
とくに近年は、積極的に投資事業を行っており、新興国や途上国の資源開発事業に投資し、その資源の取得権を得たり、太陽光発電などの新エネルギー開発事業に参加したりしています。
ときには総合商社同士が手を組んで、海外のビッグプロジェクトに参画することもあるようです。
投資といっても、ただ単純に資金を注入するだけではありません。
長年の商取引で得たノウハウやインフラを生かして、必要な資材を供給したり、人材を派遣したり、技術提供したりして、主体的に投資先の経営に関わるケースもよく見受けられます。
専門商社
各分野に特化した専門商社も全国に約60社ほどあります。
有名な専門商社には以下のような会社が挙げられます。
【有名な専門商社】
- 医療業界:メディセオパルタック
- 食品業界:三菱食品
- 鉄鋼業界:日鉄住金物産
- エネルギー業界:伊藤忠エネクス
専門商社は、医療品系、機械系、エネルギー系など、それぞれに独自の強みをもち、特定の分野に経営資源を集中させて事業を行っています。
業務範囲という点では総合商社に劣りますが、M&Aを繰り返した結果、医薬品業界のメディセオパルタックや鉄鋼業界の日鉄住金物産などのように、売上高数兆円に達する大企業も複数誕生しています。
さらに、専門商社のなかには、独立系ではなく、総合商社やメーカーなどの子会社・系列会社として、親会社との取引を中心に行っているところもありあり、トヨタ傘下の豊田通商がその代表格です。
商社の子会社・出資先企業
商社マンは、商社本体ではなく、その子会社や出資先の企業に出向するケースもあり、とくに近年は事業が多角化している影響もあって、出向者は増加傾向にあります。
出向期間は数か月~3年程度が一般的ですが、より長期に及ぶ場合もあり、なかにはそのまま出向先の企業に転籍するという人もいます。
出向というと、テレビドラマなどでは左遷のように扱われることもあって、ネガティブなイメージを抱く人が多いかもしれません。
しかし、実際には、さまざまな経験を積んでビジネスマンとしてキャリアアップするために命じられるケースが大半です。
また、本社とつながりのある人材を送り込むことで、子会社や関連企業との連携を強化するといった狙いもあります。
出向から戻ってきて後、昇給したり役職が付いたりということも頻繁にありますので、たとえ出向となっても、自分を成長させるチャンスと捉えて、前向きに業務に励むことが大切です。
総合商社と専門商社の違い
両者の最も基本的な違いは、取り扱う分野の幅であり、ありとあらゆるものを取り扱うのが総合商社で、特定の分野の取り扱いに偏っているのが専門商社です。
専門商社のなかには、複数の商材を扱う「複合型専門商社」もありますが、それでも扱う分野はせいぜい4~5種類であり、「カップラーメンからロケットまで」といわれる総合商社の比ではありません。
ただ、総合商社の仕事は部門別に分かれており、食料品、繊維、自動車、鉄鋼、エネルギーなど、それぞれの商社マンが個別の商材を扱い、また分野をまたいで異動することもありません。
したがって、商社マン個人単位で考えた場合、分野という意味においては、総合商社と専門商社にそこまで大きな違いはないかもしれません。
また、事業規模という点においても、各業界トップの専門商社は事業再編の結果、総合商社と肩を並べるほどの大企業となっているため、やはり決定的に違うとまではいえないでしょう。
それらよりも明確に異なっているのは、専門商社は、あくまで輸出入ビジネスなどの「トレード」を主軸としている一方、総合商社は、トレードを中心に、さまざまな関連事業を手掛けている点です。
総合商社は、商取引のほかにも物流、情報提供、マーケティング、金融など、さまざまな種類のサービスを提供しています。
総合商社にとって、トレードは本業とはいえ、数ある機能のうちのひとつにすぎません。
たとえば、総合商社で働く商社マンは、取引先に対して新しい物流手法を提案したり、新製品製造のための工場を誘致したり、市場分析を行って販売戦略を練ったり、広告宣伝をサポートしたりします。
ときには、商社がその事業に投資し、自ら事業運営に乗り出すこともあります。
卸売業の枠から出ることの少ない専門商社に対し、総合商社は、必要に応じて製造業になったり、小売業になったり、コンサルティング業になったり、投資家になったりします。
一つのビジネスに対し、複数のアプローチ手法を持っている点が、総合商社の大きな特徴であり、専門商社との違いといえるでしょう。
商社マンの仕事の流れ
-
依頼を受ける
商社マンの仕事は、取引先企業から「こんな商品・資材・原料が欲しい」という依頼を受けるところから始まります。 -
仕入先の選定
既存の仕入先から希望の品をスムーズに調達できるケースもあれば、情報を集めて扱っている生産業者を訪問したり、国内に取り扱い業者がなければ海外にまで探しに行くケースもあります。 -
商談・交渉
仕入先が見つかれば、取引量や希望金額などの条件を交渉します。相手に合わせて外国語でコミュニケーションを取らないといけないケースも多く、高いコミュニケーション能力が求められます。 -
付帯サービスの提供
商品を調達するだけでなく、市場環境や競合状況などの情報を提供したり、新しい物流方法を提案したり、リスクヘッジするための金融商品を売り込んだりと、付帯サービスの提供にも努めます。
なお、上記の流れとは逆に、生産業者からオファーを受けて、販売先企業を探したり、資材の新しい利用方法を提案したりするケースもあります。
商社マンの仕事内容と関連した職業
商社マンの仕事内容と関連のある3つの職業を紹介します。
通関士
- 通関手続きの書類作成代行
- 国家資格が必要
商社マンと同じ貿易系の職業としては、通関士が挙げられます。
通関士は、商社などの輸出入業者が通関手続きを行う際、その書類作成などの実務を代行する仕事で、業務を行うには財務省管轄の国家資格が必要です。
自由度の高い商社マンと比較すると、通関士はより事務的で堅実な仕事内容になりますので、同じ貿易業界に属する職業といっても、適性は商社マンと正反対といえるでしょう。
物流企業社員
- 運搬物の保管・管理・配送を行う
- 「物流マン」と呼ばれることも
物流企業は、商品をある場所からある場所まで運ぶことが仕事です。
ただ、ものを運ぶといっても、運搬中に品質が低下することを防いだり、一定期間倉庫で保管したり、梱包したり、荷物の現在地点を知らせたりすることも物流機能の範疇であり、業務内容は多岐にわたります。
商社と物流企業は切っても切れない関係にあり、物流企業で働く社員は、商社マンに対して「物流マン」と呼ばれることもあります。
銀行員
- お金を貸す「融資業務」がメイン
- 商社と似ている仕事内容も
銀行員は、取引先企業にお金を貸し付ける「融資業務」が本業です。
ただし、商社マンが単に商品を売るだけではないのと同じく、銀行員も単にお金を貸すだけではありません。
経営に関するアドバイスを行ったり、取引先を紹介したり、保険や金融商品を提案したりと、業務内容はさまざまです。
商社マンと同様、融資先に出向する機会も多く、商社マンと銀行員には似通った部分が多いといえます。
就職活動においても、双方を併願志望する新卒学生は少なくないようです。
あなたの経歴は商社で活かせる?
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