化粧品メーカーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
化粧品メーカー社員の仕事とは
化粧品メーカーとは、化粧品を製造し、販売する企業です。
どのような製品を作るのか企画するところからスタートし、原料を組み合わせて化粧品を開発します。
完成した製品は百貨店や直販店舗などの店頭、通販等を通じて消費者の元へ届きます。
こうした一連の工程に携わるのが、化粧品メーカー社員です。
新製品の開発に携わる人、自社の製品を広める人など、さまざまな役割をもつ人が活躍しています。
化粧品メーカーは大手企業から中小企業までたくさんあり、「販売のみ」「製造のみ」など、一部分に特化して事業展開する企業もあります。
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化粧品メーカーの種類・分類
「化粧品許可」の種類による企業の分類
化粧品業を営む際には、各都道府県の薬務課にて「化粧品許可」を取得する必要があります。
人の肌に直接触れる化粧品には高い安全性が求められ、法律に基づき安全・安心を確保したうえで製造・販売していかなくてはならないのです。
化粧品許可は、大きく以下の2種類に分けられます。
<化粧品製造販売業許可>
化粧品を製造し、さらに完成品を市場に流通させるために必要な許可です。
<化粧品製造業許可>
化粧品を製造するために必要な許可です。
この許可を取得すると化粧品の製造行為を行えますが、製造した化粧品を販売することはできません。
事業内容の違いによる企業の分類
化粧品業界は、大きく「販売会社」と「OEM製造メーカー」に分けられます。
販売会社
一般的に「化粧品メーカー」というと、自社で商品の企画から製造、販売まで一貫して行う会社がイメージされます。
大手企業ではこの形で経営を行っている場合が多く、自社に研究開発部門や製造部門、営業部門などを置いています。
なかには企画のみを行って、製造については後述するOEM製造メーカーに任せているところもあります。
OEMメーカー
他社のブランドのために化粧品を企画・製造し、ブランドへ卸すことを事業とする企業です。
OEM製造メーカーは「発売元」となる販売会社と取引をし、化粧品製造を受託して製品を作り、販売会社へ納品します。
OEM製造メーカーは、いわば化粧品製造領域のプロフェッショナル企業といえます。
基礎化粧品、メイクアップ化粧品、固形せっけんなど、OEM製造メーカー各社がそれぞれ専門領域を持っているケースが多く、複数の販売会社と契約を結んで、多様なブランドの製品を製造するのが一般的です。
ODM製造メーカー
OEM製造メーカーと似た名称の企業で、「ODM製造メーカー」といわれる種類の企業もあります。
ODMは「Original Design Manufacturer」の頭文字をとった言葉で、販売会社から依頼を請けて、製品の企画部分から原材料の調達、生産、品質管理まで一貫して行う企業を意味しています。
近年、異業種から化粧品業界へ参入する企業が増えており、そういった企業はOEM/ODM製造メーカーと取引をして販売するケースがあります。
資本の違いによる企業の分類
国内系メーカー
「資生堂」「花王」「コーセー」といった有名な大手化粧品メーカーは、いずれも国内系メーカーです。
各社ともターゲット別に複数のブランドを有しており、百貨店や量販店、通信販売など多様な販売チャネルを駆使して、製品を世に送り届けています。
国内市場が縮小傾向にあるなか、近年は大手企業を中心に、アジアや欧米などでのグローバル展開を進めています。
事業内容を化粧品関連事業以外にまで拡大する企業もあります。
化粧品メーカーは大手数社が7割ほどのシェアを占めますが、それ以外にも中小企業が多く存在しています。
外資系メーカー
現在、日本国内の化粧品業界には、大手外資系メーカーも多数参入しています。
フランスの「ロレアル」や、イギリス・オランダの「ユニリーバ」などが外資系化粧品メーカーです。
外資系メーカーでも、製品をつくり、販売するという基本的な役割や業務内容は国内メーカーと変わりません。
ただし本社や各拠点が海外にあるため、外国語を使ったコミュニケーションが日常的に行われます。
また、企画・開発ともに本国で行う場合や、企画のみ日本で行って開発は海外で行う場合などがあり、仕事の進め方は企業によって異なります。
化粧品メーカー社員の業務内容
化粧品メーカーでは、多くの社員が分業して働いているため、配属先によって業務内容が異なります。
大きく分類すると「企画・開発系」「生産系」「営業・販売系」があります。
企画・開発系社員の業務内容
新しい商品を開発するにあたって大事なのが、マーケティングです。
市場調査をもとに商品のコンセプトやターゲットを決定し、具体的なデザインとイメージを固めていきます。
理系の専門知識を駆使して、より効果的で安全性の高い新たな原料の開発に携わる社員もいます。
すでに発売済みの商品をリニューアルする際にも、まずは企画職が市場ニーズを集めて企画を立てていきます。
生産系社員の業務内容
生産系の社員は、企画系の社員が作った製品コンセプトをもとに、工場の生産ラインで化粧品を製品化していきます。
また、生産現場では品質管理も重要な仕事です。
化粧品は「薬事法」という法律に基づいた形での製造が求められるため、製品が法律に違反していないかを厳しくチェックしなくてはなりません。
営業・販売系社員の仕事内容
製品が完成したら、その製品の販売ルートを開拓する必要があります。
営業担当は、百貨店やドラッグストア、小売店などに自社製品を置いてもらえるように交渉します。
化粧品メーカーの営業先としての小売店にはドラッグストアや雑貨店、バラエティショップ、コンビニなどがあり、営業担当は、各店舗や企業のバイヤーと交渉し、新たに自社製品を取り扱ってもらうようアプローチします。
百貨店は、化粧品メーカーにとって大きな売上が見込める店舗です。
取引がない百貨店に対しては、売り場担当者に自社製品を取り扱ってもらうためのプレゼンテーションをします。
また既存顧客に対しては新商品の特徴を紹介・説明することや、売り場面積の拡大の交渉などを行うのが、百貨店営業担当の役割です。
最近はオンライン販売も主流になっているため、WebやITを活用した販売網を築き上げるのも重要な仕事となります。
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化粧品メーカーの役割
化粧品メーカーは、さまざまな化粧品を作り出し、世の中の人に届けることを使命としています。
ひとことで化粧品といっても、その種類は下記のように、じつに多様です。
・スキンケア化粧品:洗顔料、化粧水、乳液など
・メイクアップ化粧品:化粧下地、ファンデーション、口紅など
・ボディ化粧品:ボディ洗浄料、ボディミルク、ボディローションなど
・ヘアケア化粧品:シャンプー、コンディショナー、整髪料など
・ネイル化粧品:ベースコート、トップコート、ネイルオイルなど
・フレグランス:香水(パフューム)
など。
化粧品メーカーによって、得意とする化粧品のジャンルには違いがあります。
各社とも世の中のニーズやトレンドを意識しながら、より魅力的で安全性と効果の高い化粧品を生み出すことを目指しています。
化粧品メーカーに特有の職種
マーケティング職
マーケティング職は、多くの人に購入してもらえる製品をつくるために、市場調査やトレンドの分析をしながら「世の中ではどんな化粧品が求められているのか」を考えていく仕事です。
どれだけこだわりの原料を使った製品を生み出しても、それが人々にとってさほど必要のないものであれば意味がありません。
ものづくりを行う化粧品メーカーにおいて、マーケティング職の社員は企画や開発の基となる非常に重要な役割を担います。
競合他社の戦略や商品の特徴も調べ上げ、他社にはない、より魅力的な商品づくりのコンセプトを形にしていきます。
研究開発職
市場調査を基に、消費者のニーズに合う新しい化粧品をつくっていくのが研究開発職です。
コンセプトを設定したら、試作品を作って中身の成分を決める処方開発や臨床試験を経て、実際に生産ラインに乗せます。
化粧品は直接肌に触れるものだからこそ、「美容」という面のみならず安全性を維持しなくてはなりません。
化学など理系知識を駆使しながら、安全かつ多くの人に受け入れられる製品を開発します。
美容部員職
化粧品が完成したら、店に並べて消費者の手にとってもらう必要があります。
化粧品メーカーの製品が販売されるのは、百貨店や小売店、量販店、バラエティショップなどです。
営業職は自社製品を取り扱ってもらうための提案をし、さらに売り場面積の拡大や、より目立つ場所に置いて並べてもらうための交渉なども行います。
百貨店の店頭に立って、お客さまに化粧品の詳しい使い方を説明したり、オススメ商品の提案をしながら販売につなげていく「美容部員」として働く人もいます。
商品知識はもちろん、メーカーやブランドの顔となって笑顔で親しみやすくお客さまに声掛けができる「販売職」としての適性も必要になる職種です。
広告・宣伝職
広告・宣伝職は、商品のパッケージデザインやネーミング、ブランドロゴなどを制作していく職種です。
実際に売り出す各商品に対して、どのような宣伝活動をすればより多くの人に認知されるのかを検証し、具体的なPRの手段を決めていく役割も担います。
メーカーのなかでは、とくにクリエイティブな職種であり、豊かな感性や世の中のニーズをつかむ力も求められます。
生産管理・購買職
生産管理・購買職は、化粧品製造に必要な原料や資材などの発注や調達業務を専門的に担当します。
商品の売れ行きデータを見ながら製造計画を組み、ムダのないよう、かつ不足が出ないように原料・資材を準備します。
品質管理・薬事担当職
化粧品は「薬事法」という法律にもとづいて製造・販売しなくてはなりません。
製品を世に出す前には、製品そのものはもちろん、製品の名称や広告物や販促物といったものにいたるまで、薬事的な決まりが守られているかを厳しくチェックする必要があります。
そうした法律的な面を専門的にチェックするのが「薬事担当」です。
その他にも品質管理系の職種では、製品の品質を保つために成分分析を行ったり、万が一、販売した商品にクレームがあった場合には、その商品の成分をあらためてチェックしたりします。
営業職
化粧品メーカーの職種のひとつとして「営業」があります。
どれだけ魅力的な化粧品をつくり出しても、それを世の中に広めて売る人がいなくては、会社は大きな利益を出すことができません。
顧客に対して自社の製品を提案し、売上を高めていく営業は、化粧品メーカーにとっては会社の利益を生み出す不可欠な存在です。
大手化粧品メーカーの場合、新卒採用は「総合職(事務系)」と「総合職(技術系)」の2種類で採用活動を行うのが一般的です。
そのうち、事務系として働く場合には、キャリアのファーストステップとして営業職を経験することも多いです。
営業職は顧客と直に接する機会が最も多いことから、自社の事業内容やビジネスの流れについて、より深く理解しやすいことが特徴です。
化粧品メーカーにおける営業の仕事内容・役割
化粧品メーカーの営業には、ただ製品の特徴やよさを伝えるだけでなく、「どのような方法で売ればより多くの人に手に取ってもらえるのか」まで提案することが求められています。
化粧品メーカーの営業の顧客は、大きく「小売店」と「百貨店」の2種類に分けられます。
それぞれの仕事内容を詳しく紹介します。
小売店向けの営業
化粧品メーカーの顧客となる小売店には、バラエティショップ、雑貨店、ドラッグストア、コンビニなどがあります。
化粧品メーカーの営業担当は、自社の取引先である各小売店のバイヤーに対して自社製品の紹介をしたり、製品の展開方法を提案し、売上アップのための販売促進を幅広くプロデュースしたりします。
これまで取引がない店舗にアプローチし、販売先を広げていくのも営業の役割です。
百貨店向けの営業
百貨店向けの営業では、百貨店の化粧品売り場を統括する責任者に対し、自社製品のコンセプト説明やプロモーション内容を説明しながら、製品を売り込んでいきます。
百貨店は化粧品メーカーにとって重要顧客であり、ライバル会社も営業に力を入れています。
百貨店担当営業は、自社製品の魅力を伝えるだけでなく、自社の世界観やブランドイメージ、顧客ニーズ、百貨店にとってのメリットなどを提案し、多角的な交渉をしなくてはなりません。
取引のない百貨店に売り場を出すために、定期的に訪問して情報提供を行い、信頼関係を築くことも大事です。
また新しい売り場の展開方法を考えて既存顧客の売り場拡大を狙ったりと、小売店の営業に比べて手掛けるビジネスの規模が大きくなることが多いです。
海外展開をする企業が増えている
化粧品メーカーは近年、海外展開を推し進める企業が増えています。
グローバルビジネスを手がけるメーカーに勤める場合には「海外営業部門」を設置していることが多く、そこで働く営業職は、担当する国での売上拡大に向けた仕事を進めていきます。
具体的には、販売代理店となる小売店や量販店、法人など新しいチャネルを開拓したり、既存顧客に対して売上拡大のためのサポートを行ったりします。
場合によっては、実際に現地に赴いて視察や会議に参加することもあります。
その他の一般的な職種
上記以外にも、化粧品メーカーでは他業種の企業と同様、さまざまな職種の社員が活躍しています。
たとえば総務や経理・財務、人事、労務といった「バックオフィス系」の職種は、会社の経営や社員の労働環境を整えていくためのサポートをする、重要な存在です。
役員らと近いところで会社の経営戦略を考えていく経営企画や、マスコミ対応などを専門的に行う広報などの職種も欠かせません。
企業規模が大きくなると、社長や役員のスケジュール管理や来客対応などを専門的に行う秘書職を置くケースもあります。
化粧品メーカーの有名な企業
国内化粧品メーカーのうち、資生堂、コーセー、花王といった大手企業は日本各地に拠点があります。
社員数も多く、定期的な新卒採用が行われているものの、採用方法は「総合職」としての一括採用が中心です。
総合職は文系職種中心の「事務系」と理工学系職種中心の「技術系」に分かれ、それぞれのルートの中で配属先が決まります。
したがって、必ずしもやりたい仕事ができるとは限りません。
大きな組織だからこそ異動もあり、新しい分野の知識・技術、マネジメントなど多様なスキルを身につけてキャリアアップも目指せます。
最近ではグローバル展開する国内化粧品メーカーも増えているため、そういった企業であれば海外で働くチャンスも得られます。
中小規模の販売会社やOEMメーカーでは、比較的限られた業務範囲となるため、特定の領域で専門性を磨いていきたい人には適しているでしょう。
外資系メーカーとしては、フランス系のロレアル、オランダ・イギリス系のユニリーバ、アメリカ系のP&Gなどが有名です。
外資系では高い売上意識や成果が求められ、厳しさがありますが、実力次第で大きな収入アップも目指せます。
化粧品メーカーの仕事の流れ
化粧品メーカーの仕事は多岐にわたりますが、ここでは、ある新商品を開発する際の一連のおおまかな流れを紹介します。
1.企画を立てる
市場調査に基づき、商品イメージやターゲット、販売方法などを固めます。
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2.サンプル作成
原料や有効成分を選定し、試作品を作ります。皮膚への安全性を確かめることも重要な工程です。
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3.薬事申請
化粧品をつくるにあたっては、都道府県知事に対して製造許可や販売許可をとらなくてはなりません。
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4.生産
原料を仕入れて生産を行います。品質管理も徹底します。
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5.品質検査
品質に問題がないか、状態が変わらないかをテストします。
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6.宣伝・販売
「薬事法」にもとづいて宣伝活動を行い、製品を広めるための営業や販売活動をします。